殺し合いが続くこの世界にも、太陽は昇る。
それは本来であれば、あやかし達の時間が終わり、人間達の時間に切り替わる合図。
闇を暴いて、夜明けをもたらす火の玉のような太陽は、人々の心の闇を照らす象徴となる。
それは本来であれば、あやかし達の時間が終わり、人間達の時間に切り替わる合図。
闇を暴いて、夜明けをもたらす火の玉のような太陽は、人々の心の闇を照らす象徴となる。
「そうですか、紗季さんが……」
だがそれは、始まりを告げるのがテミスという下衆女で無ければの話。
岩永とリュージ、アリアを煽りつけるように声が響き渡る。
暖かな光と攻撃的な歌に包まれる中、それに反するようにしんみりとした空気に染まる。
岩永とリュージ、アリアを煽りつけるように声が響き渡る。
暖かな光と攻撃的な歌に包まれる中、それに反するようにしんみりとした空気に染まる。
「……アタシ、ちょっと席外すね」
ゲームが始まって僅か6時間の間に、二人は知り合いを失った。
リュージの噓発見器 はテミスの言葉には反応しない。
その原因が、主催が細工を行ったからなのか、直接テミスを見ていないからなのかは不明だ。
どちらにせよ、主催がこの場で嘘を付く必要が無い以上は考える必要の無いことだ。
彼らが生きている可能性は無情にも棄却される。
今はそっとしておく時間が必要だろうとアリアが気を使い、岩永とリュージが残された。
リュージの
その原因が、主催が細工を行ったからなのか、直接テミスを見ていないからなのかは不明だ。
どちらにせよ、主催がこの場で嘘を付く必要が無い以上は考える必要の無いことだ。
彼らが生きている可能性は無情にも棄却される。
今はそっとしておく時間が必要だろうとアリアが気を使い、岩永とリュージが残された。
彼らの感傷とは関係無く、ゲームはまだ続いていく。
コロッセオの探索を追えた現状、次の目的地を決めなければいけない。
岩永は、放送を聞きながら何か考えを纏めるように、手元のノートに書き込んでいく。
その間、手空きになったリュージは双眼鏡を取り出し、周辺を見張る。
王の異能(シギル)のような不意の襲来を少しでも察知する為だ。
コロッセオの探索を追えた現状、次の目的地を決めなければいけない。
岩永は、放送を聞きながら何か考えを纏めるように、手元のノートに書き込んでいく。
その間、手空きになったリュージは双眼鏡を取り出し、周辺を見張る。
王の異能(シギル)のような不意の襲来を少しでも察知する為だ。
「そうか、アイツらが……」
リュージの知り合いで亡くなったのは二人。
シュカ。ヒイラギイチロウだ。
シュカ。ヒイラギイチロウだ。
ヒイラギイチロウは宝探しゲームで協力関係だったとはいえ、一度はリュージを洗脳した人物だ。元々彼への信用はない。
以前のゲームでビルの崩壊後、てっきり死んだものだとリュージは思っていたが、どのような経緯でこのゲームに参加していたかはこれで分からなくなった。
以前のゲームでビルの崩壊後、てっきり死んだものだとリュージは思っていたが、どのような経緯でこのゲームに参加していたかはこれで分からなくなった。
シュカとは宝探しゲームで協力した関係だった。
日本ランキング5位の『無敗の女王』として、名前は知られていた。
カナメと共にエイスとの対決に一役買ったのも記憶に新しい。それ故、こんなにも早く落ちたことには驚きを隠せない。
おそらくスイのときのように不意を付かれたのだろうと推測する。
日本ランキング5位の『無敗の女王』として、名前は知られていた。
カナメと共にエイスとの対決に一役買ったのも記憶に新しい。それ故、こんなにも早く落ちたことには驚きを隠せない。
おそらくスイのときのように不意を付かれたのだろうと推測する。
同盟関係にあるカナメ、レインの名前が呼ばれなかったことには安堵する。その一方で、宿敵である王まだが生きていることには憎悪すると同時に、復讐の機会が残されていることへ僅かな喜びを抱いた。
「……うっせぇな」
シュカの声に酷似したμの生歌は、嫌でも亡くなったばかりの彼女の事を想起させる。
共に戦った期間は一日にも満たないとはいえ、顔なじみの者を失うのは慣れるものではない。
リアリストなリュージといえど多少思うところはある。
そんな彼女と同じ声で響き渡る暴力的な楽曲は非常に耳障りが悪く、気分を悪くする。
共に戦った期間は一日にも満たないとはいえ、顔なじみの者を失うのは慣れるものではない。
リアリストなリュージといえど多少思うところはある。
そんな彼女と同じ声で響き渡る暴力的な楽曲は非常に耳障りが悪く、気分を悪くする。
「どうすっかねえ……」
シュカを失ったカナメが今後どう動くかは分からない。
一緒にいた期間はまだ短いが、カナメにとって大切な人物であろうことは分かる。
彼女の蘇生のためにゲームに乗るか、自分のように復讐に動くか。
リュージ自身も、殺された弟への復讐に生きるゆえにそうした気持ちは理解できる。
一緒にいた期間はまだ短いが、カナメにとって大切な人物であろうことは分かる。
彼女の蘇生のためにゲームに乗るか、自分のように復讐に動くか。
リュージ自身も、殺された弟への復讐に生きるゆえにそうした気持ちは理解できる。
「にしても……線路が壊されただァ?」
線路が破壊されるという放送は、その場所に戦闘があったことを意味する。
その修羅場を起こした人物として、リュージの頭に浮かんだのは王だ。
シブヤ駅での戦いが記憶に新しいのもあったが、あらゆるものを切り刻む彼の異能 ならば線路の破壊は容易であろう。
自分が楽しむためにわざと事故を起こす姿が大いに予想できる。
その修羅場を起こした人物として、リュージの頭に浮かんだのは王だ。
シブヤ駅での戦いが記憶に新しいのもあったが、あらゆるものを切り刻む彼の
自分が楽しむためにわざと事故を起こす姿が大いに予想できる。
(あのクソ野郎の仕業だったら……!)
