一方その頃(時間経過)その4
地球軍
タフト大統領の紹介
地球政府 大統領官邸。
官邸内を元気良く走るエノラは、
大統領の姿を見る。
大統領の姿を見る。
エノラ・タフト/
おじいちゃん!
おじいちゃん!
エノラ・タフト/
大統領就任、2周年おめでとう。
大統領就任、2周年おめでとう。
ジョージ・タフト地球大統領/
ありがとう。
エノラも飛び級での大学卒業、
おめでとう。
ありがとう。
エノラも飛び級での大学卒業、
おめでとう。
エノラ・タフト/
ありがとう。
これ、お母さんから。
ありがとう。
これ、お母さんから。
ジョージ・タフト地球大統領/
すまないな。
フィオも、遊びにくればいいのに。
すまないな。
フィオも、遊びにくればいいのに。
エノラ・タフト/
お母さんは、あんまりおじいちゃんと
話したことないから…。
お母さんは、あんまりおじいちゃんと
話したことないから…。
ジョージ・タフト地球大統領/
話したことがないなら、
話し始めればいいんだよ…。
まだ、私を許してはくれんらしい。
話したことがないなら、
話し始めればいいんだよ…。
まだ、私を許してはくれんらしい。
エノラ・タフト/
ううん。
お母さんは、おじいちゃんが宇宙人と
停戦したことは怒ってないわ。
ううん。
お母さんは、おじいちゃんが宇宙人と
停戦したことは怒ってないわ。
エノラ・タフト/
お父さんの復讐をしても、
何も解決しないって言っていたから。
お父さんの復讐をしても、
何も解決しないって言っていたから。
ジョージ・タフト地球大統領/
…そうか。
…そうか。
補佐官が、
大統領のそばによって口を開いた。
大統領のそばによって口を開いた。
ベーカー補佐官/
大統領、お時間です。
そろそろいかれませんと。
大統領、お時間です。
そろそろいかれませんと。
ジョージ・タフト地球大統領/
おお、そうか、残念だ。
エノラ、すまないが。
おお、そうか、残念だ。
エノラ、すまないが。
エノラ・タフト/
お留守番でしょ。
いいわよ。
お留守番でしょ。
いいわよ。
ジョージ・タフト地球大統領/
すぐ戻ってくる。
…不思議だな、お前は息子にそっくりだ。
すぐ戻ってくる。
…不思議だな、お前は息子にそっくりだ。
エノラ・タフト/
親子だから、似ていて当然よ。
親子だから、似ていて当然よ。
ジョージ・タフト地球大統領/
…そうか、そうだな。
では行ってくる。
…そうか、そうだな。
では行ってくる。
エノラ・タフト/
お仕事、がんばってね。
お仕事、がんばってね。
タフト大統領の社会的事情
地球政府 大統領官邸 会議室。
大統領が着席すると、場が静まった。
ゆっくり口を開く。
ゆっくり口を開く。
ジョージ・タフト大統領/
それではスタッフの諸君。
今我々の懸案である火星問題について
話そうではないか。
それではスタッフの諸君。
今我々の懸案である火星問題について
話そうではないか。
ジョージ・タフト大統領/
…ベーカー補佐官。
…ベーカー補佐官。
コリンズ財務長官/
ただでさえ戦後復興が遅れているというのに…。
ただでさえ戦後復興が遅れているというのに…。
オナー分析官/
とはいえ、盟主である地球でしか、
この事態に対処出来る所はあるまい。
とはいえ、盟主である地球でしか、
この事態に対処出来る所はあるまい。
ジョージ・タフト大統領/
静かにしたまえ、諸君。
…ベーカー君、続けたまえ。
静かにしたまえ、諸君。
…ベーカー君、続けたまえ。
ベーカー補佐官/
はい。
すでに反乱は反乱軍と呼べる規模になりつつあります。
はい。
すでに反乱は反乱軍と呼べる規模になりつつあります。
ベーカー補佐官/
汎銀河大戦終戦にともなって市場に流れた
大量の武器を買いあさって武装しています。
汎銀河大戦終戦にともなって市場に流れた
大量の武器を買いあさって武装しています。
コリンズ財務長官/
緊縮財政にあえぐタイタン政府あたりが放出した
