黝(あおぐろ)い夜に染まる新国立競技場…
二人の両雄が冷たい風が吹く中、二つの息吹が聞こえる。
そう…柳生月心斎と大神右兵衛は壮絶なる『組手』を行っているのだ。
二人の両雄が冷たい風が吹く中、二つの息吹が聞こえる。
そう…柳生月心斎と大神右兵衛は壮絶なる『組手』を行っているのだ。
「ケェ―――ッ!!!」
右兵衛は猿叫を競技場内を轟かせながら、剛の拳骨を繰り出す。
矢継ぎ早に繰り出される剛拳に対し…
矢継ぎ早に繰り出される剛拳に対し…
ピシッ!シュッ!!リュッ!!!
流水の如く『防御』によって“受け”“捌き”“いなした”。
続けざまに構え…こう言ったのだ!
続けざまに構え…こう言ったのだ!
「キィキィうるせェなッ!!」
心 月 流 … 『月之抄』
参 之 型 『神妙拳』ッ !!
「~ッ!?」
『ドズン!』と軽量な月心斎に似つかわしい重い(ヘビーな)
中段正拳突きが右兵衛の溝を捉え動きを止めた。
しかし、攻撃はまだ終わらない再び次の攻撃へと繋げる。
中段正拳突きが右兵衛の溝を捉え動きを止めた。
しかし、攻撃はまだ終わらない再び次の攻撃へと繋げる。
心 月 流 … 『月之抄』
四 之 型 『華車』ッ !!
月心斎は廻った!回転エルボーである!!
円運動による“回旋力”は“攻撃力”を倍増させる。
回旋力で倍増させた肘鉄を同じく溝に叩きこんだ。
円運動による“回旋力”は“攻撃力”を倍増させる。
回旋力で倍増させた肘鉄を同じく溝に叩きこんだ。
「胴~~~ッッッ!?」
そのまま右兵衛は、二つの衝撃をまともに受け数メートル吹き飛ばされたのだ。
しかし、すぐに右兵衛は起き上がった。そして、嗤いながらこう言ったのだ。
しかし、すぐに右兵衛は起き上がった。そして、嗤いながらこう言ったのだ。
「“あっぱれ!”…と張本勲のように言いたいところだが『痛かったぜ』。」
「おっ…タフネス。」
「やはり体術では貴様が上…これは認めよう。
しかし“戦闘”とは弱者が強者に勝つための理論だ。」
しかし“戦闘”とは弱者が強者に勝つための理論だ。」
「孫子気取りはやめときな。おめぇは“積み”だぜ。」
「カカカ!十蔵よ気づかんのか?この『躯の山』を。」
「あん…?」
そう、競技場内のあちらこちらに月心斎の攻撃により死んだ
ブラッククロスの武装兵(とマスク・ド・サンキスト"夜光怪人(ミステリーマン)")の死体が多くあった。
ブラッククロスの武装兵(とマスク・ド・サンキスト"夜光怪人(ミステリーマン)")の死体が多くあった。
「これをだなァ…」
そう言いながら、右兵衛は少し助走をつけながら…
「こ"う"す"る"の"よ"ッ"!!!」
ド ム ン !!!
死体(マスク・ド・サンキスト"夜光怪人(ミステリーマン)")を蹴り上げ
サッカーボールのように月心斎めがけて飛んで来る。
死体いえども、その質量は重く当たればダメージは必須である。
サッカーボールのように月心斎めがけて飛んで来る。
死体いえども、その質量は重く当たればダメージは必須である。
「ッ!?」
寸前のところで躱すが…
「オレ~♪オレオレオレ~♪♪WE ARE THE CHAMP♪♪♪WE ARE THE CHAMP♪♪♪」
狂喜の表情と歌を交えながら、次々と死体を蹴り飛ばす!
肉の塊は四方八方とあらゆる方向から飛んでくる!!
肉の塊は四方八方とあらゆる方向から飛んでくる!!
「カカカ!躯の織り成す『肉塊流星群』よ!!」
これぞ…ッ!Jリーグ流千本シュート殺法である!!!
