イベントチャット日程

第一回:終了
第二回:終了
第三回:終了
第四回:12月26日22時(3時間予定/第一回~四回のうち一つのみ参加可能)

※全て参加人数は4名制限となります。

イベントコンテンツ


ストーリー概要&報酬


※このイベントのPC時間は、12月26日となります(BBSとの兼ね合いもあるため)


エピローグ


神崎信は、既に体組織が停止した体を、何とか裏ワザで動かしてラウム神殿の下層へと降りてきていた。
ベレトの姿をした、水鏡流星と共に。

「…ふう、間一髪我々も逃げ切れたのはいいが、これからどうするか。
零にも組織にも見限られては、劣化コピー能力が持ち続けてる間にできることと言えば…」

支えてくれる水鏡に手を触れ、呟きを始める。
それは、一つの人格をきちんと与えるように。
急ごしらえのコピー品ではなく、きちんとした水鏡流星の人格を。

「最後の最後に、お前に後事を託して逝こう。柄でもならんが、どうかこれから起こるアドラメレクの撃破の助けになってやってくれ」
「そうはいかん」

水鏡流星の体が揺れる。
そして、そのまま神崎に被さるように倒れ動かなくなった。
彼の死体の先に見えるのは、3人の貴族。
東十常一、姫神百合、そして土御門伍代の3人。

「随分と念には念をいれるな?それほどまでに怖いか」
「貴様を止めることができなかったのは腸が煮えくり返る想いだが、まあそれはこの際どうでもいい。選定の儀。アドラメレク殿によるそれの邪魔は、決してさせん」

そういう東十常の隣には、龍志狼が立っていた。
神崎は納得と諦めが混ざったように笑う。
神崎の行動は全て、龍により貴族派に筒抜けだったのだ。
そして、元から神崎は龍を信用していなかったため、直接作戦内容は伝えていない。
つまり零から、龍へと「今回の神崎のたくらみ」が話されたに違いない。
そう、ランツィラーにも伝えていなかった、ハミルトンの発動を阻止するために動いていた事も。

「…馬鹿め。ハミルトンが発動すれば、お前達もただでは済まんぞ」
「そのために、我が家系は代々悪魔と契約をしているのだ。一度滅んだ世界の上に立つ存在としてな。
アドラメレク殿が滅びを繰り返す毎に、東十常家は人の上に立つべく立ち上がるのだ」
「安心して逝きなさい、神崎。貴方の後釜は、私達が手配してあげましょう。そして、反貴族派というくだらない集まりは霧散するのです」

東十常の後に、姫神が語る。
唯一、3大貴族で土御門家の当主である伍代だけは、目を閉じて思案していそうな表情だった。

「どこまでも罪深い奴らだ。自分のためならば、人も、この国さえも犠牲になってもいいということか。それでも人間か?」
「無論、どこまでも私達が人間だ。ここまで孤独に事を成してきた、異能を持つ化け物には理解できんだろうがな」
「だったら、私は化け物でいいさ」
「東十常さん!」

龍が叫ぶと、すぐに東十常は反応する。
閃剣と呼ばれる剣術で神崎の左腕を切り落とした。
ベレトの玉を持つ左腕。
『契約が完了していた』神崎は、左腕だけ彼らに気付かれぬように、空間転移で移動させサブコンピュータを起動させたのだ。

「もう遅い。既に『サブコンピュータ(スペアのハルフェ)の起動が完了した』。…もう27日か。すぐにでもアドラメレクの最終試練が始まるだろう。
残念だったな、上層のメインコンピューターを破壊したから、もう起動しないとでも思ったか?
下層のサブコンピューターの存在を、私が知らないとでも思っていたか?」

嘲笑する笑みで甘いんだよ、という最後の言葉。
それが発っされる事は無く、首が斬り落とされて神崎信という男は死ぬことになる。
誰にも知らず行われる小規模の破壊ではなく、止める可能性が僅かにある全てを巻き込んだ全世界の滅び。
神崎という男は何もしない前者よりも、後者を選んだ。
既に取り返しがつかない事態になってしまった事に、憤る東十常と姫神だったが、土御門だけがおかしそうに含む笑いを押し殺していた。