大気圏軍の装備でしょうな。
緊縮財政にあえぐタイタン政府あたりが放出した
大気圏軍の装備でしょうな。
ベーカー補佐官/
確かに、火星の弱体なコーストガードでは
対処不能と思われます。
早急な対応を。
確かに、火星の弱体なコーストガードでは
対処不能と思われます。
早急な対応を。
コリンズ財務長官/
まて。
まて。
ジョージ・タフト大統領/
コリンズ財務長官。
コリンズ財務長官。
コリンズ財務長官/
そろそろ中間選挙だ。
市民はそぞろ孤立主義にもどりつつあるし、
この不景気だ。
そろそろ中間選挙だ。
市民はそぞろ孤立主義にもどりつつあるし、
この不景気だ。
コリンズ財務長官/
税金の使い道に関してもうるさくなっている。
オナー分析官の意見がききたい。
税金の使い道に関してもうるさくなっている。
オナー分析官の意見がききたい。
オナー分析官/
何もしないのが上策だね。
火星の政権がかわっても、
宇宙人とまた戦うことでもない限り、影響はない。
何もしないのが上策だね。
火星の政権がかわっても、
宇宙人とまた戦うことでもない限り、影響はない。
オナー分析官/
そんなことは、従軍者が多いんだ。
すぐわかる。
そんなことは、従軍者が多いんだ。
すぐわかる。
ベーカー補佐官/
どうなさいますか、大統領。
どうなさいますか、大統領。
ジョージ・タフト大統領/
周辺国は?
周辺国は?
ベーカー補佐官/
光国は重大な懸念を持つと、
大使を通じて連絡してきました。
光国は重大な懸念を持つと、
大使を通じて連絡してきました。
ベーカー補佐官/
必要であれば、友邦国のために
艦隊を送る用意があると。
必要であれば、友邦国のために
艦隊を送る用意があると。
ベーカー補佐官/
ネーバルウィッチは何も、
声明は出しておりません。
ネーバルウィッチは何も、
声明は出しておりません。
オナー分析官/
光国は友邦国の立場よりも、
太陽系を従属させたいようですな。
光国は友邦国の立場よりも、
太陽系を従属させたいようですな。
ジョージ・タフト大統領/
真に対等な国家間の関係などないよ。
真に対等な国家間の関係などないよ。
ジョージ・タフト大統領/
…ベーカー君、地球人は?
火星に在住する地球人の被害は?
…ベーカー君、地球人は?
火星に在住する地球人の被害は?
ベーカー補佐官/
数名のビジネスマンが
反乱軍を名乗る者に誘拐されています。
数名のビジネスマンが
反乱軍を名乗る者に誘拐されています。
ベーカー補佐官/
身代金の要求もでています。
おそらく反乱軍とは無関係でしょう。
もっとも事件自体、事件の性質上、極秘ですが。
身代金の要求もでています。
おそらく反乱軍とは無関係でしょう。
もっとも事件自体、事件の性質上、極秘ですが。
ジョージ・タフト大統領/
それを公表するか。
それを口実に出兵する。
それを公表するか。
それを口実に出兵する。
コリンズ財務長官/
それなら選挙にも勝てます。
いい手ですな。
それなら選挙にも勝てます。
いい手ですな。
コリンズ財務長官/
金を使うのを嫌がる国民も、
殴られれば殴り返すことに躊躇はないでしょう。
金を使うのを嫌がる国民も、
殴られれば殴り返すことに躊躇はないでしょう。
ジョージ・タフト大統領/
誘拐されている者には悪いが、
その線で火星の内乱に介入することにしよう。
誘拐されている者には悪いが、
その線で火星の内乱に介入することにしよう。
ベーカー補佐官/
わかりました。
わかりました。
ジョージ・タフト大統領/
ホン・サン将軍をあとで呼んでくれ。
ホン・サン将軍をあとで呼んでくれ。
ベーカー補佐官/
はい。
はい。
タフト大統領の個人的事情
地球政府 大統領官邸。
エノラ・タフト/
お帰りなさい、おじいちゃん。
お帰りなさい、おじいちゃん。
ジョージ・タフト大統領/
ああ、ただいま、エノラ。
ああ、ただいま、エノラ。
エノラ・タフト/
その人は?
その人は?
