とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part09

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第8話『壮大なるビンゴ大戦』


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


「と、まあこんなかんじだったな。」
「アンタね…キスしてもらう権利って……」

 上条はみんながキスの権利を求めて舞台上へやってきたことを美琴に話し、話を聞いた美琴は心拍数が跳ね上がっていた。
 なぜか、それはこういうわけだ。

(なんで私がでてこないの!?私じゃないってことは誰にキスしたのよ……まさか全員とか!?あーすっごく気になるけどコイツが誰かにキスしたなんて聞きたくない!!ていうか昨日の私はこの大事な時に何してた……って気絶してたんだっけ…)

 上条の話には自分がでてこなかったのでまた悩む美琴。
 ストレスも溜るし胃が痛い気がする。まあ気がするだけなのだが。
 すると上条が

「俺が言い出したわけじゃないぞ?ていうかここらへんで目覚めたんじゃないか?」
「え?えーとね……あ、覚めたかな?確か医務室で…じゃなくて自分の席で目が覚めて…」


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇


美琴「ん……あれ?ここは……」

 上条に抱きしめられたため漏電してしまい倒れてから40分後、美琴は目を覚ました。
 何やら周りが騒がしい、ゆっくりと上半身を起こそうとしたところに

初春「あ!ようやく目覚めましたか!!ていうか今起こそうとしてかたらナイスタイミングですよ!!」

 ハイテンションの初春の顔がすぐ目の前にあった。
 よくわからないがとりあえず体を起こす。

美琴(え、と何があったんだっけ……ってこれベンチ!?私ベンチで寝てたの!?ていうかどっからもってきたんだろ……)

 ようやく自分が寝ていたところがベンチだと気づいた美琴は立ち上がり、すぐ側の自分の席に座ろうとした。
 が、それは佐天によって防がれた。

佐天「御坂さん!自分の席に座るんじゃなくてこれ持って早く舞台に行ってください!!」

 そう言う佐天から強引に渡されたのは1枚のカード。
 手に取りそのカードをよく見てみる。

美琴「え…?これって私のビンゴカード……ってビンゴしてるじゃない!」

初春「そうです!御坂さんが気絶した後は私たちが続きをやっておきました!だから早く行ってください!!」

固法「そうよ急いで!!」

春上「御坂さん急ぐのー。」

 美琴はなぜ友人sが自分を急かすのかわからなかった。
 みんなは今にも上条がキスする人を決めてしまいそうに見えたので急かしているのだが気絶していた美琴は『上条当麻に頬にキスしてもらう権利』の存在を知らないのだ。

美琴「(なんでそんなに急かすんだろ……まあいいや行ってみよ。)わかったわ、カードありがとね。」

 あまりにも友人たちが急かすのでとりあえず行ってみることに。
 佐天から受け取った自分のビンゴカードを持って舞台に向かうため視線をそちらに移す。

美琴「え?」

 美琴は思わず声を出してしまった。
 なぜならばそこには多数の女の子に囲まれた上条の姿があったからだ。
 それを見た美琴は嫉妬のあまり彼女の中で何かが燃え上がりダッシュで舞台へと向かう。

美琴(アイツめ……性懲りもなく女の子とばかり話して…私とはまともに話そうとしないくせに!!)

 自分が気絶した間に何があったのかは知らないが、とにかく上条が自分以外の女子と話すことをよく思えなかった。
 こうして嫉妬のあまり美琴は多くの人の目も気にせず舞台へ上がった。

美琴「ちょっとアン「おーと!!」タ……へ?何?」

 上条に声をかけようとしたが舞台上にいたもう一人の男子によって遮られた。

土御門「もう1人ビンゴした人がいたようだにゃー!はい、カード見せて。」

 土御門は美琴の側に駆け寄ってくるとカードを強引に取りビンゴしているかどうか確認し始めた。

土御門「えーと………はいOKぜよ!ではほしいもの……は決まってるか、はい!御坂美琴ちゃんも『上条当麻に頬にキスしてもらえる権利』争いに参加だにゃー!!」

 土御門の声が会場全体に響き、すでに舞台上に上がっていた女の子たちに新たなライバルが登場したことで会場内は沸いた。
 だが当の美琴は未だ状況を理解できていなかった。