一方、柳生月心斎はやれやれといった表情でこう呟いた。
一方、柳生月心斎はやれやれといった表情でこう呟いた。
「文字通りの“死体蹴り”かよ。“大神右兵衛”にしかできねぇ発想だな。」
「“環境利用闘法”と言ってもらいたいね。こいつらはその為に用意した“モノ”よ。」
そう…右兵衛は元々サンキスト達に“信頼”など置いていなかった。
彼らは月心斎によって破れ、肉塊になるのを算段し初めから“モノ”として呼ばれているにすぎなかったのだ。
彼らは月心斎によって破れ、肉塊になるのを算段し初めから“モノ”として呼ばれているにすぎなかったのだ。
「そういう『常人』では出来ない発想は嫌いじゃないがね。」
(こ、このジジイ…!)
笑っている。
月心斎は笑っていたのだ。
それは“大神右兵衛への感謝”である。やり方は外道…外道の極まりである。
しかし、それと同時に“クリエイティブな発想”であると月心斎は感じ取ったのだ。
それは“『工夫』である『創造性』である『芸術』である”と思ったのだ。
月心斎は笑っていたのだ。
それは“大神右兵衛への感謝”である。やり方は外道…外道の極まりである。
しかし、それと同時に“クリエイティブな発想”であると月心斎は感じ取ったのだ。
それは“『工夫』である『創造性』である『芸術』である”と思ったのだ。
(お・も・て・な・し…おもてなし。)
心の中で一世紀前に流行った『おもてなし』ポーズ(合掌)を取りながら月心斎はこう右兵衛向けて言った!
「だったら俺もおめェさんを楽しませてやらなきゃなァ!」
「ぬゥ?!」
「 赤 胴 鈴 之 進 ! お 前 の 技 を 借 り る ぜ !! 」
赤
胴
真
空
切
り
ッ
! !
胴
真
空
切
り
ッ
! !
繰り出したるはッ!「剣を持っては日本一だ」がキャッチフレーズの
赤胴流武術の継承者“赤胴鈴之進”が“最終奥義”『 赤 胴 真 空 切 り 』である!
刀剣のように鋭利に研ぎ澄ませた爪と、薙ぎ払いの要領で振う高速手刀によって生み出される
『真空刃』で 10cm先の狙いを切り裂く技である!!
赤胴流武術の継承者“赤胴鈴之進”が“最終奥義”『 赤 胴 真 空 切 り 』である!
刀剣のように鋭利に研ぎ澄ませた爪と、薙ぎ払いの要領で振う高速手刀によって生み出される
『真空刃』で 10cm先の狙いを切り裂く技である!!
よって…!
『肉塊流星群』(数十の躯)は全て切り落とされるに至ったのであるッ!!
辺りは空気の刃により切り刻まれ、鮮血の華が惨たらしくも美しく咲き誇った。
辺りは空気の刃により切り刻まれ、鮮血の華が惨たらしくも美しく咲き誇った。
(鈴之進…勝手に技をパクってすまねぇな。)
そう月心斎は心の中で呟いた。
「 病 院 坂 の 首 縊 り ラ リ ア ッ ト !! 」
ド ギ ャ ッ ! ! ! ! ! !
その時である、月心斎の首元に強烈なラリアートが叩きこまれたのである!
「ガフ…ッ!?」
月心斎の口元から鮮血が飛び散る。
「まさか『赤胴真空切り』で迎撃するとは思わなかったぜ。
…とはいえオリジナルよりは威力に欠けるがね。」
…とはいえオリジナルよりは威力に欠けるがね。」
そう言いながらも、右兵衛の体はところどころ紅く染まっていた。
右兵衛の体は、赤胴真空切りにより幾多にも切り刻まれていたのだ。
右兵衛の体は、赤胴真空切りにより幾多にも切り刻まれていたのだ。
(頭を防御し…真空の刃に自ら飛び込み間合いを詰めやがったか…)
イカレていなければ出来ない特攻作戦だ。
月心斎は僅かな意識の中で分析し、右兵衛もそれに解説(答える)かのように言った。
月心斎は僅かな意識の中で分析し、右兵衛もそれに解説(答える)かのように言った。
「こうでもしねぇと間合いを詰められんからな。イチかバチかの作戦が大成功だったわい。」
『肉塊流星群』は攻撃というよりも目くらましの役割だったのだ。
どのような方法で回避するにせよ、一瞬の隙が出来る。そのチャンスを見事にものにしたのだ。
どのような方法で回避するにせよ、一瞬の隙が出来る。そのチャンスを見事にものにしたのだ。
「こんな空手着を着ているが『これも一つの騙し(ギミック)』。
打撃系の挌闘家と思い込ませるって寸法よ!色々とやってみるもんだな!!」
打撃系の挌闘家と思い込ませるって寸法よ!色々とやってみるもんだな!!」
間髪入れずに、右兵衛は足払いで蹴倒し月心斎の足を持った。
そして、ジャイアントスイングのように回し…
そして、ジャイアントスイングのように回し…
「室伏広治だぜ!カカカッ!五輪が行われた場所にふさわしかろう!!」
『 ち り や ァ ――― ! 』
上空へと放り投げたのである!
