とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part20

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匿名ユーザー

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かおり



「なんて酷いお方なんですか!!
 そのトウマとやらは!!」

「そうよね!! やっぱりそう思うわよね!!」

そろそろ隣の泡浮と湾内が苦笑しているのに気がついて欲しい。
もう、日差しが大分傾いてきていた。
4人はレストランから場所を移して、学舎の園の喫茶店、その外の席でお茶をしていたのだった。
つまり婚后と美琴の叫び声は通行人に騒音として認識されている。

「まったく信じられませんわ!!」

「そうそう!!」

「こっちが一緒にいたいという気持ちも考えず」

「まったくまったく!!」

「自分勝手に好きなことを言って!!」

「そーだそーだ!!」

間に赤面もののセリフがあったのだが、美琴は気付かない。
なんていったって嬉しいのだ
最近美琴の回りの対応が雑なのだった。
こうやって上条の愚痴を聞いてもらおうとしても、
佐天は「そうですか~」と言いながらニヤニヤしたあと、いつの間にか自分が赤面する展開になるし、
白井なんて論外だし
初春は「たいへんですね~」と言いながら、パフェに感動したりパソコンで仕事したりしている。つまりは聞き流している。因みに、白井の美琴に対する愚痴でも同じ対応なのを美琴と白井は知らない。

とにかく、美琴は一緒に怒ってくれる人が欲しかった。
しかし、少しずつ事情が変わってきたのだった。

「こんなに一緒にいたいと言っているにも関わらず……」

「あ、ごめん、わたし一緒にいたいとか、言ってないんだ」

言えたら苦労しないのだった

「……そ、それでも御坂さんの家から御坂さんを追い出すなんて!!」

「え、えーと、自分から出て来ちゃってたり」

「うっ…………か、関係ない御坂さんを無理やり巻き込み育児の苦労を押し付けて……」

「家事も育児もきれいに分担してるし、わ、わたし、自分から手伝いたいって言った気が……」

「か、カンザキとやらを呼び寄せて御坂さんを余所にイチャイチャするなんて!!」

「……えーっと、別にイチャイチャしてなかったし、そもそも神裂さんは呼ばれたんじゃなくて自分から来たような~……あれ?」

と、いうことはつまり

「そ、それではそのトウマとやらにはなにも過失がなくなってしまいますわ」

それではおかしい、では何故自分はイライラしていたのだ?
誰に対して腹をたてていたのだ?

「…………あっ」

そっか

「わたし」

すぐに、否定して欲しかったんだ

「関係ないと、言われたくなかったんだ」

しばらく、音が消えていた。
それを打ち破ったのは、あの

パンッ

という威勢のいい扇子の音

「甘いですわ!! 御坂さん!! あなたらしくもない!!」


一方、

「お、お前らが話を聞いてくれるって言ったから話したのに、ふ、不幸だ」

上条はベンチの上でボロ雑巾と化していた。
青髪、吹寄、姫神が、どうかしたのか? と聞いてきてくれた。
だから、現状を説明した。
終わった瞬間にゴッド・デコとエロサタンに殺されかけた。
上条に同情するやつはいないのだった。

「で。御坂さんと住んでることは置いといて。何を悩んでたのか教えてほしい」

上条は、何も言わず起き上がる。
口を動かしたのは、少ししてからだった。

「……美琴に、無理させてたんじゃないかって思ってさ。アイツ、この夏休みほとんど遊びに出掛けてないんだ。実家にも帰ってない。
もし、オレたちが美琴と関わらなければ、アイツはもっと夏休みを楽しめたんじゃねーかって思って……」

夕日が上条の表情に影を作る。
そんな上条に、静かに声がかけられた。

「……違う。上条くんの悩みはそれじゃない」

3人が驚きの表情を姫神に向ける。
しかし、上条と他の2人は驚きの中身が異なる。
青髪と吹寄もそれには気付いていた。しかし、それを口にできなかった。
彼女のことを思って。

