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氷 04/08/24

  水と氷は体積が違う。

  小学生の頃には、運動会の水筒に氷を詰めるのが無性に嬉しいわけで、とにかく氷の存在が嬉しいのであり、まだ固体を維持している氷をぼりぼり齧ることを楽しく思う時代だ。

  ところが親なる人は「氷を入れ過ぎると溶けた際に溢れて漏れてくるから」との理由で氷を多く詰めたくても制限する。ここで水筒の中をほぼ氷詰にしてしまいたかった子供の頭には、「氷が溶けると水になって体積が増す」と入力される。そして水筒にぎっしり氷を詰めたくて仕方ないのに精々三・四個程度しか入れて貰えなかった恨みがこの記憶を増強している。

  真相をごく最近知って余りにも情けなく思ったわけだが、ファラデーを読んでようやく正しい理解に修正されたことは遅過ぎる気もするがとりあえず喜ばしい。水と氷は比重が違うから氷が水に浮かぶのであって、氷が水に浮かぶ以上、水よりも氷の方が密度は少ないわけで、つまり同じ体積の氷と水では、氷の方が軽い。しかし氷と水は本質的に同じ物質であり、氷を溶かせば水になり、水を凍らせれば氷となる。ここに同じ体積の氷と水が並んでいると仮定して、氷を溶かした場合、氷が溶けて出来た水は、元よりある水と同じ体積になるわけではない。溶けた方が少なくなるわけだ。重さが違うから氷は水に浮く。氷の方が軽いから水に浮く。つまり水を凍らせると膨張して氷となる。反対に氷を溶かせば「収縮して」水になる。

  こら。そこらへんの親共よ。氷が溶けて溢れて漏れる筈がないではないか。純真な子供を騙してはいけない。例えそれが「味が薄くなるから」「腹を壊すから」といった正当な理由であろうとも、適当に「漏れるから」などと馬鹿にした誤魔化しをするんじゃない。子供に対して嘘をつくんじゃない。如何に深い親心であろうとも、子供を結果的にであれ騙す形になることは避けるべきだ。

  とは言うものの、その程度ならどう考えても理科の授業あたりで心得ていて然るべきである筈だが、残念ながら「氷が溶けたら溢れて漏れる」は恨みと一緒に記憶の底に沈んでいるから、多少の大人になってみても「氷は溶けると嵩が増す」と覚えたままで、喫茶店などの氷で嵩増しされて実質ダブル程度しか入っていないジュースであっても、全く飲む気のない水であっても、取り合えず「溶けて溢れる前に少しだけ水面を下げておこう」と啜る行為が、ただの馬鹿ではないか。

  そうだ。冷凍庫で作る氷は、製氷皿で作る氷は、いつもいつも盛り上がり嵩を増して隣とくっついていた。明らかに氷が嵩を増すことを理解はしていた。それでもなお、「氷が溶けると更に嵩が増す」と思い込んでいたのは、普通に考えて噴飯物だが、それは確かに水筒に氷を沢山詰め込みたかった頃の残滓が作用していたに違いない。
 
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