中途半端な防御カード

防御カードについて


「攻撃」という戦術があるならば、「防御」という戦術もあるものである。

遊戯王OCGにも防御主体の戦術が多数存在し、当然その場合は防御用のカードがデッキに大量投入されることになる。
ただ、攻めなければ勝利できないことにも変わりないため、基本的にこれらの戦術は自分の守りを固めながら相手をジワジワと追い詰めていくタイプのものが多い。



もちろん、防御主体の戦術も立派な戦術ではあるのだが、その性質上相手から嫌われやすく、何よりアニメでこのような戦術を見せられても画面が映えない。
作中人物にとってもそれは同じであるようで、例えば5D'sで登場したチーム太陽は、《眠れる巨人ズシン》召喚のための時間稼ぎ兼目晦ましとしてロックバーン*1を行っており、つまらないと感じた観客から罵倒されていた。
防御主体の戦術が登場する場合は、基本的に逆転勝利するカタルシスのための「かませ」として登場している。

しかしその一方で、主人公のピンチがなければ盛り上がりに欠けるのもまた事実である。
そのため、防御主体の戦術の登場こそ多くないのだが、防御用のカードは多く登場する。

ただこれも、その展開自体に問題があるわけではない。
問題なのは、防御カードの登場があまりにも多いことと、その効果があまりにも中途半端なことである。


頻発に関する問題


登場の多さで起こる問題としては、逆にピンチが演出できなくなることが挙げられる。

CM前の引きや次回までの引きとして絶体絶命の状況を見せられることはよくあることだが、それを防御カードで防ぐ展開があまりにも多いと、「どうせまた防御カードを使って凌ぐんだろ」としかならないだろう。*2
例えば、【遊馬vsナッシュ】戦でのナッシュは「終わりだ!」と度々主張しながらもその度に遊馬の御都合防御カード*3に防がれてしまっており、脚本という運命に流され続けた男であることが強調されていて非常に惨めであった。*4



そして展開だけでなくその内容までワンパターンとなっており、例えば5D's以降は「効果ダメージを防ぐ」系統のカードが急増している。
基本的にデュエルのダメージは戦闘ダメージであり、効果ダメージはあくまでサブ的なダメージの筈なのだが、それでも多い。
5D'sの場合は常駐する《スピード・ワールド・2》にダメージ効果があることも影響しているのだが、そういったものがあるわけでもないゼアルでも何故か多かった。

これについて一応の擁護をしておくと、アニメでの初期ライフが4000であるという事情が挙げられる。*5*6
OCG目線で見た場合、この数値ではバーンデッキ*7の餌食になるため、効果ダメージを防ぐカードを入れるのは当然というわけである。

実際、ゼアルではダメージを与える効果が多く、特に「攻撃力分のダメージを与える」系統の効果を持つカードが異様なまでに多い。*8
まぁ、この事実は「効果がワンパターン」という別の問題の結果として生じたものでしかないのだが。



中途半端さに関する問題


効果の中途半端さで起こる問題としては、デュエルが八百長や猿芝居に見えてしまうことが挙げられる。*9

ダメージを完全に防ぐカードを所持しているにもかかわらず、「ダメージを減らす」系統のカードを使っていれば、まるでわざとダメージを受けてピンチになっているようにしか見えないだろう。
ゼアルの場合はダメージを受ける度*10オーバーリアクションで無駄に吹っ飛ぶため、八百長要素が非常に強まっている上にワンパターンすぎてとにかく諄い。*11

なお、この「ダメージを減らす」系統のカードは、視聴者から「劣化和睦」とも揶揄されている。
これはOCGに古くから存在する《和睦の使者》*12というカードの下位互換になっているためで、仮にそのままOCG化されても存在価値のないカードにしかならないのである。
もちろん、「ダメージを防ぐ」という意味で下位互換であったとしても、他の効果によって個性が出せているのであれば下位互換にはならないのだが、それでも「劣化和睦」となるカードの登場は後を絶たない。(その理由はこちらも参照)



ゼアル特有の八百長要素としては、他にも「自らライフを減らすために中途半端な防御カードを使う」ことが挙げられる。

その代表例が遊馬の使用する《CNo.39 希望皇ホープレイ》であり、このモンスターは「自分のライフが1000以下」でないとまともに使用できないため、ライフを減らしておかなければならないのである。
その結果、一時期の遊馬のデュエルは「中途半端なカードでライフを1000以下まで減らしておく」 → 「ホープレイを召喚して1ショットキルで逆転」という流れが完全にパターンと化してしまっていた。
同じことは、《CNo.32 海咬龍シャーク・ドレイク》や《H-C エクスカリバー》にも言え*13、使用者のシャークゴーシュにも露骨なライフ調整が見られる。

そしてこの問題は防御カードに限った話ではなく、自らライフを減らすというより露骨な展開も誘発している。
例えば、遊馬の使用する《オーバーレイ・オウル》の効果はかなり弱い*14のだが、何故かその効果の発動にはライフコストを必要とする。*15
結果として、遊馬はその時点で1200あったライフを600まで減らし、《CNo.39 希望皇ホープレイ》による1ショットキルに繋げていた。*16

