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ああ、素晴らしきお泊り会

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だれでも歓迎! 編集
現在、夏のとある土曜日。
私とかがみは私の部屋に居る。


気まずい。
ひっじょーに気まずい。
会話がないまま30分程度経過している。
この気まずさは、かがみに告白された時と勝るとも劣らない。
妙な空気を紛らわすためにしていたパズルゲームは、お互い「ばたんきゅー」と自滅していったので止めた。
その後もいつものように言葉のキャッチボールが出来ずにお互いマンガを読んでいる。
私はクッションを抱えて、何度も読んで展開を覚えているのに今はまったく頭に入ってこないマンガの内容を流し読みしていた。
かがみは肩が触れるぐらいに近くで一生懸命マンガを読んでいる。
ただ、そのページをめくるスピードが限りなく遅いことをちらちらと横を見ている私は知っている。
マンガを眺めながら考え込んで、少し我に返ったときに慌ててページをめくっているような感じ。
それに比べて私はページをめくるのは早かった。何か動いていないと、それこそページをめくるという小さな動作でもして音を立てていないと心臓の音が聞かれそうだった。
この場合、より緊張しているのはどっちなんだろう?



きっかけは、数日過去にさかのぼる。
週の前半に二人で帰宅中の私の一言が原因。


「土曜日私の家に泊まりに来る?」


本当は『帰宅』という名のデート中の一言なのだけど、このときは寄り道をしていなくて学校の時と同じ感覚で話していた。
ようやく手を繋ぐのには慣れたけどキスは慣れてないぐらいの時期。
しかもその時は手を繋いでなくて、私は前と同じように深い意味を持たずに聞いていた。
私の中での意味は「かがみもつかさも泊りがけで遊びにきなよ」という意味。
その時のかがみの慌てようが理解できず、数秒後に小さく「うん」と呟くかがみを不思議に思いながらそのまま別れて帰ってきた後。
かがみに散々言われたから少し勉強して、休憩として流石につみすぎたマンガを読んで、その後にギャルゲをやってて気づいてしまった。





「あれって誘い文句じゃん!!」


思わず叫んだ。


そう考えるとさっきのかがみの反応も分かる。そりゃうろたえるよ。
どうしよう、普通に遊ぼうって意味で誘ったんだけど。
やっぱりエロゲと実際のこういう経験は違うって。エロゲではクリックするだけでいいもん。
実際はこう……勇気と言うか、何かがいるよね。
ゆーちゃんもお父さんもいるんだし。
あ、そうだよ!人がいるじゃん!セーフだ!

……でも、学校で前科(手洗い場でのキス)があるから、人がいるっていっても安心できないかも。

別にしたくないってわけじゃないんだけど、何か心構えが出来ない。
いっそそういう状況になっちゃったらそのまま雰囲気で流されそうな気がする。
ただ、不安と言うか怖いというか。かがみが、じゃなくてやっぱりそういう行為自体が。
興味本位とかそういうのでやっちゃダメでしょ。もう一回言うけどエロゲと現実は違うんだから。
でも今更「ごめーん、さっきの言葉取り消すね?」って言えない。
嫌じゃないんだし。嫌じゃないんだけど……

「ど、どーしよっ!?」
「何がどうしたの、お姉ちゃん」

コントローラーを投げ出して叫んでしまって、丁度部屋の前を通っていたらしいゆーちゃんがドアを開けてソフトで的確な突っ込みがきた。

「あー……んや、何もない。ほんっとうに何もないよ。ただゲームで行き詰っただけ」
「そうなの?あ、ならさっきのもゲームの事?」
「え?」
「お姉ちゃんの声で、誘い……なんとかとか叫びが聞こえたから、何かなと思って聞きにきたんだけど」

『あれって誘い文句じゃん!!』まで筒抜けですか。
そして少しでも疑問に思ったら素直に訊ねるんだねゆーちゃん。いい子だよ。いい子すぎるよ。
なんでもないよ、勉強してたなら邪魔してごめんねと言うと、そうなんだと簡単に信用して部屋に戻っていく。
ご、ごめん。ゆーちゃん……少し疑うことを覚えて。お姉ちゃんとして罪悪感感じるよ。

ばふっ!とベッドに顔を埋めて思考から逃れようとしたけど逃げられなかった。
あっという間に数日が経過し土曜日になって――



今に至る。



もうちょっとだけ現実逃避。
金曜日、つまり昨日の時点で「つかさは来るの?」と聞いたけど。

「こなたの家に泊まるって言ったら『そうなんだ、いってらっしゃい』って言われて……これが姉離れってやつ?」

という返答。
つかさとみゆきさんには、確かに付き合ったことを言ったけど。
何か「やっぱりねー」とか「おめでとうございます」と言われた。
あっさりしすぎてない? とは思ったけど、もし立場が逆で

