とある魔術の禁書目録 自作ss保管庫

Part13

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― 分岐点 ―


時は遡って同日7時過ぎ、上条宅

「お前…土御門?なんでまたこんな朝早くに?」
「よっカミやん。朝も早いが、元気かにゃー?」

上条が休日にしては珍しく朝早くに目を覚まし、朝食も食べられず、何をするかで暇を持て余していた時に上条の家を来訪したのは、彼と同じクラスメートでデルタフォースの一角、土御門元春だった。

「……お前がこんなわけのわからねータイミングで俺に会いにときは大体、妙な厄介事をもってくるよな」

上条の言った通り、土御門が上条の元によくわからないタイミングで来る時は大体厄介事絡みだ。
それは彼、土御門が魔術、科学の今の世界を分かつ両陣営から息のかかっている多重スパイという背景があるからなのであるが…
とにかく土御門がもってくる厄介事ではろくな事が起きたためしがない
いきなり眠らされて強制イギリス行き然り、飛行中の超音速旅客機からの落下然り。

「いやー、相変わらずカミやんは察しがよくて助かるにゃー。全くもってその通りぜよ」
「はぁ……で、今回は一体どういう厄介事なんだ?できたら短期間で終わるものがいいんだが…」

今の上条には今までと違って美琴がいる。
だから長期間にわたるものや、外国へ渡ってくれなどというものはできる限り御免被りたかった。

「いや、残念ながら今回のはそれは無理だ。……というか、わからないと言った方がいいかもしれない」

突然土御門の口調や雰囲気がいつものふざけたものではなく、真剣なそれになる。
その変化を肌で感じ、彼の言葉を聞いた上条は一瞬、背筋が凍る。

「何…?」
「おっと、だからと言って嫌だとは言わせないぜ?……まぁ、カミやんには断れないだろうがな」
「……一体何が起きたってんだよ、もったいぶってねぇで教えろよ」
「じゃあ、今回起きた事件の内容を単刀直入に言おうか。以前ここに居候していたシスター、インデックスがさらわれた」
「何だと!?」

インデックス、以前上条の家に居候して、その歳以上の旺盛すぎる食欲で上条家の家計をこの上なく圧迫した張本人てある少女。
そして彼女がもつ完全記憶能力で、十万三千冊もの魔術世界においては非常に危険な魔導書をイギリス清教に記憶させられた悲痛な過去をもつ、銀髪シスターである。
彼女は戦争を終えた後は、フィアンマによって持ち去られた霊装で多大な負荷をかけられたため、静養のために学園都市には戻らずイギリスに残っていた
無論、それは新たな首輪などをかけられないように、彼女の身の回りの世話役をステイルと神裂がするという上条が出した条件の下での了承だった。
上条とステイルは決して仲はよくない。
だが、インデックスのためという状況下ではステイルはとても上条が信頼できる人間ではある。

「あいつは…ステイルは何してたんだよ!!」
「あいつはちゃんと任務を全うしてたさ。……だが一旦外出許可のでたインデックスと教会の外をでたところを、インデックスを狙う複数の手練れの魔術師に狙われたらしい。あいつは今意識不明の状態だ」

ステイルの得意とするルーンの魔術は周りに貼り付けたルーンの札の枚数に比例する。
なので準備万端の状態で戦いをする場合は遺憾なくその実力を発揮できるが、逆に奇襲などをされた場合、体術の得意でない彼は案外脆い。
さらにもう一人の付き人である、絶大な戦闘力をもつ聖人の神裂はその時は別の任務のため外国へ飛んでいたらしい。
つまり敵はそれを踏まえた上で、インデックスに付いているのがステイルだけの時を狙ったのだろう。

「……」
「そこでだカミやん。お前はイギリスへ渡って、事態の収拾にあたってもらいというのが上からの依頼なんだが…どうだ?」
「……お前は始めに期間はわからないと言ったな。それは事態の収拾がつき次第ってことか?」
「あぁ、場合によっては数日で帰れるかもしれないし、数ヶ月もかかるかもしれない。因みに今敵の情報はほとんどと言っていいほどないらしい。……だから、短期間ってのは恐らく無理だ。長期間になるのを覚悟しろよ」

敵は奇襲とは言えステイルを打ち負かす程の手練れ。
しかも恐らく、インデックスの守りが薄い時を狙って襲撃をかけるあたり、用意周到に準備をしているだろう。
滅多なことでボロは出さないと思った方がいい。

「もっと言うと今の必要悪の教会には、未だに戦争の事後処理に追われてる奴も少なくない。今回の事件も大方フィアンマに心酔してるやつらの仕業だろうしな。かく言う俺もその事後処理に追われている内の一人なわけだ。だからここでカミやんの出番ってわけだ」
「…………わかったよ、行くよ、俺。どうせ俺には拒否権も無いんだろうけどよ」

