想いを乗せての続き。
気づけば十二月。コートを手放せないほど、寒い毎日が続いていた。
かじかんだ手を座席の下からでる温風にあて、手のかじかみを和らげる。
「バスから降りたくないよ~」
こなちゃんは両手をお尻の下に敷き、体を丸め駄々をこねる。
こなちゃんは両手をお尻の下に敷き、体を丸め駄々をこねる。
「何行ってるのよ、早く降りるわよ。つかさもいつまでもそうしてないの!」
お姉ちゃんだけは元気だ。
「はぁ~い」
お姉ちゃんに続いてバスから降りると、冷たい風が髪をなびかせ、耳を赤く染まらせる。
露出した足と頬が寒さのせいでヒリヒリと痛みを感じ、ふぅ……と小さく吐いた息でさえ真っ白に広がっ
ていった。
露出した足と頬が寒さのせいでヒリヒリと痛みを感じ、ふぅ……と小さく吐いた息でさえ真っ白に広がっ
ていった。
―冷たい風と暖かい手―
「さぶぅ~」
「ほんと嫌になるよねぇ、この寒さ」
「ほんと嫌になるよねぇ、この寒さ」
バスを降りてから学校までのほんの短い時間でさえ、苦痛なほどの寒さだった。
同じように学校へ向かう生徒達もマフラーを目の下まで持ち上げたり、スカートの下にジャージを着てきたりと、工夫をして寒
さを凌いでいた。
その中にカップルもいて、手を繋ぎ男の子のポケットに入れて女の子は嬉しそうに微笑んでいる。彼女達だけはまるでこの寒さ
さも楽しんでいるように見えた。
同じように学校へ向かう生徒達もマフラーを目の下まで持ち上げたり、スカートの下にジャージを着てきたりと、工夫をして寒
さを凌いでいた。
その中にカップルもいて、手を繋ぎ男の子のポケットに入れて女の子は嬉しそうに微笑んでいる。彼女達だけはまるでこの寒さ
さも楽しんでいるように見えた。
「ねぇねぇ! 手繋ごうよ!」
すごいいいこと思いついちゃった! って思ったのに、お姉ちゃんは「はぁ?」の一言でつれない。
すごいいいこと思いついちゃった! って思ったのに、お姉ちゃんは「はぁ?」の一言でつれない。
「ラブコメなんかであるあれ?」
でもこなちゃんは、言葉のキャッチボールを受け取ってくれた。
「うん、ポケットの中で手を繋いだら暖かいかなって」
「やったことないけど、あれってそんなに暖かいのかな?」
「だからやってみようよ! ね、お姉ちゃんも」
「なんでそんな恥ずかしいことしないといけないのよ! 絶対嫌!」
お姉ちゃんは頑なだった。
でもこなちゃんは、言葉のキャッチボールを受け取ってくれた。
「うん、ポケットの中で手を繋いだら暖かいかなって」
「やったことないけど、あれってそんなに暖かいのかな?」
「だからやってみようよ! ね、お姉ちゃんも」
「なんでそんな恥ずかしいことしないといけないのよ! 絶対嫌!」
お姉ちゃんは頑なだった。
「むぅ、じゃあこなちゃんしよ?」
「うん、いいよ」
こなちゃんは、ポケットから出した手を、私に差し出し、私はその手を取った。
「うん、いいよ」
こなちゃんは、ポケットから出した手を、私に差し出し、私はその手を取った。
握り締めたその手を自分のポケットにいれる。
初めは冷たかった手が徐々に熱を持ってくる。なんだか心まで温かくなってくる。
やっぱりドラマとか漫画のように好きな人と繋いでるからなのかな?

