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Black Heart(2)

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だれでも歓迎! 編集
 二人が駅から泉家に着く頃には、みなみの性感も引いてきた。
厳密には、溢れ出る性の意識に蓋がされただけで、開ければ即目覚め、悶え、快楽の海に溺れるのだ。
 ゆたかは玄関ドアを開け、「ただいま~」と短く言う。
するとそうじそうがスリッパをパタパタ言わせて出迎えてくるのが、この家の習慣だった。
「おかえり、ゆーちゃん。みなみちゃんもいらっしゃい」
「お、お邪魔します」
 おずおずと挨拶するみなみだが、泉家の方では完全に家族の一人として扱っていた。
いつも孤独にベッドで暮らしていたゆたかが、毎週のように連れてきて泊め、
毎日のように彼女について満面の笑みで伯父や従姉に話す、そんな少女。

──何たる悲劇か。"小早川"ゆたかは彼女を"家族"としては扱っていなかった。
   自分を最も必要とし、また自分が最も必要とする"人形"だった。
   当然、ゆたかの無意識から引き上げられることは無い。それも、一生涯に渡ってだ。

 自室は他の寝室から見て適度に遠く、ある程度の声や音は全く届かない。
防音用のパッキンがドアや窓に取り付けてあるので、それこそ部屋の中に入るか、ドアに耳を当てるかしない限り、
中の様子を窺い知ることはできない。当然、分厚いカーテンが降りていて、空調は適度に利いている。
──但し、それは飽くまで灼熱の世界を演出する為に用意された、少々強めな冷房であったのだが。

 夕食の後、団欒も早々に切り上げて二人は部屋へと戻る。この後こなたが自室に引き上げれば、
そうじろうもまた書斎で仕事を始めるに至るので、実質家の中は各個人が孤立することになる。
それでもこの家が団結しているのは、やはり常々から築き上げている愛情に拠る所が大きいだろう。
 そしてそれは、何物にも変え難いカムフラージュとして、二人の愛を"築き上げて"いた。


「ゆっ、ゆた、ゆたかぁ……っ!!」
 淫らな、それでいて一人だけのショーは再開した。ゆたか一人だけの。勿論見せるのは──魅せるのは、みなみ。
みなみの秘所を徹底的に蹂躙するショーだ。ゆたかの瞳には何が映っているのだろうか、それは誰にも分からない。
只そこには、黒くて冷たくて、熱烈で苛烈、そして鮮烈な手先の動きがあった。

 まずはショーツを脱がせ、しとどに濡れたそれをビニール製の袋へとしまう。
然る後、みなみの手首をを縄で──痕の残らない柔らかい縄で──縛り上げ、ベッドに括りつける。
足を縛る前に秘芯へとローターを取り付け、三枚目のショーツを穿かせる。
但し今度はショーツのポケットに入れるなど衝撃吸収の措置は一切取らない、
それどころか先程よりも過激なローターを用意して、みなみの秘芯に取り付けた。
これはローター自身から紐が伸びていて、これで身体に縛り付けてやることで簡単に身体に密着させ、
尚且つ簡単には離れない仕組みになっている。当然、手を縛られたみなみに脱出の手は無い。
 そんなローターはクリトリスを重点的に責めるような構造がなされていた。
これを試すのは初めてなので、みなみにはその一切が分からない。よく分からないが、下半身も縛られた。
それだけの認識。この後に迫る過酷な責めへの予兆や覚悟など、できていない。
 さてゆたか曰く、"膣内[なか]に挿れるのは御法度"だそうで、必然的にこの形での責めに収まったらしい。
『みなみちゃんに悦んで欲しいから』となれば、女性の身体で最も感じやすい地点というのもまた、必然だった。

 ゆたかは愉悦の笑みを浮かべると一言、
「それじゃぁちょっとだけ出かけてくるから、みなみちゃんは『それ』で待っててね」
といって、袋を三つ持って出て行ってしまった。後には、縛られ、ソックスとショーツだけを残したみなみがいた。
みなみはこれから何が起きるかまるで分からず、只々見えない恐怖に怯えていた。
しかもこの機械、アダプターからコンセントへとプラグが繋がっているのである。
つまりは電車の時のように止まることが期待できない。まさか停電することは十中八九有り得ないだろう。