このゲームに呼ばれる前、王に斬られた手を握りしめる。
あのとき切り離されたはずの手首は何故か繋がっている。
おそらくμが治療したのだろうが、そのときの痛みを忘れることは無い。
あのとき切り離されたはずの手首は何故か繋がっている。
おそらくμが治療したのだろうが、そのときの痛みを忘れることは無い。
「あん?なんだあいつら?」
双眼鏡を通し、周辺の様子を伺っていると、四人の集団の姿が見えた。
彼らは二手に別れたようで、西に向かって走っていく。
一組はハンマーを持った金髪の少年と刀を持った羽織の男。
その視線の先を追うと、白い服に身を包んだ少女とテロリストのような悪役顔の男が山を駆けている。
リュージが少し先の未来から呼ばれていれば、少女の風貌からヒイラギスズネの異能 を連想させたかもしれない。
彼らは二手に別れたようで、西に向かって走っていく。
一組はハンマーを持った金髪の少年と刀を持った羽織の男。
その視線の先を追うと、白い服に身を包んだ少女とテロリストのような悪役顔の男が山を駆けている。
リュージが少し先の未来から呼ばれていれば、少女の風貌からヒイラギスズネの
「なんかコスプレした連中が西に向かってんな。……確かあの方向には」
「おそらく渋谷駅、あるいはその近辺に向かう方でしょう」
「あん?」
「おそらく渋谷駅、あるいはその近辺に向かう方でしょう」
「あん?」
放送後、静かに考え込んでいた岩永が不意に呟いた。
そうして全てを見通しているかのように、スラスラと文字を記していく。
彼女は知恵の神だ。関係深い者を失った直後でも、その頭脳は冷静に場を見極め回転する。
そして、読んでくださいと言いたげにノートを開き、差し出した。
そうして全てを見通しているかのように、スラスラと文字を記していく。
彼女は知恵の神だ。関係深い者を失った直後でも、その頭脳は冷静に場を見極め回転する。
そして、読んでくださいと言いたげにノートを開き、差し出した。
「彼らはちょっとした宝探しにでも行くのでしょうね」(嘘)
『その方達はμと戦いに行きます』
『その方達はμと戦いに行きます』
その文字に思わず声を出そうとしたリュージに向けて、岩永は『話は適当に合わせてください』と書かれたページをとんとんと叩く。
そして本命はこちらだと、筆談を促すように紙と羽ペンをこっそりと差し出した。
そして本命はこちらだと、筆談を促すように紙と羽ペンをこっそりと差し出した。
(ああ、そういうことか)
判断が早いリュージは、岩永から振られた話は監視を避けるためのダミーであることを察する。
以前のゲームで、ヒイラギに監視されて裏をかかれた経験がある故に、情報漏洩の危険性をよく知っていた。
以前のゲームで、ヒイラギに監視されて裏をかかれた経験がある故に、情報漏洩の危険性をよく知っていた。
「まっ、ダーウィンズゲームでもシブヤ駅のロッカーに宝が隠されてたし、なんかあってもおかしくはねぇかもな」
『μと戦うだと?詳しく教えろ』
『μと戦うだと?詳しく教えろ』
振られた話題を適当に誤魔化し、リュージもペンを握って岩永の意図を探っていく。
岩永は返答は既に想定済みだったようで、前もって回答を書いておいたページをペラペラと捲って答えていく。
岩永は返答は既に想定済みだったようで、前もって回答を書いておいたページをペラペラと捲って答えていく。
「何か大事なものが隠されていると睨んだのと考えます。わざわざエリアを封鎖するぐらいですからね」(嘘)
『このゲーム会場はμが用意したものです。
ならば新たな車両を用意する為にテミスが彼女を向かわせる可能性が高いですし、
そこを隙と考えて襲いに行く方々が出ることは予想できます』
『このゲーム会場はμが用意したものです。
ならば新たな車両を用意する為にテミスが彼女を向かわせる可能性が高いですし、
そこを隙と考えて襲いに行く方々が出ることは予想できます』
「とはいえ、禁止エリアの中は入れねぇのにアイツらはどうすんだかな」
『入れねぇのにアイツらはどうやって戦うつもりだ?』
『入れねぇのにアイツらはどうやって戦うつもりだ?』
「そこはほら、禁止エリアが解除されてから探すのだと思いますよ」(嘘)
『渋谷駅に入らなくても戦う方法はありますよ。
例えば、来る場所が分かっているので待ち伏せして罠を張ることが出来ます。
爆薬を仕掛けて遠隔操作で起爆させたり、または遠方から狙撃をしたりと、どうとでも料理出来ます』
『渋谷駅に入らなくても戦う方法はありますよ。
例えば、来る場所が分かっているので待ち伏せして罠を張ることが出来ます。
爆薬を仕掛けて遠隔操作で起爆させたり、または遠方から狙撃をしたりと、どうとでも料理出来ます』
有名なデスゲーム小説でも、侵入禁止の主催本部に向けて爆弾を飛ばそうとしたシーンがありましたねと、小さく書き加える。
μは、最初の会場で少年にやったように念じるだけで人を殺すことができる。
ならば、能力の射程に入らぬよう遠方から隠れて攻撃する戦法は策としては定石だ。
リュージも以前王と戦ったときは、異能(シギル)の攻撃範囲から外れる10メートルを保てるようにしていたため、そうした戦法はすんなり理解できた。
μは、最初の会場で少年にやったように念じるだけで人を殺すことができる。
ならば、能力の射程に入らぬよう遠方から隠れて攻撃する戦法は策としては定石だ。
リュージも以前王と戦ったときは、異能(シギル)の攻撃範囲から外れる10メートルを保てるようにしていたため、そうした戦法はすんなり理解できた。
(まあ、筋書きとしちゃありえる話か)
岩永が放送内容と目撃情報から、瞬時にここまで導き出したことに少しだけ感嘆する。
頭の回転の速さだけならば、レインと並ぶかもしれない。
急に筆談を持ちかけたのも、彼らの策が主催に盗聴されてしまうことを気遣ってのことだろうと理解した。
また、監視カメラなどでノートを見られてしまう可能性に関しては、木々と身体で死角が出来るように上手く位置取りもしている。
頭の回転の速さだけならば、レインと並ぶかもしれない。
急に筆談を持ちかけたのも、彼らの策が主催に盗聴されてしまうことを気遣ってのことだろうと理解した。
また、監視カメラなどでノートを見られてしまう可能性に関しては、木々と身体で死角が出来るように上手く位置取りもしている。
『まあ、私達は既に禁止エリアの中を探る方法を持っていますがね」
『んなもんあったのか?』
『アリアですよ。彼女は首輪を巻かれていませんから、禁止エリアだろうとお構いなしです。
