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輪
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匿名ユーザー
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輪 04/06/15
煙草の煙で輪を作る。
漫画では当然のように「ふ」と言いつつ輪がぷかりと浮くのであるが、映画では見る機会が少ない。それでも煙草の煙で輪を作ることが出来るのは知られており、しかし具体的な方法を知る機会はあまりない。
大学生の頃に運転免許を合宿教習で取得した。その同期生十人の内九人までが煙草を吸う面子であり、中の一人が煙の輪の作り方を知っており、実際にそれを目の前で見て、どうせ昨日までは見ず知らずの他人であったし免許を取ったらもう会うこともなかろうという了解の上で発生した三週間以上の修学旅行的騒ぎの体験のひとつに、「全員煙草の輪を作れるようになる」という目標があった。
煙草の輪の作り方は彼によると五通りあるそうで、CD程の大きさの煙を「ぱっかん」と音を立てて作るのが最も派手で立派なものであり、しかしそのやり方は練習中であるとして誰も習得出来なかったが、小さい輪を連続で「ぽぽぽぽぽ」と出す方法は僅か数時間でほぼ全員覚えてしまった。
小さい輪の作り方は三通りあって、簡単な順に「頬をとんとんと叩く」「顎をかっくんと閉じる」「舌で押し出す」「腹筋で押し出す」がある。煙草の煙の輪の原理は空気の流れを利用したものであると心得ておればよい。点火した煙草の先を上に向けてゆっくり上下に動かすと極小の輪が見える。これを口で作ればよいわけだ。
煙草の煙の輪を作る時には、煙がある程度濃くなければならない。つまり一旦肺に入れてしまうと微粒子が肺組織に吸着して吐かれる煙は薄くなっている。つまり、肺に入れずふかすだけの喫い方で排出される煙が気持ち良く輪を作る為に必要で、しかしこれを繰り返していると常人でも確実にえづく。それでも一度こつを掴むと自転車の乗り方と同じで二度と忘れることはないから覚えておくのも悪くない。覚えておくと煙草を喫わない者でも冬の呼気で輪が作れる。
さて、輪を作るには煙を吐かねばならないが、息を吐いてはならないのが難しいところだ。息は吐かずに煙だけを出す。口の中に煙が溜まっていがらっぽいのを我慢して唇を小指一本が辛うじて入る大きさの丸形に窄める。間抜けな顔になるが最初はこんなものだ。ここで一切の呼吸を止めて頬をとんとんと叩いてみると、口の中の煙が少しづつ押し出されて気流の作用で小さな輪が出る。煙のある限り連射可能で、慣れると十発は続けられる。
これが出来たら次は口の中に溜めた煙を顎を使って押し出す。ここでは一層の間抜け面になるが、唇の形はそのままで下顎を下ろしてから「かっくん」と元に戻す。この時に口の中の容積が拡くなり、一瞬で縮むからその結果として煙が押し出され、唇の形がうまく窄まっていれば先程よりやや大きめでより濃い輪が出る。この方法では三発から四発程度発射可能だ。
そして次は間抜け面からの卒業だ。唇の形と輪を作るためにその最中は息を吐いてはならないこと、煙が充満している口腔を急激に閉じることを心得ると、顔の外形は動かさずに舌で排出を調整して輪を作る。この先は舌も使わずに腹式呼吸の要領で「っ、っ、っ、っ」とすれば勢いはないがゆったりとした輪が続けざまに出る。
しかしながら輪を作る場合、煙草がとにかく不味いのであって、いつも必ず輪を作っているのは格好付け過ぎの馬鹿である。なんとなくその場を持て余していることの表現としてここ一番で輪を発射出来るように練習しておけば、行き詰まった会話の糸口として活用出来る。ただし最近は禁煙が流行しているから相手を選ばねばならない。
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