ホン・サン/
ははは。
あなたのおじいちゃんの部下の
ホン・サンです。
ははは。
あなたのおじいちゃんの部下の
ホン・サンです。
ジョージ・タフト大統領/
将軍で私の親友だよ。
同期だった。
将軍で私の親友だよ。
同期だった。
ホン・サン/
そう言うと、私まで年寄りに聞こえるな。
そう言うと、私まで年寄りに聞こえるな。
ジョージ・タフト大統領/
実際そうだろうが。
実際そうだろうが。
エノラ・タフト/
仲がいいのね、二人とも。
仲がいいのね、二人とも。
ホン・サン/
いやいや、…ははは。
いや、お嬢さんには、勝てませんな。
その通りです。
いやいや、…ははは。
いや、お嬢さんには、勝てませんな。
その通りです。
エノラ・タフト/
歓迎するわ、ホン・サン将軍。
歓迎するわ、ホン・サン将軍。
ホン・サン/
ありがとうエノラ・タフト。
お話はたくさん伺ってます。
ありがとうエノラ・タフト。
お話はたくさん伺ってます。
エノラ・タフト/
いえいえ。
そう言えば、おじいちゃん。
アステルから聞いたんだけど。
いえいえ。
そう言えば、おじいちゃん。
アステルから聞いたんだけど。
エノラ・タフト/
火星に軍隊を送るの…?
火星に軍隊を送るの…?
ジョージ・タフト大統領/
…ああ、送ることになるよ。
…折角の平和だ。
地球だけというのは、もったいない。
…ああ、送ることになるよ。
…折角の平和だ。
地球だけというのは、もったいない。
エノラ・タフト/
平和のために戦争を起こすの?
平和のために戦争を起こすの?
ホン・サン/
お嬢さん、戦争を起こすんじゃない。
今起きてることを治めるんだ。
お嬢さん、戦争を起こすんじゃない。
今起きてることを治めるんだ。
ホン・サン/
軍人だって戦争は望んでいない。
負けた責任を取らされるのが軍人だとすれば、
なおさらな。
軍人だって戦争は望んでいない。
負けた責任を取らされるのが軍人だとすれば、
なおさらな。
エノラ・タフト/
…でも勝てると思っていたら?
その論法なら、勝てるなら軍人は
戦争するんじゃないの?
…でも勝てると思っていたら?
その論法なら、勝てるなら軍人は
戦争するんじゃないの?
ホン・サン/
ははは、頭のいい子だ。
確かにそうだな。
ははは、頭のいい子だ。
確かにそうだな。
ホン・サン/
だが、考えてみてくれ。
たとえ勝っても、戦争には被害は必ず出る。
だが、考えてみてくれ。
たとえ勝っても、戦争には被害は必ず出る。
ホン・サン/
私の部下も死ぬな。
私も死ぬかもしれん。
死にたくはない、誰でもな。
私の部下も死ぬな。
私も死ぬかもしれん。
死にたくはない、誰でもな。
ホン・サン/
それでも戦わなければならんのは、
それ相応の理由がある。
それでも戦わなければならんのは、
それ相応の理由がある。
ジョージ・タフト大統領/
……エノラ、そろそろホンを許して
やっておくれ。
……エノラ、そろそろホンを許して
やっておくれ。
ジョージ・タフト大統領/
おじいちゃんたちは、
夕食までに会議せねばならん。
おじいちゃんたちは、
夕食までに会議せねばならん。
エノラ・タフト/
…ごめんなさい、おじいちゃん。
…ごめんなさい、おじいちゃん。
ジョージ・タフト大統領/
いや…、お前が戦争を嫌うのはわかる。
お前からお父さんを奪ったのは戦争だ。
いや…、お前が戦争を嫌うのはわかる。
お前からお父さんを奪ったのは戦争だ。
ジョージ・タフト大統領/
…だが、平和はね、
我々だけの独占物ではない。
出来るなら、全部に平和を、だよ。
…だが、平和はね、
我々だけの独占物ではない。
出来るなら、全部に平和を、だよ。
ホン・サン/
そして、自立だ。
そして、自立だ。
ホン・サン/
前の戦争で味方だった光国も、
太陽系がごたごたするようなら
どう出るかわからん。
前の戦争で味方だった光国も、
太陽系がごたごたするようなら
どう出るかわからん。
ホン・サン/
太陽系の自立を守るためにも
火星の反乱を鎮圧せねばなりません。
太陽系の自立を守るためにも
火星の反乱を鎮圧せねばなりません。
エノラ・タフト/
ソフィーはそういう宇宙人じゃないわ、
将軍。
ソフィーはそういう宇宙人じゃないわ、
将軍。
ホン・サン/
一人だけなら。
だが、集団というものは恐ろしいものです。
一人だけなら。
だが、集団というものは恐ろしいものです。
タフト大統領の退陣
地球政府 大統領官邸前。
大統領就任式などをおこなう庭に、
タフトは立っている。
彼を映す報道カメラの列。
タフトは立っている。
彼を映す報道カメラの列。
ジョージ・タフト地球大統領/
皆さんに発表があります。
皆さんに発表があります。
ジョージ・タフト地球大統領/
本日をもって、私、ジョージ・タフトは
地球大統領及び、太陽系連合議長の職を
辞職します。
本日をもって、私、ジョージ・タフトは
地球大統領及び、太陽系連合議長の職を
辞職します。
一斉にどよめき、フラッシュがたかれた。
報道陣/
大統領退陣ですか。
大統領退陣ですか。
報道陣/
それは、火星問題の責任をとると
いうことですか?
