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蔓 04/05/25

  「蔓と蔓だけが絡まり合って伸びてゆくイメージ」は、じっくり考えてみると「ジャックと豆の木」の勢いよく成長する姿が印象に残っていたからのようだ。

  打ち捨てられた蔦が近くにあれば是非やってみたいと思ったのだがその気になると見つからないもので、藤の蔓が垂れ下がっているところを見つけて三つ編みにしてみたものの、垂れているから今一つ感興が沸かない。

  蔓と蔓とが密着しきれず適度に風通しのよい幹の中で鳥が巣を作る姿までも想像したわけたが、雨に対応出来ないことに思い至り、蔓の自立は無理なのかと考えた。そして見つけたのは朝顔だった。多くの蔓と蔓が絡まって幹の如くに雄々しくなり更にその周りを蔓が巻きついてゆく印象は儚く潰えたが、朝顔でも出来ないことはなかろう。

  どうせならば誰かが育てている鉢の朝顔を縒り上げて自立させ、何と呼ぶのか未だに知らない緑色の棒を抜き取っておいて、捩れた千歳飴姿の朝顔を見た瞬間の奇声を聞いてみたかったが、やはりそう都合よく人通りの少ない道端に朝顔が放り出されていることもなく、皐だか躑躅だかよく判らない植え込みに同居している朝顔で我慢する。

  そもそも朝顔の蔓とは細く、そして緻密に巻きついてあるので解くのが容易ではない。先端を除き巻き付いている蔓は発条の形で固まっているのであって、引き抜こうとすると切れてしまうのでクランクの要領で解く。一本たりとも切りはしないと決意してひたすら解きつづけ、長めの蔓を六本解放した。二株あるようだ。

  先に藤の蔓を三つ編みにした際は何本か折ってしまったので、三つ編みではなく別の形でゆこうか。そういえば蔓を乾かして籠を作る工芸品があるじゃないか。何故か昔習っていたぞ。果物籠だったり屑篭だったり時には椅子だったりするが、何も伐採、皮を剥いて乾燥、更に編む直前に水に漬け、形が整ったらまた乾燥なんて手間がかかり過ぎる。蔓が生きている柔らかいうちに伸びたら編み、編んだら伸びして枯れる頃に根を切り、そのまま乾燥させれば活け作りのような風雅な工芸品になると思わないか。これで言訳は完成だ。

  編むと言っても既にちりちりになっている解いた朝顔の蔓は殊の外扱いにくく、やや昔似たような実験をしたことを思い出しながら、編み方と全体像を検討してみた。ほぼ50センチが四本で30センチが二本、全て皐だか躑躅だかの葉の間から飛び出していてさほど離れていないので全て合流させることが可能だ。とは言え密に編むと小さくなってしまうしどうせちりちりだから細かく編むのは不可能だ。となればフェンスのようにそれぞれ上下上下と通しながら円筒形に編み上げるか。

  歩道には背を向けているから通行人の顔は見えないので気にならないが、車道で信号に捕まった運転手の視線が眩しいようだ。植え込みの中に鍵でも落として必死な人と思われているに違いない。籐細工の経験があるからこそかくなる行動になったわけだが、手は動きを覚えているから素早く円筒形に仕上げ、途中で派生している短い蔓は繋ぎとして別の蔓に巻き付け、上に余った四本もそのまま編む。

  ロケットのようになった。高さはおよそ20センチほど、葉と短い蔓と蕾と花が砲弾に飾り付けられている感じで、皐か躑躅かの上にこれが生えているというか乗っている姿はタージマハールか砲台だ。ついでに皐だか躑躅だかの新芽を剪って形を整え、下の雑草も抜いておいた。少し離れて見てみると、朝顔は植え込みの上に置かれたペットボトルに巻き付いてしまったかのようだ。蔓の先端をそのままにすると垂れ下がって胴に巻きつく恐れがあるので、先端を集めて縒り合わせた。さあ、君は自立した朝顔だ。あとは天に向かってどこまでも伸びるがよい。
 
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