ついでに言うと、《オーバーレイ・オウル》は相手モンスターの「効果をなかったことにする」効果を「なかったことにする」ために用意された新規カードである。*17
もうなんというか、構成が稚拙すぎるとしか言えない。


受け継がれる負の伝統

先ほど「ゼアル特有」と述べたが、この問題は後の遊戯王VRAINSにも受け継がれてしまっている。
こちらも主人公の遊作などが使用するスキル*18である「ストームアクセス」の発動条件が「ライフ1000以下」であるため、前述した問題と同じ問題が起きているのである。

問題を起こしたスタッフがVRAINSでものさばっている以上ある意味必然なのだが、進行する一方の腐敗を実感するのは、なんとも哀しい。
ゼアルで外されたたがが再び嵌め直される日は来るのだろうか?


参考データ


以下はゼアルで初登場した中途半端な防御カードの一覧である。

ただ、何を以てして「中途半端」とするかには主観も含まれてしまう上に、そもそも全てを挙げだすとキリがないため、ここでは「自分へのダメージを防ぐ効果を持つカード」に限定し、ライフを守り切れていないカードは赤字にしている。

そして範囲はあくまで「自分へのダメージを防ぐ効果」であるため、「相手へのダメージのみを防ぐ効果」「ダメージ分のライフを回復する効果」「モンスターの破壊を無効にする効果」等は含めていない。
「攻撃を無効にする効果」のように、間接的にダメージを防ぐことになる効果も同様である。
また、効果はアニメ版を基準にしているため、ゼアルで初登場したカードがOCG化する際に同効果が追加されていたとしても、下記のリストには含めない。



なお、その総数は62枚
基本的にピンチの時にしか使われない上に、そこから更に範囲を限定してもなお多く、やはり使い道に乏しい下位互換カードが目立つ。
効果の性質上2回記されているカードも存在するが、それらは1枚分として扱っている。


カード名 効果の条件
ダメージを0にする
《クリフォトン》 自身を手札から墓地に送ってライフを半分払う
《テイク・オーバー・ダメージ》 自分フィールドのエクシーズモンスター1体の攻撃力を
ダメージ分だけダウンさせる
《デスパレート・ガード》 自分フィールドにモンスターが存在しない場合に
ライフを半分払う
《ハイパー・バーニング》 ライフを半分払う
ダメージを半分にする
《No.80 狂装覇王ラプソディ・イン・バーサーク》 装備されている自身を破壊して墓地に送る
ダメージを受ける代わりに何かをする
《CNo.80 葬装覇王レクイエム・イン・バーサーク》 装備されている自身を墓地に送る
戦闘ダメージを0にする
《インフェクション・ミーディアム》 《インフェクション・バグ・トークン》の戦闘時
《陰謀の盾》 装備モンスターの戦闘時
《エクシーズ・リベンジ・シャッフル》 エクシーズモンスターが破壊され墓地へ送られた時*19
《オンボロボ・ヤカンガルー》 自身を墓地に送る
《攻撃の無敵化》 バトルフェイズ
《ZW-不死鳥弩弓》 自身が装備カードになっている
《七皇転生》 「CNo.10X」を素材とした
エクシーズモンスターが破壊される場合*20
《タスケルトン》 自身を墓地から除外する
《ダメージ・ポット》 戦闘ダメージを受けた時*21
《デプス・ガードナー》 直接攻撃で戦闘ダメージを受けた時*22
《ドラゴン・シールド》 自身を装備したモンスターの戦闘時
《No.2 蚊学忍者シャドー・モスキート》 自身が攻撃対象になった時に素材を1つ取り除く
《No.6 先史遺産-アトランタル》 自身の効果でライフが1000以下になっている
《BKベイル》 自身を手札から特殊召喚する
《バトル・リスタート》 モンスターとの戦闘時
《FNo.0 未来皇ホープ》 自身の戦闘時
《妖精ジョー》 自身が戦闘で破壊された時*23
戦闘ダメージを無効にする*24
《オフサイド・トラップ》 自分の魔法&罠ゾーンにカードが存在せず、
自分フィールドのモンスター1体が戦闘破壊された時*25
《CNo.43 魂魄傀儡神カオス・マリオネッター》 《魂魄トークン》の戦闘時
《ギミック・ボックス》 自身を特殊召喚する
戦闘ダメージを半分にする
《エスケープ・ルアー》 相手の攻撃対象を変更する
《幻蝶の守り》*26 相手モンスター1体を守備表示にする
《No.102 光天使グローリアス・ヘイロー》 自身が破壊される時*27
《ハーフ・アンブレイク》 選択したモンスターの戦闘時*28
《フォトン・サークラー》 自身が攻撃された時
《ミラーシェード》 ライフを半分払う
戦闘ダメージを減らす
《奇策》 手札からモンスターを墓地に送る
《とりひき召喚》 ダメージを500ダウンさせて
攻撃力1000以下のモンスター1体を特殊召喚
《プリベント・リボーン》 戦闘ダメージを1000減らして
戦闘破壊されたモンスター1体を特殊召喚*29
相手が代わりに戦闘ダメージを受ける
《先史遺産クリスタル・エイリアン》 自身の戦闘時に素材を1つ取り除く
《栄光の七皇》 選択したモンスターの戦闘時
《神秘の鏡》 攻撃宣言時
《No.2 蚊学忍者シャドー・モスキート》 幻覚カウンターが置かれたモンスターに攻撃された時
《No.105 流星のセスタス》 自身の攻撃力を上回るモンスターとの戦闘時に
素材を1つ取り除く
《バイバイダメージ》 自分フィールドの攻撃表示モンスターの戦闘時
《バトル・ラッシュ》 相手モンスターとの戦闘時
効果ダメージを0にする
《アリバリア》 自身を手札から発動する
《エクシーズ・チャージ・アップ》 効果ダメージが発生した時
《エクスチェンジ・パワー》 自分フィールドのモンスター1体の攻撃力を
ダメージの数値分だけダウンさせる
《CNo.106 溶岩掌ジャイアント・ハンドレッド》 自身がフィールドに存在する
《ゴゴゴ護符》 自分フィールドに「ゴゴゴ」が2体以上存在する
《シャイニング・スライ》 ダメージを受けるプレイヤーの
モンスター1体をリリース
《白き盾》 罠カードの効果による効果ダメージが発生した時
《ダメージ・リバウンド》 相手がダメージを与える効果を発動した時
《ドリーム・シャーク 自身を墓地から特殊召喚する
《FNo.0 未来皇ホープ》 自身の素材を1つ取り除く
《リフューズ・ハンド》 自分フィールドに「ハンド」モンスターが存在する
効果ダメージを無効にする*30
《アチャチャチャンバラー》 自身を手札から特殊召喚する
《キック・バック・ライフ》 効果ダメージが発生した時
《ZW-玄武絶対聖盾》 自身が装備カードになっている
《ダメージ・オルトレーション》 ダメージの数値と同じ攻撃力のモンスター1体を
デッキから特殊召喚する
《ダメージ・リアクター》 自分フィールドのモンスター1体の
攻撃力を800アップ
《フォトン・プリヴェント》 自分フィールドに
「光子」または「フォトン」が存在する
効果ダメージを受けない
《弾性空間》 相手の効果によるダメージが発生した時
効果ダメージを半分にする
《ダメージ・ダイエット》 なし
《プリベント・ドロー》 自分は1枚ドローする
相手が代わりに効果ダメージを受ける
《弾性空間》 相手の効果によるダメージが発生した時
効果ダメージを受ける代わりに何かをする
《サルガッソの灯台》 自身を手札から墓地に送る
《プリベントマト》 自身を墓地から除外する