「あったかいもんだねぇ意外と」
「うん、手だけをポケットに入れててもなかなかあったかくならないのにね」
「うん、手だけをポケットに入れててもなかなかあったかくならないのにね」
「かがみもやればいいのに、ほらほらこっちの手があいてますよ」
こなちゃんは右手をお姉ちゃんに差し出す。
「だから嫌よ! 恥ずかしい」
しかしお姉ちゃんは顔を真っ赤にしてぷいっと顔を背けてしまう。
「もう~素直じゃないんだから~」
こなちゃんは右手をお姉ちゃんに差し出す。
「だから嫌よ! 恥ずかしい」
しかしお姉ちゃんは顔を真っ赤にしてぷいっと顔を背けてしまう。
「もう~素直じゃないんだから~」
「高校生が3人で手繋いでるとか変でしょうが!」
「寒いから手を繋いでるんだなーとしか思わないよ、ねぇつかさ」
「そうだよ」
こなちゃんを援護してみたけれど、
「あんたらの基準はあてにならん」
結果は変わらず。
「寒いから手を繋いでるんだなーとしか思わないよ、ねぇつかさ」
「そうだよ」
こなちゃんを援護してみたけれど、
「あんたらの基準はあてにならん」
結果は変わらず。
「じゃあ後でみゆきさんにも聞いてみよう。三対一ならさすがに私達が正しいって証明できるでしょ」
「できねーよ。ってか、みゆきまで巻き込むなよ」
お姉ちゃんはうなだれて知り合いだと思われたくないと私達の少し前を歩き出した。
「できねーよ。ってか、みゆきまで巻き込むなよ」
お姉ちゃんはうなだれて知り合いだと思われたくないと私達の少し前を歩き出した。
「もう……、手ぐらいいいじゃんか。繋ぎたかったのになぁ」
こなちゃんは残念そうに小さく呟く。
こなちゃんは残念そうに小さく呟く。
聞こえてしまった。
聞きたくなかった。
暖かく感じていた手が冷たくなる錯覚。
「つかさどうかした?」
「え? どうもしてないよ?」
私は作り笑いを向ける。
私は作り笑いを向ける。
そしてその冷たくなった手を温めなおすように、ぎゅっと握り締めた。
その時ビューっと一際強い風が吹いた。
「さっさと行くわよ。私だって寒いんだから」
お姉ちゃんは走り出す。
「だったら手を――」
「それとこれとは話が別!」
お姉ちゃんは走り出す。
「だったら手を――」
「それとこれとは話が別!」
追いかけるように走りだすこなちゃんにつられ、私も走り出した。
その手を離さない為に。
* * *
走ったおかげか、学校に着いた時には、体全体がホカホカとあったまっていた。
かなりの体力と引き換えに。
かなりの体力と引き換えに。
「どうしたんですか、お二人とも息を切らして」
「はぁ……はぁ……お姉ちゃんが走るから……」
「一緒に走って来たんですか?」
「うん……あったまったけど、それ以上に疲れたよ……」
「はぁ……はぁ……お姉ちゃんが走るから……」
「一緒に走って来たんですか?」
「うん……あったまったけど、それ以上に疲れたよ……」
こなちゃんはカバンを机の横にかけると、机に突っ伏した。
「でも泉さんがこんなに疲れるなんてめずらしいですね」
「それはね……たぶん、私を引っ張ってたから」
「つかささんを、ですか?」
「うん、手を繋いでたから、自然とこなちゃんに引っ張ってもらう感じに……エヘ」
「なるほど、それで」
ゆきちゃんはクスっと笑ってから優しく微笑む。
「よかったですね」
「うん」
私もそれに応えるように微笑んだ。
「それはね……たぶん、私を引っ張ってたから」
「つかささんを、ですか?」
「うん、手を繋いでたから、自然とこなちゃんに引っ張ってもらう感じに……エヘ」
「なるほど、それで」
ゆきちゃんはクスっと笑ってから優しく微笑む。
「よかったですね」
「うん」
私もそれに応えるように微笑んだ。
