月宮香蓮と東雲直は高等部の保健室へとやってきた。

「すみませーん、先生ーいますかー?」

部活動でたまにお世話になっていた保健室ということもあり、抵抗感なく薬品の香りが充満する室内へと足を踏み入れる直。

「へぇ、なんか懐かしい感じ。誰もいないみたいだけど、ハズレ、かな?」

学園出身ではないものの、勿論学生時代はあった香蓮がそのツンとした匂いに目を細めて。
市倉はおろか、保険医すらいない様子に軽く肩をすくめてみせた。

「そうですねー、…あれ、なんだろ?」

ふと室内をぐるり見渡した直は、薬品棚の扉の隙間から風呂敷がはみ出しているのを見つけた。

「あからさまに怪しい包みだよね、保険医さんのへそくりとか・・だったりして。」

白い室内に不似合いな紫の包みがひらりと覗くのを見ると、興味をとめられず二人は近づき手を伸ばそうと・・・

―ガラッ!

「誰だっ!!?」

その瞬間を見計らったかのように、勢いよく開いた扉と刹那に響いた男性の声。

「何をしてるっ!?」

二人が振り返るや否や、白衣の男性が血相を変えて薬品棚に駆け寄ると風呂敷を押し込み扉をぴしゃりと閉めた。

「…えっと、先生?すみません、何か大事なものでしたか?」
「…ああ、東雲か、久しぶりだな。…いや、気にするようなものじゃない。怒鳴ってすまなかったね。」

直の言葉に我に返った保険医は、薬品棚の前に立ったまま、取り繕ったような笑みで挨拶を返した。

「怪しすぎでしょう、先生?何か見られちゃまずい物でもしまってるんですか?
……あ、もしかして女装の写真とか~。」

「誰だ、お前は」という保険医の訝しげな視線も気にすることなく、香蓮はニッコリと微笑みながら、適当なことを言いながら首を傾げた。

「ぐ……そ、そうだ東雲、今日は七不思議を調べてるんだったな!」

「あ、そらした。」

「ちょ、月宮さんっ!………そうなんです!先生何か知ってますか?」

香蓮のあてずっぽうが、まさかの図星だったのか、口ごもった後視線を直へと移し会話を転向させる保険医。
直もこれ以上は可哀相だと思ったのか、香蓮の服をくいと引っ張って小声で止めたあと、とってつけたように言葉を続けて。

「長いこと保険医をやってるからな、色んな話は聞くが、、、まぁ大体お前らも知ってるだろうな。
最近だと、あかずの扉とかいう女子トイレの噂が有名だ。
それと気をつけろよ・・・・七つ目を知るとよくないことがある、とか知ってはいけないってよく言うが、アレはな、”知ることが出来ない”らしいんだ。なんでかは知らないがな。
過去に調べようと思った奴らは皆言うんだ、『七つ目が、思い出せない。』って。」

そうして二人の探索は謎を残したまま、高級栄養ドリンクを手土産に強制的に保険医に追い出される形となって終了した。

その後、保険医の秘密が隠れた噂になって流れたのは言うまでもない…


噂【あかずの扉】の情報を入手!
直、香蓮は【栄養ドリンク】(HP全快)をゲットした!
最終更新:2015年07月03日 12:35