『私とつかささん、付き合うことにしました。お恥ずかしながら』
『そうなんだよ』

と、みゆきさんとつかさが言っても、私はあっさり受け入れるだろうなと思ったら何か納得した。
自分が当事者になると客観的な判断が出来なくなる顕著な例だ……って、これはまんまかがみの言葉だけど。


現実逃避の回想を終え、パンっとマンガを閉じる。
あれだけのスピードで読んでいた、というより流し見をしていたらアッサリと終わってしまった。
閉じた音が部屋に響き渡る。その音に反応したのか、かがみまで本を閉じてこっちを見た。
なるべく意識しないようにしてたけど……本を読んでるだけにしてはえらく距離近いよね。

意識はしてるけど、もしかして期待してる?

冷静な私が部分、たぶん理性が問いかけてきた。
期待?期待って何の……と、自分に誤魔化せるはずもないけど、認めるのは恥ずかしいから。
だんだんと熱を帯びていく体と、冷静な自分に対してこう言いたい。
人差し指を立てて『それは、秘密です』と。

「こなた……」

名前を呼ばれるその響きと、それに含まれているキスをしたいという意味も受け取る。
んっと……うん、それぐらいなら大丈夫だろう。

「か、がみ……」

つっかえながらも、名前を呼び返して了解のサイン。
キスする前に名前を呼び合うのがいつの間にか定着していた。
目は瞑ったり瞑らなかったりと決まってはいないけど、大抵どっちかが瞑る。
私が今回瞑る側かな……なんて思って瞑ろうとしたら。


ガタッ!
ベシッ!!
バサッ!

「お姉ちゃん、宿題で分からないところがあるんだけど……あれ、あの、何してるんですか?」

ゆーちゃんが現れた。

最初の擬音は、ゆーちゃんがドアを開ける音。
二番目の擬音は、それに驚いた私がかがみの顔面に本を押し付けた音。ごめん。
三番目の擬音は、私が本を押し付けたから、かがみが持ってた本を落とした音。

「え……あ、ゆーちゃん」

もう遅いけど、かがみの顔面に押し付けた本と腕をどける。あ……怒ってる? というか、不機嫌?
だって……ゆーちゃんにそういうシーン見せつけちゃダメでしょ。というか見られたくないよ。

「い、いやー、マンガ読んでたんだけど、セリフの中に意味が分からない言葉があってね……ね?」
「そうそう。だから、これぐらい知っときなさいよって言ったらこなたが顔面に本を押し付けてきたところ。ね?」

なんか言い訳スキルがどんどん上がってきてるよね、私達。
まぁ、最初の「コアラゴッコ」が酷すぎな気がするけど。
とにかく、ゆーちゃんには人が来てるときはノックするように言わないと。
そしてかがみ。笑顔なのに後ろに『ゴゴゴゴゴ』って見える気配背負わないで。謝るから。怖くて直視できません。

「あ、あの……お邪魔しました!」
「ゆーちゃん!?」

慌ててドアを閉めて、逃げるように去っていったゆーちゃんを姉心で追いかける。
追いかけドアから飛び出して閉めて……って、部屋のすぐ外にいたぁ!!

「ゆーちゃん……?」
「ご、ごめんねお姉ちゃん。今日はすごく静かだったから、お友達が来てること忘れてて……」
「あ……そっか。いつもは騒がしいもんね」

それが、ネトゲしてるみたいにずっと静かだったからノックしないで入ってきたってことか。
本当にごめんなさいっ! と何度も頭を下げられて、こっちも逆に罪悪感を感じる。

「お、怒ってないから大丈夫だって。かがみも……怒ってないよ」

少し自信がないけど。

「でも……機嫌悪かったような……」
「多分、私に対してだと思う」

寂しがりやだから、少しいじけてたりはするだろうけどね。
でもゆーちゃんに怒ったりすることはないと思うから安心して、というとまだバツの悪そうにしながら部屋に戻っていった。
……宿題の分からないところ、どうするんだろう? と思ったけど話をぶり返すことも出来ない。
部屋に戻ろうとドアを開けて


ごめんかがみ、という単語を言うつもりが部屋に引っ張り込まれて紡ぎ出せなかった。
パタン、と背後でドアが閉まる音。そしてかがみが私の肩に手を置いて私をドアを背にする場所に移動させる。
そして私の逃げ道をなくすかためか、私の体を挟むようにドアに両手をついた。

あ、あのー……音を立てないようになのか凄くゆっくりした行動なのに抗えないのは……やっぱり背後の『ゴゴゴゴゴ』のせい?

