とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part05

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第四章 この物語にヒロインは居ない


上条当麻を主人公と見立てるならば、御坂美琴は間違いなくヒロインだろう。
ヒロインと言ってもいろいろなジャンルはある。
『ツンデレ』だったり『ヤンデレ』だったり。
そう仮定するなら御坂美琴は『ツンデレ』なのだろうか。
物語は『ヒロイン』が必要だ。
『ヒロイン』が女である必要も無い。ギリシャ語でヒロインとは『女英雄』だったとしてもだ。
主人公は常に物語の中心で無ければならない。
この物語に『ヒロイン』が存在しない。
何故なら今回の話は全て御坂美琴を中心に起こった事件だからだ。

そして片方の主人公はヒロインとなり、そしてヒロインを守る騎士として主人公として戦う。

                                    *


(12月29日。早朝、午前7時30分。第六学区ターミナル駅前)

「間に合ったか」

敵の位置は既に割れていた。
上条は病院から出された栄養補給食品を頬張りながら切符を買った。
神奈川県にある御坂宅に学園都市製の盗聴器があるらしく、白井黒子の同僚、初春飾利がその盗聴器を持ってきて貰えば例え潰れていたとしても
相手の位置を特定できると、上条に言って回収作業に当たっていた。
回収部隊は白井黒子と上条。
特定するのは初春飾利でその補助が佐天涙子だった。
御坂美琴は使えない。下手に動けば犯人に見つかってしまうからだ。

「初春さん、ターミナル前だ。今から御坂宅に向かうよ」
『はい、取り敢えず電磁波で確認できた盗聴器は3つ。トイレと、御坂さんの部屋と、リビングです』
「了解」
『ああ、後。複数犯の可能性が高いので気をつけてくださいね』

小型のトランシーバーを切ると、新幹線がやってくる。
まだこの時間だ。人もそれ程多くない。
上条と黒子は乗り込んだ。
学園都市製ではなく、都市外で作られた新幹線でスペックは最新型の新幹線よりもかなり劣るとか。
それでも有に300キロ近くは出ているのだ。
遅いわけがない。

「新幹線なんて乗るの初めてだな」
「そうですの?私は帰省の際に何度か。実家が大阪ですの」
「へぇ関西弁とか話すのか?」
「いえ、話せないことはないんですが……。私が関西弁で話している所を想像出来ます?」
「できねぇな」
「いいですのよ?これから関西弁で話しても」

という間にも二人は焦っていた。
こうして何も出来ない時間が無駄過ぎる。
御坂美琴は行動を悟られない為に寮内に居るが、軽い軟禁状態だ。
出来るだけストレスを減らそうと、シェフも朝夕晩の食事のメニューを変えてみたり、気分転換に掃除させてみたりといろいろ行なっているらしい。
上条は御坂のメールアドレスを思い出して、メールを打っていたが白井黒子が携帯電話を取り上げる。

「駄目ですわよ。今メールなんてしたら特定されますの。お姉様の個人情報なんて無いに等しいのですから」
「……だよなぁ」

上条は打ち掛けのメールを閉じて、携帯電話をポケットに突っ込んだ。
はぁと溜息をつく黒子だったが、上条は理由を聞こうとしない。



                                   *


「ついたなっ……」
「意外と、質素な家ですわね」
「そうか?十分良い家だと思うけどな」

インターフォンを鳴らした。
しかし家主どころか美鈴さえ出てこない。
数回押したが、出てくる気配が無いので黒子が中にテレポートして鍵を開けた。
無断で侵入するのは忍びないが、緊急事態だ。
初春の指示であった『トイレ』と『御坂の部屋』と『リビング』を探していく。
当然の様にその盗聴器は見つかったが……

「白井ッ!」

上条は何かに気付いたのか、白井を窓側から離れさせたと同時に窓ガラスを突き抜けてフローリングをえぐった。
銃弾。それも学園都市製の弾で色々と模様が掘られているのが特徴で、スピードは遅くなるが代わりに破壊力を増すというモノだ。
これに発火剤でもついていたなら炎の弾となるのだが、それらしいものは確認できない。
かなりの腕前のスナイパーだ。

「銃弾……学園都市製のファニースタイル弾。それも警備員が使っているモノ?」
「なんだ、それ」
「警備員が外部勢力や凶悪テロ集団などの悪質な組織に対して使う銃弾です。
学生相手に撃つようなモノではないのですが、どうやら警備員も一枚噛んでいるらしいですわね」