とはいえ、彼女を支給している以上、テミスもそのことは想定済みでしょう。
万が一に備えて、彼女を守る備えは用意していると考えるべきでしょう』
『んなもんあったのか?』
『アリアですよ。彼女は首輪を巻かれていませんから、禁止エリアだろうとお構いなしです。
とはいえ、彼女を支給している以上、テミスもそのことは想定済みでしょう。
万が一に備えて、彼女を守る備えは用意していると考えるべきでしょう』
μがこの会場に、のこのこ一人だけで来るとは考え辛く、防衛手段ぐらいはテミスは用意していると推測する。
力が戻っていないアリアを一人で探らせるには危険が大きい。
もしやるとした場合、どうにか主催に隙を与える必要がある。
力が戻っていないアリアを一人で探らせるには危険が大きい。
もしやるとした場合、どうにか主催に隙を与える必要がある。
『μを守る手段、確実性が高いのは護衛ですね……もしかしたら楽士の方が来るかもしれません』
数時間前の仮説で、主催側にゲームに参加していないオスティナートの楽士達がいる可能性は既に想定済みだ。
岩永は、アリアよりμの護衛役はシャドウナイフという人物が担っていたことを聞いている。
この場でもμを守る者として、彼のような楽士が来ることは大いにありえるだろう。
岩永は、アリアよりμの護衛役はシャドウナイフという人物が担っていたことを聞いている。
この場でもμを守る者として、彼のような楽士が来ることは大いにありえるだろう。
『あと、これは伝えておきます。テミスが持つ能力は恐らく『相手を操る程度の能力』です』
『……根拠は何だ?』
『……根拠は何だ?』
さもお見通しかのように岩永は答える。
ダーウィンズゲームにおいて相手の異能を知ることは大きなアドバンテージとなる。
このゲームにおいてもそれは変わらない。
ダーウィンズゲームにおいて相手の異能を知ることは大きなアドバンテージとなる。
このゲームにおいてもそれは変わらない。
岩永がそう考えた根拠は、最初の会場でのテミスの言葉と行為が引っ掛かっていたからだ。
最初の会場で『μに会場を用意してもらった』『μの力を使って会場に転移させる』といったようにμを指示している。
少年ドールを殺害する際もμに提言している。
それなのに、首輪の爆破を行うときは、μの能力に頼らずにリモコンという道具を使ったことが引っ掛かっていた。
予想できる理由付けとしては、テミスの特に何も考えていない行動か、μに提言出来ない理由があったかだ。
異能という概念を知った今、参加者に能力を感づかれることを途中で警戒して、目の前でヒントになりうる行動を控えたようにも見える。
最初の会場で『μに会場を用意してもらった』『μの力を使って会場に転移させる』といったようにμを指示している。
少年ドールを殺害する際もμに提言している。
それなのに、首輪の爆破を行うときは、μの能力に頼らずにリモコンという道具を使ったことが引っ掛かっていた。
予想できる理由付けとしては、テミスの特に何も考えていない行動か、μに提言出来ない理由があったかだ。
異能という概念を知った今、参加者に能力を感づかれることを途中で警戒して、目の前でヒントになりうる行動を控えたようにも見える。
ではどのような能力かといえば、岩永は可能性の高いのは洗脳だろうと推測する。
ヒイラギのように洗脳を行える異能(シギル)も存在することから、そうした能力を持つものが他に居てもおかしくはない。
本来のμは最初の会場のように生気の無い消極的な性格でなく、自発的に動く存在だ。
テミスもそうした能力を持っていて、μを操っていると仮定すれば辻褄が合う。
テミスの指示により、μが仲間である少年ドールを殺すという本来あり得ない行為もその予想の裏付けとなる。
この推測が合っているならば、洗脳状態を解除する方法や能力を見つけ出せれば、μをこちら側に引き込むことが出来る。
ヒイラギのように洗脳を行える異能(シギル)も存在することから、そうした能力を持つものが他に居てもおかしくはない。
本来のμは最初の会場のように生気の無い消極的な性格でなく、自発的に動く存在だ。
テミスもそうした能力を持っていて、μを操っていると仮定すれば辻褄が合う。
テミスの指示により、μが仲間である少年ドールを殺すという本来あり得ない行為もその予想の裏付けとなる。
この推測が合っているならば、洗脳状態を解除する方法や能力を見つけ出せれば、μをこちら側に引き込むことが出来る。
『洗脳を解除する方法ですが……一つ思い当たるものがあります』
岩永はスッと顔を上げ、アリアのいる方向をチラリと見る。
『カタルシスエフェクトですよ』
カタルシスエフェクトとは自分の抑圧された内面を、アリアの力で安定化させた心の力だ。
ただの武器ではなく、相手の溢れた感情を抑制させて正気に戻す副次効果がある。
アリア達もこの力で暴走したデジヘッドや洗脳された楽士達を正気に戻してきた。
μが操られているならば、この力で解除出来る可能性は高い。
ただの武器ではなく、相手の溢れた感情を抑制させて正気に戻す副次効果がある。
アリア達もこの力で暴走したデジヘッドや洗脳された楽士達を正気に戻してきた。
μが操られているならば、この力で解除出来る可能性は高い。
『とはいえ、これは帰宅部の方……琵琶坂さんか彩奈さんが居ない現状は難しいです。
私かリュージさん、あるいは別の方が発現のコツを掴まなければいけませんね』
私かリュージさん、あるいは別の方が発現のコツを掴まなければいけませんね』
○○○
「で、どうする?奴らを追いかけるか?」
「正直な所、危険が大きいですが……唯一無二のチャンスではありますね」
「正直な所、危険が大きいですが……唯一無二のチャンスではありますね」
岩永はざっと考えを記載していく。
その白い服の少女と悪役顔の男は恐らく先鋒隊であり、走って追いつくことは難しい。
羽織の男とハンマーの少年であれば、今から向かえば道中で合流出来るだろう。
とはいえ、外見情報からしてあの4人の中に岩永、リュージ、アリアの知り合いはおらず、リュージより聞いた神崎・H・アリアやブローノ・ブチャラティの仲間もいない。
同盟交渉するなら、事前に噓発見器 で敵意が無いか調べる必要があるだろう。
その白い服の少女と悪役顔の男は恐らく先鋒隊であり、走って追いつくことは難しい。
羽織の男とハンマーの少年であれば、今から向かえば道中で合流出来るだろう。
