「えっと、噂は…なんだっけ。開かずの扉があって、声が聞こえて、開けたら…。
開けたらどうなるかが分かんないままなんだよねぇ…?」
「は、はーちゃん、あんまり前に行かないでー…何かをすると声が聞こえるのかな?
トイレの怖いお話で定番だと、ノックとか、声を掛ける…とかな感じはする…けど。」
先陣をきってずいずいとトイレの中に入っていくハナの後ろで、「怖いー」と服を引っ張る練。
「えー、じゃあとりあえず叩いてみる??コレだけ大人数だし、なんか出てきたらブン殴ればなんとかなるって!たぶん!」
「えっと、揚羽さん?流石にソレは無理があるんじゃ…!」
パシンと拳を掌に打ち付ける揚羽の傍ら苦笑いを浮かべながらカヤが突っ込んだ。
「ある日の放課後…」
「水島さん?思い出したんですか?」
突然七恵が口を開き、隣に居たハナが問いかけると三人も自然とそちらに視線を向けた。
「…数人の女子生徒が連れ立ってトイレに向かったあと、一人だけ戻るのが遅れた子が居た。
トイレの外から呼ぶ友人の声に返事をしようとした時、耳元で別の声が聞こえる。
「こっちだよ」と呼ぶ声は友人とは違う、聞いたこともない女の子の声で―――」
七恵は淡々とまるで目の前で見ていたかのように噂の詳細を一部始終語った。
扉の向こうに何があるか、そこだけは空白のまま。
「…リ、リアルっすね…まるで経験者みたいな……」
カヤのその言葉になんとなく胸のざわついていた練が小さく唾を飲み込み、申し訳なさそうに口を開く。
「…私の杞憂かもしれないんですが…というか、もの凄く失礼しちゃうかもしれないんですが…
…あの…もしかして、水島さんって、、」
「私はただ普通に皆と触れ合いたかっただけなんですけど………ね。」
練の言葉を遮るようにそう言うと、どこか寂しげに眉を下げながら笑う七恵。
「…私は人ならざるもの……、私自身が『七不思議の怪異』。
でも…皆が私を知ってしまうと二度とこうして人に成ることが出来なくなってしまう。」
七恵はじっと自分の掌を見つめてから、貴方たちに向き直る。
「……だから、自分勝手でごめんなさい……忘れてね。」
七恵がそういうと、あたりが真っ白の光で包まれ…貴方たちは意識を失った。
シークレット【水島七恵の正体】を達成! 100P
最終更新:2015年07月15日 17:31