美琴(は?何どういうこと?キス?キスって何?つまり、アイツが私の頬に………)

 ボンッ!!!っという音とともに美琴の顔は真っ赤に紅潮した。今自分がおかれている状況を理解したのだ。
 さっきまでの威勢はは消え去り舞台上であうあうする美琴、そんな彼女に上条が声をかけようとしたところに別の声がとんだ。

御坂妹「ちょっと待ってください。すでにこの方に抱きしめてもらったお姉様がこの権利を獲得する資格はないのでは?と、ミサカはお姉様に対し疑問を投げかけます。」

 御坂妹は一歩美琴がいる方向に足を進め、真剣な表情でそう告げた。
 さらに

五和「そ、そ、そ、そうですよ!!あなたはさっきビンゴして上条さんに抱きしめてもらったじゃないですか!!」

姫神「さすがに両方は。ずるい。」

インデックス「そうだよ短髪。短髪にはこの権利をゲットする権利はないのかも!」

結標「だからこの権利は私たちの誰かがもらうのは当然のことよ。」

 やはり上条に抱きしめてもらった美琴を『ずるい』と思っていた女子は多いようで口々に責め立てた。
 で、美琴はというと御坂妹に指摘された時は引きかけたが、口々に言われたことで逆に火がついた。
 もうあうあうしている場合ではない。

美琴「あ、あれは関係ないわよ!だって私自身がビンゴしたわけじゃないんだし、今回私が参加する権利はあるわ!!」

 美琴は必死に反論した。
 実際のところ御坂妹などの女子が言う通り、美琴が少しずるいのは確かだが抱きしめられたのは上条を助けようとしたからで自らその行為を欲したわけではない。
 それに美琴はとにかく上条が自分以外の女の子にキスするのがいやだった。ちょっとわがままだ。

 にらみ合う美琴とその他の女子達、だがこのままでは埒があかないので土御門が提案した。

土御門「じゃあ上やんに選んでもらうぜよ、そのキスする相手を。」

美琴「は?」

 美琴はとっさに土御門に目を映した。
 彼は『面白いことになってきた』と言わんばかりにニヤニヤと笑っていた。
 だが土御門がそんなことを言っても彼女たちが許す訳がない、と思っていたら

オルソラ「……それで…よろしいのではないでしょうか?」

美琴「え……」

オルソラ「確かに権利は1つ、私たちで決めるより上条さんに決めていただいたほうがよろしいのでございますよ。」

雲川「私もその意見に賛成するのだけど。彼が選んだほうが面白いしね。」

レッサー「いいでしょう、望むところですよ。さあ上条当麻!私を選びなさい!!」

フロリス「ちょ、ちょっとレッサー!選ばれるのは私なんだからっ!!」

 女の子たちは次々に土御門の提案に賛成し始めた。

結標「なるほど……選んでもらったほうが勝者、ってかんじがするわね。私は賛成するわ。」

インデックス「……まあ…それでいいんだよ。」

姫神「ええいいわ。望むところ。」

御坂妹「お姉様が参加するのはまだ納得いきませんが絶対に選ばれてみせましょう、とミサカはこの方がミサカを選んでくれることに期待を膨らませます。」

 先ほど美琴を参加させないでおこうとしていた面々も承諾、こうして美琴が特に何も言わないうちに勝手に決まった。
 正直選ばれることは運任せだが、今の美琴には上条に選ばれる自信があった。
 なぜならば

美琴(…今日の私はアイツと手をつないだし、素直にストラップを渡せたし…そ、それに抱きしめてももらえたわよね。ってことは流れ的にここでも私が……)

 今日はかなりついていると思い込んでいたからだった。別に策とかじゃない。
 そんなわけで女の子たち全員が上条のほうを向き、選ばれるように待機した。
 全員から『私にキスしてオーラ』がものすごく出ている。

上条「マジかよ……ていうか御坂。」

美琴「?何よ。」

上条「お前流れるように参加してきてるけどもっと他にほしいものあったんだろ?俺の…その…き、キスとかいらないだろ?」

美琴「!!!」

 上条に指摘され痛恨のミスにようやく気づいた。こんな態度上条を好きと言っているようなものだと。

美琴(し、し、しまったぁー!!!ついムキになって流れで参戦したことになってたけど……これじゃまるで私がコイツにキスしてもらいたいみたいじゃない!!……まあしてもらいたいけど…)

