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九九

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九九 03/02/06

  小学生で九九を習う。完全に暗記するまで繰り返し繰り返しあの退屈な呪文を唱えた筈だ。あれは何年生のことだったろうか。夏休み明けに暗唱テストがあったことを覚えているかい。

  アメリカの九九は「12×12」まであるという。なるほど1ダースはよく使う単位であるし12を分解して計算し易くするよりは暗記してしまう方が手っ取り早い。度量単位もメートル法でないとなれば益々ますます基本的な計算能力が要求される。にもかかわらず「アメリカ人は計算が速くて正確」という噂をまるで聞かないので、計算する能力の必要ない社会なのか、合理的かつ原始的な方法で対処しているか、あるいはその両方なのだろうと思う。

  考えてみると「九九」は小学校で習ったあらゆるくだらない事の中で唯一、役に立っているとは思わないか?

  さて、この「九九」典型的な日本の教育を受けた手前は当然いまでもスラスラと暗唱できる。何故ならば「九九」のうちのどの段のどの数であろうと迷わず反射的に正確な答えが出るからである。

  と思って試しに最初から暗唱してみた。

   「いんいちがいち、いんにがに。いんさんがさん・・・」

   ※ここで「九九」を「1×1」から「9×9」まで暗唱してほしい。

  実際1の段など現実には使うことがなく、「どういう言葉で言っていたか」を思い出しながらであったからややぎこちなかったように思う。それでも間違えることはない。

  2の段、3の段は普段無意識に使っているらしくてあまり迷うことがない。

  4の段から怪しくなってこないか?反射的に口をついて出ると言うよりは妙に考え考え言わなかったか?すこしつかえながらもこの段を言い終えた時ひやりとしなかったか?

  5の段は簡単なのあっさりいくと思っていなかったか?「5×7」から「5×8」あたりで少し迷ったことを隠すつもりか?

  6の段。そろそろ自信がなくなってきていないか?すっかり暗記してもはや本能とさえ言えるはずの「九九」を暗唱する為に、「九九」を思い出さなければならないという矛盾に気が付いたか?

  7の段。手前はついにここで力尽きた。「ないちがいち、ななにがに。ななさんがさん、ななよんがよん・・・・・・」何かが違う気がしていながらそれでも止まらない。「ななごがご、ななろくがろく・・・」6の次が7だから「なななな・・・・・・・・・・・・をよ?」なななな。やっと気付いた。ここは「しちしちよんじゅうきゅ」であるべきだ。べきだと言うよりそうなっているはずだ。はずだと言うよりそうなのだ。

  あまりのことにしばらく放心状態であった。まさか九九を間違えるとは。しかも「7×1が1」以降小刻みにしか増えていないではないか。「7×7」までいってやっと気付くとは。しかも発音が「なななな」最初は(妙に言いにくいな)としか考えなかったことが増々烈しいではないか。しばらく茫然として、それでも「生活の中ではこんな間違いはしないから」と自分に言い聞かせて再び7の段に挑んだ。まさに挑んだと言うにふさわしい覚悟だった。「ちょとあんしょしてみよ」当初のそんな気分はもうどこにもない。そう7の段は「なな」ではなくて「しち」であるから

   「しちいちがいち。しちにがに。しちさんがさん。うがああああああああああ」

  何故たかが九九ごときに翻弄されねばならんのだ。「『しち』と『いち』は似てるから」引き摺られた「しちにがに」は努めて忘れるようにした。意地である。これは九九からの挑戦である。いや自分への挑戦である。違う、若き日の自分への激励である。もうわけがわからなくなっている。

  「しちいちが・・・しち。しちにじゆゆゆゆゆうし。しちさんんんんんんにいいいいいいいじゆゆゆゆゆゆいち」何故か慎重になっている。この段を暗唱する為にひとつひとつ確認しながらなんとか間違えずに進んでいった。が。落とし穴は当然ある。ペースを掴んで波に乗ったと思った瞬間「しちごさんじゅうご!しちろくよんじゅはち!しちはごじゅろく!」激しい。実に激しい。アラビア数字に変換してみよう。「7×5=35!7×6=48!7×8=56!」何故7×6が48になる。しかも7×7が抜けている。

  よしわかった。俺の負けだ。いい歳こいて九九も満足に言えないことに落胆しつつ電卓を引っ張りだしたら、電池が切れていたので買いに行かねばならない。


 
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