最終階層・終わりと始まりの地


貴方達はエストレアの鏡により、最終階層である終わりと始まりの地の映像を見せられていた。
そこには漆黒の巨大な魔竜と、その背後にある繭の形をした巨大な機械装置が見える。
その2つ以外、何もない宇宙空間。
それが、最終階層の終わりと始まりの地であった。

「アドラメレク!」
「…となると、後ろの機械はハミルトンか」

そして、一度戦った者なら気づくだろう。
最後の始祖の悪魔、サルモンの姿がそこには無いという事に。

「…兄者」
「ああ…。まったく母者も厄介な奴を残して逝っちまったな」

皆から遥か後方、エストレアの視界に入らない位置から鏡を見ている二体の悪魔は、その映像を見てそうつぶやいたのだった。

創生竜アドラメレク撃破


―改めて、ご苦労だった。アドラメレクを滅した事により、奴はこの空間とハミルトンの維持に使っていた力を、ハミルトンと共に別の次元へと移る事に成功したようだ。もう、お前達がすることは何もない。後1週間程で完全にこの異次元空間は消滅し、お前達は元いた場所へと戻るだろう―

「これで終わったんだね」
「サルモンの野郎の姿が見えねぇが…」

―我も結界の再構築を行った。サルモンがこの拠点に攻めいることは無い。安心して、最後の時までここで過ごすがいい―

「本当にそれでよいのか?」
「…え?」
「おいロノ爺、俺達悪魔は消えるからって難癖は辞めといた方がいいと思うぞ?俺は麻衣や空たんとかのために尽力できたし悔いはない。…いややっぱり最後にハグしてちゅーして×××して○○○くらいはいいよね!?」
「自重しろ兄者」
「フォフォフォ、難癖か。本当にそうだといいのじゃがな?」

その言葉に、一同は黙る。
そして沈黙を破ったのはラウムだった。

「クソジジイ、テメェが言いたい事はわかるぜ。どうせハミルトンも破壊しろって言いてぇんだろ?
でも無理なもんは無理だろ。昨日、茜達が親父殿と戦った場所は、4竜が揃ってこそ行けた場所だ。ここよりかなり別次元にあるそんな場所、さすがの俺でも行けねぇよ」
「たった5体の悪魔の中でのみ、最強を気取っている悪魔にはそうじゃろうて」
「アァ!?喧嘩売ってんのかジジイ!」

ブチギレたラウムを、フェルゼとベレトが止める。
笑っているロノウィに、訝し気に伍代が尋ねた。

「次のハミルトンは、アドラメレクの話によればおよそ1千年後。ハミルトンのあるエリアに行ける方法がないならば、それはその時代の者達に託すしかないのでは?それとも、お前なら何か方法を知っていると?」
「そんなもんは知らん。それにもし知っていても、教えるはずがないじゃろうが。ワシは敵対するつもりはもうないが、味方になってもおらんのだからな」
「だったら話を混ぜっ返さないでくれないか?お主のそういう所が、私は昔から嫌いなのだロノウィ」
「フォフォフォ!フェルゼらしいのう。まあせいぜい残りの1週間、別れを堪能するとよいわ」

ロノウィは、そういって水鏡流星や神崎信、織ヒカルを見た。
彼らだけではない、ここにいる尸黄泉はまたギルドの牢屋へ。派手な男や椿ヒメ、臥龍ヒアデス達はそれぞれの国へ。
またフェルゼやベレト、ウバルやラウムといった悪魔達とも今生の別れになるのだ。
あえて煽るような言い方をしつつ、ロノウィは消えた。
既に、今の世界は救われたのだ。
なのに今まで口出しをしなかったロノウィが、ここに来て絡んできた事に、疑念を抱く者はいるだろう――。

エリュシオン発進!


貴方達を乗せ、エリュシオンは拠点ごと飛び立った。
訓練所や休憩所とつながったまま、このエリア一帯を飛ばしている。

「見たかァ!!これぞ出雲の技術力よォ!!」
「半分以上は俺達悪魔の力だけどな」
「兄者、エストレアの力が半分以上だ。俺達は2割程度と謙虚にふるまっておかないと、こちらを睨みつけているぞ」

そう、ファニーやクレイだけでなく、フェルゼ、ラウム、ウバルと言った悪魔達。
エストレアの力や、エリュシオンにターボエンジンを6層の松原研究所にいってわざわざ強化した臥龍ヒアデスと双星ポルックス、玖珂ベルルムの力のたまものと言えるだろう。
全体を一度見た後、艦長である土御門伍代は全員へと告げる。

「これより、”規定ポイント”へと到達する。皆、準備はしておくように」
「えっ?ハミルトンの座標が分かったんですか?」
「いや、それはまだだね。ただ…悪魔組の報告が正しければ、そろそろ”向こうから座標を報せに来てくれる”はずさ」

その時、エリュシオンが大きく揺れる。
何者かの攻撃を受けたようだ。

「伍代さん!甲板に現れたようです!」

レーダーを見ていたポルックスは、伍代へと慌てて伝える。
一度頷いた後、伍代は貴方達を見た。

「総員、戦闘準備!まずは前哨戦として、始祖の悪魔サルモンを撃破する!」
最終更新:2016年03月17日 22:28