 このままでは上条が好きだと上条にバレる。もう女の子たちにはモロバレだが上条にバレるのはまだ心の準備ができてなさすぎる。
 上条と舞台上の女の子たちにジーッと見られた美琴は

美琴「別にアンタにキスしてもらいたいわけじゃないわよ!!!えーと、あの…………そう!欲しい物も特にないし、この場を盛り上げるためよ!!私も参加したほうが面白い展開でしょ!?」

 やっぱりツンデレは治らなかった。
 ものすごい強引に理由を付けて美琴も他の女の子たち同様上条にキスをしてもらえるよう並ぶ。
 他の女の子達は以外にももう何も言わなかった。というかこんな態度で上条に選ばれるわけがないと思った者が大半だ。

 そんなわけで美琴も正式に参加決定。
 ただ問題なのはキスするのが恋愛経験など無に等しい上、鈍感な上条、ということだ。


 ◇ ◇ ◇


 上条当麻は悩んでいた。
 この状況をどう対処するべきかと。

上条(誰にキスすれば……そもそもなんでこんなことになったんでせう?)

 どう考えても土御門のせいだが今更どうしようもない。
 目の前の11人の美少女&美女は真剣な様子で(一部はふざけているが)こちらをみている。
 もう覚悟を決めなければならないか、と思ったときだった。

??「キャーリサ様!!」

 どこからか声が聞こえたかと思うと、次の瞬間にはその声の持ち主はすでに舞台に上がっていた。

騎士団長「エリザード様を説教するために私がちょっと席を離れた隙にアンタ何やってんですか!!仮にも一国の王女ともあろうお方がそんな貧乏臭いガキにキスされるなんて許されませんよ!?」

上条「悪かったな貧乏臭いガキで!!」

 上条が叫んだが騎士団長はそれを完全に無視、キャーリサへと近づく。

キャーリサ「えー別にいいじゃないかー、これくらい多めに見ろ。」

騎士団長「見れません!!ほら戻りますよ!!」

キャーリサ「なッ!?おいこら離せ!!私は王女だぞ!?言うことが聞けんのか!?」

 騎士団長はそれをも無視してキャーリサの後ろ衿を掴み、引きずりながら舞台を去って行った。
 キャーリサ、脱落。

 さらにもう1人脱落者が。

??「おい、お前もいい加減にしとけよォ。」

土御門「ん?一方通行……お前ビンゴしたよな?」

 声とともに舞台に上がって来たのは一方通行、番外個体に向かって歩きながらめんどくさそうに頭をかく。

一方「いやビンゴじゃねェ。俺はそいつに用があンだよ。」

 そういって一方通行は番外個体を指差す。

番外「え?そいつってミサカのこと?」

一方「そうに決まってンだろ。逆にお前以外誰がいンだよ。ほらとっととほしいもンもらって席に戻れ。」

番外「……あーなるほど、第1位はミサカが上条当麻にキスしてもらうことに対して嫉妬してるわけだ!!」

一方「あァ!?なんでそうなンだよ……」

番外「いやそれ以外考えられないでしょ。他にどんな理由があんのよ。」

一方「……」

 一方通行は少し間を空けた後、

一方「……打ち止めのやつが上条当麻はお姉様とくっつくべきだから、上条を好きでもないお前は参加すンなって言ったンだよ!!ほら理由言ってやったンだからマジで戻るぞ。」

番外「最終信号の言うことをそんなに簡単に聞くとは……やっぱ第1位ってロリコンなんじゃ……ってミサカの服の衿を持って引きずらないで!!まだ景品選んでないしちょっと待ってってばーっ!!!!!」

 番外個体、脱落。
 一方通行に引きずられて戻っていった。キャーリサと同じ退場の仕方だった。
 打ち止めには上条を好きな御坂妹はよくても番外個体が参加することはダメらしい。

 そんなこんなでキャーリサと番外個体が脱落して残るは9人。
 2人減ったのでホッと一息つき、改めて場の状況を確認し直す。

上条(えーと……土御門のバカのせいでこんな状況になったんだよな。で、この9人のうち誰か1人にキスしなくちゃダメらしいけど……誰にすればいいんだ?そもそも正解なんてあんのか?)