本当に拒否権などもなかったたろうが、そんなものはなくても上条は行っただろう。彼にとってはインデックスも彼女の美琴と並ぶ程大切な存在だ。
さらに今恐らくインデックスは助けを求めている。
上条にはこれだけでも決意の決め手になり得る。

「わかった、その件に関しての詳細な書類などはお前に渡しておくから自分で目を通しとけよ?あと、こっちで用意した飛行機の出発は明日の昼頃だ。……しばらく離れるわけだから部屋の掃除でもしておくといいにゃー」

それだけ言うと土御門は何事もなかったかのように上条に背を向け、家の玄関から立ち去った。

「またイギリス、か。……アイツ怒るだろうな」

こうなると気になることと言えばやはり美琴のことである。
以前、上条は美琴に対してある約束事をして、さらにバレンタインの日でも心の中である誓いをした。
今回のことはそれが一度だけでなく二度も破られることになる。
これはもちろん喜ばしいものではない。
むしろ簡単に決めたにも思われるが、あの選択は苦渋の選択だったと言える。
今上条にとっての美琴との約束はほぼ"絶対"に近いのだから。

「今日は美琴は約束があるんだったよな……じゃあやることないし、土御門の言うとおり部屋の掃除でもするかな」

今日約束があるという美琴に上条がこんな朝早くにこのことを教えたら、自惚れじゃなく、まず間違いなく自分のもとに来ると上条には断言できた。
だから今は連絡するべきではない。
美琴には自分だけじゃなく彼女の友達ももっと大切にしてあげてほしいと上条は願っていたからだ。

「…って土御門の言うとおりだと今日で、しばらくは学園都市ともおさらばじゃねぇか。戦争の時の二の舞にならないようにちっとばっかしキレイにしておくか」

先の戦争の時には、いきなり土御門にイギリスにほぼ強制で連行され、遠出のための掃除や準備なしに二週間以上も部屋を空けたため、帰ってきた時の部屋の状態が凄まじかった。
ものは辺りに散らかり、インデックスの食べ散らかした食べ物のカス、被りに被った埃。
どれも処理するのが大変であった。
上条はその以前の部屋の惨状を頭に思い浮かべて、早速部屋の掃除へと取りかかった。

同日17時頃、上条宅前

美琴はファミレスで後輩達と別れ、ようやく上条の家に着いた。
ファミレスから上条の家までは遠くはないが、近くもない距離であり、美琴は走ってきたがすぐには着けず、多少の時間はかかってしまった。

「やっと着いた…えと、ここでいいのよね…?」

彼女が上条の部屋に行ったのはホワイトデーの一度きり。
若干の不安を覚えつつも美琴は部屋のインターホンを押す。
ピンポーン、というインターホンの無機質な音がなり、少しの間をおいて部屋の中からバタバタと人の動く音が聞こえた。

「ガチャ……あれ?美琴?なんか早くないか?」
「当麻が急ぎの用だって言うから、ちょっと言って抜け出してきたのよ!」
「はぁ…まぁいいけどよ。とりあえず中に入れよ」

上条はため息混じりに応対して、美琴を部屋の中へ招き入れる。
そのおざなりとも言える対応には美琴もムッとくるが、ここは場所が場所なだけに電撃はなんとかこらえ、部屋へと足を運ぶ。

「お、お邪魔します……って、あれ?なんか前よりも妙に部屋片づいてない?」
「ん?あ、あぁまぁそうだな…」

上条の部屋は大掃除でもしたのかと思うくらい片づいていた。
前には乱雑に置かれていた雑誌やマンガ類は本棚にきちんと整理整頓されて置かれ、埃の被っていた家具類には今は全く被っていない。
あとは生活に必要最低限の家具の家具以外はみな片付けられ、以前彼女が来た時に比べてなんとも殺風景な部屋になっており、ただの掃除にしては片付けられ過ぎている。
これだけ物を片付ける理由。
美琴には一つしか考えられなかった。
そして極めつけは部屋の隅に置かれている旅行用の大型のカバン。

「アンタまさか…またどっか行くとか言うんじゃないでしょうね?」
「………」

上条は何も答えない。
ただ美琴からの視線から目を逸らし、座れと言わんばかりにガラステーブルの横に座布団を置き、その対面に上条が座る。

「ちょっと……そうなの!?なんとか言いなさいよ!!」
「……とりあえず座ってくれ」
「はぁ!?アンタ、こんなときでもはぐらかすわけ!?私はアンタの彼女なのよ!?ちゃんと話しなさいよ!!」
「ちゃんと話すから!!…とりあえず今は座ってくれ」

上条の怒鳴り声に感情が高ぶっていた美琴も気圧され、上条の言うことをきいて彼の対面の位置に座る。
しかし、それでも彼への厳しい視線は止めない。
そして上条を睨みつけつつ、彼の言葉を待つ。