「手を繋ぐという行為は、人間だけに与えられたもので、まだ人類が直立歩行に進化したくらいのころ手で
気持ちを通じ合わせていたそうですよ。『人間の手は人間のこころときわめて密接に連関していて、手は人
間の頭脳の触知しうる所産のみならず、触知しがたい思想までもかたちづくった』と人類学者のカッシング
は言ったそうです」
気持ちを通じ合わせていたそうですよ。『人間の手は人間のこころときわめて密接に連関していて、手は人
間の頭脳の触知しうる所産のみならず、触知しがたい思想までもかたちづくった』と人類学者のカッシング
は言ったそうです」
「なんだか難しいね……」
「えっと……、つまりですね、言葉では伝えにくい事や、伝わらない事でも、そうやって手を繋いだりする
ことによって、心が伝わるものなのではないかと、私は思いますよ」
ことによって、心が伝わるものなのではないかと、私は思いますよ」
「そういえば子供の頃とかお母さんと手を繋いでると安心したよね、それと同じようなもの?」
「そうですね。手を繋ぐというのは簡単そうに思いますが、手というのは体の中で一番感覚が鋭い部分なん
ですよ。だからこそ、一番気持ちが伝わる部分でもありますし、そこを相手に預けることによって相手にと
って心を開くのと同義なのかもしれませんね、それが安心に繋がるのではないでしょうか」
ですよ。だからこそ、一番気持ちが伝わる部分でもありますし、そこを相手に預けることによって相手にと
って心を開くのと同義なのかもしれませんね、それが安心に繋がるのではないでしょうか」
「ゆきちゃんすごいねぇ~」
「い、いえそれほどでは、医学の勉強の予備知識としてたまたま読んだ本に書いていただけですよ」
「手ってすごいんだね」
私は手のひらをまじまじをみる。なんの変哲も無い手に見えるけど……。
「でも手を繋ぐのは一人ではできないんですよ。掴んだり握ったりすることはできますけど、繋ぐっていう
のはお互いが相手の手を握るという行為を継続させた結果なんですよ。二人の気持ちがないと成立しないん
です」
のはお互いが相手の手を握るという行為を継続させた結果なんですよ。二人の気持ちがないと成立しないん
です」
ゆきちゃんはふふっと笑って言った。
「それに冬はカイロ代わりになりますからね」
「それに冬はカイロ代わりになりますからね」
「ゆきちゃんには何でもお見通しなんだね」
「あら、何の事でしょう?」
ゆきちゃんは手を頬に添えにっこりと微笑んだ。
ゆきちゃんは手を頬に添えにっこりと微笑んだ。
繋いだ手から私の気持ちが少しでも伝わっていればいい。
そう願わずにはいられなかった。
* * *
私も席につき、椅子を少し横に向け、後ろの席のこなちゃんの頭を見下ろす。
「こなちゃん、ありがとね」
「こなちゃん、ありがとね」
私の声にぬっと顔を上げたこなちゃんは
「え? 何が?」
不思議そうな顔をしていた。
「え? 何が?」
不思議そうな顔をしていた。
「いろいろ」
私は微笑んでみせた。
私は微笑んでみせた。
こなちゃんは益々わからないといった様子で首をかしげた。
こなちゃんにとっては、何気ない事だったのかもしれない。だけど私は、上手くいえないけど、心が温
かくなるような、そう、お母さんに手を繋いでもらったときのような穏やかで優しい気持ちになっていた。
かくなるような、そう、お母さんに手を繋いでもらったときのような穏やかで優しい気持ちになっていた。
昨日より今日、今日より明日。私はこなちゃんを好きなっていく。
前はそんな自分が怖かった。なのに今は、こんなにもあたたかい気持ちなのはなんでなんだろう?
私はこの気持ちを忘れないように、こなちゃんの温もりが残る手をぎゅっと握り締めた。
第五章「雪が溶けたら何になる?」に続く。
コメントフォーム
添付ファイル