 2人減ったが依然として彼の目の前には残る9人の美少女がキスを待っている。この状況、普通の男子ならば『おおー!!ボクもてもてやないかーっ!!』とか考えるはずだ。
 だが悲しいかな、上条は彼女達が自分に好意があるなどと微塵も思っていなかった。
 つまり彼が今どうこの状況を捉えているのかというと

上条(みんなは多分受け狙いなんだよな…で、誰にキスすることが1番盛り上がるか、ってことでいいんだよな。)

 全然よくない。鈍感にもほどがある。
 過去に例がないほど悩む上条を見た土御門は

土御門「上や~ん?………どうやらまだ時間がかかるようだにゃー。じゃー女の子達に意気込みとかアピールをお願いするぜよ。はい結標。」

結標「ええっ!?なんで私から!?」

土御門「いやだってお前が一番右端にいるから。」

結標「……ま、まあいいわ。それじゃえーと、私は前にどっかの誰かさんに顔面を殴られたりして大けが負ったんだけど、その時に救急車を呼んだりして助けてくれたのが上条当麻なのよ。」

土御門「……あれ?それ意気込みでもアピールでもなくない?馴れ初めなんじゃ……」

オルソラ「…私も上条さんに助けてもらったのでございますよ。」

土御門「え?」

 結標の隣にいたオルソラが急に口を開いた。
 オルソラは続ける。

オルソラ「私は以前とある集団に捕まったのでございますが、そのとき上条さんは果敢に助けにきてくれたのでございます。つまり命を救われたということでそれだけ私たちには深い絆があるのでございます。」

御坂妹「命を救われたのはミサカも同じです。ミサカはどこぞのモヤシに危ない目に合わされてましたがその状況から助けてくれたのがこの方というわけです。それにほら、ミサカはこの方からネックレスをプレゼントされてるのですよ、とミサカはドヤ顔でネックレスを見せびらかします。」

五和「ぷ、プレゼントはもらってませんけど、私は上条さんと共に戦ったことがあります!それに泊まり込みで護衛もしようとしたことあります!!(結局泊まれなかったけど…)」

インデックス「それを言ったら私はとうまと一緒に暮らしてるんだよ?泊まり込みなんて目じゃないかも!」

レッサー「それはいつも一緒だと言いたいのですか?それだったら私は第3次世界大戦の間ロシアでずっと一緒に行動していたんですよ?あなたよりもっと深い仲なんですから。」

フロリス「私だってイギリスで一緒に行動してたっての!ま、まあそれはほんの少しの間だったけど……それでも抱きかかえられたわ!!」

雲川「みんな上条当麻のことをなんでも知っているようだが、私は他の誰も知らない彼の秘密をたくさん知っているのだけど?それに私はあなたたちと違って学校でも会えるのだけど。」

姫神「学校で会えるのは。私も。私は雲川先輩よりもっとすごいクラスメイトという特権がある。大覇星祭では一緒に競技にもでた。」

 オルソラをきっかけに言い争いが始まった。
 火花をちらす8人、遅れをとってはいけないと最後の1人美琴も続く。

美琴「えーと、えーと……私はコイツとデー……じゃなくてた、たくさん遊んだことがある…かな?後は…そうだ!さっきは手も握ってもらったし、だ、だ、だ抱きしめてももらえたし……」

土御門(どんだけもてるんだにゃー……上やん、後でしばく。)

 ぶっそうなことを考える土御門、それにアピールでも意気込みでもなく上条との関係を自慢する時間になってしまった。
 ちなみに上条とインデックスが同棲しているということだが、これはすでに全員が知っている。

 また彼女たちの言い争いは全ての人に聞こえていたわけで、ものすごく女の子にモテるやつだと全員に思われるようになった。
 もてるということはDV疑惑と違って事実なのだから、みんなの頭から消えることはないだろう。

 そして女の子達が言い争っている間、上条はと言うと

上条(ど、どうすれば……っていうかそもそも俺の考えは正しいのか…?それになんで急に御坂まで?……ま、まさかさっき抱きしめたことに激怒してキスしてもらうふりをしてその隙に俺を亡き者にしよと企んでるんじゃないだろうな!?ヤバいぞ……御坂だけは選んじゃダメだ!消される……ん?いや待て待て。もしかして全員俺を消すことが目的なんじゃないか?あ、ありえるぞ!不幸少年上条さんには十分ありえる!!だとしたら……余計どうすりゃいいんだ……)