とはいえ、外見情報からしてあの4人の中に岩永、リュージ、アリアの知り合いはおらず、リュージより聞いた神崎・H・アリアやブローノ・ブチャラティの仲間もいない。
同盟交渉するなら、事前に
他にも、μへの攻撃が成功しても失敗しても別の問題があると指摘する。
特に問題なのは、首輪の起爆条件である『我々運営に危害を及ぼすような行動』に該当する恐れがあることだ。
彼らに協力するならばそのリスクへの対策も別途考えなくてはいけない。
また、彼ら以外にも主催が来ることを察知している者達が来ないとは限らず、必ずしもゲームに乗っていない者とは限らない。
慎重に事を勧めるならば、戦闘と成りうる場所から逃げるのも生存戦略の一つだ。
特に問題なのは、首輪の起爆条件である『我々運営に危害を及ぼすような行動』に該当する恐れがあることだ。
彼らに協力するならばそのリスクへの対策も別途考えなくてはいけない。
また、彼ら以外にも主催が来ることを察知している者達が来ないとは限らず、必ずしもゲームに乗っていない者とは限らない。
慎重に事を勧めるならば、戦闘と成りうる場所から逃げるのも生存戦略の一つだ。
最後に、『だけど、もし本当にμが現れて、倒せないにせよ弱らせたり足止めする事が出来るのなら、このゲームの解決への大きな糸口となります』と結ぶ。
μの力でこの世界を維持しているなら、彼女が弱ればどのみちこのゲームは長く続けられない。
また、禁止エリアが解除される10時までμを足止め出来れば、渋谷駅に侵入して直接戦うことも出来る。
μの力でこの世界を維持しているなら、彼女が弱ればどのみちこのゲームは長く続けられない。
また、禁止エリアが解除される10時までμを足止め出来れば、渋谷駅に侵入して直接戦うことも出来る。
カタルシスエフェクトが使えるようになれば、奇襲で弱ったμを正気に戻すことも可能だ。
μがこちら側に付けば首輪や帰還の問題も片付き、このゲームはこれで解決出来る。
この機会を逃すと、次にμが現れるのがいつになるかは分からない。
参加者から危害を受けたとあっては、警戒してもう二度と現れない可能性すらある。
つまり、今このタイミングが主催の裏をかく唯一のチャンスであるとも言える。
非常に危険性の高い、ぶっつけ本番の作戦だが、無事に決まりさえすればおつりが来るほどだ。
μがこちら側に付けば首輪や帰還の問題も片付き、このゲームはこれで解決出来る。
この機会を逃すと、次にμが現れるのがいつになるかは分からない。
参加者から危害を受けたとあっては、警戒してもう二度と現れない可能性すらある。
つまり、今このタイミングが主催の裏をかく唯一のチャンスであるとも言える。
非常に危険性の高い、ぶっつけ本番の作戦だが、無事に決まりさえすればおつりが来るほどだ。
○○○
「私としては北東……特にC-7や池袋駅方面に向かうのも一つの策だと思っています」
岩永としては、秩序を破壊する者の無力化、或いは排除に動くのもありだと考えている。
危険性の高い主催への対処より、先に秩序を乱す危険人物を排除を優先するのも一つの手である。
線路を破壊するような危険人物がまだ生存しているならば、ゲーム解決の邪魔になる。
犯行が王さんである可能性が少しでもあるなら、リュージさんにとってはその方針も良いのではと続ける。
危険性の高い主催への対処より、先に秩序を乱す危険人物を排除を優先するのも一つの手である。
線路を破壊するような危険人物がまだ生存しているならば、ゲーム解決の邪魔になる。
犯行が王さんである可能性が少しでもあるなら、リュージさんにとってはその方針も良いのではと続ける。
「それに、ちょっと不思議ではないですか?『新しい電車は渋谷駅とスパリゾート高千穂を往復する』……何故テミスは『C-7の線路を修理して池袋駅まで繋がない』のでしょうか」
「あん?」
「可能性が高いのは『線路を破壊した危険人物がまだC-7の近くにいる』から。
直してもすぐに壊されては二度手間になるため、一端後回しにしている。そんなところでしょう」
「あん?」
「可能性が高いのは『線路を破壊した危険人物がまだC-7の近くにいる』から。
直してもすぐに壊されては二度手間になるため、一端後回しにしている。そんなところでしょう」
事実、早朝時点でC-7には下手人である王が存在していた為、この推理は概ね合っている。
「あるいは、あの場所に『μを呼べない理由』があった……例えば、C-7の近辺に人が集まりそうで、『戦いの邪魔になるのを避けた』か『μと相性の悪い参加者が居た』といったところですね」
地図のC-7の直近にある、『病院』『スパリゾート高千穂』『早乙女研究所』を指し示す。
後半二つはともかく、怪我を負った者達が来るであろう『病院』に人が集まりやすいのはリュージも予想できる。
現在、戦いの場となっている可能性は高い。
後半二つはともかく、怪我を負った者達が来るであろう『病院』に人が集まりやすいのはリュージも予想できる。
現在、戦いの場となっている可能性は高い。
「それ以外にも別の意図があるとするなら……」
再びノートを記述し、リュージへと向ける。
『『主催達は池袋駅周辺に人が向かうのを好ましく思っていない』とか』
これは線路の修理が『できない』のではなく『する必要がない』と解釈する推理。
放送で列車事故に注意を向けさせて、本命の池袋駅への意識を逸らす。
奇術用語でいうミスディレクション。人々の注意を意図的に逸らすテクニックだ。
放送で列車事故に注意を向けさせて、本命の池袋駅への意識を逸らす。
奇術用語でいうミスディレクション。人々の注意を意図的に逸らすテクニックだ。
人間心理からして、電車事故を起こした下手人が居るであろうC-7近辺から人は離れようとするため、その先にある池袋駅や遊園地は盲点となりうる。
遊園地はエリアの端という目的が無ければまず行かないであろう場所。
殺し合いの最中、呑気に遊びに向かうものはまず居ない。
電車で直行できなくすれば、向かう者はさらに減る。
何か池袋駅近辺に主催にとっての不都合がある故に、事故が起きたことを逆手に取っている可能性も考えられる。
遊園地はエリアの端という目的が無ければまず行かないであろう場所。
殺し合いの最中、呑気に遊びに向かうものはまず居ない。
電車で直行できなくすれば、向かう者はさらに減る。
何か池袋駅近辺に主催にとっての不都合がある故に、事故が起きたことを逆手に取っている可能性も考えられる。
(さて、どうすっか)