 様々な不安を抱えた夜は、ゆたかが一度家を出て、そして部屋の真下辺りでリモコンのスイッチを押した瞬間から始まった。
その辺のリモコンとは違う質の高い電波は、窓ガラス一枚カーテン一枚など簡単に透過する。
射程範囲は15m。文句なしの品質だった。耳を澄ませばみなみの押し隠した声が微かに聞こえてくる。
何も考えずに歩いたり、他の作業をしていれば誰にも聞こえないだろう。事実、こなたはネトゲー、そうじろうは仕事。
集中している二人に声が届く訳がない。全てを確認した後、ゆたかは近所の公園へと足を運んだ。

 そこで待っていたのは痩せた男が一人。傍目には非常に顔立ち、体形共に理想的。モデルやアイドルなら大人気そうだ。
煙草を咥えているのも、また様になっている。コーヒー缶を片手に持っているのも、身体を木陰に預けているのも。
黙っていれば格好の良い男はしかし、ゆたかが最も信頼する"変態"だった。彼はいつもゆたかの持つ品々を高値で買う。

 さて、そもそもこんな男とゆたかが知り合ったのは、然るネット掲示板で偶然会ったからだった。
 彼は倒錯した趣味の持ち主で、少女趣味──世間で言えばロリコンか──であるだけはなく、
少女そのものには興味を示さず、"身に着けていたモノ"だけを彼は欲した。上着、下着、マフラー、スカーフ、ネクタイ、ソックス。
特にお気に入りは愛液の染み付いたショーツで、確かにその手の店に行けば幾らかは買えたし、彼の欲望を満たした。
しかもこの男、ベンチャー企業の社長などという大層な肩書きも持ち合わせている。金には幸い、困らない──否。
欲しい物を手に入れるには金が必要。金を手にするには、そう、社長になって沢山稼ぐこと。
それだけの妄執を両手に、彼は働き続けた。お陰で企業はどんどん成長していく。そして彼の中に芽生える欲望も。
 だが彼は満足しなかった。店に卸されたものは日の経っているものが多く、劣化しているものが大半。
彼に言わせれば、ショーツとは「生もの」であり、鮮度が大切で、ある期間を過ぎたら廃棄しなければならない。
そんな訳で、彼はいつも求めていた。恒常的に手に入る新鮮なショーツを。暖かく濡れぼそった布一枚を。
 それを叶えたのが他ならぬゆたかであった。彼女はその日からみなみに対して下着越しの刺激を大幅に増やした。
何とも好都合なことに、みなみの過敏な神経は下着のザラザラ感に大きな快楽を見出した。
止め処なく流れ出る愛液がそれを物語っていて、それがゆたかの財源であった。文字通り、金の泉という訳だ。

 そんな金蔓の男。ゆたかに利用されているが、一方でゆたかを利用している。完全なるギヴ・アンド・テイク。
彼の心は躍りに躍っていた。今日も、新鮮なネタを味わえるのか……!!
 紫煙を燻らせながら、近づく足音に目を向ける。案の定、取引相手が現物を持ってこっちへ来るところだった。
小さなな少女が手提げから袋を三つ取り出し、男に渡す。
「はい、これ、今日の分です」
「おお、お嬢ちゃん、いつも悪いね。はい、これが今日の分」
 二人が取引したのはみなみのショーツが一枚と、強力な媚薬が一瓶。
もう二枚は現金、諭吉にして十人。かなりのグレーゾーン取引である。
「しかしお嬢ちゃんは気前がいいねぇ。"何処で"そんなに手に入るんだい?」
 おどけて聞く男に対し、ゆたかは一言、
「企業秘密です。"お兄さんから"教えて頂けませんか?」と返すのみ。
 これは二人の常套句だった。互いの利害が完全に一致している今、腹の探り合いは折角の利潤を反故にするだけ。
この言葉は、「また会いましょう」という取り決めを表しているに過ぎなかった。
「さて、次は何処にしようか……中学校外れの団地に小さくて誰も入ってこない公園がある。そこはどうだい?」
「分かりました。ではまた」
 二人は互いに会釈をして別れた。ゆたかは真っ直ぐ家に帰るが、男は団地裏をくぐった後、誰も居ない薮の中に入り、
そこで狂ったように叫び出した。金に変えられない貴重な宝を、金でいくつも手に入れた、コレクターの飽くなき執念の叫びだった。
狂気を浮かべた笑みは全てに於いて満足していた。全てに於いて感謝していた。
この組み合わせに。この巡り会わせに。この星の素晴らしさに。
 彼もまた、ゆたかという少女の手に踊らされているというのに、そんなことを全く気に掛けず叫び続けた。
ありがとう運命の女神よ、ありがとう名も知らぬ少女よ、ありがとう我が世界よ……