全ての終わりが、今始まろうとしていた――。


最終回その後…


「どうしてさ!水鏡くんの転移があるなら、まだ生きてるかもしれないでしょ!」
「だから何度も言ってんだろ!それだったらもうここに転移してきてるだろうがってな!」
「あんた出雲の神子なんでしょ?何とかならないの!?」
「なるわけねーだろ!そんな力はねーよ!」

玖珂ベルルムと言い合う柳茜。
一方でそれを見つめる白神凪と深海将己。

「神崎は既に魔導使いの一撃で絶命して、それをなんのコピーかは知らんが、劣化コピーの能力で一時的に生きながらえていただけであろう?」
「ええ、既に生きてはいないでしょう。行くのはおやめなさい」

東十常一、そして姫神百合という三大貴族であり、2人の宮廷魔術師と対面し、居心地悪そうにする凪と将己。

「だが、ラウムはそうは言っていない。もっとも、あいつはわからん、としか言ってないけどな」
「お前さん、そいつは…」

風見が、凪のいう事に困ったように呟いた。
生きてる生きてないかではなく、あくまで二人は客観的な事実を言っている。

「行くだけ無駄です。拾った命、粗末にするものではありませんよ」

姫神がそういうと、飛行船は発進を始めた。
大和へと帰還するために――。


第三回その後…


「麻衣、気がついた?」
「シュウ…?ここは…どこ?」
「飛行船の中らしい」

天瀬麻衣が目を覚ますと、介抱してくれた牧本シュウの顔が目に入った。
軍服を着ており、飛鳥の軍人として出向している。
その隣には先に目を覚ました、鬼ヶ原空が立っている。

もう大丈夫、というように微笑むシュウの顔を見て、もう少し眠る事にした麻衣。
空も欠伸をしつつ、白銀汽水による治療を受けていた。
その近くには、既に治療を先に終えた桐石登也、藤八沙耶、そして小此木剛毅が大きな態度で椅子に座っていた。

「で?結局魔導使いは逃したってわけか」
「はい、皆さんで全力を尽くしたのですが」
「…まだ、今の俺の力だと届かなかったみたいです」

悔しそうに事情を報告する登也と沙耶に、小此木はふうん、とだけ。
そして、登也を見て笑った。

「だったらその魔導使いとやりあえるってワケだ。久しぶりに面白くなりそうじゃねェか」
「一筋縄では行きそうにないと思いますけど…」
「どの道倒さねェと大和が滅ぶかもしれねェんだろ?だったらやる事は一つだ。ま、神殿内に入れねェから外の魔物で遊ぶくらいしかできねェがな?」

小此木は立ち上がると、シュウを見下すように見てから鼻で笑い、飛行船から降りて行った。
確かに小此木だけでなく、他のハンターや飛鳥の軍人、出雲の協力者もかなり心強い戦力ではあるが、シュウには魔導使いの強さがよくわかっている。
過去に、契と言う風の魔導使いを近くで見ていたからだ。
そして、彼やランツィラーが所属する組織には、まだまだ化け物のような手練れが多い。
僅かな不安に駆られながらも、今やるべき事をするべく、彼も小此木に続き船から降りて外の魔物と交戦を始めた――。


第二回その後…


「そっか、他の所の救援にも、結界によって阻まれてる感じなんだ?」
「そーなの。はるちんは役にたたないしさー!」
「ま、そういう『システム』ってことやな。とにかく、少し休んどき?」
「でも…やっぱり神崎は許せないわ。彼だって、もっと分かりあえたはずよ」

飛行船に戻った烏月揚羽と向坂維胡琉は、親友であり同じハンターの紫堂陽人に事の顛末を話していた。
そして二人とかつて同じ学園で学んでいた同期、飛鳥の軍人であり今回の作戦に極秘裏に参加している日向ヒュウガの四人。