ここまでの推理を聞き、リュージはダミー会話を止めて一旦ペンを置く。
つまるところ、岩永より提示された方針をリュージなりに纏めるとこうなる。
つまるところ、岩永より提示された方針をリュージなりに纏めるとこうなる。
1.『渋谷駅方面に向かい、羽織の男とハンマーの少年と合流する。噓発見器 で相手に敵意がないことが分かれば即席クランを組む。ただし共にμへの対処を行うかは彼らの作戦や状況次第とする』
2.『C-7方面へと向かい、電車事故を起こした人物の情報収集を行う。下手人が危険人物であれば排除あるいは無効化。犯行が王であると分かれば殺害する』
2.『C-7方面へと向かい、電車事故を起こした人物の情報収集を行う。下手人が危険人物であれば排除あるいは無効化。犯行が王であると分かれば殺害する』
どちらにもリスクがある。
危険性が高いが、上手くいけば見返りが大きいのが1。
このタイミングを逃しては、次にμが会場に現れるかは分からない。
ゲームの打破を目指すならば、ここで奇襲を行うのは有効な1手となる。
危険性が高いが、上手くいけば見返りが大きいのが1。
このタイミングを逃しては、次にμが会場に現れるかは分からない。
ゲームの打破を目指すならば、ここで奇襲を行うのは有効な1手となる。
だが、奇襲として遠方から射撃しようにも、愛用のRPD軽機関銃は手元に無く、使い慣れてない二丁拳銃だけである。
エリア外から狙えるほど射程のある銃ならともかく、有効打を与えられるのが十数メートルほどのこの銃でμへの狙い撃ちは難しい。
異能(シギル)を用いた正確な遠方射撃を得意とするレインならばともかく、近距離での銃撃戦をメインとするリュージでは力不足となる。
ハンマーの少年達がどのような策を考えているかは不明だが、分の悪い勝負であるならばリュージは無理に乗るつもりはない。
反抗と見なされ首輪を爆破される問題もあるため、即席クラン結成はしても作戦への不参加は視野に入れておくべきだろう。
エリア外から狙えるほど射程のある銃ならともかく、有効打を与えられるのが十数メートルほどのこの銃でμへの狙い撃ちは難しい。
異能(シギル)を用いた正確な遠方射撃を得意とするレインならばともかく、近距離での銃撃戦をメインとするリュージでは力不足となる。
ハンマーの少年達がどのような策を考えているかは不明だが、分の悪い勝負であるならばリュージは無理に乗るつもりはない。
反抗と見なされ首輪を爆破される問題もあるため、即席クラン結成はしても作戦への不参加は視野に入れておくべきだろう。
後に王との戦闘を控えるならば、ここで即席クランを組んで戦力を増やすこと自体は良い手である。
王は、戦闘向けの異能 を持たないリュージや岩永だけで勝つのは非常に難しい。
リュージ単独での撃破が難しいのは、以前のシブヤ駅の戦いで隙を突かれ、王に暴虐を受けた彼だからこそ分かる。
強力な武器の入手や即席クランの結成など、戦力の補充をしなければ王に勝つのは難しい。
以前のゲームで王相手に実行しようとしたように、爆弾の一つでもあれば身体に仕込んで相打ちの形に持ち込めたがが今は叶わない。
前もって軍用装備を着込んでからダーウィンズゲームに挑むほどに用意周到なリュージだからこそ、下準備の大切さは理解している。
王は、戦闘向けの
リュージ単独での撃破が難しいのは、以前のシブヤ駅の戦いで隙を突かれ、王に暴虐を受けた彼だからこそ分かる。
強力な武器の入手や即席クランの結成など、戦力の補充をしなければ王に勝つのは難しい。
以前のゲームで王相手に実行しようとしたように、爆弾の一つでもあれば身体に仕込んで相打ちの形に持ち込めたがが今は叶わない。
前もって軍用装備を着込んでからダーウィンズゲームに挑むほどに用意周到なリュージだからこそ、下準備の大切さは理解している。
2を選ぶなら、右上に向かって動くことになる。
森を通って最短距離で移動すれば昼頃にはC-7周辺に辿り着ける。
線路破壊の犯人が王である可能性が少しでもあるならば、即座にでも殺しに行きたいのは事実だ。
戦力は乏しいが、王相手に危険を承知で戦うのも一つの手ではある。
勝つのは難しくても、最悪己の身と引き換えにしてでも一撃入れてやりたいと思っている。
森を通って最短距離で移動すれば昼頃にはC-7周辺に辿り着ける。
線路破壊の犯人が王である可能性が少しでもあるならば、即座にでも殺しに行きたいのは事実だ。
戦力は乏しいが、王相手に危険を承知で戦うのも一つの手ではある。
勝つのは難しくても、最悪己の身と引き換えにしてでも一撃入れてやりたいと思っている。
この選択の場合、渋谷駅周辺に向かう連中とは会うことはない。
最悪の場合、彼らが主催に歯向かって殺されるのを見殺しにすることになる。
リュージにとってそれ自体は構わないが、王を倒した後の方針を考える場合、この選択は少し不利になる恐れがある。
現在は復讐のスタンスに動くリュージだが、それが終わった後このゲームの優勝に動くか、岩永と共にゲームの解決に動くかは保留としている。
シュカやヒイラギを下せるほどの強者の居るこの世界において、戦闘向け異能異能 を持たないリュージが生存するのは難しい。
ハンマーの少年達と即席クランの結成をすればゲームで動きやすくなるのは事実だ。
最悪の場合、彼らが主催に歯向かって殺されるのを見殺しにすることになる。
リュージにとってそれ自体は構わないが、王を倒した後の方針を考える場合、この選択は少し不利になる恐れがある。
現在は復讐のスタンスに動くリュージだが、それが終わった後このゲームの優勝に動くか、岩永と共にゲームの解決に動くかは保留としている。
シュカやヒイラギを下せるほどの強者の居るこの世界において、戦闘向け異能
ハンマーの少年達と即席クランの結成をすればゲームで動きやすくなるのは事実だ。
カナメ達との同盟は『まだ』続いているとはいえ、クランの一員であるシュカとヒイラギが落ちた以上は彼が今後どう動くかは分からない。
もしカナメが同盟破棄を選んだ場合に備え、保険として戦力が欲しい気持ちはある。
もしカナメが同盟破棄を選んだ場合に備え、保険として戦力が欲しい気持ちはある。
(カナメのやつはどう動くかねえ……敵対はしたくねぇな)
脳裏に浮かんだのはシブヤ駅でのカナメと王の交渉だ。
あのとき聞いたカナメの嘘は、リュージが初めて自分の異能 をクソではないと思えた言葉だ。
あのとき聞いたカナメの嘘は、リュージが初めて自分の
―――そいつとはダチでもなんでもねえ!!