それは、火星問題の責任をとると
いうことですか?
ジョージ・タフト地球大統領/
そう思ってもらってもかまいません。
…民主主義の根幹は、最も多くの
支持される者が政権を担うということです。
そう思ってもらってもかまいません。
…民主主義の根幹は、最も多くの
支持される者が政権を担うということです。
ジョージ・タフト地球大統領/
私は、今もっとも多くの支持を得ているという
自信を失いました。
私は、今もっとも多くの支持を得ているという
自信を失いました。
報道陣/
今後は、地球と太陽系は、
どうなるのでしょうか。
今後は、地球と太陽系は、
どうなるのでしょうか。
ジョージ・タフト地球大統領/
今後の後任は規定に従い、
副大統領のワトソン君が就任することになります。
今後の後任は規定に従い、
副大統領のワトソン君が就任することになります。
報道陣/
大統領が退陣することで、
より強硬派が勢力を伸ばすと思われますが?
大統領が退陣することで、
より強硬派が勢力を伸ばすと思われますが?
報道陣/
たとえば火星にさらなる軍を送り、
完全に占領するなどの選択があると思われますが。
たとえば火星にさらなる軍を送り、
完全に占領するなどの選択があると思われますが。
ジョージ・タフト地球大統領/
それが市民の選択なら、仕方がありません。
ただ、一市民として言えば、
私はこれ以上の事態の悪化を望んでいません。
それが市民の選択なら、仕方がありません。
ただ、一市民として言えば、
私はこれ以上の事態の悪化を望んでいません。
報道陣/
元々出兵を決めたのは、
大統領ではありませんか。
元々出兵を決めたのは、
大統領ではありませんか。
ジョージ・タフト地球大統領/
戦争を激化させるために、
軍を送ったわけではないと言いたいのです。
戦争を激化させるために、
軍を送ったわけではないと言いたいのです。
火星行きを決めるタフト
地球政府 大統領官邸。
祖父と孫娘が、
向き合ってリンゴをむいている。
向き合ってリンゴをむいている。
エノラ・タフト/
え? 火星?
え? 火星?
ジョージ・タフト地球大統領/
ああ、火星に行くことにしたよ。
私が留守中は、ちゃんとフィオの
言うことを聞くんだよ。
ああ、火星に行くことにしたよ。
私が留守中は、ちゃんとフィオの
言うことを聞くんだよ。
エノラ・タフト/
大丈夫なの?
危なくないの?
大丈夫なの?
危なくないの?