「でもな、維胡琉ちゃん。オレにはそれが幸せだったように思えるわ。相容れない奴は絶対に相容れない。それは飛鳥留学の時に分かってた事やろ?」

揚羽と維胡琉は、飛鳥留学1期であった面々を思い返す。
特に契、久遠、キナの3人とは、ヒュウガの言う垣根を越えての関わりと親しみを持ったのは事実だ。
しかし…。

「シリトは結局ダメ、やろ?それと一緒だとオレは思う」
「ですが、失敗作ではないと思います」
「俺もそう思う」

彼の言葉に、日野守桜と志島武生が異議を唱えた。
彼ら、失敗作と呼ばれている3人。
水鏡流星、松原エレナはもちろん、もう一人の包帯の男だって使命をもって動いていたのだ。

「まあ、とにかく今は切り替えていこう!もしかしたらこの先、神崎先生のいる所まで行けるようになるかもしれないんだしさ!」

一時期ではあるが、教え子だった陽人が皆を鼓舞する。
だが、包帯の男だけではない。
完全に悪魔ベレトに操られていると思しき水鏡流星。
その存在が、皆の頭にチラついて離れなかった――。


第一回その後…


四人は、東雲直と祠堂統が尸黄泉、槐志度を担いで飛行船へと戻った。

「救護の準備はできています!こちらへ!」

蒼特区ギルド長、白銀汽水が貴方達四人を連れて飛行船の奥へと向かう。
簡易的な医療設備しかないが、それでも医学を学んでいた白銀にかかればなんてことはなかった。

「白銀ギルド長、そんなこともできたんですね…」
「ええ。これも皆さんの援護のためにとかじった程度でしたが、お役に立てて何よりです」
「そういう『キャラ』なんだよそいつは。叩けばポロポロ設定が出てくるぞ。例えば死んだ生き別れの姉がいるとかよ」

黄泉と志度を心配そうに見つつも、『できる人物』である白銀を見て驚きを見せる直。
からかうように佐治宗一郎が横やりをいれてくるが、それに対して白銀は驚いた顔で彼を見た。

「え!?なんで僕の姉が元葵ギルド長だってご存じで…!?」
「出てくるんですか!」
「しかもそこまで言ってねえだろ!」

まさかの事実に、つい幸村カヤも突っ込んでしまった。
同じように佐治も反応したが、疲れたようにため息をつき。

「まあいい、てめぇらはさっさと戻りな。他の奴が待ってんだろ?」
「そうしたいのは山々なんだけど…」
「結界みたいのが張られていて、先へ進めないんですっ…!佐治長先生何とかできませんかっ?」

結界か、と祠堂統と福良練の話を聞いた佐治だったが、すぐにお手上げになった。

「どうせ入口みたいに、選ばれた者しか入れねぇんだろ。
なんなら白銀、てめぇ行ってみろや。まだ入れるかどうか試してねぇだろ?」
「いえ、僕は…」
「竜や悪魔と関係ねぇのは知ってっけど、ものの試しっつーかな」
「厳しいと思いますよ?竜はエクスハティオから力を授かったくらいですし、悪魔と言っても土御門の遠い遠戚程度なので…」

また出てきた新事実に、佐治はもう驚かずスルーを決め込んだ。
そして、半ば冗談の対応と白銀も気づいたようで、彼は黄泉と志度の治療に専念した――。


オープニング

<1>
葵、北西部山岳地帯。
その山奥にある研究所の遥か地下に、巨大な研究室の中に一隻の飛行船が置かれていた。
飛行船エリュシオン。
都市部ならともかく、ラウム山脈上空の航空権は出雲が制しているため、出雲の政府には秘密裏による一回きりのフライト。