 混乱するあまり鈍感に磨きがかかりわけのわからないことを考え始め、目の前で起こってる女の子たちの言い争いなど一切耳に入っていなかった。
 悩みに悩む上条、悩みすぎて頭から煙が出そうになってきたところに1人の少女が声をかけた。

??「悩んでいるのならわたくしにキスなさってくださいの。」

上条「はい?」

 それは9人のうちの誰か、ではなく別の場所。舞台の下から聞こえてきた。
 すでに脱落した4人でもなければ他に上条に気がある子でもない。
 その人物とは

上条「え……白井!?お前何言ってんだ!?冗談だろ!?」

黒子「冗談などではありませんの。わたくしは本気ですわよ?」

 美琴の友人の1人、白井黒子だった。
 彼女は上条の視界からパッと消えたかと思うと舞台上に現れた。言わずともわかると思うがテレポートしたのだ。
 あまりの突然の出来事に9人の女の子は何も言えなかった。
 そして黒子は上条に近づく。

黒子「類じ…もとい上条さんは悩んでいるのでしょう?誰にキスするべきか、と。」

上条「ああ……ていうか今類人猿って…」

黒子「でしたらぜひわたくしになさってくださいの。ほら、ビンゴしたカードもありますわよ?」

 黒子はカードを土御門の前にテレポートさせた。
 土御門はそれを手に取り問題がないかを確認する。

土御門「……確かに不正はないしちゃんとビンゴしてるみたいぜよ…でもなんで今まで出て来なかったんだにゃー?」

黒子「ああ、それはコールされた番号を空け忘れていてさっき気づいたからですわ。……では上条さん、よろしくお願いいたします。」

 上条は混乱していた。
 黒子が自分のことを良く思っていないことは今日はっきりわかったはずだった。だってあれだけ蹴られたりいろいろあったのだから。
 わけがわからない上条にさらに近づく黒子、だがここでようやく8人の女子は我に返った。

美琴「黒子!!アンタ突然後から現れて何言ってんのよ!!それにコイツのこと嫌いじゃなかったの!?なんで急に心変わりしたわけ!?」

 その8人の中で最も早く声を出したのは美琴だった。
 黒子のことをよく知る美琴は本当に驚いた表情をしていた。
 それに対し黒子は真剣な表情で美琴を見ながら

黒子「……理由が知りたいのですかお姉様?」

美琴「あ、当たり前でしょ!」

 黒子の心変わりの理由、これは上条も激しく知りたかった。

上条(理由…魔術が関係してる、とかか?いやそれを白井自身が言うわけないか。魔術の存在も知らないしな。ていうかやっぱり白井って俺のこと嫌いだったんだな……なんかショック…)

 まあ黒子が上条に対してはっきりと嫌悪感を抱くのは美琴が関係している時だけなのだが、それを知らない上条は落ち込んだ。
 そして落ち込みながらも黒子の口から理由が語られるのを待った。
 10秒後、黒子はゆっくりと口を開く。

黒子「なぜかと言うとですわね…」

上琴「「なぜかと言うと……?」」

 沈黙、シーンと会場が静まる。
 ほぼ全員が黒子の言動に注目していた。

黒子「……ですの…」

上条「え?なんだって?」

黒子「だから…………お姉様とお姉様の妹さんを守るためですの!!!!!!!」

一同「ッッッッッッ!!??!??」

 鼓膜が破れるかと思うほどの大声だった。
 みんなが思わず耳を抑えている中、黒子は続ける。

黒子「こんな類人猿にお姉様や妹さんたちがキスされるのはたまったもんじゃありませんの!!だからわたくしが身代わりになろうということですわ!さあ上条さん!わたくしを煮るなり焼くなり抱くなりキスするなりアナタ好みの女に教調するなりと好きにしてくださいまし!!!」

 黒子は完全に暴走していた。
 美琴か御坂妹がキスの対象になるのは4分の1の確率なのだがそんなこと今の黒子には関係なかった。
 とにかく少しでも可能性があるなら、その可能性をつぶそうと考えているのだ。
 それならば上条を抹殺すればいいだけのように思えるが、暴走する黒子にはその考えは頭から消えてしまっていた。