「ど、どういうことだ? 」

「……それは。上条くんじゃなくて。御坂さんが悩むような内容。上条くんが悩むなら……」

そこまで言って、姫神は口を閉ざす。
上条には、夕日が逆光となり、姫神の表情がよく見えない。
でも、その表情は、泣いているように見えた。

「……上条くんが。悩むなら。どうやって御坂さんと一緒にいられるか。とかになる」


風が吹く

扇子が婚后の髪をなびかせた。

「直接言葉にせずに、自分の考えをわかってもらおうなんておこがましいですわ!!
いつも、まっすぐに自分の考えを行動に移していた御坂さんらしくありません!!」

夕日が姫神の髪を焼く
彼女は凛と言い切った。

「正しいとか。迷惑とかじゃなくて。上条くんがどうしたいのかだと思う。そして。ダメもとで一回。御坂さんに頼んでみたらいい」

私なら、という言葉は飲み込まれた。


上条と美琴は素直ではなかった。
今回は単にどちらからでもいい、一緒にいたいと言えばよかっただけの話。
そして、それを望むものはもう1人いる。

夕日は神裂とインデックスにも降り注ぐ
とある二人がおいかけっこをしていた土手を神裂は歩いていた。

「ぱーぱ、まーま?」

「ぱっぱまんま? 早く食事にしたいと?
……この姿でもあなたは相変わらずですね。でももう少し待ってくださいね。今日は、御坂にありがとう、またね、パーティーですよー」

草がざわめく、
何かを、インデックスは感じ取った。

「御坂には感謝しなければいけませんね」

インデックスの瞳が揺らぐ。

「楽しみですね、明日からは私と上条当麻、そしてあなたの3人での暮らしが始まるんですよ!!」

それを言った瞬間、神裂の視界がぶれた。
頭部に衝撃を受けたのに気付き、平衡感覚を取り戻すより先だって、反射的にきれいな体勢で着地したのは、さすが神裂であるというべきだろう。
神裂は戸惑う。
なぜ、こうなったのかわからない。
目の前には、何本もの空を舞う巨大な黒い刃。
それを自在に操るは

「う~~~~~~」

赤面し、目に涙を浮かべ、
宙に浮く赤ちゃん。

いや、魔道図書館だった。

「だーーー!やーーーーー!めーーー!!」

全ての刃が神裂に襲いかかる。


「!!! インデックスが、泣いてる?」

美琴は倒れる椅子に目もくれず立ち上がった。
一瞬3人は驚いたが、静かに微笑む。

「御坂さま、是非行ってあげてくださいな」

「え?」

「その赤ちゃんが泣いているのでしょう? ママがいてあげないと可哀想ですわ」

「……湾内さん、泡浮さん……」

「御坂さん、今日は、心ここにあらずというようにお見受けしました。きちんと、自分の気持ちを伝えてきてくださいな。その後、機会があれば、また遊びましょう」

「婚后さん……ありがとう」

美琴は笑って、近くの建物を使い、飛んでいった。
走っていくことすらしなかった。
一瞬あっけにとられた3人は少しして微笑む。

「素敵、ですね」

「そうですね、うらやましいですわ」

「でも、少し悔しいです、御坂さんにそこまで思われるお友達なんて」

「「………………え?」」

「え?  なんです?」

上条はふと立ち上がると、顔を姫神から反らし別の方向に視線を向ける。
多摩川の方向だ。
姫神がその横顔に、静かに語りかける。

「いろいろ複雑に考えないで。上条くんがどうしたいかで動いた方がいい。その方が上条くんらしい」

上条は驚いた表情で姫神の顔を見た。
彼は微笑むと、再び顔を多摩川の方に戻す。
そして、言った

「前、美琴にも、同じこと言われたなぁ」

姫神の表情が固まる。
上条は何かを感じ、横を向こうとした。
しかし、背中から衝撃を受け、強制的に体ごと多摩川の方を向く。
それをした犯人の青髪が無理やり上条と肩を組んだ。

