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宿酔

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宿酔 03/03/13・14・15

  集中的に酒を飲んでいた時期があって、酒との付き合い方には一応馴れているつもりではある。

  酒を飲まない人は「宿酔」が如何なるものかを理解していないらしい。また飲む人でも宿酔などしたことがないと言い張る人もいる。通常一度も宿酔したことがない人は酒を飲む部類には入らない。 そして一度でも宿酔をしたことがある人ならばその苦しみ故死んだ方がましとまで思い、以降様々に宿酔対策を講じることになる。

  しかしまず宿酔がどんなに気分の悪いものか説明する必要がある。よく「あの感覚は説明出来ない」などと逃げを打っている人がいるが、文章を我が武器と決めた以上、手前は説明出来ないという言葉は絶対に使わない。説明出来なければそのような話の流れに持っていかない。では説明してみよう。

  まず酒を飲み過ぎてみる。個人差があるが、頭が勝手に四方八方へ振られるぐらいまで飲む。そしてそのまま寝る。起きるとめでたく宿酔だ。まず頭が痛い。特に後頭部が痛い。こめかみも痛い。この痛さはそう、かき氷のあれだ。かき氷を一気に食べると頭がきーんとするだろう。かき氷なら長くても十秒ほどで治まるが、宿酔はこの痛みが半日続く。そして頭は痛いが、それどころではない。こみ上げる嘔吐感は船酔いよりも凄まじい。どんなに頭が痛くても「吐く吐く吐く吐く」と呻きながら壁伝いにトイレか流しのどちらか近い方へ向かう。普通に歩くと痛む頭が上下して吐き気が増すので頭を揺らさず摺足で幽霊のように移動する。顔色もそれらしい。辿り着いた瞬間は何もしなくていい。そのまま出てくる。米粒。麺。青豆。人参。海老フライの尻尾。泡立つビール。泡立つ胃液。ここでやっと胸焼けを知覚する。「うええええ気持ち悪」このむかつきはオリーブオイルを一瓶一気に飲んだ時とほぼ変わりない。この頭痛、嘔吐感、胸焼けが半日続くのだ。これを体験したことのない奴が、この体験を語ることの出来ない奴が「お酒?好きです。結構飲めますよ」しばくぞお前。

  宿酔になってしまうとどうしようもない。宿酔を劇的に直す方法は有史以来まだ発見されてはいない。

  梅干や味噌汁、スポーツドリンク、柿、胃腸薬、栄養剤、温い風呂、サウナ、すべて「何もしないよりはまし」といった気安め程度のまじないに等しい。

  では酒を飲む前に何か対策を取ればよいか。牛乳を飲むかパンにバターを分厚く塗って胃に壁を作るという方法は信じられている。しかし、これは「酔いがまわるまで時間がかかる」だけのことであって、結局酔う時は酔う。宿酔になるときは宿酔になる。ある種の胃腸薬などを事前に飲んでも状況はほぼ同じだ。食べながら飲めば酔わない。これは正確ではない。この場合、正しくは「食べながら飲むと酔いにくいが、確実に太る」だ。

  寝る前にすべて吐いてしまえばいいではないか。その通りだが、吐いてしまった翌朝の気持ち良すぎる目覚めの後に来るのは、「吐いてしまって勿体ない」という怒濤の後悔だ。嗚呼酒が。嗚呼栄養が。

  宿酔になってから直す方法は実は一つだけある。正確には直すとは言わない。「公的資金の注入」と言った方が相応しいかもしれない。そうだ。迎え酒だ。いずれ倒産すると知りながらとりあえず問題を先延ばしにしてその場を凌ぐ。横たわって動けない宿酔状態をとりあえず脱するために酒を飲む。これは再び酔って宿酔を先延ばしにしようとする戦略である。三日酔はこれにあたる。宿酔が嫌でいつまでも飲み続けて、起きた瞬間の気分の悪さを即座に酒で紛らすことを繰り返しているうちにアル中が完成する。この場合、事実上死ぬまで宿酔は来ない。アル中と言うのは酒を飲んで当り散らす人のことではない。それはただの酒乱だ。アル中とは、酒がない時に廃人状態の人を指すのだ。ただのアル中ならば酒が入っているとごく普通の人になる。ただし「アル中で酒乱」と言う人もいる。これは「近視で乱視」「不能で種無し」よりも始末が悪い。

  さて、では飲む前に防ぐ方法はないか。学生時代に「ぷちアル中」であった経験から言わせて貰えば、そんなものはない。その手前が何故廃人にならずにいるかというと、あらゆる方法を試してみて、「宿酔になりにくい方法」を身に付けたからである。だから宿酔を先延ばしにする為の迎え酒は必要なかったのだ。ただ、朝食が林檎とビールであったから、宿酔してもしなくても変わりはない。

  本題の宿酔しにくい方法とは。飲む前でもなく、飲んだ後でもなく、宿酔してからでもない。眠る直前だ。眠る直前に水を飲む。ただそれだけのことで八割方宿酔は防げる。頭が痛いのは脳の水分が足りずに収縮しているからであり、吐くのは消化が追い付いていないからであり、むかつきは肝臓がアルコールの分解に手間取っているからである。アセトアルデヒドという単語、聞いたことぐらいはあるだろう。

  眠る直前に水を飲むことですべて解決される。まず水分をするから脳は収縮しにくくなる。消化出来ないものは消化されないまま胃から腸へ送り込まれる。アルコールは水によって薄まり、肝臓への負担がやや軽くなる。その分分解の時間はかかるが、立ち上がれない程の苦しさとは無縁だ。

  飲む水の量は酔いの度合いにもよるが、最低1リットル。かなり飲んだと思えば1.5リットル。2リットル飲めばそのまま逆流してし?ワうので気を付けるべし。水でなければならない理由はないが、スポーツドリンクを眠る直前に用意出来るとは限らない。海水、つまり血液と?ルぼ同じ濃度の塩水ならば尚更よい。「生理食塩水」を用意出来るならそれに越したことはないが、する程の人ならば宿酔になるまでは飲まな?「だろう。烏龍茶などのお茶どうか。別に構わない。ただし、翌朝嘔吐の代わりに便が液状化現象を起こすことを覚悟するがよい。炭酸はいけ?ネい。炭酸だけは絶対にいけない。炭酸を飲むと今までに聞いたこともない恐ろしい音の「げっぷ」の直後、そのままマーライオンと化すだろ?、。新しい世界を体験出来るが、掃除するのは果てしなく空しい。

  この「眠る直前に水1リットル」で深い眠りと際立つ目覚め、確かに酒を飲んだ気怠さ、にも関わらず宿酔なし、嘔吐も無しという素晴しい方法が、大学四年間で学んだ数少ない役に立つ貴重な知恵である。お試しあれ。

 
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