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夢崎麻也はひとり、本の虫の前へとやってきた。
噂では誰もいない本の虫の前を通りかかると何かがあるらしいが、まだ中には何人かの学生が残っていた為、そのまま店内へと入ることにする。
「やっぱり店員さんに聞くのが一番だよね。…こんにちわぁ。」
迷わずカウンターに向かうと、マスターににっこり会釈をした麻也。
マスターもまた物静かに会釈を返した。
「すみません、七不思議の噂を調べてるんです。
本の虫に関する噂について何か知りませんか~?」
首をかしげながら緩やかな口調でたずねると、マスターは少し困ったようにカウンターの一番端の席を示した。そこには椅子一つ分のスペースが空いており、テーブルの上にはトレーに乗せられた水のピッチャーとグラスが置かれ、明らかにわざと誰も座れないようにされているようだった。
「わ、ちょっと予想外に本当っぽいね。えっと……詳しい話って聞けますか~?」
どうせガセだろうと思っていた麻也だったが、マスターの表情を見て少し控えめに話を伺うのだった………
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祠堂統は大学部の体育館へとやってきた。
既に練習が終わったバスケ愛好会の学生たちが、片付けやら清掃を行っているところだった。
「あの、西島さんっています?」
祠堂が近くに居た学生に声をかけると、ボール磨きをしている西島らしい青年に声をかけてくれた。
「…何?俺になんか用?」
「忙しいところすみません。
西島さん、七不思議を体験したって噂を聞いたんで、詳しく教えてもらえないかと思って。」
見知らぬ相手の訪問に訝しげに眉を潜める西島に、軽く会釈をして七不思議を調べていることを説明すると、西島はブルっと身震いをして少し青ざめた様子で視線を落とした。
「……なんか、ヤバそうすね…?」
「…ああ、本当は思い出すのもヤなんだけどな……」
そういいながらも、西島は重い口を開き自分が体験した恐怖をゆっくりと語るのだった。
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板垣勝猛は大学部の食堂へとやってきた。
この時間はあまり利用する学生も居ないようで、店内はガラリとしている。
食券販売機の傍には作業服の男性が居た。どうやら、券売機の修理を行っているようだ。
「おや、あれはもしかして…当りかもしれませんねぇ。」
顎元をさすり、口元を僅かに緩めながら呟くと、作業服の男性に近づいた。
大学部に通っている板垣は顔くらいは知っている為、近づけばその男性が市倉であることにすぐ気がついた。
「…ああ、やっぱり…こんにちは、市倉さん。お疲れ様です。」
「お?お疲れさん。なんだ?俺になんかようかい?」
わざわざ学生から声をかけられることも少ないので、少し驚いたように振り返る市倉に兼田からの届け物があることを伝えると、「ああ」と納得したように頷いた。
「すみません、皆で探してたもんで今は持ち合わせてないんですが。
まだしばらくここにいますかね?すぐ取ってきますよ。」
板垣は市倉が作業してる間に事務局に預かってもらっていた、兼田の届け物を受け取ってくるとそれを手渡すのだった。
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志島武生は高等部のカフェテリアへとやってきた。
見慣れた店内には今は客足が途絶えているようで、見慣れた小次郎の姿だけがあった。
「どうも、小次郎さん…、大学部の用務員さん、なんて来てないですよね?」
姿はないものの一応確認してみたが、やはり小次郎の返事に期待するものはなかった。
「二階の渡り廊下はあっちか……ここからじゃ見えねえな…」
真夜中の来訪者にある渡り廊下を確認しようとするが、店内からは丁度厨房側になっている為、死角になってしまい確認できなかった。
オープンテラスに出てみるも、やはり木々が邪魔になりほんの少し覗ける程度だ。
「ちっ、無駄足か…」
小さく舌打ちをしながら店内に戻ってくると、その様子を見かねてか小次郎がそっとカウンターにグラスを置いた。
「…?…え、サービスですか?……ありがとうございます。」
生姜の香りが利いたそれは、小次郎特製の自家製ジンジャーエール。
小次郎の優しさにほんの少し心が癒された武生だった。
噂【不運の指定席】を完成、真相を解明!
噂【16時の神隠し】を完成、真相を解明!
依頼【急がし用務員Ⅱ】を達成!
志島は特製ジンジャーエールでHPが50回復した!
最終更新:2015年07月01日 16:45