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中華匙
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匿名ユーザー
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中華匙 05/01/15
レンゲと呼ばれる中華匙がある。
小学生なら持手のところまで窪みがあることに着目して液体を流し素麺の水のように飲もうとして服を汚すわけだが、蓮華の花弁に似ていることが名称の由来であるそうだからそれなりに敬意を払って然るべき存在だ。
しかし正直に本音を言わせて貰えば、あれは「喰いにくい」と思う。余人がどう考えているか知らないが、手前はあの中華匙を信用していない。液体を掬って口腔に流し込むなら確かに適しているが、ぱらぱらにほぐれる焼飯を喰う場合、序盤は快調でも終盤になると掬えず、已む無く皿に口を付けて掻き込む羽目になる。
皿に口を付けることが許せない美意識から皿を傾けて無理矢理掬おうと努力する姿は、傍から見て痛々しいことが自分でも判っている。厚い縁を乗り越えて無事に積載されてくれたなら問題ないが、追い込みすぎて傾けた皿の上から飛び降りようとする奴等が居る。仕方がないからひとまず一箇所に集めて匙の裏で押し固め、一気に掬おうとしても必ず脱落する奴が居る。
それだけではない。そもそも液体を掬うのに適しているから深く設計されている。焼飯を掬って喰べる場合、歯や上唇が匙の中央を浚う事が出来ないのであって、だから喰べている最中は匙には張り付いた奴等が非常に汚く見える。上唇で強引に浚う為には鼻を隠すほど匙を垂直に立てねばならず、その際匙を持つ手は親指で眉間を擦らねばならないから間が抜けている。横に持って喰えば問題なさそうだが、その場合上唇で匙に吸い付いている姿を周囲に晒す覚悟が必要だ。
皿へ盛られた焼飯に箸を使うのも違う気がする。焼飯を喰う為には匙でもなく箸でもなく、塊を掬い易く押し固めることも可能で残党も落ち着いた処理が可能なフォークが最も適していると考えているのだが、かつて中華料理屋で「フォーク下さい」と申し入れたところ、把手に熊猫の絵がついた小さな御子様用フォークを渡された事が精神的外傷となっているから、仕方なく中華匙で喰べる焼飯の様式美とは如何なるものかを考えながら掻き込む。
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