 あまりの暴走っぷりに呆然とする一同。
 上条は言葉も出なかったし、美琴でさせ何も言えなかった。
 もはやここから黒子無双!かと思いきや1人いた。暴走黒子を止めることができる人物が。

??「白井…今の発言は無視できんな。」

上条「え……あ!あなたは……」

 コツコツと靴の音を鳴らし舞台裏から1人の人物が舞台に姿を現した。
 その人物を見た美琴は思わず姿勢を伸ばし、上条にも緊張が走った。

寮監「今の発言は常盤台の、いや中学生の発言として正しいものではない。」

上条「寮監様……」

 常盤台の魔人、寮監参上。寮監はゆっくりと黒子に近づいて行った。
 その様子を上条たちは固唾をのんで見守る。

寮監「白井、聞いているのか?少し話を聞きたい。」

黒子「あぁん!?なんか用…………あ、あら?寮監様……?」

 黒子は始めヤクザみたいなかんじで返事をしたが、相手が寮監だと認識したのか急におとなしくなった。
 顔を青くなっているような気がする。いやなっている。
 寮監は黒子の様子など気にせず話を続ける。

寮監「白井…お前はさっきなんと言った?」

黒子「え、ええっとですね……煮るなり焼くなり好きにしろ……と言いましたわ…」

寮監「…違うだろう?それだけじゃなく、『抱く』や『教調』と言う聞こえてはならん言葉が聞こえてきたが?」

 上条から見てもはっきりとわかるくらいだらだらと冷や汗を流す黒子。
 そして寮監のメガネが光った。

寮監「白井……罰を与える。」

黒子「ちょ、ちょっと待ってくださいま」

 黒子の言葉の続きの代わりに『ゴキャ』、っという普通なら聞こえないような嫌な音が聞こえた。
 寮監が黒子の首を刈ったのだ。首を刈られ意識を失った黒子はガクリと崩れ落ちた。
 そんな黒子を寮監はささえながら

寮監「うちの生徒が迷惑をかけたな。白井は私が責任をもって医務室に運んでおく。よっと…」

上条「あ、俺手伝いますよ。」

 寮監が黒子を抱えようとしゃがんだところに、上条が手伝おうと近づいた。
 ただそれだけで何も問題がないように思えるが忘れてはならない、上条の特殊体質を。

上条「あ」

寮監「ん?」

 次の瞬間、上条の顔は寮監のすぐ横にあった。
 舞台上にいる8人の女の子たちだけでなく、会場全体の人が唖然としている。
 何が起ったのかかというと

寮監「な……!!お前何を…!?」

上条「ち、違います誤解です!!キスなんかしてません!!」

 つまりそういうことである。
 寮監を手伝おうと近づいたがスリッパのため滑って頬にだがやってしまったのだ。
 上条は『してません』とか言ってるが完璧にしていた。

寮監「貴様……」

 だがさすがは寮監、5秒ほど顔は赤くなり動揺した様子を見せたがすぐ普段通りの鉄仮面に元通り。
 ほとばしるほどの怒り?のオーラを醸し出して今度は上条に近づき首を刈ろうとする。
 上条は全力でビビった。

上条「ど、ど、どどうすれば……そうだ御坂!お前からもなんとか言ってくれ!」

 上条は美琴に助けを求め、彼女の手を両手で握った。
 『なんとか』が何かは上条本人もわからないのだが……
 だが美琴は

美琴「あ、あああああああああアンタなんでまた手握ってんのよ!!!私に、だ、抱きついておきながら寮監にき、きき、キスしたんだし自業自得でしょ!!」

 美琴は上条の手を振り払った。
 別に今寮監は美琴には何もする気はないのだが、美琴もビビっているのと手を握られて恥ずかしかったからの2つの理由から振り払ったのだ。
 振り払われた上条はもうどうしようもない。

上条「待て、御坂頼む!俺はまだ死にたくない!!」

 必死に頼み込む上条。
 情けないようだが彼がこんな態度を取るのも無理はない。なんたって向かい来るのは殺意丸出しの寮監なのだから。
 寮監の威圧感は尋常ではなく、美琴を除いた8人の女の子たちも身動きできなかった。
 そのため美琴が上条に手を握られたことに対しても何も言えない。
 そして寮監は上条の元へたどり着いた。

