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薬
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薬 03/03/27
薬は殆ど飲まない。
常用していると、いざ危機にある際効果が薄れる恐れがあるからだ。薬の名前も殆ど知らない。知ってはいても何に効くのかまでは判らない。「大正漢方胃腸薬」「便秘にはコーラック」「痔にはボラギノール」など、薬の名前を症状と対で覚えている場合ならまだ楽だ。「キズドライ」も大変判り易くてよろしい。目薬もいろいろ目的別にあるのだろうが、「とりあえず目薬である」ことだけを頼りに、容器がそれらしき形をしていれば、銘柄にはこだわらない。つまりなんでもよい。
正直なところ赤チン・湿布・正露丸、これだけで生きてきたようなものだ。それ以外に薬といえば精々「トローチ」「キップ」ぐらいのものであろう。特別健康体というわけではなくて、普段全く薬を飲まないので、何らかの危機にはとりあえず煙草を止めてみる。野菜ジュースを多く飲む。症状が悪化して最早これまでと感じた瞬間薬局へ行く。病院は不思議に嫌いなので、手前の最後の手段とは薬局なのである。
それで覚悟を決めて薬局に向かうわけだが、シャンプーなどを山積みにしてあるのを見て、やや怯む。薬局ならもう少し威厳が欲しい。籠に入れて日用品を特売している薬局は何となく信頼性に欠ける気がしないでもない。それでも自分が既に退引きならない状態であるから店内に突入する。有線放送が信頼度の低下に拍車をかける。薬局としては、自動ドアから小綺麗な店内に、消毒液の香り、優しく微笑んでくれる薬剤師のお姉さんの組み合わせが理想であるが、通常生活用品の特売を跨いで解放ドアを通って有線放送を聞きながら倉庫の様に積まれたありとあらゆる薬の壁をすり抜け、奥のカウンターで症状を説明しようとする相手はマスクをしたおばはんである。例え健康体であってもこれを体験するだけで熱が出ると思う。
喉が痛いの熱があるの頭が痛いの適当に言うと、適当に選んで持って来る。これが男の薬剤師であれば、若くて綺麗なお姉さんであれば、「即座に選んで持ってきた。なんて優秀な人だろう」と感動するのであるが、最前まで知り合いと話をしていたところに割り込んで相談した身としては、おばはんが素早く持ってきた薬は「ホンマにこれでええんか?これ売りたいだけちゃうんか?さっさと俺追い出して世間話に戻りたいだけちゃうんか?」という疑惑が渦巻く。年を重ねた経験から素早く選ぶことが出来るのだろう。こちらが何となく自信なげに説明した症状から最適の物を選び出したのだろう。そう思いたい。思いたいが、無理だ。
「むう」と迷っていると更にいくつか持って来る。違いをわかりやすく説明しているらしいが、どうでもいい。どうせたまにしか飲まないから何を飲んでも覿面に効くのだ。ひとつ選んで「これにします」
「サイズは?」
ここは何か。ハンバーガー屋か。それとも仕立屋か。心の中でそう言っている間にまた消えて戻ってきたおばはんの手にはその薬の大・中・小。薬など買い馴れていないからとりあえず中を買う。ぎりぎりでしか薬を飲まない代わりに飲んだ時に劇的に効く体質になっているから、全部使い切る前に治ってしまう。こうして増々薬局に行くのが嫌になるというわけだ。
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