幾度となく裏切られ続け、弟を殺されてから只一人孤独にゲームを勝ち進めてきたリュージにとっては、久しぶりに自分の身を案じてくれる相手だった。
同盟が続くならば、この場でも合流したい思いはある。
同盟が続くならば、この場でも合流したい思いはある。
(……ん、待て)
提示された方針案を考えるうちに、リュージは違和感に気付く。
それは、恋人を失ったカナメの事が気がかりであったが故のこと。
弟を失った喪失感を抱えるリュージだから気付けた違和感。
それは、恋人を失ったカナメの事が気がかりであったが故のこと。
弟を失った喪失感を抱えるリュージだから気付けた違和感。
それは、気づいてしまえば放送前までの岩永らしくないこと。
岩永が言及すると思っていた名前が出てこなかった。
リュージはひとつ聞かせろ、と念押ししてペンを再び握った。
岩永が言及すると思っていた名前が出てこなかった。
リュージはひとつ聞かせろ、と念押ししてペンを再び握った。
『九郎とやらは探しに行かなくていいんだな?』
場の空気が変わる。
岩永はその質問がリュージから来ることは想定してなかったようで、動きが止まる。
岩永はその質問がリュージから来ることは想定してなかったようで、動きが止まる。
岩永琴子はあまりに冷静すぎた。
弓原紗季を失っても変わらないように努めるその風貌に。
桜川九郎を失うことを考えないようにしているその姿勢に。
弓原紗季を失っても変わらないように努めるその風貌に。
桜川九郎を失うことを考えないようにしているその姿勢に。
○○○
『本当に恐ろしいものについては、誰だって語るのさえ避けたがります』。
かつて、そう言ったのは彼女だった。
かつて、そう言ったのは彼女だった。
岩永琴子にも怖いものはある。
普段の岩永ならば、そう聞かれても『そうですね、熱いお茶が一杯怖いですね』や『半鐘がいけませんね、おじゃんになりますから』ぐらいの小粋な返しは言うだろう。
普段の岩永ならば、そう聞かれても『そうですね、熱いお茶が一杯怖いですね』や『半鐘がいけませんね、おじゃんになりますから』ぐらいの小粋な返しは言うだろう。
だけどこの世界は殺し合いの場。
どれだけ大切な者であれ、親しい者であれ、自分の知らぬところでその命を失う恐れがある。
どれだけ大切な者であれ、親しい者であれ、自分の知らぬところでその命を失う恐れがある。
(紗季さん……)
岩永琴子のその聡明な頭脳は幾多の可能性を考える。
紗季がこの殺し合いに呼ばれたのは、言ってしまえば岩永と強く関わる者だからだ。
リュージやアリアのようにこのゲームは知り合い同士で固められた可能性が濃厚だ。
紗季が呼ばれたのも、鋼人七瀬事件において自分達と関わったが故であることを考えると、巻き込んでしまったことへの罪悪感はある。
当初、桜川六花がゲームの裏にいることを予想していたが、彼女は九郎を失う真似はしない。
おそらく主催にいる可能性は少ないだろう。
紗季がこの殺し合いに呼ばれたのは、言ってしまえば岩永と強く関わる者だからだ。
リュージやアリアのようにこのゲームは知り合い同士で固められた可能性が濃厚だ。
紗季が呼ばれたのも、鋼人七瀬事件において自分達と関わったが故であることを考えると、巻き込んでしまったことへの罪悪感はある。
当初、桜川六花がゲームの裏にいることを予想していたが、彼女は九郎を失う真似はしない。
おそらく主催にいる可能性は少ないだろう。
(……九郎さんは今この場に居ない)
普段彼女と共にいるあやかし達や九郎はここにはいない。
この感傷は、久しぶりに岩永が一人だけで抱える事になる。
この感傷は、久しぶりに岩永が一人だけで抱える事になる。
そんな彼女の感傷とは関係なしに、ゲームは続いていく。
このゲームは、解決に導かない限りは終わらない。
岩永の頭脳はただ冷静沈着に場を見極めんとする。
知恵の神である以上、秩序の維持を行わなくてはいけない。
このゲームは、解決に導かない限りは終わらない。
岩永の頭脳はただ冷静沈着に場を見極めんとする。
知恵の神である以上、秩序の維持を行わなくてはいけない。
神の目線で見れば、九郎との合流自体は可能であった。
九郎は現在、わずか1マス隣のホテルにいる。
放送前のリュージの行動方針である施設の探索を続けていれば、合流する未来も掴めただろう。
だが、知恵の神といえど、何一つ情報のない人物の場所を知ることは出来ない。
普段のようにあやかし達よる捜査も出来ない以上は気付くことは不可能だ。
岩永の頭脳は不確実な九郎の捜索より、目の前にある秩序の維持を優先した。
九郎は現在、わずか1マス隣のホテルにいる。
放送前のリュージの行動方針である施設の探索を続けていれば、合流する未来も掴めただろう。
だが、知恵の神といえど、何一つ情報のない人物の場所を知ることは出来ない。
普段のようにあやかし達よる捜査も出来ない以上は気付くことは不可能だ。
岩永の頭脳は不確実な九郎の捜索より、目の前にある秩序の維持を優先した。
(……九郎さん、どうかご無事で)
弓原紗季の死は、岩永琴子に桜川九郎を失う死別の悲しみ を改めて考えさせるきっかけとなる。
普段であれば、九郎が死んだところで、岩永にとっては少しは気にする程度だ。
妖怪達の間で、恋人がいくら死んでも気にされないクールな方という評を受けるほどに、九郎が死ぬことに慣れてしまっている。
だけどそれは九郎が不死という前提がある故に抱ける感情だ。
普段であれば、九郎が死んだところで、岩永にとっては少しは気にする程度だ。
妖怪達の間で、恋人がいくら死んでも気にされないクールな方という評を受けるほどに、九郎が死ぬことに慣れてしまっている。
だけどそれは九郎が不死という前提がある故に抱ける感情だ。
岩永は大切な者との死別を体験したことが無い。
知恵の神として人の死というものに多く触れ、簡単なことだと頭の中では分かっていても、それを彼女自身が経験したことはない。
九郎が居なくなったとき、知恵の神はひとりで生きることになる。
岩永琴子は、再び桜川九郎と合う前の頃に戻る。
それを経験するとき、今の彼女が平気で居られるのかは分からない。
知恵の神として人の死というものに多く触れ、簡単なことだと頭の中では分かっていても、それを彼女自身が経験したことはない。
九郎が居なくなったとき、知恵の神はひとりで生きることになる。
岩永琴子は、再び桜川九郎と合う前の頃に戻る。
それを経験するとき、今の彼女が平気で居られるのかは分からない。
岩永は秩序の番人だ。
秩序を守れる範囲であれば、情を見せることはある。
けれど、秩序の維持に関わる場合、岩永は妥協はしない。
秩序を破壊する存在は破壊する。手段を選ばず収束させる。排除する。
場合によっては人の道義を優先せず、死すらも利用し非情に徹する。
『秩序を守る』という一点において岩永は決して揺らがない。
目的の為に選択を迷うこともなく、可憐に苛烈に冷酷に対処する。
かの鋼人七瀬を虚構に返したように。
後の事件で出会う音無剛一や丘町冬司のように、人として情をかけない解決法を選ぶときもある。
この世界でも電車事故を起こした危険人物に対して、そうした対応を行うだろう。