 男は一頻り笑い上げると家路に着いた。頬は引きつり咽喉は枯れ、眼光は血走った眼の所為で益々鋭くなる。
そんな男が薄笑いを浮かべながら疾走して行くのだ。誰もが驚いて道を開ける。……だが、それだけ。
その『誰も』は、過ぎ去った狂気と恐怖に安堵して、日常に戻る。誰も、男の存在など気にも留めない。
警察沙汰になったその瞬間、事情聴取の一つでもされて非日常の世界に紛れ込んでしまった人間だけが、
男の軽やかな足取りを思い出すのだ。そして皆、同じことを言う。
「ドラッグでもやってたんじゃないか、って思う程狂った笑い方をしていたんです……」
 彼は笑っていただけだった。偶然他人と違うことに喜びを見出し、他人と違う笑い方をするだけ。
だがその偶然と、"見出してしまったこと"それ自体が飛び出した杭。それはいずれ、打たれる。はずだった。
彼が逮捕されることは終ぞ無かった。何故なら直接の被害者はおらず、全く目立たなかったからだ。
 彼が疾走一変息も絶え絶えに家に着いたのは、それから一時間後。
マラソン選手でも無いのに驚異的なスピードで走ることができた足はしかし、今悲鳴を上げていた。
だがそんなことを気にする男ではない。寧ろこの疲れこそがスパイスとばかり、靴を脱ぐが早いかリビングへ駆け込んだ。
 そこに広がっているのは変態の極地。壁一面中に張り巡らされた女性の下着、下着。
ショーツの次にお気に入りなのが、夏の汗に匂い立つシャツ。季節柄、少しずつ増えている。
生物故捨てては手に入れることの繰り返し。だが今夏は違う。欲しいものは、今手に入った。
 彼は今年一番の笑いを腹の底から繰り出すと、バタリとベッドに倒れこんだ。その手にはさっき買ったばかりのショーツを握って。
握れば愛液が溢れ出る。そうしたら彼は指先をチロリと舐めるのだ。そしてショーツに顔をうずめる。
歓喜の声を上げて、男はベッドを飛び跳ねた。そして夢の世界へと堕ちていく。歓楽の夢へと。
 狂った男の夜はこれからだった。そして、狂った少女の夜も。


 ゆたかにとって、大切なモノはといえば"みなみそのもの"だった。
だから、みなみの周りの物を誰かと取引をすることは、彼女の良心に反しなかった。
そもそもローターもショーツも彼が出資して買ったものだ。愛液という名の利子を付けて返還する義務がある。
但しゆたかは写真も映像も音声も、断固として引渡しを拒否した。自らの愛する人が"愛されている瞬間"を、
他の目に晒すことは全く不本意であった。無論、男の方もその趣味から欲しがらなかったので、
やはりここでも一切の利害は一致していた。互いに絡まったカネとモノを繋ぐ鎖は、そう簡単には解けない。


