8月18日、午後21時10分。

「ぴえぇぇ!なに、なに!?なんなのっ!?」

カサカサと動く何かに、慌てふためく行成ハナ。
だが、彼女はふと自分の特殊技を思い出した。
カレイドスコープにより、この部屋を暗視したのだ。
すると、何かの拷問部屋と思わせるような道具がたくさんおかれているこの部屋の中に、床を這いまわる上半身だけの人間らしきものが蠢いていた。

「ふぇぇ……!見なきゃよかったよぅ~!」

半泣きしながら、急いで扉へ向かい部屋を出るハナ。
すると、上半身は追って来ないようで、一先ず安心といったところか。
どこかわからない、謎の通路を歩いていくハナ。
一本道だが、かなり長い。
はたしてこんな建物があの近くにあっただろうかと疑わしいくらい、果てが見えないくらい先へ続いている通路。
歩いても歩いても、先が見えない。
いや、先はずっと通路が続いているのだ。

「無限るーぷ……?お目目さんっ!」

ハナが奥義サードアイズを発動しようとすると、彼女の顔に息がかかる。

ぼぼっぼぼぼぼぼっぼ。

「~~~!?」

泣きながら全速力で前へと走るハナ。
今後ろに、背後に誰かいた。
しかも、ほぼ密着する形で。

ぼぼぼ……。

謎の音も小さくなっていくのを確認し、後ろを振り返る。
すると、何もいなかった。
安堵をしながらサードアイズを今度こそ発動して、辺りを見渡す。
すると壁だった場所の一部が、階段になっていた。
そこを上がり、上へ上へと進んでいくハナ。

ぼぼぼ……。

下ではまだ、ハナを探しているのか、あの音が小さくだが聞こえる。
そして、今度は上がっても上がっても終わりが見えない。
今度はサードアイズにも何も感知することができないため、普通に長い螺旋階段と思っていいのだろうか。
その時だった。
電話が鳴る音にビクついたハナだったが、それが藤八沙耶だと気が付くと電話に出た。

『ハナさん、無事でしたか?』
「沙耶先輩~!えへへ、無事ですよ!」
『それは何よりですね!こちらで色々調べたので、報告しておきます。隣に、練さんと祠堂くんもいるので、後で代わりますね』

沙耶達が調べた内容は、下記の通り。

『・この時計塔が設立されたのは、大陸歴1525年とかなり古い。
 ・その反面、教会は1900年と、かなり後から教会が建てられたらしい。
……それと、鈴鳴様というものを祀っていたようですね。それについては、まだ調べていませんが……。あ、祠堂くんに代わりますね』

『俺が調べたのは二点。
  • 1500年代~1800年代までは、この周辺で子供が失踪することが多かった。
  • 1800年代後半、変態性癖を持つ殺人鬼の男が小さい子をさらって地下の拷問部屋で殺していた。
……ちなみに、その殺人鬼はその後拷問部屋での行為がばれて処刑されたらしい。そのせいで慰霊碑的な意味で教会が建てられたそうだぜ。
後、俺の連絡先も教えとく。ここにいる他の奴には既に伝えたから、後は行成だな』

連絡先を祠堂統と交換した後、最後の福良練へと電話は代わった。

『ふぇぇん、はーちゃん無事でよかったよぅ……』
「ねりちゃん!心配かけてごめんね~っ!」
『もー、今度あったらぎゅっとするからっ……!』
「あ、わたしもわたしも!そういえばねー」

雑談が始まると、練の電話口の背後から咳払いが聞こえる。
練は慌てて要件を説明し始めた。

『えっとね、色々調べたかったんだけど、私が調べることができたのは次の事だけ。
  • 鈴鳴様は子供が大好きな神様で、大和の五大伸の一つとも言われている。
五大神だってはーちゃん……!フェルゼちゃんも、五大神は知らないみたい』
「あ、だから男の子とか、昔も子供が神隠しにあうことが多かったn……あーっ!!」
『ど、どうしたの?はーちゃ』
「男の子だよ~!男の子!探さなきゃ!ごめんねねりちゃん、沙耶先輩に祠堂くんもっ!また落ち着いたら電話するねっ!」

そういって電話を切り、急いで螺旋階段を駆け上がるハナ。
やがて外の闇が見えてきて、終点が近いと察する。

ぼぼぼぼぼぼっぼぼぼぼっぼ。

再び、例の音も大きくなってくる。
びくっとはしたが、今は一気に駆け上がり、外に出たい。
そのため、振り返らずに時計塔の屋上へとあがった。

「わぁ……」

既に22時近い時計塔の最上階からの景色は綺麗なものだった。
粥満の都市が一望できるのだ。
ここら辺は暗いが、他の……中央広場辺りは、街灯のネオンが綺麗に光っている。
あの音も聞こえなくなっていた。
安心しきっていたハナは、まず男の子の姿を確認する。
ここには、残念ながら姿はなかった。
急いで時計塔の中へと戻ろうとした時、一羽の鳥がやってくる。

「あれ、カラスさん?こんな時間にどうしたの?」

そもそも鳥はその一羽だけで、ただ黒いからカラスと思ったが、どうも普通の鳥とは違う。
むしろ、魔力を持ったカラスなのは、サードアイズで一目瞭然だ。
鳥はピィと鳴くと、その場に足で掴んでいたエリクシルをハナの目の前に置いた。

「あれっ、これいいの?ありがとうカラスさん!」

目的を果たしたカラス?は、そのまま飛び去って行った。
ハナはエリクシルをお守り代わりに持つと、休憩終わりっと呟き、再度時計塔の内部へと戻って行った。

☆☆☆
8月18日、午後22時。
甚目寺禅次郎は一人、粥満の中央通りで人に声をかけたりして話を聞いていた。
しかし、時計塔や教会の噂で、これと言った有力な情報は得られなかった。
その時、沙耶からメールが来る。
ハナと無事コンタクトが取れた事、そしてハナに伝えた内容を禅次郎にも伝えてくれたのだ。

「五大神……司ちゃんが言ってた内容だと、粥満は女性、か。……もしかして、鈴鳴様と関係がある……?」

メールを見ながら、そう呟く。
そして、次にどう行動をするべきか、彼は考え始めたのだった。

☆☆☆
ハナ…HP500/MP110/OP31/状態:普通
最終更新:2015年09月03日 05:40