ジョージ・タフト地球大統領/
多少は危ないさ。
多少は危ないさ。
ジョージ・タフト地球大統領/
とはいえ、戦争を終らせるために、
兵士のために、現地政府のために、
私が行くことに意味はある。
とはいえ、戦争を終らせるために、
兵士のために、現地政府のために、
私が行くことに意味はある。
エノラ・タフト/
誘拐されたり、しないでね。
誘拐されたり、しないでね。
ジョージ・タフト地球大統領/
ははは。
その前に暗殺されるだろうさ。
ははは。
その前に暗殺されるだろうさ。
ジョージ・タフト地球大統領/
それよりエノラ、お前は可愛らしいのだから、
お前こそ、変な男にさらわれたりせんようにな。
それよりエノラ、お前は可愛らしいのだから、
お前こそ、変な男にさらわれたりせんようにな。
エノラ・タフト/
私をかわいいと言うのは、
おじいちゃんだけよ。
私をかわいいと言うのは、
おじいちゃんだけよ。
エノラ・タフト/
クラスの奴は私のこと、
みーんなかわいくないって言うの。
クラスの奴は私のこと、
みーんなかわいくないって言うの。
ジョージ・タフト地球大統領/
ははは。
エノラ、その歳頃の男の子は、
みんなそう言うものだよ。
ははは。
エノラ、その歳頃の男の子は、
みんなそう言うものだよ。
エノラ・タフト/
大学の研究室だから、
私より8つは上のはずだけど。
大学の研究室だから、
私より8つは上のはずだけど。
ジョージ・タフト地球大統領/
んん…?
それはいかんな。
んん…?
それはいかんな。
エノラ・タフト/
いいわよ。
頭が第4ボタンより、
ずいぶん下にありそうな奴ばっかりだから。
いいわよ。
頭が第4ボタンより、
ずいぶん下にありそうな奴ばっかりだから。
エノラ・タフト/
あんな奴等、こっちこそ願い下げ。
あんな奴等、こっちこそ願い下げ。
ジョージ・タフト地球大統領/
これは早く火星にいって戻ってこんと
いかんな。
これは早く火星にいって戻ってこんと
いかんな。
エノラ・タフト/
何、心配してるのよ。
何、心配してるのよ。
誘拐の話を聞くタフト
地球政府 大統領官邸。
ベーカー補佐官/
大統領。
大統領。
ジョージ・タフト地球大統領/
おお、ベーカー補佐官。
そちらに孫が、遊びにいってないかね。
探しているんだが。
おお、ベーカー補佐官。
そちらに孫が、遊びにいってないかね。
探しているんだが。
ベーカー補佐官/
残念ですが、エノラ・タフトは火星反乱軍に
誘拐されたようです。
残念ですが、エノラ・タフトは火星反乱軍に
誘拐されたようです。
ベーカー補佐官/
要人の家族を狙うのは…、
要人の家族を狙うのは…、
ジョージ・タフト地球大統領/
なん…だと?
SPはどうした!
なん…だと?
SPはどうした!
ベーカー補佐官/
全員死んでいました。
お孫さんの学校の中にも、
火星出身者などがいたようですな…。
全員死んでいました。
お孫さんの学校の中にも、
火星出身者などがいたようですな…。
ジョージ・タフト地球大統領/
………。
………。
ベーカー補佐官/
お気の毒です。
今すぐ非公式のチャンネルで
接触を図りましょう。
お気の毒です。
今すぐ非公式のチャンネルで
接触を図りましょう。
ベーカー補佐官/
なんとか大気圏内で犯人たちの逮捕が
出来るといいのですが。
なんとか大気圏内で犯人たちの逮捕が
出来るといいのですが。
タフトの停戦
地球政府 大統領官邸前。
大統領就任式などをおこなう庭に、
タフトは立っている。
彼を映す報道カメラの列。
タフトは立っている。
彼を映す報道カメラの列。
ジョージ・タフト地球大統領/
皆さんに重大な発表があります。
皆さんに重大な発表があります。
ジョージ・タフト地球大統領/
本日、火星に派遣している
太陽系総軍火星鎮定軍全軍を停戦、
撤退させることで、同国政府と同意しました。
本日、火星に派遣している
太陽系総軍火星鎮定軍全軍を停戦、
撤退させることで、同国政府と同意しました。
報道陣/
大統領、それは火星からの撤退という
ことですか。
事実上の敗北では?
大統領、それは火星からの撤退という
ことですか。
事実上の敗北では?
ジョージ・タフト地球大統領/
コスト的に見て、もっとも有効な選択肢を
選んだということです。
コスト的に見て、もっとも有効な選択肢を
選んだということです。
ジョージ・タフト地球大統領/
これ以上、地球市民である兵士が傷つくことを
政府は望んでいません。
今後は、外交の場で封じ込めることになります。
これ以上、地球市民である兵士が傷つくことを
政府は望んでいません。
今後は、外交の場で封じ込めることになります。
報道陣/
問題はそもそも、終戦後の火星放置、
つまり、火星を忘れたからだという説が
ありますが、それについては?