 ゆたかが家のドアをもう一度通り、自室のドアを開けた時、そこにいたのは悦楽に狂うみなみの姿だった。
意識はあり発狂した訳ではないが、幾度と昇り詰め、しかし落とされ続けてきた無限の焦らしが、
早く何とかして欲しいと全身で訴えかけていた。
 その快楽に溺れる顔を観て満足したのか、ゆたかは一旦スイッチを切り、みなみの下へ歩み寄って抱きしめた。
そして深いキスを繰り返す。自らの舌でみなみの舌を犯し、狂わせ、熔かした。
みなみは最早一切逆らわず、一切抵抗せず、一切の羞恥を見せず、ゆたかに従った。
ゆたかの舌に全てを任せ、自らを愉悦の海に流した。もう止まることはない……そう思ったみなみだが、ゆたかは口を離す。
つつーっと長い長い銀糸が後を引き、ぷつりと切れる。それが合図であったかのように、ゆたかの瞳に炎が灯った。
みなみは永遠にも思える、だがゆたかには一瞬にも思える夜が、幕を開けた。


 さて、時間は少し巻き戻る。ゆたかが公園に向かった直後のことだ。
何事が起きるのか、ゆたかが戻ってきたらどんなことをされてしまうのか……それを考えた直後、
クリトリスに取り付けられたローターが作動し始めた。
「えっ……んあっ、ああああぁっ!!」
 ゆたかが全く丁度良くセッティングした透明なそれは、瞬く間にみなみの突起を吸引した。
極小の穴の穿たれた鶉の卵。それ程の大きさを持つローターその穴に、丁度ぷっくりと膨らんだ秘芯が入ったという訳だ。
吸い込んだ穴はみなみの勃起したクリトリスよりも少しだけ小さい。必然、プラスチック地に擦れる。
 だがそれ自体は愛液に完全にまぶされた突起の前では意味はない。ちゅるん、と小気味よく入っていった。
問題はその後。適度に根元を圧迫されて、ますます充血していく秘芯に対して、みなみは為す術も無かった。
必死に声を出さないように努めるが、何の意味もない。少しずつ声が大きくなり、口が大きく開いていく。
只々拘束された身体のまま、動くことのできない窮屈感とそれ故の悦びの中で、ローターは遂にその動きを開始した。

 まずは単純な振動。但し、単純といってもこれはクリトリスを中に巻き込んでその上で振動している訳だから、
夕方にポケットの中からローターの振動を受けたのとは次元が違う。
しかも今回は本質的に言って、クリトリスそのものを吸い上げているため、間に包皮などの壁は望めない。
従って、純粋な振動の破壊力がみなみの秘芯へと届くことになる。
 それを身を以って知ったみなみだが、既に時遅し。あらん限りの声を張り上げ、縄をギチギチと引っ張るが、勿論効果はない。
声の方はともかく、縄に関しては感触が柔らかいだけで、本来の機能、拘束に関しては一切の遜色が無い。
 みなみは絶頂へと寸瞬の階段を昇っていくが、突然そこにブレーキが掛かった。振動が止まったのだ。
何が起きたのか分からず、暫く呆然としていたみなみだが、やがて目にうっすらと涙が浮かんだ。
「お願い……ゆたか……イかせて……イかせてよ……お願い……ゆたかぁ……」

 遂にみなみは耐え切れず懇願を始めた。だが一切の妥協、一切の寛容は無かった。ゆたかは現れず、
またローターも動かなかった。必死の思いで腰を振ってみるも、密着したローターは何の快楽も与えてくれない。
みなみは目をうるうるさせながら何度も哀願を繰り返す。だが、返事は無い。
 代りに、ローターがまた駆動音を響かせるのが聞こえた。連動して、みなみの喘ぎも響く。

 さて実はこのローター、相手がイきそうになると自動的に動きを止める機能が付いている。
全ては謎と企業秘密に包まれているが、どちらにせよこれが確実に起動することだけは確かだった。
この機能がONになっている限り、みなみには永遠に絶頂という名の安息は訪れない。
どんなにイきたくてもイけない、そんな焦らしで時間が支配されているのだ。

   実際のところ、ゆたかが行って帰ってくるまでは会話を含めても二十分と少し。
   その間は、みなみにとっては二十時間にも二十日にも思える程の、愉悦に包まれた拷問だった。