「……お前の想像通り、俺は明日の昼頃に学園都市を発ち、イギリスへいく。しかも今回はすぐには帰ってこれそうにないらしい」
「ッ!!」
「何でか、とかお前なら思うよな。理由は今イギリスにいるインデックスがさらわれたらしい」

美琴とインデックスは二学期が始まってすぐの日以外にも何度か顔を合わせている。
そして先の戦争の時、上条を助けに美琴がロシアに渡り、その戦争に何で彼が絡んでいるのかを知る過程で、上条にとって彼女が大切な存在であることも知った。
さらにその時魔術の世界の存在も知り、それとインデックスの関係性についてまではまだ美琴は詳しくは知らないものの、それでも上条が今回イギリスへ行く大義名分のようなものは何となく理解できた。
しかし言ってしまえば外国のことは所詮外国のこと。
理解はしても納得はできなかった。

「それでも…それでも、それは当麻が行かないとダメなことなの?確かにあの子が当麻にとって大切な子ってのは知ってる。でも向こうの人達だけじゃ解決できない問題なの?」
「……俺の右手、幻想殺しはあらゆる異能の力を打ち消す。それはあっちの世界でも例外じゃない。だからこの俺の力が必要になるときがあるかもしれない」
「でもそれはあくまで可能性の話でしょ?当麻が絶対行かなきゃならないなんてことにはならないじゃない!」
「……確かにそうだ。でも俺はインデックスが誰かに狙われ、誰かの助けを求めてるなら、そんな話は抜きでも行きたい」
「……それで当麻が傷つくかもしれないのに?」
「あぁそれでもだ」

十月のある日の夜の上条の姿を思い出した。
体の所々に電極や包帯をつけ、ボロボロになりながらも一つの信念に基づいて"仲間"を助けに戦いに向かった彼の姿を。
上条は無茶や無謀のように思える問題にも諦めず、立ち向かう。
誰かが助けを求めているなら、例えそれがどこの誰とも知れないような人でも喜んで命懸けで助けにいく。
自分の時もそうだった。
後から話を聞けば、一方通行と戦ったあの日の前日では"今"の彼と自分とは初対面だったらしい。
そして出会って一日の"他人"を救うために本当に命懸けで学園都市最強と戦った。
確かに上条は今は自分を大切に思ってくれているだろう。
実際大切にされている、愛されているという自覚はある。
そんな今でも、やはり彼の行動理念は変わらない。
大切であるはずの自分を置いていってでも、助けを求めている人のもとへ行く。
それが上条当麻という人格を支える源。
心底納得したわけではないが、そんな彼を止められるわけがなかった。
もし自分に同じように、例えば大切な後輩などが狙われれば、彼に止められようとも助けにいくだろうから。
彼の助けに行きたいという気持ちが多少なりともわからなくもなかったから。

「そう…私が何を言っても行くのね…」
「………ごめん」
「別に謝罪の言葉なんていらない。でも一つだけ、これだけは約束して」
「なんだ?」

彼には何を言っても止められない。
自分がついていくと言っても、彼の性格から考えてほぼ確実に拒否されるだろう。
自分が上条の立場でも同じことを言うだろうから。
だから、だからこそのたった一つの約束だけはさせる。

「当麻は絶対生きて私のとこに帰ってくること。いくら誰かのためとは言え簡単に命を投げるようなまねはしない。わかった?」

怪我もせずに無事に帰ってこいと言うのも彼には難しい相談だろう。
だからせめて、生きて帰ってくると約束させる。
待つ女なんて柄でもないし、その待つ時間はとても心苦しいと美琴は思う
でも、生きていれば、また会える。
生きてさえいれば怒ることも、話すことも、笑うこともできる。
それは美琴が出せる最低条件。

「あぁ、約束する…」
「……あと、浮気は厳禁だからね」
「しねぇよ!大体、俺はいつも事故だって言ってるだろ!」
「アンタのは事故とは思えない頻度なのよ!……ったく、私みたいな可愛い彼女がいるんだからしっかりしてよね」
「自分で可愛いって言うなよ…」
「あら?当麻が前に可愛いって言ってくれたからじゃない?」
「ぐっ…いや、それは俺が言うからいいのであってだな…」
「じゃあ私は可愛くないのね?そっか私は可愛くないのかぁ…軽く傷つくなぁ…」
「……あぁもう!!お前は可愛いよ!俺が悪かったよ!」

上条のヤケクソ気味な対応を見て美琴は笑う。
さらに楽しそうに笑う美琴に便乗して上条もまた笑う。
そこに先ほどまでの重苦しい雰囲気は既になく、いつもの彼らのそれがあった。
しばらく会えなくなる二人だから。
今ある時を楽しむように。
今ある時を惜しむように。


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