白井は銃弾の軌道探るように窓ガラスを見つめた。
11次元の軌道計算とは違うハズだが、白井はあそこだ、と言わんばかりに指をさすとテレポートで消えてしまう。
直後、携帯電話が鳴った。

「どうした!?」
『捕まえましたの!コイツは過去にお姉様にぶっ飛ばされ教員免許を剥奪された元警備員の白縫代替ですの!」
「し、しらぬいだいたい?誰だそれ」
『兎に角、○○ビルまで来てくれませんの!?』
「了解!」

上条は御坂宅を飛び出した。
一応、玄関の鍵を閉めて窓からだ。
○○ビルというのも中小会社の本社で今日は土曜日であるためか休みだった。
上条はビルのドアを蹴破ったが、警報装置などは鳴らず上条は少し飽きれた。
しかし、それも好都合だ。
屋上まで上がっていくと、手錠をかけられたゴツい男と黒子の姿があった。


「そいつが、しらぬいだいたいか」
「今年の夏前頃に汚職が発覚した教師が、偶然居合わせた風紀委員の顔面を何度を殴打して逃亡してお姉様に制裁されたハズなのですが。
どうやって牢屋から出てこれましたの」
「俺は御坂美琴に復讐するためならなんでも売るぜ。プライドもな。だから警備員の牢屋から脱獄して、御坂美琴に復讐するっていってる女に加担したんだよ!」
「女性の方ですのね?」
「そうだ、夏過ぎにアンタ等空間移動と超電磁砲に敗北したって言ってたぜ」
「ふむ……全体構成は何人くらいですの?」
「教えるわけねぇだろうが、クソガキ」

白縫代替は吐き捨てるように言った。
それならば、この男に利用価値どころか置いておくのも不愉快なだけだ。
黒子は知り合いの警備員に報告して、地面に倒れている白縫代替を睨んだ。

                              *


(12月30日。正午、12時05分。第七学区、風紀委員第一七七支部)


「これが盗聴器ですか。ふむ……警備員の捜査で使われてるタイプに似てますね。少し調べてみます」
「よろしくお願いしますの。私は白縫代替の報告書を作成しなければならないので」
「俺はどうりゃいい?」
「そうですねー、上条さんは療養したほうが良いと思いますよ?今頃ホントは点滴つないでるんですから。特例だってカエル顔の先生も言ってましたよ」
「そうだな、俺は一旦家に帰るよ。ああ、佐天さん、紅茶美味しかった」

上条は風紀委員の詰所を後にすると真っ先に家に向かった。
眠くて仕方がない。
結局、白縫代替は吐かなかったし、上条としては少しつかれた。
上条は精神的にも参っていて、今まであった右手が無いというのは少し辛かったりする。
色々と不便だ。
左手生活に慣れそうにない上条は、溜息をついて帰路についた。



(12月30日。同時刻、第七学区、上条の歩いている大通り)

『見ぃつけた、上条当麻』
『ホントにやるんですか?』
『当たり前じゃない、これはチャンスよ。正直、幻想殺しは要らないしね。上条当麻が必要だ』
『……』

不穏な声が上条の後を着けていた。

(12月30日。早朝、ドイツ。ニーダーザクセン州大規模自立都市ハーメルン=ピルモント郡、郡庁所在地ハーメルン)

『幻想殺しが無くなった?アレは生えてくるんじゃないのか』
『どうでもいいよ、なぁ。投擲の槌』

投擲の槌(ミョルニル)と呼ばれたドラム缶状の何かがガタゴトと返事をするように動いた。
グレムリン、第3次世界大戦後に結成された新興組織だ。

『ミコっちゃんが原因だってさ。可愛いよなぁミコっちゃん』
『あ?東洋の女にでも惚れたか?トール』
『違う違う、ラブじゃなくてライクだ。愛玩動物みたいな?』
『お前は本当にわからんなぁ、投擲の槌もそう思っているだろうさ』

雷神トール、グレムリンの戦闘部門だ。
ボロっちいソファから腰を上げたトールは突然、間抜けたことを言い出した。

『ちょいと、上条当麻に会ってくる』
『はぁ!?』
『後は頼んだぞ、投擲の槌。マリアン=スリンゲナイヤー』

任された、と言っているように投擲の槌はガタゴトと揺れた。
唖然とするマリアンを置いてトールはボロボロのアパートから立ち去った。





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