 それが半分ほど、つまりは十分も過ぎた頃には、みなみは満身創痍の身体だった。
口の端からは止め処なく粘液が糸を引いてシーツへと垂れ、それは秘唇からも同様であった。
今はその稼動が止まっているが、それは即ち絶頂が限界まで近づいているということ。
しかし限界ばかりでその向こう側へと行くことは許されない。
拘束された四肢は如何なる「楽な姿勢」を取ることも許されず、ただ快楽の中にみなみを引き込み続ける。
 そんな折、止まっていたローターが再び動き出した。と共に振動が変わった。
尖ってはいないが細い針が無数にローター内に生じて、みなみの突起を刺し始めたのだ。
「あ……ああぁぁぁぁぁっ!!」
 肩や腰であれば"マッサージ"で済んだのだろうが、半日以上責められコリコリになっているクリトリスには快楽の種でしかなかった。
何をどう設計したものか、みなみのクリトリスを的確に突いて、愛液を溢れさせ秘芯本体を肥大化させた。
そうなると今度は再び吸引が始まり、ますます大きく剥き出しになった神経の塊に針が刺さるのだ。
「ゆたかっ、ゆたか助けてっ、これ気持ちいい、気持ち良すぎるよぉっ……」
 勿論、後一歩、後一息という直前になって、針先は全て引き、みなみがどう身体を捻ろうとその一本にすら触れない。
そして暫くするとまた激しく突かれ刺され、更には引っかかれるのだ。外傷こそ一切ないとはいえ、これは拷問以外の何物でもなかった。
絶頂が許さないみなみは、只ひたすら"愛する人"を待ち続ける。


 針の一掻き、あと一突きというところでまたしても冷酷な機械が動作を止めた頃、
ゆたかは帰ってきた。ガクガクと顎を揺らし下半身を忙しなく動かしているみなみに、ゆたかは優しく語りかける。
長らく待たされた者の苦しみを知っているから。それ以上に、待たされそして満たされた瞬間の素晴らしさを知っているから。
ゆたかはみなみの首筋に指を這わせて、下顎をくいと持ち上げる。
「ただいま、みなみちゃん……」


 さて時は再び現在へと戻る。
 口と舌をゆたかの思うが侭に犯され責め抜かれたみなみは、只々同じ事を繰り返して言う。
『もうやめて』、等といった次元の懇願ではない。既にみなみは、止めて貰っては困る程に精神をすり減らしていた。
つまるところみなみは、こう言ったのだ。

「お願い……早く……イかせて……」と。

 種を蒔き、芽が萌え出でて高くその蔓を伸ばし、そして今に至り蕾が生まれた。
それも今宵のうちに開花し、世界で最も美しい華となるだろう。
 それを知り尽くしているゆたかは、最終調整へと入る──みなみが最後に浮かべる顔を思い浮かべて。
ゆたかの責めは止まることを知らない。一方で進み続けることもしない。
確実にゆっくりとみなみを精神的に責め、身体に快楽を生ませ続けること。
それだけがゆたかの欲望であり行動原理なのであった。

