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流れに乗る

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流れに乗る 2003/05/05

  迷子になる事を楽しむ一方で、迷子からの脱出方法の腕にも磨きをかける。

  初めて訪れた町で盛り場に吸い寄せられるのはもちろん偶然ではないし、駅に行きたいと思えばきちんと駅に着くことが出来る。ただこの技術は意識的に使うべきもので、しかもある程度経験を積まなければならない。原理は簡単だ。行きたいと思う方面、盛り場・官公庁・オフィス街・住宅地・寂れた田舎などの目的地に行くと思う人の後について行くだけでよい。

  これを沢木耕太郎で学んだ。学んだが、なかなか上手く出来なかった。ある時、なんとなく流れに乗ってふらふら歩いていると聞いた事もない大学に吸い込まれてしまった。そこで開眼したのだ。一人について行くのではなくて集団について行くということを。

  盛り場に行きたければ何となく盛り場に行きそうな雰囲気の若者について行けばいいし、固めスーツ姿の流れに乗れば自然と官公庁地区に出るし、柔らかめスーツ姿の流れに乗ればオフィス街に出る。夕刻カップルの流れに乗ると労せずホテルに辿り着ける。

  それでも失敗することがある。その失敗も何故かきわどい失敗が多い。

  暇だからどこかの大学で盗講でもしようと考えていた時、とある駅で若者がたくさん降りた。「これは大学だ」と思って手前も降りる。角を曲がったり信号の度に知り合いらしき人同士の挨拶が交わされる。少し変だと思ったのは年配の人がいつの間にか増えている事だ。それでも大学に着けば紛れ易いだろうと思って尚も歩き続ける。ところが。やがて皆が吸い込まれてゆくのはなんと、「某宗教団体の建物」

  何かの集会がある日だったらしい。危なかった。建物の天辺に十字でもあればすぐに分かろうものだが、ごく普通の建物で、辛うじて門横の表札に目を走らせると宗教であることが分かり「やばばばばばば」と思いつつ、とても不自然に通り過ぎて角を曲がって走って逃げた。この時は方角や太陽の位置、ランドマークなどすべて忘れて結構真剣に逃げたので結局本気の迷子になった。さんざんうろついて降りた駅とは違う駅に辿り着き、そのまま逃亡した。

  なんとなく盛り場に行こうと考えて騒いでいる学生風の集団について行った。手ぶらであるから安心していたら周りの雰囲気がどんどん寂れてゆく。一体どこに行くのだろうか不審に思うものの今引き返すと明らかに不自然なので仕方なくついて行く。何度横道に入ってリタイアしようかと思った事か。それでも半ば意地になってついてゆくとパチンコ屋。貴様等な、十何人でパチンコ行くなよ。行きがかり上、五千円ほど喪失した。

  とある外国にて、空港は冷房が効いていて長居しても不自然ではないので、空港に行きたくてバスを適当に乗り継ぎ、迷ったので大きな荷物を持っている集団について行くことにした。ところが段々降りてゆくではないか。空港に行くのではなくて空港から来た集団についてしまったのだ。このときは直ぐに降りて同じ番号反対方向のバスに乗ったところ無事に着く事が出来た。

  この件で学んだことはこう。

  「空港に行きたければ大きい荷物を持つ人について行けば良い。大きい荷物を持つ人が増えてくれば空港は近い。減ってくればその人の実家が近い」

  この技術を究めたならば、どんな町でも言葉が通じなくても恐れることなく振舞える。そういえばタイではスネークセンターに行こうとしてどこかの大学の食堂に突入した事もある。まだまだ修行が足りない。
 
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