「俺のスタイルは“地下プロレス”だ。昔はブラックゴールドと暴れ回ったもんだぜ。」
『 金 メ ダ ル と い こ う か ね ぇ ! 』
続けざまに右兵衛は頭突き!頭突きを浴びせる!
頭突きを浴びせながら上空へと跳ね上げ続けるのである!!
頭突きを浴びせながら上空へと跳ね上げ続けるのである!!
『 喰 ら い な … ! そ し て 、さ ら ば だ !! 』
ス"
ケ"
キ"
ヨ"
・
リ"
ベ"
ン"
ジ"
ャ"
ー"
ッ"
ッ"
ッ"
!!!
ケ"
キ"
ヨ"
・
リ"
ベ"
ン"
ジ"
ャ"
ー"
ッ"
ッ"
ッ"
!!!
右兵衛は上空へと舞い、軽量の月心斎を難なく四肢と体を固め極めた。
月心斎の頭は地面に対し垂直である。このままでは、脳天が地面に激突し死は免れない。
絶体絶命のピンチ!しかし、月心斎には“鮮明なる意識”があった。
絶体絶命のピンチ!しかし、月心斎には“鮮明なる意識”があった。
「技の極めが甘いぜ。」
「 ! ? 」
その瞬間、スルリと“ウナギ”如く抜け出ると…
『空中で正対』したのである。
『空中で正対』したのである。
「終わりだ小僧ッ!」
心 月 流 ・ 極 の 型 …
『 火 乱 坊 』ッ !!
「 じ 、 十 蔵 ――― ッ ッ ッ !!!??? 」
連打!連打である!!無数の拳骨の嵐が体に叩き込まれる!!!
心 月 流 ・ 極 の 型 …
『 金 比 羅 坊 』ッ !!
お次は蹴り(空中でのストンピング)の嵐である!まさしく千足!!
まさしく鳳凰脚!!足技(ストンピング)の嵐を顔面に叩き込まれ続け…ッ!!!
まさしく鳳凰脚!!足技(ストンピング)の嵐を顔面に叩き込まれ続け…ッ!!!
ド ギ ャ ッ と地面に右兵衛は全身を打ち付けたのであった…
後ろに即座に引き、残心を構え解く。
そして暫しの静寂の後、地面で胡坐を組みながら月心斎は
ボコボコに顔が腫れ、手足があらぬ方向に曲がった右兵衛を見て静かに言った。
そして暫しの静寂の後、地面で胡坐を組みながら月心斎は
ボコボコに顔が腫れ、手足があらぬ方向に曲がった右兵衛を見て静かに言った。
「空軍長官が空中戦で負けるわけにはいかねェからな。」
「そ、そう…だったな…き、貴様は…空軍だったな。」
「なんだ…まだ生きてんのかよ。タフだな。」
「カ、カカ…俺の負けだぜ。やっぱりアンタにゃ敵わねぇな。」
「“敢闘賞”といったところかね。」
一瞬の間があった。それは、敵同士とはいえ互いの健闘を称えあう惜しみない時間であった。
「さてと、ワシはそろそろ帰るかよん。いい“喧嘩”だったねん。」
柳生月心斎は“いつも”のおどけた口調に戻っていた。それは戦闘終了の合図でもあった。
そんな姿を見て、右兵衛は柳生月心斎に向けて言った。
冷たい夜風が二人に吹きつけ、暫くして右兵衛は口を開いた。
そんな姿を見て、右兵衛は柳生月心斎に向けて言った。
冷たい夜風が二人に吹きつけ、暫くして右兵衛は口を開いた。
「…とどめを刺さなくていいのかい?日本防衛軍としてそれでいいのかよ。」
「なァーに言っとるか。」
そう言うなり、即座に心月流の“合掌構え”を取った。
「隠れてないで出てくるといいよん。」
暗闇の中から“双つ”の人影がぬるりと現れた。