寮監「覚悟は……いいな?」

上条「イイエ、ヨクアリマセ」

 ここで上条の意識は途切れた。
 何が起こったのかはもう言わないでもわかるだろう。御愁傷様。


 ◇ ◇ ◇


 ビンゴ大会が終わって数分後、美琴は落ち込んだ様子で自分の席に座っていた。
 今固法は医務室へ黒子の様子を見に行き、婚后、湾内、泡浮の3人はどこかへ行ってしまったので、今ここにいるのは美琴を含めて4人だ。

 上条が寮監に首を刈られ意識を失ってしまった後、どう考えてももうキスは無理だったので8人の女の子達はそれそれが他の欲しい物を手に入れ肩を落としながら席に戻っていった。
 美琴はというとゲコ太のぬいぐるみがほしかったのだが、気絶している間に誰かがもうゲットしてしまったようで特にほしいものがなく何ももらわずに戻って来た。

 だが美琴の様子は優れないのは何も景品をゲットできなかったからではない。

美琴「はぁ…なんで寮監が……」

 寮監においしいところを持っていかれたから落ち込んでいるのだ。
 そんな落ち込んだ様子の美琴に友人達は声をかける。

初春「元気出してくださいよ御坂さーん。あ、そうだ!ほら今度パフェ食べに行きましょう!!1年間パフェ食べ放題券もらったんですよ!!ああ…これで明日から薔薇色の人生が……」

 初春はきらきらと目を輝かせていた。
 ビンゴでお目当ての商品をゲットできたようで今にも天に昇って行きそうなほど幸せそうだ。

佐天「まあパフェ食べ放題券はどうでもいいとして………抱きしめてもらっただけいいじゃなですか!!他の女の子たちは手を握ってもらったり抱きしめてもらったりなんてしてもらえてないんですよ!」

美琴「…まあそれを言われると私は一歩リードしてる……ってことでいいのかな…」

初春「そうですよ!……そういえば上条さんに抱きしめてもらって気絶するってことはそれだけ嬉しかったってことでいいんですよね?」

美琴「ッ!!?」

 初春の台詞を聞いた美琴は意識を取り戻してから初めてはっきりと上条に抱きしめられたことを思い出した。
 そのため美琴はもじもじしながら

美琴「その、……別に嬉しくもなんとも……」

佐天「もういい加減素直になりましょーよー、御坂さん死ぬほど嬉しそうでしたけど?」

美琴「う……」

 佐天と初春の言うことは正しかった、美琴は上条に抱きしめられた時ヤバいくらい嬉しかった。
 今も脳内では上条に抱きしめられた時のことを繰り返し再生し、繰り返し幸福を感じていた。

美琴(今思い出してもあれはヤバいわね………学園都市に来てから一番幸せだったかも……)

 美琴は思わずにへら、と奇妙な笑みを浮かべてしまった。
 傍から見ればものすごく変な人に思われそうだ、しかし佐天はそんなことをまったく気にせずニヤリと笑ってから再び口を開く。

佐天「さて、ここまできたらもう『あれ』をするしかないですね。」

美琴「『あれ』?『あれ』ってなんなの?」

 全く『あれ』とやらが何かわからない美琴は佐天に尋ねたが、嫌な予感はバリバリしていた。
 初春も佐天と同じことを考えているようで続く。

初春「そんなの決まってるじゃないですかっ!!」

 そして初春と佐天は息を合わせて

初&佐「「告白ですよ告白!!」」

 2人の目は今までにないほど輝いている。
 だが美琴はしばらく動かなかった、頭の中での情報処理が追いつかなかったのだ。
 電池が切れたかのようにピタリと停止すること20秒、よくやく初春と佐天が言ったことを理解した美琴は

美琴「え……えええええええええええええええええええッッッッ!!??!?そ、そそそそっそそそんなことできるわけないじゃないっ!!!」

 美琴は全力で拒否した。
 そんなリスクの高いこと無理に決まっている。
 成功すれば幸せなことこの上ないが振られたら精神が崩壊しかねない。
 しかしものすごく激しく拒否したにもかかわらず友人たちはひかなかった。

