「誰かきてーっ!!痴漢よ!!」
向坂維胡琉と白神凪がプールへ着くと水着姿の女子部員達がザワザワと悲鳴やら怒声を上げながらプールサイドに集まっていた。
「きゃああああ!コイツよコイツ!!誰か捕まえてっ!!」
「アンタさっきそこの窓から覗いてた奴でしょっ!?」
凪の姿を見るや否や、一人の女子が悲鳴を上げながら指を指した。
一斉に針のむしろとなる凪の前に維胡琉が立つちはだかる。
「驚かせてごめんなさい、けど彼は痴漢じゃないよ。
私達痴漢が出たって聞いて駆けつけたのだけど…お話聞かせてもらえるしら?」
維胡琉の言葉を聞いて女子達が若干不安そうな視線は残るものの、凪を責めるようなことはなくなった。
「向坂先輩すまない…
そういうことだ、痴漢を見たヤツはいるか?」
やれやれ、と息を吐きながらつぶやいた後、凪がそう言葉をかけると一番気の強そうな女子が手を挙げて前に出てきた。
「更衣室の窓の外に黒い影が見えたのよ。
顔は見えなかったけど、黒髪の…そうね窓の高さからすると身長が170cm位ってところかしら。
私がカーテンを開いたらすごい勢いで走って逃げて行ったわ。」
と説明しながら、条件に当てはまってしまう凪を怪しむように目を細めながら眺めていた。
「……完全に疑ってやがるな…。」
凪は苦々しくぼそりと呟くが、室内プールから出ると更衣室の窓の外を調べ始める。
維胡琉は凪が外に回ったのを見れば、更衣室の中へと入り窓のカーテンを開けた。
「凪君、どう?……あら?」
維胡琉はカーテンを開き外を見るが、凪の姿は見えない…。
「…向坂先輩、ここです。」
窓を開き、背伸びをして覗き見るとようやく窓の下に凪の顔が確認できた。
どうやら、プールの方が高い位置に立てられているようで高低差から覗きが出来ない仕組みになっているようだs。
「それと、コイツ。確保しました。」
「…にゃーん。」
凪が持ち上げたのは愛らしい声で鳴く毛足の長い黒猫。猫はそのまま身軽に窓枠に上って見せた。
窓を閉めれば、すりガラス越しで見えるその姿は人間の頭に見えなくもない…どうやらその猫が痴漢?の犯人だったようだ。
「可愛い犯人…犯猫さんね。」
維胡琉はその正体に思わず小さく笑ってしまうのだった。
◆◇
「「「お騒がせしてすみませんでしたぁー!」」」
水泳部の女子たちは声をそろえて、二人に頭を下げた。
「…まぁ、過ぎたことだ。それよりも、このプールに纏わる七不思議の噂、知ってるヤツはいるか?」
凪は半ば呆れた様子で言った後、七不思議の話を聞きだそうと問いかけた。
部員たちはその言葉に一斉に恐怖の色を見せながらざわつき始める。
「……あの話なら水泳部全員知ってますよ…。
命は助かったけど、実際体験した子もいるし…だからそれ以来放課後、一人での練習は禁止になってるので。」
そういって、実際体験したという女子部員が言葉少なながらも恐怖の体験を物語るのだった……。
依頼【痴漢騒動?】を達成!
噂【妬みの手】を完成、真相を解明!
最終更新:2015年07月01日 16:45