それは…『小柄』で『完熟』なオーレンジであった。
それは…『小柄』で『完熟』なオーレンジであった。
「「キ"ィ"ィ"ィ"ス"キ"ス"キ"ス"サ"ン"キ"ス"ト"」」
熟れた声で双子は嗤う。双つの完熟オーレンジである。
金のオーレンジな覆面を付けるはマスク・ド・サンキスト“小梅”
銀のオーレンジな覆面を付けるはマスク・ド・サンキスト“小竹”
カポエラと日本古武術の合わせ技(ミックスジュース)な老練なサンキスト姉妹である。
小柄で熟しきっている(年老いて)おるものの、只ならぬオーラを出していた。
※先程のマスク・ド・サンキスト"夜光怪人(ミステリーマン)"との戦闘力の差は地球と冥王星の距離並ッ!!
金のオーレンジな覆面を付けるはマスク・ド・サンキスト“小梅”
銀のオーレンジな覆面を付けるはマスク・ド・サンキスト“小竹”
カポエラと日本古武術の合わせ技(ミックスジュース)な老練なサンキスト姉妹である。
小柄で熟しきっている(年老いて)おるものの、只ならぬオーラを出していた。
※先程のマスク・ド・サンキスト"夜光怪人(ミステリーマン)"との戦闘力の差は地球と冥王星の距離並ッ!!
「キィストキスト…!流石は柳生月心斎!なぁ“小竹”さんや。」
「オーレンジ(全くじゃて)“小梅”さんや。これまでのこの勝負…」
「「名勝負100番!100番!ですじゃッ!!」」
“小梅”と“小竹”は仲良くハモりながら月心斎を指差した。
柳生月心斎は眉を動かし、双子のオーレンジを見て構えを変える。
柳生月心斎は眉を動かし、双子のオーレンジを見て構えを変える。
「心月流…」
そう言って技を繰り出そうとした時である。
「待ちなしゃれッ!」
…と“小梅”は叫び。
「オーレンジにこの勝負『これまで』ですじゃッ!」
…と“小竹”は叫び。再び双子のオーレンジはハモる。
「「さ"も"な"く"ば"こ"の"街"一"帯"が"オ"レ"ン"ジ"ケ"ー"キ"(焦"土")に"な"る"ぞ"い"!!」」
「「上をみィ!月心斎ッ!!」」
…と天空を指差す“小梅”と“小竹”に促され見上げると。
漆黒に染まったブラッククロスの戦闘機数機が飛び回っていた。
漆黒に染まったブラッククロスの戦闘機数機が飛び回っていた。
「ちっ…このワシがしてやられたよん。」
月心斎は構えを解き、頭を少しかいていた。
その間、双子のオーレンジに解放されながら右兵衛は笑いながらこう言った。
その間、双子のオーレンジに解放されながら右兵衛は笑いながらこう言った。
「カカカ…今回は俺の負けだぜ。何としてでも勝ちたかったんだがなァ…」
「ワシに勝とうだなんて100万年早いよん。」
「ふん…まぁこの場をもって陸軍長官を辞職する。道雪に伝えておいてくれや。」
「いいよん。」
「 ま た … 一" か" ら" や" り" 直" し" だ" な" 。 」
その言葉を最後に3つの影は闇に消えた。
それと同時に夜空を舞う戦闘機もどこかへ去っていく。
そして、一人取り残された月心斎は静かに呟く。
それと同時に夜空を舞う戦闘機もどこかへ去っていく。
そして、一人取り残された月心斎は静かに呟く。
「あいつ…焦ってねェな。ホント“根気強い”からやっかいだよねん。」
新国立競技場に吹きすさぶ冷風と共に日の出が見えた。今日は12月31日の大晦日である。