 ゆたかはここに至りローターのスイッチをOFFにした。これでみなみはどうすることもできない。
「お願い、スイッチを入れて……」そんなみなみの悲痛な声には耳を傾けず、拘束の紐を解いていく。
紐を全て解き放ったところで、ゆたかは愛液で染まったショーツを降ろし、ローターをみなみの秘芯から取り外した。
取り外した、といっても実際は吸い込まれ奥深くまで食い込んでいる。しかもこの手の機械の常、
小さい穴に無理矢理吸い込ませた上にその中で肥大している敏感な突起は中々ローターから離れようとしない。
きゅぽん、とかなり小気味良い音を立てた頃には、ゆたかはそれなりの力を込めていた。
それだけの力を込めて引き抜かれたローターはつまり、みなみのクリトリスを全方位から圧迫して揉み潰したのに同義。
みなみは悲鳴を上げ身体を左右に揺らし、しかしそれでも絶頂に至ることはなかった。
ゆたかは何もかも計算ずくで、ローターが一旦停止している時間を見計らって帰宅したのだった。
 そのままゆたかはローターをくるりと反転させる。そこに同じような小さな穴があった。それを見せてゆたかはニッコリと微笑む。
但し、今度はもっと小さい。コリコリに尖った突起を、より強調するための措置。そしてこれこそがゆたかが求める最大の欲望。
みなみをイき狂わせるための、最強の装置。それが、この小さな卵状の機械に埋め込まれていた。
それを見せながら、ゆたかはわざと使わない。ショーツを一旦上げ、指で押し付けてジワリと恥ずかしい染みが広がったところに、
その一点ぷっくりと膨らんでいるポイントに口をつけた。そのまま吸い上げて甘噛みする。
 みなみは甲高い悲鳴を上げ身を捩るがそこに力はない。本人がそうしていると思い込んでいるだけで傍目には動いていない。
それは即ちゆたかにとって腕力を発揮する必要はないということ。
 小柄で非力な少女は、長身でスポーツ万能な少女が持つ最大の弱点を、布地の上から責めた。
ショーツ自体と突起が擦れ、ゆたかの舌はショーツの上から弄ることでザラザラ感を増す。
逆に吸い上げ甘く噛む時は僅かにできる隙間のお陰で鋭さがなく柔らかい。それがみなみの官能を否が応にも高めていく。
──もちろんそれをゆたかがいつまでも許すはずがない。高まり、最高潮に行く寸前で又、ゆたかは口を離してしまった。
荒い息を吐き苦しそうに身体を捩り捻ろうとするが、それも拘束のせいで叶わない。
ローターの紐は解いても、縄まで解いた訳ではないのだから。
 そのローターの紐さえも、みなみへと再び巻いていくゆたか。今度は先程みなみに見せた小さな穴を、彼女の突起へと向けて。
ショーツは降ろされ、恥ずかしい口は物欲しそうにパクパクしている。但し、その口の中に何かを挿れる予定は無い。

──夫婦に例えるなら、みなみは婿でゆたかは嫁。これは自他共に変わらない認識。
   ならば、男の持つ"硬いモノ"、それを持つのもまたみなみであるはず──それが、ゆたかの考え。
恐らく、みなみには永遠に理解できないだろう。だが理解など必要ないのだ。
『目の前の官能』に身体を傾けていれば……

 ゆたかは今まで「中」にしていた振動強度を「強」に換え、電源を入れる。
途端、掃除機の音にも似た吸引音が部屋に響き、みなみのクリトリスがローターに穿った穴の中へと吸い込まれていく。
だが小さい穴に大きい突起は中々入って行かない。みなみは歯を食いしばって快楽に耐えようとするが、
最早そのような行為は無意味。暫くせめぎ合った後、みなみの秘芯は機械の中に埋め込まれた。
途端、みなみは呻き声を上げる。そのローターの中にあったものに。これから訪れる悦楽に。
 返されたローターの中には、無数のイボ、シリコン製の突起がびっしりと生えていた。
それらが猛烈な勢いでみなみの充血したクリトリスに押し寄せる。逃れる術は、無い。

「やめてっ、やめてゆたかっ、死ぬ、死んじゃうっ、気持ち良すぎるよぉ……っ!!」
 撫でる。揉む。擦る。押し付ける。ゴリゴリと弄る。そこに慈悲は無い。
互いに振動しぶつかり合う突起。無論、本体の秘芯も例外ではない。無機質な動きに機械は無表情だが、みなみの方は違う。
頭を振りかざし唾液を撒き散らす。それはベッドの上に飛んで、垂れ落ちる愛液と見た目上区別が付かなくなる。
手足を必死に動かそうともがくが、縄に阻まれて僅か数センチの動きで止まる。
一方秘芯は数ミリ程度しか動いていないにも関らず、その細やかな振動によってみなみの今があった。
浅く繰り返される息からは酸素が十分に補給されず、ボーっとなったみなみに浮かぶのは暖かな幻想。
早く絶頂に達して楽になりたい……早く楽に……
 知らず、みなみは求めていた。どこで覚えたのかは分からない。自然が本能が生み出した言葉だった。
「お願いっ、ゆたかっ、イかせて、イかせてよぉっ、お願いぃぃ……」
 その言葉に、ゆたかはピクリと反応する。みなみの酸欠と羞恥と悦楽で紅く染まった顔に対面して、問いかける。
「お願い? お願いはそういう風にするんじゃないんだよ、みなみちゃん。もっとちゃんとお願いしてごらん?」
 飽くまで優しく、微笑みを織り交ぜて話すゆたかだが、その内側は歪曲し冷え切っていた。冷徹な目で、みなみの耳元に囁く。
「私が『その気に』なるようなエッチなお願い、聞かせて欲しいなぁ……」