問題はそもそも、終戦後の火星放置、
つまり、火星を忘れたからだという説が
ありますが、それについては?
ジョージ・タフト地球大統領/
火星を忘れたことは一度もありません。
ただ、戦時と違って火星を特別扱いすることは
出来なくなったというだけです。
火星を忘れたことは一度もありません。
ただ、戦時と違って火星を特別扱いすることは
出来なくなったというだけです。
報道陣/
反乱軍が火星を掌握し、
外光を求めた場合はどうされますか?
反乱軍が火星を掌握し、
外光を求めた場合はどうされますか?
ジョージ・タフト地球大統領/
それが正当な手続きを経た民主的な
政権であれば、外交チャンネルは常に
開かれているでしょう。
それが正当な手続きを経た民主的な
政権であれば、外交チャンネルは常に
開かれているでしょう。
報道陣/
停戦ということでしょうか。
停戦ということでしょうか。
ジョージ・タフト地球大統領/
最初からそう言っていたと思いますが。
最初からそう言っていたと思いますが。
タフト暗殺
都市船ユートピア。
ハカマダ/
はい! ハカマダです。
はい! ハカマダです。
ハカマダ/
火星の首都ユートピアからお伝えしています。
火星の首都ユートピアからお伝えしています。
ハカマダ/
そろそろですねー。
あ、姿が見えました。
ジョージ・タフト地球大統領です。
そろそろですねー。
あ、姿が見えました。
ジョージ・タフト地球大統領です。
ハカマダ/
大統領は、歴史的な和平提案を持って火星に出てきたようです。
大統領は、歴史的な和平提案を持って火星に出てきたようです。
ハカマダ/
和平を歓迎する民衆にもみくちゃにされています。
和平を歓迎する民衆にもみくちゃにされています。
ハカマダ/
あれ、大統領の姿がみえなくなりましたね。
あれ、あれ?
あれ、大統領の姿がみえなくなりましたね。
あれ、あれ?
AD/
ハカマダちゃん!
ハカマダちゃん!
ハカマダ/
ええー?
ちょ、ちょっと今レポート中…。
ええー?
ちょ、ちょっと今レポート中…。
AD/
馬鹿、銃声だ!
頭下げろって。
馬鹿、銃声だ!
頭下げろって。
ハカマダ/
ちょっと、え?
誰か撃たれたの?
…え、ええ?
ちょっと、え?
誰か撃たれたの?
…え、ええ?
AD/
軍隊経験者の言葉、信じろよ!
いいから!
軍隊経験者の言葉、信じろよ!
いいから!
ハカマダ/
な、なんか大変なことが
起きてるみたいです。
あー! 大統領が倒れています!
な、なんか大変なことが
起きてるみたいです。
あー! 大統領が倒れています!
ハカマダ/
ちょっ、ちょっと、そんなニュースが倒れる、
じゃない。
これもニュース!? うにゃー!?
ちょっ、ちょっと、そんなニュースが倒れる、
じゃない。
これもニュース!? うにゃー!?
ハカマダ/
暗殺…暗殺です!
地球大統領が暗殺されました…!!
暗殺…暗殺です!
地球大統領が暗殺されました…!!