「……怒ってる?」
「怒ってるわけないじゃない。ただ……寸止めされると、ね?」

やっぱり怒ってらっしゃる!!

「ち、違うよ!ゆーちゃんに悪気はなくっぅんむっ!?」

喋っている最中に舌を絡み合わせれば、そりゃ言葉を発することは出来ない。
舌を入れられる事には比較的慣れたつもりだったけど、いきなりとなるとまだ二回目だから慣れない。
『絡まる』というよりは『奪う』に近い動きをする舌に抵抗は無意味だった。
上顎、それに絶対に自分の舌では触ることが出来ない舌の裏側まで余すところなく舐められる。
立っているのがきつくなったのを理解してくれたのか、ドアについていた両手を腰にまわしてきた。
流れ込んでくる唾液を飲み込むけど追いつかない。
酸欠だか何だか分からないけど頭がグラグラした。お腹の奥のグルグルもはっきりわかる。
そういえば、このグルグルの正体をみゆきさんに聞いてみたら困ったように

「女性は子宮が疼いたりするそうですよ。これは小説に書いてあったことなのですが、女性は子宮で恋をするそうです」

と言っていた。いや、まさかみゆきさんの口から「子宮が疼く」って単語が聞けるとは思わなかった。
まぁ、今自分がまさに経験してるんだけど。
酸素を求めて、少し口が離れた隙に吸っても酸素が足りない。
少しペースを緩めて欲しくてかがみの服を引っ張って訴えた。
ようやく舌が抜かれて酸素が吸えて、息を整える。

「はっ……ぁ、ふ………はぁ」
「ねえ、こなた」

かがみはかがみで息切れはしてるけど私ほどじゃない。
どこから来てるのさ、その体力。

「今のキスの相手は誰?」
「え?」

訴えかけるような、何かを強く望むような瞳で簡単な質問をしてくるかがみ。
何がしたいのかは分からないんだけど、息を整えて答える。

「……かがみでしょ」
「今、こなたの目の前に居るのは?」
「かがみ」
「私の名前は?」
「かがみ……って、どうしたの?」

その問い掛けと私の答えで満足したのか、やっと笑顔になって今度は軽い啄ばむキスが降ってきた。
機嫌が良くなったことはいいけど何でそう安心したような表情をするのか分からない。
……まぁ、いいか。
宙ぶらりんだった腕でかがみに抱きつく。
今ならゆーちゃんもちゃんとノックするだろうし、ドアを開けられることはないし。
気づいたけど、私とかがみがドアに寄りかかってるかぎりはドアが開けられることはないんだし。
もしかしてかがみはそれを計算して私をドアの前に移動させたんだろうか。

「こなた」
「ん?」
「こぼしてる」

かがみの指が私の顎から口の端へと上がってくる。
飲み込めなかった分の唾液をこぼしていたらしい。……つまり、さっきのキスが激しいということか。納得。
こぼしたんだったら飲まないと、と使命感でかがみの指を唾液ごと口に含んだ。
空気に触れて冷えた唾液と、それよりは熱さを持ったかがみの指を舐める。
舐めるのと同時にかがみの顔が、メーターみたいに下からドンドン赤くなって、指を味わう間もなくズザアアッと私から離れた。
そして壁まで後ずさるとそのまま寄りかかるようにして座り込んだ。
さっきはこれより激しいことしてきたくせに何でそんな乙女反応するのさ。
私は私で少し腰抜けかけてるのか、抱きしめられていたことで支えられていた体はすとんと座り込んだ。
お互い座り込んで、またしても妙な空気。




「かがみってさ」
「な、何よ!!」
「受身に回るとトコトン弱いよね」
「あんた人の事言えるか!!」




現在土曜のPM7時。
かがみが家に帰るのは日曜日のPM3時。


残り時間は20時間。



















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  • GJ!! -- 名無しさん (2023-01-24 14:08:51)
  • キスで始まりキスで綴る、それが百合! -- 名無しさん (2011-04-16 05:59:41)
  • 鱚はいいなあ。 -- 名無しさん (2009-12-02 21:34:44)
  • キスはいいものですな。 -- 名無しさん (2007-11-25 18:12:58)
  • キスが好きだね、このふたり。 -- 名無しさん (2007-08-16 18:34:10)

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