佐天「大丈夫ですって!上条さんも御坂さんのこ「無理!!」と…」

初春「でもそれだと上条さんといつまでたっても付き合え「無理!!」ない…」

美琴「ほんっっっっっとに無理!!それだけは絶対無理!!!誰がなんと言おうと無理なもんは無理!!!」

佐天「御坂さん……必死ですね…」

 佐天は美琴のあまりの拒否っぷりに苦笑いを浮かべていた。
 すると今まで黙って話を聞いていた春上が当然口を開いた。

春上「じゃあ私が上条さんを連れてきてあげるのー。」

美琴「えっ!?」

 美琴が『そんなのいいから』、と言う前にすでに春上は席を立ち人ごみに姿を消そうとしていた。

初春「ちょ、ちょっと待ってください春上さん!私も行きます!!」

佐天「あたしも行く!!御坂さんはここで待っててくださいね!絶対上条さんを連れてきますから!!」

 一人で上条を探しに行こうとする春上の後を慌てて初春と佐天が追いかけ、3人は人ごみの中に消えていった。

 こうして美琴は一人になった。

美琴「告白……かぁ……」

 美琴としてはもちろん上条と付き合いたい、だが告白する勇気など美琴にはなかった。
 でも早く何か行動に移さないと本気で上条が他の女の人のところへ行ってしまう。
 一刻も早く告白したい、けれど告白できない、この矛盾は美琴を苦しめていた。

美琴「どうしよう……っていうか今日はロシアのこととか聞きたかったのにまともに話せてないわね……」

 肩を落とす美琴、そんな彼女に1人の少女が近寄ってきた。

??「何を落ち来んでるのかしら?アンタらしくもない。」

美琴「ッ!あんたは………結標!!」

結標「ちょっと!そんな大声出さなくても……」

 その少女とはレベル4のテレポーター、結標だった。彼女は美琴が大声を出したことが不満だったようでため息をついた。
 美琴はというとお手洗いや舞台裏での出来事を思い出したため警戒を強める。

美琴「何よ、また私のことからかいに来たわけ!?」

結標「またって私がいつアンタのことからかったのよ。ここに来たのは他に理由があるのよ。ほら、これ持ってきたの。」

美琴「え……これって……?」

 美琴は結標の持ってきた『モノ』を見て少し困惑した表情を見せる。
 すると結標は笑みを浮かべたかと思うと

結標「そういうことだからとりあえず座らせてもらうわよ?」

美琴「あ、ちょっと!!」

 美琴が許可する前に結標は空いている席に座り、持って来た『モノ』をテーブルの上に置いた。
 その『モノ』とは―――――


 ◇ ◇ ◇


 ここは7階のパーティ会場外の男子トイレ、鏡の前で1人の男がある計画を実行に移す準備を行っていた。
 いや、どうやらもう準備は終わっていたようだ。

??「……いよいよ…計画実行の時ですね…いや、実に楽しみです。」

 そしてその男は不気味とも言える笑みを浮かべる。
 鏡の前の水道台に置かれているのは1つの紙袋、この中身こそがこの男の計画の目玉だ。

 男は鏡をみて自分の姿を最終チェックし、紙袋を手にする。

??「さて、問題はないようですし行きますか。」

 完璧だということを確認した男はお手洗いからパーティ会場へ戻ろうとした。
 だが―――――

牛深「全く上条のやつの鈍感さには呆れるな……え?」

??「ッ!!?」

 天草式の一人、巨漢の牛深が入って来た。

??(しまった―――)

 男は油断していた。
 まさかここに来る人はいないだろうと思い込んでいたため全く警戒していなかったのだ。

牛深「お、おい……ちょっと待てよ…なんでお前がここにいる―――」

 次の瞬間、牛深は意識を失った。
 男が失わさせたのだ。
 そして他に誰も来ていないことを確認し、牛深の巨体を個室トイレに押し込み座らせた。

??「くそっ!なんでこっちのトイレにくるんですかね、会場内にもあるはずなのに……」

 男は若干いらついた様子を見せた。
 だが数回深呼吸を行うと上がっていた心拍数も平常値に戻りすぐに冷静になる。

??「まあこの男は放っておいて大丈夫でしょう……だが目を覚まされると面倒なので急ぎますか…………御坂さんの元へ。」


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