 もうみなみには限界だった。否、限界等とうに過ぎていて、あるのは絶頂への期待と妄執だった。
それだけがみなみの精神を繋ぎ止めていて、ゆたかの心を捕えて離さない愉しみであった。
 だから、もうみなみは何もかも、自尊心も羞恥心も全て捨て、『ゆたか』に従属し隷属するためだけに、ただ叫んだ。
「お願いっ、お願いしますっ、私をイかせて下さいっ、私のエッチなビンビンに勃っているクリトリスをいじめて下さいぃっ、
 だから早く、早く、私のお豆さんいじめてえぇぇぇーっ!!」
 みなみは、堕ちた。

 ゆたかは漆黒の笑みを、そう今日一番の真黒を顔に浮かべ、
「……いいよ、みなみちゃん。沢山今まで焦らしちゃったから、これはお詫びだよ」
絶頂に至らなくする魔のスイッチをOFFにした。同時につまみをいじってローターのモードを変える。
すると途端にイボは引っ込んだ。そして更なる悪魔が訪れた。丁度ゆたかの心のような悪魔が。

 代りに現れたのは、電動歯ブラシの先にも似た、そう文字通りのブラシだった。
羽のようにさらりと、それでいて程々に柔らかく、これで人をくすぐったら思わず笑い出してしまうだろう。
だがそれは性感帯で無い場合の話──といってもみなみは今全身がそうなのだが──。
敏感になっている、吸引され蹂躙され調教されたクリトリスが相手では、みなみにとっては津波か台風か洪水か。
ともかく突風吹き荒れる快楽地獄の世界に入り込んでしまった。
 ブラシは充血した秘芯を隅から隅までなぞり擦り、突起の先端を刷いては根元から反り上げる。
ゴシゴシと掃除でもするかのように磨き上げられるクリトリスは、更にその存在を主張し膨れ上がる。
「あっ、あぁっ、ああああああぁぁぁっ!!」
 みなみはここへ来て初めての絶頂に触れようとしていた。
半日、いやまもなく一日になろうかという時間責め続けられ焦らされ続けられた愉悦が、今溢れ出す。
「イくっ、イくっ、イくうううぅぅぅっ!!」
 ぷしゃぁぁっ、と勢い良く潮を噴き上げながら、みなみはイった。ビクンビクンと身体が震える毎に、
同じリズムで愛液が秘唇からどろどろと流れ出る。最早白濁した愛液は身体から弾かれたように飛び出して、
シーツに大量の染みを残していく。


 だが、それで終ることはなかった。
ガクガクと身体を痙攣させ目の焦点が虚ろになっても尚、みなみのクリトリスに対する責めは終らない。
今度はブラシで磨き上げられるだけではなく、振動まで始まった。
締まった穴の中で愛液にまみれテラテラと光り、あらゆる箇所を陵辱されるみなみの秘芯のをガッチリと捕え、
余すところ無く振動を与え続けるローター。
 震えているのは機械だけではない。みなみの足、みなみの唇、みなみの突起。
全てが調和してみなみを絶頂に押し上げる。何度も何度も押し上げて、そして絶対に下ろさない。
いよいよ以ってみなみが悲鳴を上げ始めた。
「もうダメっ、ゆたかっ、これ、これ止めてっ、お願いゆたか、クリトリスの機械を止めて下さいぃぃっ……」
 だがゆたかは聞き入れること無くみなみを見据えるだけ。どんどん大きくなる悲鳴と哀願の中に於いてさえも、
ゆたかは無表情で目の前の、悦楽に踊り狂う少女を見つめ見守るだけ。