第2次汎銀河大戦勃発
地球政府 大統領官邸 会議室。
大統領が着席すると、場が静まった。
ゆっくり口を開く。
ゆっくり口を開く。
ジョージ・タフト地球大統領/
もう緊急の連絡は全員に入っていると思うが、
宣戦布告が入った。
ベーカー補佐官。
もう緊急の連絡は全員に入っていると思うが、
宣戦布告が入った。
ベーカー補佐官。
ジョージ・タフト地球大統領/
…呪われた戦いの神の星だな。
火星というものは。
…参謀議長。
…呪われた戦いの神の星だな。
火星というものは。
…参謀議長。
参謀議長/
第2次汎銀河大戦の勃発は、
また太陽系を軸にはじまりましたな。
第2次汎銀河大戦の勃発は、
また太陽系を軸にはじまりましたな。
ジョージ・タフト地球大統領/
そういう話を聞いているわけじゃない。
勝てるかどうかだ。
そういう話を聞いているわけじゃない。
勝てるかどうかだ。
参謀議長/
負けたら太陽系知類が全滅するだけです。
勝てるかどうかではなく、
勝しかないでしょう。
負けたら太陽系知類が全滅するだけです。
勝てるかどうかではなく、
勝しかないでしょう。
参謀議長/
どれくらい勝てるかは、皆さん良く
おわかりのはずだ。
どれくらい勝てるかは、皆さん良く
おわかりのはずだ。
参謀議長/
こちらが内乱で疲弊している間、
他国がどう動いていたか、それぐらいこの会議に
いるものならば、知っているでしょう。
こちらが内乱で疲弊している間、
他国がどう動いていたか、それぐらいこの会議に
いるものならば、知っているでしょう。
参謀議長/
皮肉にも火星にまた、戦略的価値が出ましたな。
皮肉にも火星にまた、戦略的価値が出ましたな。
ジョージ・タフト地球大統領/
コリンズ財務長官。
コリンズ財務長官。
コリンズ財務長官/
火星に援助するしかないでしょう。
絶滅戦争で我々が最後に逃げ込む場所は、
あそこしかない。
火星に援助するしかないでしょう。
絶滅戦争で我々が最後に逃げ込む場所は、
あそこしかない。
ジョージ・タフト地球大統領/
もう一度、手を取ろうと?
もう一度、手を取ろうと?
コリンズ財務長官/
他に選択肢がありますか?
他に選択肢がありますか?
孫を可愛がるタフト
地球政府 大統領官邸。
祖父と孫娘が、
向き合ってリンゴをむいている。
向き合ってリンゴをむいている。
ジョージ・タフト地球大統領/
中々、リンゴの剥き方が
しっかりしてきたな。
中々、リンゴの剥き方が
しっかりしてきたな。
エノラ・タフト/
おじいちゃん、料理好きなの?
おじいちゃん、料理好きなの?
ジョージ・タフト地球大統領/
宇宙軍の士官も兵士も、
みんなこういうのが好きでな。
宇宙軍の士官も兵士も、
みんなこういうのが好きでな。
ジョージ・タフト地球大統領/
なぜだかな。
宇宙にいると、
こういうのがみんな好きになる。
なぜだかな。
宇宙にいると、
こういうのがみんな好きになる。
エノラ・タフト/
…そう。
あのね、おじいちゃん。
…そう。
あのね、おじいちゃん。
ジョージ・タフト地球大統領/
うん?
うん?
エノラ・タフト/
私、おじいちゃんの孫じゃないんでしょ。
…お母さんからきいちゃった。
…その、なんていうかな。
私、おじいちゃんの孫じゃないんでしょ。
…お母さんからきいちゃった。
…その、なんていうかな。
エノラ・タフト/
戦争でお父さん死んで、
お父さんと言っていいのかな…。
戦争でお父さん死んで、
お父さんと言っていいのかな…。
エノラ・タフト/
うっ、お父さん死んじゃって、
それでお母さん、ひどいめに…。
うっ、お父さん死んじゃって、
それでお母さん、ひどいめに…。
ジョージ・タフト地球大統領/
あの頃の戦争は、本当にひどかった。
私がフィオを探し出したときは、特に。
あの頃の戦争は、本当にひどかった。
私がフィオを探し出したときは、特に。
ジョージ・タフト地球大統領/
人間と人間が争うのさ。
宇宙人と戦っているのにな。
人間と人間が争うのさ。
宇宙人と戦っているのにな。
ジョージ・タフト地球大統領/
いや、宇宙人と戦うことだって、
いいことじゃない。
…人は、なんで人はこうなのかなあ。
いや、宇宙人と戦うことだって、
いいことじゃない。
…人は、なんで人はこうなのかなあ。
ジョージ・タフト地球大統領/
だから、…だから気にするな。
わしの孫は、お前だけだよ。
だから、…だから気にするな。
わしの孫は、お前だけだよ。
エノラ・タフト/
………。
………。
ジョージ・タフト地球大統領/
泣くな。
せっかくのリンゴタルトが
塩味になると困るだろう。
泣くな。
せっかくのリンゴタルトが
塩味になると困るだろう。