藤八沙耶、六角屋灼、志島武生、向坂維胡琉の四人は大学部の事務局へ向かっていた。
エントランスに入ると、ふと武生が外と室内を見比べるように視線を移した。

「そういやこの霧、室内には入ってこないんだな…」

解放された扉ではあるが、扉の外で壁を作るように漂う紫の霧。
しかし室内でも魔素を感じないということは、目に見えないだけでその力の影響力は室内にも及んでいるのが身をもって分かるだろう。

事務局につくと、二人の事務員が机に向かっていた。
小柄で存在感が大分薄い女性、池田和子と若い女性の職員だ。
池田は貴方たちに気づくと、受付口に近づいてきた。

「…あの変な霧のこと何か分かりました?」
「ども…依頼人の池田さん?まだ大した情報は入ってないんすけど…」

灼が軽く頭を下げると、池田は頷き続いた言葉に小さくためいきをもらしながら頬に手を当て困ったわと呟いた。

「…何年か前の夏にも、紫の霧が和風庭園付近に発生してたらしいんですが、当時の記録などが残っていないんですか? 」
「あと、それから数年前の今頃に大学部か高等部の生徒が、”神風学園七不思議”を調べていた、というようなことはなかったでしょうか? 」

武生の質問に続き、藤八も片手を挙げて問うと僅かに首を傾けた。

「以前にも?…知らないわね。知ってたら貴方たちに依頼する必要がないでしょう?
…私は此処で一番長く勤めているけどそういったことは今までに聞いたことがないわ。
でも高等部のことならもしかして…稲葉さん…あなた高等部で七不思議を調べたことがあるって言ってなかったかしら?」

「え?…あ、はぁ…私が直接調べたというわけではないんですけど、私が高等部の二年の時。
…10年前ですかね…調べた人達はいたみたいですよ?
生徒会が中心になってたみたいですけど、今回の皆さんほど大掛かりではなかったですし、あの時は高等部だけのことみたいでした。
時計棟の噂とか桜の木の下の噂とかはその頃から有名でしたね。」

「10年前…私や揚羽が高等部に上がる前だね…そんなことがあったんだ。
…けど、ここではこれ以上詳しくは聞けないかな?他の場所にいってみようか…」

眉をかすかに寄せながら維胡琉が呟くようにそういうと、三人も頷き事務局を後にするのだった。
最終更新:2015年07月14日 15:45