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最終更新:2023年08月08日 14:23
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*1 守りを固めた状態で相手のライフをジワジワ削る戦術

*2 例外もあるにはあるが

*3 そのターンでたまたまドローしただけのカードも含む

*4 ナッシュに露骨なプレイングミスがあったので尚更

*5 OCGでの初期ライフは8000だが、アニメでも同じ数値にすると大味な展開になりやすくなってしまう

*6 1対1のデュエルでない場合は初期ライフが増えることもある

*7 効果ダメージを与えることを主軸にするデッキ

*8 全部で25枚もある。「攻撃力の半分」や「攻撃力の合計分」も含めるなら41枚

*9 5D'sの場合は「出来レース」と言った方が近いか

*10 場合によってはダメージを受けていなくとも

*11 桑原の魔の手にかかった原作映画も吹っ飛びまくっていた

*12 戦闘によるダメージと破壊を完全に防ぐ罠カード。効果によるダメージや破壊には無力であるため、パワーカードというわけではない

*13 エクスカリバーの条件は「ライフ500以下」

*14 自分のターンに相手のエクシーズ素材を1つ取り除くだけ

*15 コストというものは本来強力なカードにリスクとして設けられるものである

*16 正確に言うと《アチャチャアーチャー》召喚時のついでとして事前に500ダメージを与えていたが、最終的には4000のダメージを一気に与えている

*17 相手モンスターの効果が発動できる状態のままだと、ホープレイの1キル効果が発動できなかった

*18 ルールとして認められた盤外戦術

*19 戦闘ダメージは戦闘で破壊される前に生じるものであるため、テキスト通りだと効果の意味がない

*20 戦闘ダメージは戦闘で破壊される前に生じるものであるため、テキスト通りだと効果の意味(ry

*21 発動トリガーと効果が矛盾している

*22 発動トリガーと効果が矛盾(ry

*23 戦闘ダメージは戦闘で破壊される前に生じるものであるため、テキスト通りだと(ry

*24 テキストの表記が統一されていないだけだと思われるが、一応「0にする」効果とは分けた

*25 戦闘ダメージは戦闘で破壊される前に生じる(ry

*26 パートナーの遊馬に対して発動した。例によってルールとの矛盾が発生している

*27 戦闘ダメージは戦闘で(ry

*28 書き換え前のテキストと書き換え後のテキストが存在するが、ダメージに関する処理はどちらも同じ

*29 戦闘ダメ(ry

*30 テキストの表記が統一されていないだけだと思われるが、一応「0にする」効果とは(ry