とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part14

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すてーる


美琴が美鈴から解放された時、
すでに日は傾いていた。
そんな中美琴は家路を全力で走る。
顔を両手で覆いながらという、とんでもなくアホな姿で。

(もう、イヤーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!)

声にならない叫びとはこのことである。

(イヤー!! 妄想全部聞かれてた!! もうイヤ!! 結局今の状況ほぼバレちゃった!!)

もういやーーーーと言いながら走る常盤台の生徒という珍しい光景に、周囲は目を見開いた。
そして彼らはその少女が誰かにそのまま衝突するのも目撃した。

「きゃっ!! ご、ごめんなさい!!」

まぁ、当然の帰結と言える。
しかし、それで相手が死にかけているのはどうなのでしょう?
しかも、そこで倒れている相手は彼女の想い人である。

「って、ちょ、ちょっと!! 大丈夫!!?」

「これが大丈夫に見えますでせうか? 学校でただでさえ瀕死だったのに、今、とどめ刺されたんですが?」

不幸だチキショウ、前見て走れ。とぼやく。
互いに帰りが遅くないか? と聞き、
互いに色々あって、と応える。
そして、美琴はしゃがみこむと「ご、ごめんね」と、消え入るようにつぶやいた。

「……ま、いいけど、なにをそんなに急いでたんだよ?」

顔を覆っていた理由は恥ずかしかったからである。
もちろん、走っていた理由の一部もそれが原因ではあるだろうが、
一番の理由はそれではない。

「……い、インデックスと、その、つ、ついでにアンタに、早く会いたかった、から、さ」

アンタはついでよついで!! と叫ぶ美琴をよそに、上条は目を見開いた。






『カミやん、そんなボロボロで帰るのか?』

『てめぇらのせいだろ!!!』

『失礼な、自業自得ぜよ。少し休んでから行ったらどうだ?』

『……いやー、その、インデックスや御坂に、早く会いたいからさ』







(……同じだ……)

「……なにニヤニヤしてんのよ?」

「いや、なんでもねーよ」

そういいながら上条は立ちあがる。
つられて美琴も立ちあがった。

「まあ、インデックスが心配なのもわかるけど、大丈夫だよ」

「で、でも「大丈夫だ」……」

「お前はステイルをよく知らないから不安かもだけど、アイツがいれば大丈夫だよ」

それでも美琴の表情から不安はぬぐえない。

そんな時、近くの広場に爆音が響いた。
なにも声をかけずとも、二人は、同時に走り出す。



広場に近づいても、いまだに黒煙は上がっていた。
二人は躊躇わずに広場に飛び込む。
上条の右手に違和感がはしった。おそらく人払いか何かだろう。

「いったい、なにg……!!」

その時、美琴の目に黒煙の中に、信じられない物が見えた、

「そんな……インデックス!!!!」

その赤ん坊の姿を見て、美琴は駆けだそうとするが、
上条に肩を掴まれる。

「まあ、待て美琴、あわてんなって」

美琴は怒りの表情で振り返るも、上条ののんびりした表情に拍子抜けしてしまった。

「落ち着けって。さっきも言っただろ……」

上条はそう言いながら前方に視線を移す。

美琴がその視線を追うと、ようやく黒煙が薄れて来た。
その時、上条はゆっくりと続きを述べる。

「……ステイルがいるから大丈夫だって」

「……!! まーま!! ぱーぱ!!」

「ふう、思ったよりも威力が大きかったね」

黒煙の中には気絶した誰かと、
ボロボロのステイル、そして彼に抱かれた無傷のインデックスがいた。

「なんだ? 遅いご帰宅じゃないか二人とも」

ステイルのその言動の途中で美琴は二人に走り寄っていた。

「大丈夫インデックス!!? ステイルさん、そんなに怪我を!!」

「いや、僕のことはいいんだ。それよりも、この子、君たちとの約束を守って魔術をまったく使わなかったんだ、褒めてあげてくれるかい?」

そういいながら、その神父は、その子を母へと返した。

「……そう、えらいね、インデックス」

「……まーま!!」

上条は、動けなかった。

(……また、あの表情だ)

上条の顔が夕日に照らされ、赤く染まった。

「おい、いい加減に話を聞いてくれ」

いつの間にかあの不良神父が横に立っている。

「……なんだよ」

「……ハァ、あの魔術師については土御門に連絡したからほっといても大丈夫だ。もう帰ってもいいよね」

「へ? あぁ、サンキュな」

「あと、もうひとつ、今の生活はどうだ?」

「そりゃ……楽しいよ。何だ急に?」

「こっちの話さ……とりあえず、もうこんなことは勘弁してくれよ」

そう言って彼は数歩進むと、ふと何かを思い出したかのように振り返る。

「そういえばそこでのびているやつは、遠隔制御霊装に攻撃を仕掛けた連中のリーダー格なんだが」

一呼吸入れ、タバコに火をつけた。

「やつはそんなこと指示していないそうだ」

「……なんだって?」

「気をつけろ。今回の件、思ったよりも根が深いかもしれない」


再びその神父は振りむき、帰路に着く。
しかし、ある人物に呼び止められた。

「すてーる!!!」

3人がそちらに視線を向ける。

「すてーる!! ばーばい!!」

小さな手を一生懸命振るインデックスに
その神父は一瞬だけ微笑み、手をあげると二度と振り返ることは無かった。

上条はその背中を見て先の事を考える。
考えてみればそうだ。イギリス清教の奥の手『禁書目録』。
それの反乱を阻止するための『遠隔制御霊装』。
これらはおそらく、あのイギリス清教のトップによって組み立てられたものだ。
敵は、それに干渉することができるほどの人物。
それが簡単に捕まるわけがない。
おそらく、黒幕がいる。
すくなくとも、全盛期のフィアンマほどの力があるはずだ。
そいつがまだインデックスを狙っている可能性がある。

