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時計
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時計 03/06/19
腕時計には個性が出る。一点豪華主義と言って貧乏を丸出しにしている奴もいれば、真冬にダイバーズウォッチをしている奴もいる。風呂に入る時にダイバーズウォッチを外す奴もいる。つけたまま入ればそんなに見せびらかしたいかと笑われ、外せば防水の意味がないとやはり笑われる。だからダイバーズウォッチを普段の生活で装着しているのはとても勇気がある人であり、ただの馬鹿とも言う。
タイの土曜日チャイナタウンで買った邦貨およそ三百円程のネックレス型の時計をしていた。ネックレスとはいえ、ただのステンレスの長い鎖であるから姿勢を変えるとちゃらちゃら鳴ってうるさい。ことに猫背であるからそれが浮いていると「今姿勢が悪いのだ」と自然に気が付くのだが、何しろ三百円、実に十分元を取るまで使ったと思う。およそ三センチの天道虫の形をしたステンレスのケース、天道虫の触覚が大きく突き出ていて、それを頭の中央に寄せるとぱちんぱちんと鳴って羽が開く。中には一センチ半ほどの、女性用腕時計の小さい奴が納まっている。文字盤は黒灰色で数字のところには宝石らしくカットしたかに見えるガラス粒がくっついている。12のところだけ赤い粒で一応上下を間違えることはない。この三百円で買った時計の電池を交換する為には、千円払わねばならない。その度に理不尽な思いに囚われるのだが、最近めでたくぶっ壊れたのでもう気に病む必要はない。竜頭が知らぬ間に脱落して竜頭の付いていた細棒が曲がっており、文字の代わりに配置されていた粒が何故か全て自由に動き回っている。多分最初に外れたひとつが跳ね回って次々別の粒を解放したのだろう。傾けるとざらざらと鳴って下に押し寄せる。そしてこれは砂時計よりも役に立たない。何故ならば、全部の粒が綺麗に移動するわけではなくて、必ずひとつふたつ針と針の間に引っかかっているので、針が先へ進まない。壊れたのはそれだけかと仰せか。では問うが、竜頭を直し、文字盤の粒を一掃し、修復もしくは別の文字表示にする修理代に幾らかかると思うのだね。電池交換で千円だぞ。二度交換したから既に六つ買ってお釣りが来ている。この修理に本体幾つ分払えばよいのかね。
従って今、手前が持ち歩いている時計とは、懐中時計であって、大阪は四天王寺の古物市で買ったものだ。人差指と親指で輪を作るとそこにぴったりはまるサイズの蓋なし表裏ともガラス歯車発条その他機構が丸見えのローマ数字のものだ。最初に落とした際に裏蓋がぱかりと外れて慌てたが、よく見ると中の部品は一つも外れず平然と動いている。どうやら派手に見えるのは単なる仕掛けで、普通の機構に少しばかり何の役にも立たない飾りをつけてケースに押し込んだものらしい。
だから随分乱暴に扱った。ことりと机に置いただけで裏蓋が外れたときにはさすがに溝を爪楊枝でぴよよよよよとえぐったが、手入れと言えるのはそれくらいだ。しばらく使っていると段々外れなくなってきた。やはり溝の滓を除去したからだと満足して、ついでにそれならさらにぴかぴかにしてやろうと爪を立てて無理矢理裏蓋を外すと、外れ難くなっていた理由がわかった。単にゴミと錆びが接着剤になっていただけであった。
どうももう少し構ってやったほうがいいのではないかと考えていじくりまわして針を外してみると、くにゃりと曲がってしまう。この薄い針は一度曲がると二度と元の形には戻らないのであって、それをわかっていながらいろいろ試してみたが、どうしても別の針と干渉してまともに動かない。仕方がないので鋏で切り、金輪際絶対に針には触らないと誓いを立てながら元に戻すと、秒針が短針よりも短い。そして秒針を剣に見立てると中心が鍔になり、反対側に短く出ている柄のようなところ、こいつが短針よりも短い秒針に対して妙な角度がついている。つまり、短い短い秒針が遥か遠くに12を指した時、本来直線となっていて6を指すべき柄は4を指している。短い短い短い秒針が4を遠くに一生懸命指すと柄は8を指すものだから「へ」にしか見えない。そういうものを、毎日螺子を巻かなければならないガラスにひびの入った時計を何故使っているのか。もしかしたら手前はとても情が深い人間なのかもしれない。あるいは必死に元を取ろうとしている欲が深い人間なのかもしれない。欲が深いから情も深くなるのかもしれない。単に同じだけ深いだけかもしれない。情と欲が深い。これは合体させてはならんな。「情欲が深」黙れ。時計を相手に何を言っておるのかね。
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