「あーあーカミやん!! 楽しそうやね!! 夏休みに嫁さんと赤ちゃん作って夫婦ごっことはさすがのボクもそこまで「う、うるせぇ!! そんなんじゃねぇよ!! 耳の近くでマシンガンのように大声出すな!!」のことは妄想でもしなかったわ。とにかくカミやんをその御坂さんと赤ちゃんが待っとるんやろ? さっさと帰ってあげてーや」

後ろを見ずに全力疾走してくれへん? 後ろを見たらぶっ殺すで。
なんて理不尽に対して文句を言う前に、
よーいドーンという吹寄の声と共に青髪に背中をおもいっきり叩かれた。
いつものセリフを口にしながら上条は走る。
未だに青髪がなにか叫んでいた。



上条は振り向かないでくれた


涙は吹寄の肩が受け止めてくれた


嗚咽は青髪の声が打ち消してくれた


そして、

一人の少女の恋が終わった。





「ねぇ、これから3人でどこかいかない?」

「お、ええね。いこうや」

「コイツが奢ってくれるって」

「あれ? 姫神はともかく吹寄にも奢ることになってへん?」

「細かいことは気にしないの。姫神さん、とことん付き合うわよ」

「…………ハンバーガー。20個。やけ食い」

「……容赦ないね。ま、新学期にどうやってカミやんを懲らしめるか相談といこか」




神裂は、紙一重で攻撃をかわす。

「どうしたというのですかインデックス!!」

「だぁーーーーーーーーー!!やぁーーーーーーーーー!!」

神裂は かわすことに専念する。
下手に反撃してインデックスを傷つける訳にはいかない。
しかし、先程より少しずつ刃の数が増えていく。
このままではいつか刃が神裂に届くだろう。
思考を重ねている間にも刃は増えてゆき、ついに神裂の頬に届いた。
そして神裂を包囲する。

しかし、その時間は一瞬で終わった。

「こら!!! 何してるのインデックス!!」

雷電が刃を消し去ったからである。
神裂とインデックスの間に降り立ったのは、
超電磁砲、御坂美琴だ。
神裂は助けられたが、 その美琴を止めようとした。
先程の雷撃が危うくインデックスを傷つけるところだった。
しかし、声をかけようとした神裂の動きは止まる。
それは、

「魔術は私達が周りにいて、いいって言わないとつかったらダメだって、何度言ったらわかるの!!」

その、怒気に飲まれたからだ。
インデックスも体をびくつかせ、ふわふわと着地する。
静かにインデックスに近づく美琴。
インデックスはつい目をつぶった。
そのインデックスを美琴は



そっと抱き上げた。


「どうして魔術を使ったの? 何か嫌なことがあったのかな?」

インデックスが目を開くと、
優しい、それでいて怒ってて、さらに悲しみを帯びた美琴の顔が見えた。






安心した。

「ま、むぁ~~ま~~、ピぇ~」

「ん? どうしたのかなー、よしよし」

ようやく神裂は気づく。
隣に上条が立っていることに。

「大丈夫か? 神裂?」

「え? ええ」

「悪いな、最近は魔術使うことがなかったんだけど」

「…………最近?」

「あぁ、最初は大変だったんだ。
ちょっと嫌なことがあったらすぐ魔術を使ってさ、しかもものすごいのを。
オレと美琴が全力で止めてたんだぞ」

そこで、ようやく気づく。
ここに彼女が到着したときの雷電がインデックスを傷つける訳がなかったのだった。
あの雷電は経験に則り、適切な加減で放たれたものだから。

「インデックス、なんで魔術使ったんだ?」

ふと、気づくと、上条は自分の横から彼女達の隣に移動していた。

「ぱ、ぷわぁ~~ぱ~~」

「お? どうしたどうした?」

「なんか今日は甘えん坊ね、どうしたんだろ?」

神裂はその光景に見覚えがあった。
ただ1つ違うとしたら、
あの子の表情だけだった。
だから……決めた。

「……美琴、ちょっと話したいことがあるんだ」

「……奇遇ね、わたしも話があるんだ」

少しの間お互いを見ていた上条と美琴だが、近づいてきた足音に顔を向ける。

「お二人に、話があります」



上条当麻、御坂美琴、そして神裂火織の3人はなぜかフローリングに正座していた。
上条の右隣が美琴、二人の正面に神裂が座る。ちなみにインデックスは上条と美琴の間に座り、二人のズボンとスカートをぎゅっと握りしめている。
どこかからかししおどしの「カコーン」という音が聞こえた。