μに対しても、正気に戻すことが出来なければ鋼人七瀬のように虚構に返すだろう。
だけど、その選択肢を優先して九郎と死別することがあれば、彼女は冷静で居られるだろうか。
秩序を守れる範囲であれば、情を見せることはある。
けれど、秩序の維持に関わる場合、岩永は妥協はしない。
秩序を破壊する存在は破壊する。手段を選ばず収束させる。排除する。
場合によっては人の道義を優先せず、死すらも利用し非情に徹する。
『秩序を守る』という一点において岩永は決して揺らがない。
目的の為に選択を迷うこともなく、可憐に苛烈に冷酷に対処する。
かの鋼人七瀬を虚構に返したように。
後の事件で出会う音無剛一や丘町冬司のように、人として情をかけない解決法を選ぶときもある。
この世界でも電車事故を起こした危険人物に対して、そうした対応を行うだろう。
μに対しても、正気に戻すことが出来なければ鋼人七瀬のように虚構に返すだろう。
だけど、その選択肢を優先して九郎と死別することがあれば、彼女は冷静で居られるだろうか。
そもそも岩永琴子にとって桜川九郎とはどのような存在か。
本来、少し先の未来で岩永に突きつけられる言葉がある。
それは、『秩序を守るものである岩永は、秩序に反した存在である九郎や六花は根本的に許容できない』ということ。
『九郎を求めるのは、六花を止めるため同等の力を持つ者を手元に置きたいから』。
『知恵の神としての理 が九郎に利用価値を見出しているから』。
岩永は九郎への思いは一目惚れの恋人関係だと思っているが、そう言われたとき彼女は言い返せなかった。
本来、少し先の未来で岩永に突きつけられる言葉がある。
それは、『秩序を守るものである岩永は、秩序に反した存在である九郎や六花は根本的に許容できない』ということ。
『九郎を求めるのは、六花を止めるため同等の力を持つ者を手元に置きたいから』。
『知恵の神としての
岩永は九郎への思いは一目惚れの恋人関係だと思っているが、そう言われたとき彼女は言い返せなかった。
岩永は九郎に対し普段から彼女や恋人といった言葉を使い、中学生の頃から片思いをしている。だけど、岩永はまだ桜川九郎に「愛してる」と言葉にしたことはない。
「これが愛だ」と断言することは彼女は出来なかった。
「これが愛だ」と断言することは彼女は出来なかった。
秩序の番人として、六花に対応するために損得勘定で一緒に居ようとしているだけかもしれない。
六花が存在しなければ、不死者である九郎を排除していたかもしれない。
その可能性に岩永は目を背ける。
六花が存在しなければ、不死者である九郎を排除していたかもしれない。
その可能性に岩永は目を背ける。
知恵の神としての機構 は秩序を維持するうえでは如何なる行為も恐れない。
たとえその結果、恋人を失っても平気であろうとする。
だけど個人としては、岩永琴子としての思いは―――。
たとえその結果、恋人を失っても平気であろうとする。
だけど個人としては、岩永琴子としての思いは―――。
○○○
岩永琴子は正しい道を選ぶ。
秩序の維持を適切に行う。
それが知恵の神という機構 だ。
自分自身が正しい選択をして、正しい答えを出すと分かっている。
彼女に怖いと思う理由は無い、身体に震えも無い。
その選択に、今まで後悔をしたことはなかった。
秩序の維持を適切に行う。
それが知恵の神という
自分自身が正しい選択をして、正しい答えを出すと分かっている。
彼女に怖いと思う理由は無い、身体に震えも無い。
その選択に、今まで後悔をしたことはなかった。
「もし選択ミスれば、九郎とやらを失うって考えたら怖くねえか?」
リュージは問いかける。
恋人を探しに行くことより秩序の維持を優先していいのかと。
このゲームで九郎を失い一人になるかもしれないことを。
失っても怖くないという岩永自身のあり方を。
失ってもまるで気にしそうにないその自分の姿を。
恋人を探しに行くことより秩序の維持を優先していいのかと。
このゲームで九郎を失い一人になるかもしれないことを。
失っても怖くないという岩永自身のあり方を。
失ってもまるで気にしそうにないその自分の姿を。
「……怖くないですね」
時間にしてしまえば僅か数秒ほど。
その間、聡明な頭脳は何を思ったか。
少し間を置き、知恵の神はただそれだけを口にした。
その間、聡明な頭脳は何を思ったか。
少し間を置き、知恵の神はただそれだけを口にした。
「そうか」
その選択を聞き、リュージはそれ以上何も言わなかった。
その言葉の苦しさは、弟を失った彼だからこそわかる。
その言葉の苦しさは、弟を失った彼だからこそわかる。
(ホント、コイツはクソ異能(シギル)だよ)
その
だけど、もしなにか見破られたのなら。岩永琴子がその言葉の裏に何か思ったとするならば。
きっとそれは、神になった少女にわずかに残った人間性だろう。
知恵の神自身も知らない、その心の奥底に踏み込めたのはリュージだけ。
「じゃあ決まりだ。俺の選択は―――」
○○○
(岩永……リュージ……)
二人から離れていたアリアは静かに様子を窺っていた。
人の死とは慣れるものではない。
しばらく時間が必要だろうと気を遣っていた。
人の死とは慣れるものではない。
しばらく時間が必要だろうと気を遣っていた。
アリア自身もメビウスで人が死ぬのを見たことがある。
帰宅部の仲間であった巴鼓太郎が目の前で落下し、パラメータが消えていく光景は今も焼き付いて離れない。
このゲームでも、親友であるμの力を悪用され、岩永とリュージの大切な人に犠牲を出してしまったことには心苦しさがある。
帰宅部の仲間であった巴鼓太郎が目の前で落下し、パラメータが消えていく光景は今も焼き付いて離れない。
このゲームでも、親友であるμの力を悪用され、岩永とリュージの大切な人に犠牲を出してしまったことには心苦しさがある。
(μ……)
それでもアリアにとってμは友であり、失いたくない大切な存在だ。
μが善意からメビウスを維持していたことは、彼女の記憶の残滓を見てきたアリアは何よりも知っている。
叶うことならば、彼女に正気を取り戻させ元の関係に戻りたいと思っている。
μが善意からメビウスを維持していたことは、彼女の記憶の残滓を見てきたアリアは何よりも知っている。
叶うことならば、彼女に正気を取り戻させ元の関係に戻りたいと思っている。
だけど、その方法が叶わぬならば、彼女を壊すことになる。
アリアの選択する時は、彼女が生きていればきっと遠くないうちに来るだろう。
アリアの選択する時は、彼女が生きていればきっと遠くないうちに来るだろう。
「話は終わりました。行きますよ、アリア」
「なにボーっとしてんだ、行くぞ」
「あ、待って、今行く」
「なにボーっとしてんだ、行くぞ」
「あ、待って、今行く」
かくして、三者はそれぞれの思いを胸に選択する。
願わくば、それが後悔なき選択であることを。
どうか永遠にxxxx/xx/xx が来ないことを。
願わくば、それが後悔なき選択であることを。
どうか永遠に
【F-4/神殿前/一日目/朝】
【リュージ@ダーウィンズゲーム】
[状態]:健康
