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鍔 04/05/08

  高校野球でいつも気になるのは帽子だ。

  野球帽というものは既に完成された形であり、あとは色とデザインで勝負するしかないわけだが、智辨などの白いものを除いて大抵は黒か紺、それに校名イニシャルがあるだけで殆ど違わないからいっそマークの縫付サービス込みで高野連が独占販売すればよいと思う程の統一性を誇っており、そこに個性を見出すことは至難であるように見える。

  しかし子供の頃に野球帽を被っていたり、今でも草野球で被っていたり、野球をしなくともただ好きで被っていたりする人ならば、高校野球を見たら判るだろう。個性の主張は鍔でする。

  高校野球の放送で最も長く映るのは当然投手であり、これは各打者を総合した時間と一人で張り合えるわけで、しかも打者ならヘルメットを被っているから益々見分けがつきにくいのだが、投手の帽子の鍔の形は各人各様の折り曲げ方で精一杯の個性を主張しているように見えるのだ。望ましいという言葉で短髪を強制された彼らが見出す唯一の突破口だ。

  本人の顔に合わせてごく自然な形に曲を描いた線の鍔を作ることは非常に難しいのだが、それでも前日必死に曲がり具合を調整したりするのだろう。単純でいて洗練された曲線を作れなかった場合、あるいは作る気がない場合、曲線ではなくて中央で屈折しているもの、鍔の端だけ極端に曲げているもの、トタン板の如く不自然なまでに左右対称で波打っているもの、そこまで曲げると走者が見えんのではないかと心配になる角度のもの、これらの個性の主張はどうだ。投手が必死な顔であればあるほど鍔の角度が気になってくる。

  中には晴舞台の甲子園の為に用意された新品の帽子そのままを使っている場合もある。新品だから鍔が真横に一直線なのであり、これはこれでまた不自然に見えてこめかみがちくちく痒くなる気がする。ある程度使い込まれた帽子の鍔が本人の頭にぴったり合っているならばよいのだが、新品の帽子の鍔を曲げているからどこか違和感があるのだ。

  そういうわけで高校野球のニュースなどを見ると、投手の名前や高校名を覚えられなくとも、その鍔の角度で見分けがつく。また鍔の形を採点したりするのも楽しいが、あまりに印象の強過ぎる形の鍔にしている選手の高校は何故か早々に敗退してしまうので、変な形の鍔を見たければ地方予選がお勧めということだ。
 
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