「すみませんでした!!」

大和撫子の美しい土下座である。
当然2人は慌てた

「な、なんだよ!!」

「先ほど、イギリス清教より、連絡がありまして、至急戻るようにとのことでした」

「……神裂さん、許可取って無かったんだ」

「そのため、その子と上条当麻の面倒をみるということは、できそうにありません」

神裂は、美琴を見つめる。

「そこで、御坂にお願いがあります。二人の面倒を、このまま見続けてくれないでしょうか?」

「へ? え? はい、わかりました」

「即答かよ!!」

つい隣の上条がつっこみ、
それに、「だ、だって」なんて応える美琴。
そんな二人を見つめていた神裂は、微笑み、立ちあがる。
何故か口論になっていた二人はそこでようやくケンカをやめた。

「それでは、失礼します」

「へ? もう行くのか?」

「1泊くらいしていけばいいのに」

「いえ、仕事がたまっていますので」

「……神裂、仕事も置いて来たのかよ」

「それでは、また会いましょう、インデックス」

そう言って、赤ちゃんに顔を近づけた神裂の顔が驚きに染まる。

「かおり、よししー」

神裂の頭をなでなでするインデックス。

(……まったく、敵いませんね)

「ありがとう、インデックス」

そうして、彼女は窓から飛んでいった。

「……って、窓はこのまま放置かよ」

「……そういえば、当麻、話があるとか言ってなかった?」

「ん? あぁ、さっき美琴が即答した神裂のお願いと同じさ」

「なんだ、それか」

「で、美琴たんの話ってばなによ?」

「たんいうな。さっきわたしが即答した神裂さんのお願いよ」

「同じかよ」

「同じね」

真顔のまま話していた二人は、そこで笑いあった。


月光が差すビルの屋上。

「おっす、ねーちん」

暗闇の中から音もなく出てきたのは、
金髪に青いサングラス、 アロハシャツという、「胡散臭い」を体現した男だ。

「学園都市に来るんだったら前もって言って欲しかったぜい。そうしたらオレが新兵器『堕天使エロメイド防御力30%ダウン』を貸してやったんだがにゃー」

「土御門……ありがとうございました」

「……は?」

土御門は真顔になった。
彼の想定ではここで真っ赤になった神裂を拝みながら、彼女の突っ込みモーションを回避。
それが「ありがとうございました」とは不穏である。
まさか、今までありがとう、てめえのことは忘れないからさっさと地獄に行けコノヤロウってことなのか?

「……どうして顔色がサングラスと同じになってるんです?」

「ま、待ってくれ、ま、まだオレにはやることが……」

「は、はぁ」

「……コホン、ありがとうってどういうことだ? 感謝されることした覚えは無いぜよ」

「……今まで、私の恩返しに付き合ってくれたことへの礼ですよ。彼への恩返しの方法がわかったんです。彼とインデックスと……御坂の平穏を、全力で助けることです」

闇が静寂を強調する。
最初は動揺していた土御門は、
少しの間、言葉を真剣に考えた。
しかし、

「……ねーちん、いいんだな?」

そんなありふれた言葉しか出ない。
月光が、神裂の瞳に浮かぶ雫を光らせた。

「はい、私は、彼に感謝しています。……彼は、始めて、私を……」

不幸(幸せ)にしてくれたのだから。

















同じく、月光が降り注ぐ研究室。

「……ついに、ついに、完成したか」

かつて幻想御手を作成した女性の瞳が暗闇の中で光る。

「フフッ、フハハ、ハーッハッハッハッハッハッハッハッ!!!!!!」

下着姿な彼女に対し、ツッコミ役が誰もいないことを嘆きつつ、
このあたりで今回は終わりとします。











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