[服装]:軍服
[装備]:イケPの二丁拳銃@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-
[道具]:ポルナレフの双眼鏡@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風、不明支給品0~1、
[思考]
基本:王を殺す。そのあとは知り合いの有無で考える。
0:渋谷駅方面に向かう連中(富岡とビルド)を追いかける、μに対処するかは状況で判断 or C-7方面へ向かい線路を破壊した者の情報を集め、王であれば殺す。
1:岩永琴子と行動する。とりあえず会場の目ぼしい建物を巡る。
2:王を殺す。
3:アリアの仲間、ジョルノ、カナメ、レイン、桜川九朗、メビウスの関係者を探す。
[備考]
※参戦時期は宝探しゲーム終了後です。
※この世界をメビウスのような「フィクション」だと思っています。
[状態]:健康
[服装]:軍服
[装備]:イケPの二丁拳銃@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-
[道具]:ポルナレフの双眼鏡@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風、不明支給品0~1、
[思考]
基本:王を殺す。そのあとは知り合いの有無で考える。
0:渋谷駅方面に向かう連中(富岡とビルド)を追いかける、μに対処するかは状況で判断 or C-7方面へ向かい線路を破壊した者の情報を集め、王であれば殺す。
1:岩永琴子と行動する。とりあえず会場の目ぼしい建物を巡る。
2:王を殺す。
3:アリアの仲間、ジョルノ、カナメ、レイン、桜川九朗、メビウスの関係者を探す。
[備考]
※参戦時期は宝探しゲーム終了後です。
※この世界をメビウスのような「フィクション」だと思っています。
【岩永琴子@虚構推理】
[状態]:健康、無意識下での九郎との死別への恐れ
[服装]:いつもの服、義眼と義足
[装備]:赤林海月の杖@デュラララ!!
[道具]:基本支給品、文房具(消費:小)@ドラゴンクエストビルダーズ2、ランダム支給品1(岩永琴子確認済み)
[思考]
基本:このゲームの解決を目指す
1:渋谷駅方面に向かう方達(富岡とビルド)を追いかける、μに対処するかは状況で判断 or C-7方面へ向かい線路を破壊した者の情報を集め、秩序を破壊する者であれば対処する
2:九郎先輩との合流は……
3:紗季さん……
4:首輪の解析も必要です、可能ならサンプルが欲しいですが……
5:オスティナートの楽士から話を聞きたいですね
[備考]
※参戦時期は鋼人七瀬事件解決以降です。
※アリアから彼女が呼ばれた時点までのカリギュラ世界の話を聞きました。
※この殺し合いに桜川六花が関与している可能性を疑っています。
ただし、現状その可能性は少ないと思っています。
※リュージからダーウィンズゲームのことを知っている範囲で聞きました。
[状態]:健康、無意識下での九郎との死別への恐れ
[服装]:いつもの服、義眼と義足
[装備]:赤林海月の杖@デュラララ!!
[道具]:基本支給品、文房具(消費:小)@ドラゴンクエストビルダーズ2、ランダム支給品1(岩永琴子確認済み)
[思考]
基本:このゲームの解決を目指す
1:渋谷駅方面に向かう方達(富岡とビルド)を追いかける、μに対処するかは状況で判断 or C-7方面へ向かい線路を破壊した者の情報を集め、秩序を破壊する者であれば対処する
2:九郎先輩との合流は……
3:紗季さん……
4:首輪の解析も必要です、可能ならサンプルが欲しいですが……
5:オスティナートの楽士から話を聞きたいですね
[備考]
※参戦時期は鋼人七瀬事件解決以降です。
※アリアから彼女が呼ばれた時点までのカリギュラ世界の話を聞きました。
※この殺し合いに桜川六花が関与している可能性を疑っています。
ただし、現状その可能性は少ないと思っています。
※リュージからダーウィンズゲームのことを知っている範囲で聞きました。
【アリア@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
[状態]:健康
[思考]
基本:μを止める、だけど……
1:帰宅部の仲間との合流
[備考]
※参戦時期は少なくてもシャドウナイフ編以降。琵琶坂生存ルートです。詳しい時期はお任せします。
[状態]:健康
[思考]
基本:μを止める、だけど……
1:帰宅部の仲間との合流
[備考]
※参戦時期は少なくてもシャドウナイフ編以降。琵琶坂生存ルートです。詳しい時期はお任せします。
【支給品紹介】
【ポルナレフの双眼鏡@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
リュージに支給。
ポルナレフがブチャラティ対セッコの戦いを覗くときに使っていたもの。
のちにディアボロの手により破壊される。
ちなみにポルナレフがいたコロッセオから、戦場であるヴェネツィア広場までの距離はおよそ1km。(Google Map調べ)
ジョジョ5部において、双眼鏡はジョルノ達がカプリ島やサルディニア島で使っている物もあり紛らわしいため、『ポルナレフの』と明記する。
ちなみにこのロワで双眼鏡の支給はこれで3つめとなる。
【ポルナレフの双眼鏡@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
リュージに支給。
ポルナレフがブチャラティ対セッコの戦いを覗くときに使っていたもの。
のちにディアボロの手により破壊される。
ちなみにポルナレフがいたコロッセオから、戦場であるヴェネツィア広場までの距離はおよそ1km。(Google Map調べ)
ジョジョ5部において、双眼鏡はジョルノ達がカプリ島やサルディニア島で使っている物もあり紛らわしいため、『ポルナレフの』と明記する。
ちなみにこのロワで双眼鏡の支給はこれで3つめとなる。
【文房具@ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島】
現地調達品。
岩永琴子がコロッセオ内で拝借したもの。
『ペンやノートなど ものを書くための道具』
ビルドがガラスx1と草糸x3で作れるかざり家具。
ゲーム内グラフィックで表されるノート2冊と羽ペンとインクのセット。
現地調達品。
岩永琴子がコロッセオ内で拝借したもの。
『ペンやノートなど ものを書くための道具』
ビルドがガラスx1と草糸x3で作れるかざり家具。
ゲーム内グラフィックで表されるノート2冊と羽ペンとインクのセット。
前話 | 次話 | |
わたしのとくべつ(前編) | 投下順 | 逃走(インポッシブル) |
前話 | キャラクター | 次話 |
ライズ・イン・ザ・フィクション | 岩永琴子 | It's My Life ーTir na nOg ー(前編) |
ライズ・イン・ザ・フィクション | リュージ | It's My Life ーTir na nOg ー(前編) |