 最後に一際大きな声を上げてみなみが気絶した時にやっと、ゆっくりと歩み寄ってみなみの身体を抱き締めた。
強く強く、ゆたかができる限りの強さでしっかりと。
そこに狂気の色は薄れていた。だが抱き締める強さのいくらかには、しっかりと残していた。
ゆたかはみなみの口に濃厚なキスを交わし、そして囁きかける。あの優しさで。あの、黒い優しさで。

「みなみちゃん、私、みなみちゃんが大好きなんだよ。誰よりも、誰よりも。世界で一番、大好き。
 だからみなみちゃん、私のそばを離れちゃ、ダメなんだよ……?」


 翌日のみなみは疲れきっていて眠りこけ、微動だにしなかった。ゆたかもまた、そこを無理に起こしてまで愉しむ程の鬼畜ではない。
寧ろ甲斐甲斐しくタオルで全身を拭いてやり、拘束を解きシーツを換え、予め持ち込まれている下着とパジャマとをを着せる。
毛布をかけて、頭を枕に載せれば、完成。これでみなみは眠れる一人の少女。誰も疑う者は無い。
実際問題、誰も部屋に入ってこず、泉家の二人も『また夜遅くまで話し込んじゃってたんだな』と暖かく見守るのみ。
それが永遠の勘違いだと気付くには、こなたもそうじろうも優しすぎた。

 世界は今日も回り続ける。ゆたかの狂気と、みなみの狂気を孕んで。
そう、思えばみなみも狂気なのだ。ゆたかの調教に少なからず従い、そして堕ちていく時点で。
そこまでの思慮は未だ、思春期の少女達には分からない。電車に乗り合わせた青年も、ゆたかの取引相手である男も、
「狂気」の内側にいる時点で、その存在に気付くことは無いのだ。外側は外側で、やはり存在に気付く訳も無い。
現にこなたはネトゲーを一徹、そうじろうは仕事が捗って深夜に及び、今は夢の中。
 唯一妄想に長けたひよりだけが、この未来を予想できたかも知れない。
だがしかし彼女でさえも、この夜のような設定の同人誌を描くには友情が勝った。
 だからして全てを知るのは、ゆたかだけであった。昏々とした眠り姫の頬にそっと唇を寄せ、昨夜と同じ囁きを伝える。



「みなみちゃん、大好き……」
                                                           fin.




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  • これを見ても ただ「みなみちゃん可愛い」としか思わなかった私はおかしいのだろうか…? -- 中学2年生 (2013-04-25 17:18:34)
  • みなみちゃんをいじめるなー -- 名無しさん (2010-05-21 03:01:22)
  • 主従逆でやってほすぃ
    -- 名無しさん (2010-02-03 11:22:37)
  • 鬼畜系エロという分野では、最高に素晴らしかったです。
    -- 名無しさん (2008-08-15 14:01:29)
  • ゆーちゃんコワッ!!!!!!!!!!!!!!
    でも少しみなみちゃんが羨ましいな……
    でもやっぱりゆーちゃん怖いいいいいいいいいいいいいいいい
    -- 美霊☆ (2008-05-04 23:39:51)
  • お疲れさまです!

    とても文としては
    成り立っていて、
    読みやすい美しい文章でした。

    読み終えた後での、
    その後は何が起こるん
    だろうという
    読者に対し妄想を膨らませる書き方がよかったです。


    ぜひ、次回作も期待します。 -- 裁宝 (2007-08-03 10:47:39)
  • 十分鬼畜…同じく、みなみちゃんになりたい… -- 名無しさん (2007-07-28 10:11:44)
  • ゆーちゃんすごい……!!みなみちゃんになりたいな -- 迷い猫 (2007-07-27 02:09:51)

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