「飛行船、エリュシオン発進!」

出雲の高名な研究者の協力を得て、この飛行船の所有者である土御門伍代の合図の下、大和で初めての制作となる飛行船は飛び上る。
途中、暴風雪の結界により危うく墜落するところだったが、雪竜グレイシアの助力により無事にラウム山脈山頂にあるラウム神殿までやってきた。
神殿近くにある広い雪原へと着陸し、様々なハンター達が大地に足を踏みしめた。

「まずは第一関門クリア、と言った所かな。ここから先は、神崎信だけでなく魔導使いや悪魔憑きとの戦闘も予想される。
少々準備があるため、私は遅れての参戦となるが、それまで君達で何とか突破してもらいたい」

伍代の隣には、東十条一、姫神百合といった三大貴族の宮廷魔術師がそろい踏みだった。
それだけではなく、東雲直の先輩の安土優や、烏月揚羽の友人である紫堂陽人といったベテランハンターだけでなく、小此木剛毅、城ヶ崎憲明、佐治宗一郎と言ったAクラスハンターやギルド長も待機している。
表立てはしないが、出雲の神子の一人である玖珂ベルルムや、飛鳥の軍人達も幾人か密命を受けて協力していた。
しかし、このラウム神殿の中に入れるのは極僅か。
城ヶ崎や伍代は入れたが、それ以外の上記で挙げた他のハンターはもちろん、悪魔に殺されかけた佐治もラウム神殿の入り口の結界により、選別され入れなかった。
もちろん、各国の協力者は言うまでもない。

「ふむ~、これは困りましたねぇ~。私は万が一を考えて、伍代君の護衛も兼ねるため、皆さんと共にはいけませんし~」
「城ヶ崎はともかく、一度悪魔に殺されかけた佐治や俺まで入れねェとはな…。ったく…こんな事なら来るんじゃなかったぜ」

発言はしなかったが、姫神や東十常も最初から動こうとはしなかった。
おそらく城ヶ崎と伍代以外で、入れるのは貴方達を除けば彼らだけになるだろう。

「仕方がない。先程も言ったように、君達だけで何とか突破してもらおう。なに、ハンターランクは低くても、悪魔や竜と戦った経験がある君達なら、ここにいる者達と並ぶかそれ以上に戦えるはずさ」
「おう、俺様達はここで飛行船を魔物にぶっ壊されないように見張っててやっから、とっとと行ってこいや!」
「では、これより気象制御装置の停止作戦を開始する!」

場を東十常一が纏め上げ、貴方達はその号令と共にラウム神殿へと入って行った。


「来たか」

神崎信は、巨大な機械の前に立っていた。
その機械のモニターには、今神殿内に入ったハンター達だけではなく、各地の大和の映像が切り替わって見えていた。
そう、大和全土を掌握する衛星モニター。
古代人のオーバーテクノロジーであるそれは、神崎の傍らに控える魔導使い、ランツィラーによって起動させられたのだ。

「この場所に辿り着くには、3方向に別れた道の先にある装置を起動しなくてはならない。…その場所の守りは?」
「失敗作とスラムの奴らを。中央の守りは誰もいない」
「ならば、俺が行こう。もう一人でも、その装置の制御はできるだろうしな」

そうだな、とランツィラーの言葉に相槌を打つ神崎。
彼はモニター越しに大和の映像を眺めている。
それを見たランツィラーが、僅かに視線を厳しくさせた。

「神崎。まさかとは思うが」
「…安心しろ。やるべきことはやる。組織のためにな」
「…ならばいい。その後は、大和を滅ぼすなり自分が支配者として君臨するなり、貴様の好きにしろ。俺が関与するのは、そこまでだからな」
「ああ、そうさせてもらおう。世界は中立でなくてはならない」
「そうだ」

踵を返し、ランツィラーは歩き出す。
持ち場へと向かうために。ハンターを迎撃するために。

『もっとも、貴様が組織のために動いているなど、最初から思ってはいないがな』

二人は同じ言葉を、お互い聞こえないように呟いた――。
最終更新:2015年12月27日 16:44