テスト中
迷子
最終更新:
匿名ユーザー
-
view
迷子 03/02/10
初めての土地を歩く時には大抵迷子になる。しかもそれを楽しんでいる。特別急ぐ用事がある時は事前に目印などを調べておくから迷うことはないが、そうでない時は進んで迷子になっているようにも思える。
一応の目的地まで真っ直ぐ行けばよいものを、左右に商店があり小路があり裏路地があるとつい踏み込んでしまうのだ。最初のうちは凡その方向を角度として理解しているから大体この方向だと見当を付けて強引に進んでいくと、思いがけない場所に出たりする。突然大通りに出たりこじんまりとした神社があったり、行き止まりだったりする。そしていろいろ寄り道をしている間に次第に方向感覚を失い、適当に彷徨い歩いているうちにどこかで見たような辻に出る。
ここはさっき通った。では別の道を行こう。
これがよくないのだ。迷子になる決定的な瞬間である。一度通った道は二度と通りたくないものだから、その都度新しい道を選んで歩き、しかも引き返した方が明らかに得策であることがわかっていながら引き返そうとしない。進んで迷子になっている。常に新しい道を選びながら寄り道をしつつ目的地まで辿り着こうとするのは不可能なことであり、迷子になって当然とも言える。不幸にも行き止まりに吸い込まれた時には何故か負けた気になる。
その迷子の状態を実は楽しんでいるから手に負えない。「この道の先には何があるか」「ここを進んでいくとどこに出るか」「目的地の反対方向な気がする」などと思いながらも躊躇なく進む。完全に迷ってしまった時には反省などしない。完全に迷ったことがわかると俄然「目的地まで一発で辿り着いてやる」と燃えてくる。実際のところ方向音痴ではないから真面目に行けば簡単に辿り着くのに、わざわざ迷子になってからでないと真面目になれない性格が、これは最大の欠点であるかもしれない。
TOTAL ACCESS: - Today: - Yesterday: -
LAST UPDATED 2025-11-08 11:08:10 (Sat)