が、そこで思考は遮られた。
服をちょいちょいと引っ張られている。
犯人は美琴に抱かれたインデックス。

「ぱーぱ!! だうだぁだ!!」

「ふふっ インデックスが帰りたいって」

その2人の表情を見て、上条は覚悟を決めた。

「……そうだな、帰ろう。俺たちの家に」

何が起ころうと、こいつらは、オレが守る。

「御苦労につき」

ローラ=スチュアートは庭で紅茶を飲みながら、霊装からの報告を聞いていた。

「きちんと約束は守ってもらってるようでありしな」

そう言って、ケーキを口に運ぶと、
美味しかったのか両手を頬に当て満面の笑みを発した。
しかし、

『なんで英語もなまってんだコイツ?』

というステイルの声にむせかえるのだった。

「ちょ、ちょっと!! これは、私のアイデンティティーで、これがないと作者も読者も私とは判断しずらくなりけしかば」

『わかったからちょっと黙ってくれ、イライラする』

「それ上司への反応じゃなきにしよ!!」

『とりあえず上条当麻は今の生活を楽しんでるそうだ』

「……それはよきにし、って誤魔化されはしざりしよ!!」

芝生の上の白い椅子の上で両手をぶんぶん振り回す様に、
トップとしての威厳は微塵も感じられないのだった。
それでも、

『ところで最大主教』

「今頃謝罪しても簡単には許してやらざりしよ!! ふーーんだ!!!」

『今回の件、どこまで関与しているんです?』

「……さーて、なんのことを言っておりしか、わからなきにけりが?』

『………………』

ステイルはいまだに彼女の手のひらの上である。







おまけ!!


「歴然、酷い目に遭った」

男はぼやく。

「昭然、落ちた場所がプールだったからよかったものの、地面に落ちたら大けがでは済まなかったぞ」

プールで着衣は禁止だと怒鳴られてしまったのだった。

「昂然、私は諦めない。必ず記憶を取り戻す。そのためには「すてー!! だぅだぁだ!!」歓然!!この声はマイエンジェル!!」

しかし、声の方に顔を向けると、彼は驚き、固まってしまう。

「……色然、いつもの、御両親ではない?」

ステイルだ、と何度目になるかわからない返答をしながら、その長身の男は声につられてそちらに顔を向ける。
すると、ステイルの方がメチャクチャ驚くのだった。

「き、貴様は、アウレオルス=イザード!!」

一瞬だが、確実に時が止まった。

(しまった!!)

「あうれおるす、いざーど? 断然、それは、まさか私の名か!!?」

「クッ!!」

「整然、貴様!! 私の過去を知っているな!!」

アウレオルスがステイルをつかもうとしたその時、
インデックスもろともステイルは揺らいで消えた。

「……蜃、気楼?」

周囲にもう人影はいない。

「……茫然、逃したか」

ふつふつと怒りが心の奥底から湧き出てくる。
一瞬の邂逅だというのに、天敵に出会ったのを直感で感じた。

「……憤然、ステイルとは、やつの名か?」

しかし、何故か、あの赤髪の男が、あの少女を傷つけるとは、微塵も思わないのだった。













おまけ!!

電車の中で、美鈴は夕日を見上げる。
あまりに長居しすぎた。神奈川に帰るころはもう月が出ているだろう。

正直、今日は驚いた。
母親として、この過信を危険とも思うが、
上条がいるから、とりあえずは大丈夫なのだろう。
それにしても、




『上条君と一緒に暮らしてるなんて、よかったわね!!!』

『な、なにが!! だから!! それは、その赤ちゃんのために仕方なくだからなの!!』

『わかった、わかった。で、その赤ちゃんは一体どこの誰で、どうして美琴ちゃん達が面倒みることになったの?』

美鈴は、今まで同様あたふたしながら墓穴を掘る娘を期待していたのだが、
美琴は一瞬、ピクッと動いたあとに、まっすぐにその目を美鈴に向けて言った。

『…………ごめん、いくらママでも、あの子のために、それだけは話せないの』

その真剣な表情に、美鈴の表情は固まった。




それが数時間前。

案の定空に浮かんでいる月を眺めながら、
美鈴は庭でワインを口にしながら呟いた。

「恋人も、奥さんも飛び越えて、先にお母さんになっちゃったか」

たまに、その成長を直に見れないのが悔しくなる。
久しぶりに、旦那と話をしたくなった。










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