◆◇
天瀬麻衣、白神凪は大学部の図書館にやってきた。

「なんかあったら呼んで下さいよ、先輩。」
「ありがとう、白神もな。」

ここまで一緒だった白神凪は、地下閉架へと降りていく。
麻衣は軽く片手を挙げて凪を見送ると、七不思議に関する資料がないかと図書館を探索し始める。

「こういうのはホラーになるんやろか…けど、実際過去に起こってるなら依頼資料の方か…」

小さく呟きながら、怪奇現象の書籍や、過去の学園内での依頼資料などを片っ端から調べ始める。
すると、妙なことに気づく。
いくつか七不思議と思われる怪異の文章が見つかるも、どの書籍や資料も一部分が黒く塗りつぶされているのだ。

「七つ目…の部分?なんやろか……」

明らかに故意に行われたであろうその現象に麻衣は訝しげに首をかしげながらも、他の資料と違う内容が書かれているものはないかと探し続けた…。


一方、凪は地下閉架で同じように七不思議、そして紫の霧についての資料を探した。
勿論同じ図書館内でも閉架の方が学園内での事件や不可解な出来事についての資料が多く揃っているが、逆にこの膨大な資料を一人で探すのは一苦労だ。

「…知ることが出来ない…っつーのは、記憶が操作されるってことなのか…?」

過去の資料のページを次々めくり、とにかく時間の許す限り漁っていこうとする凪。
ふと、あるページで手が止まる。

「何だこれ…怪しすぎるだろ…。」

そう呟くと、他に似たものがないか探し始め、再び手を止めた。
麻衣と同じ一部分が黒く塗りつぶされている資料を見つけたのだ。
前後の内容を確認すると、七不思議らしい怪奇現象が起きたことには違いない。
また、紫の霧についてはどの資料からも見つけることが出来なかった。

「七つ目についてか、紫の霧についてか…どっちにしても”誰か”が知られたくない何かがあるってことだよな。」

凪はふぅと小さく呼気を落としながら、塗りつぶされたページをみつめていた。

◆◇
深海将己は直から受け取ったドリンクを飲み、体力が回復したがそのまま食堂に留まることにした。
そこに東二郎がトイレから戻ってくる。

「おや、君は…」
「どーも。あんたに話を聞こうと思って待ってたんだ。」

淡々とした様子でいう深海に二郎は若干ビクビクした様子で、近くの椅子に腰を下ろす。

「な、なんだい?僕はちゃんと僕のルートで調べていたよ?決してサボっていたわけでは…」
「だからだよ。奇怪現象研究会とかやってんなら、なんか知ってんだろ?
紫の霧のこととか。」

それを聞くと、二郎はほっとしたように胸を撫で下ろし自信たっぷりに笑みを浮かべた。

「そりゃあ勿論だよ!
七不思議を調べると、霧が発生するということは事前調査済さ。
けど、僕の情報ではこんなに広範囲に広がるというのはなかったし、魔力を封じるなんてことも知らなかったね。」

どうだい、と言わんばかりの自身ありげな表情で胸を張っていたが、既知の情報に深海ははぁと大きくため息を漏らし、にっこりと明らかに威圧的な笑みを浮かべた。

「奇怪現象研究会を名乗るならもう少しマシな情報を探して来い」
「ひぃぃぃ。承知いたしましたぁ!」

怒鳴るわけでもないが、ただその一言でびしっと両手両足をそろえて背筋を伸ばしながら立ち上がった二郎はそのまま180度向き直り、食堂から逃げるように出て行った。

「ったく……―おばちゃん、七不思議の噂とか今出てる霧のこととか…なんか知らないすかね?」

二郎の様子に呆れた深海は立ち上がり、食堂のカウンターへと向かった。
七不思議の情報を聞き込みつつ、から揚げ定食を参加人数分、もちろん二郎のツケにして購入し他のメンバーの帰りを待つことにしたのだった。


シークレット【消された文字】を達成!
最終更新:2015年07月19日 16:24