柳茜、幸村カヤ、夢崎麻也、祠堂統、月宮香蓮は洋風庭園へとやってきた。
不気味な霧の中ではあるが、庭園の入口には赤や白の薔薇が鮮やかにアーチを彩っている。

「わぁ、綺麗な薔薇だね。妖精さんいるかな~?」
「うん居るといいね…さてと、僕は庭園内を探索して来るから、皆手入れの仕事がんばってね。」

まるで散策でもしているように、ゆったりとした足取りで薔薇のアーチを見上げながらくぐる麻也と香蓮だったが、香蓮は爽やかな笑みを浮かべ、一足先に庭園の奥のほうへと歩いていった。

「え?あ、はいっ!月宮さんも頑張ってくださいっ!」

一緒に依頼をこなすものと思っていたカヤは一瞬瞠目するが、軽く片手を挙げて見送った。
丁度そんなやり取りをしていると、背後から初老の男性が手押し車を押してやってきた。

「おーおー、若いもんが集まってくれて嬉しいねぇ。
わしが市倉だ。・・さっそくだが、時間がもったいねぇから説明するぞ?
まずは植木の下の雑草を抜いて、薔薇の根元の土を盛りなおし、あとは水遣りと枝の選定と、噴水の落ち葉とりだな、ざっとこんな感じだが・・わしはちょっこし噴水の水を止めてくるから作業をしててくれや。」

市倉は道具や仕事の説明をすると、一度水道管の方へと去っていった。

「・・・えーっと・・・、ちょっと想像より仕事量が多いんですけど。
これって他の場所より確実にハードじゃないですかね?」

思った以上の仕事量に思わず茜がぼやくと、統も小さく息を吐いた。

「まぁ、やるといった以上やるしかないだろ。
幸い月宮さんが一人で探索してくれてるし…」

「ほれほれ、ぼさっとしてねぇでさっさと仕事しろ~。日が暮れちまうぞ!」

最初は控えめだった(?)市倉だが、ぶんぶんとタオルをふって声を上げていた。
腰が痛い、というのはまるで嘘のような元気ぶりだ。

◆◇
そんなこんなで、皆が汗をかいてがんばっている中、香蓮は噴水を調べていた。

「ん?これは・・・」

噴水の水が止まった瞬間、石でできた噴水の先に光る玉のようなものを見つけた。
どうやらガラス細工のようだが、さらによく見ようと近づいたところにタオルで汗を拭きながら市倉が歩いてくる。

「おお、見つけたのか?綺麗だろう?
月が丁度この噴水の真上に昇ると反射して妖精の姿が映し出される様になってるんだ。
今日みてえな霧も、雲もない、しかも満月位のあかりじゃねぇと綺麗にでないからそう沢山の人がみられるわけじゃあねえんだけどな。
お陰で誰が言い出したかしらねぇが、妖精に会えば良い事がある、なんつー噂もあるみたいだな。」

「へえ、噂の妖精さんの正体はガラスの映写だったんですね・・・。
本物の妖精が見られなかったのは残念だけど、これはこれでロマンチックだね。」


依頼【庭園の手入れ】を達成!
噂【妖精の贈り物】を完成、真相を解明!


最終更新:2015年06月09日 01:58