バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

Noblesse Oblige -BREAK IT-

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kyogokurowa

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「ほんと、一難去ってまた一難、ですわ……」

黒平安京に立つブロンドヘアーの少女。殺し合いに巻き込まれたのか、先のセレモニーを引きずっていたのか、それとも元の世界で何かしらあったのか、少女の顔はその美貌と等しいぐらいに険しいものであった

彼女の名は高千穂麗。武偵校1年C組、強襲科(アサルト)所属のランクA武偵
元の世界での夾竹桃が間宮あかりを狙い起こした事件。それはあかり達によって解決し、途中で乱入してきた夾竹桃の姉水蜜桃も確保。事件は終結へと迎えたはず、なのだが

名簿にその夾竹桃の名前が載っていた。あの後警察に連行された彼女がなぜここにいるのか、それが二人とは別のイ・ウーのメンバーが手引したものなのか、あかり達や神崎アリアが巻き込まれたのはあの一件の報復のためか、疑問は尽きないものの、今は自分のやれることを無理せず行うことにしたのだ
彼女が会場に送られた際、飛ばされた場所はこの黒平安京なる場所。平安京の名は流石に知っていたが

「と言うよりもなんなの、この悪趣味なオブジェクトは……」

そう呟きながら見上げる先にあるのは、まるで大樹のような高い何かと、そしてその上に鎮座する城のような建造物。あんな摩訶不思議なオブジェクトが平安京にあったなんて聞いたこともない。もし火事等で焼け落ちたと仮定しても、そんなものが在ったのなら歴史書が根本から塗り替わる大発見になるはずだ
最も、あの建造物が黒平安京の支配者たる陰陽師、安倍晴明の居城であることを彼女が知る由もないが

「ですが、高い'建物'でしたら、都合がいいわね」

だが、それはある意味、高千穂麗にとっては都合のいいものだった。彼女の支給品の一つとして支給された双眼鏡。支給された地図で建物の大体の位置はわかるとしても、あくまでそれが限度だ。
だが、高い所から双眼鏡で遠くを覗く。単純かつ簡単な手であるが、周辺に誰かがいるか、もしくは何が起きているかがある程度分かる。麗としては(佐々木志乃(あの女)よりも)早くあかりと合流したい気持ちもあるが、下手に遠くを望むよりもまず周囲を確認し、冷静に状況を見極める必要がある

武偵憲章その5:行動に疾くあれ。先手必勝を旨とすべし――殺し合いに乗らないタイプの人物ならいいが、殺し合いに積極的に乗る人物と出会ってしまっては一大事
故に先ずは目的を果たすため、高千穂麗はその建物を最上階へと駆け上がるのだった



◯ ◯ ◯

思いの外あっけなかった。トラップ等の警戒は怠らなかったのだが、待っていたのはまるで神社の石段を彷彿とさせるほどに高すぎる木製階段。作られた時代が時代だけに衛兵まかせな所もあったのだろうと思うが、それでも本当にあっけなかった。そこまでは良かったのだが

「……」

いざたどり着いた先で目にしたのは、黒炭と、その近くで座り込み俯いたまま動かない、見た目通りボロボロの青年の姿だ

(少し困ったわね……)

た所殺し合いに乗っている……というわけではなさそうである。目の前の黒炭はよく見れば、かろうじて人の形をしており、おそらくは何者かによって炭になるレベルまで焼き焦がされ、殺された犠牲者の残骸であろう
そしてこの青年、おそらくその誰かを守れなかった後悔の念に現在進行形で呑まれている……現状から高千穂麗が推理したのはこの通りだ

本来、高千穂麗がこの青年に気にかける必要性は無い。そもそもここから見える景色を双眼鏡で確認し、ある程度の把握ができればさっさとここから脱出するつもりだったのだが
――高千穂麗は今の青年を見捨てて自分の目的だけを優先するほど冷徹な女ではなかった

「そこの貴方、そのまま動かないままでいるのかしら」
「………誰だよ、アンタ。……あの清明ってやつの仲間なのか?」
「……生憎、交友関係は広いですけれど大昔の人物と仲良く慣れるような繋がりは持ってないわ」

青年のこの言葉である程度は察せた。先の残骸は、『安倍晴明』を名乗る誰かによって焼き殺されたものであることを

「……そうかよ。だったら用事だけ済ませてどっか行っちまえばいいさ」
「そうはいかないわ。放送ごとでの禁止エリア指定のルールは知っているでしょ? ここがそれに選ばれない保証はないのよ。まさかこのままずっとここにいるつもり?」
「………どうすりゃいい」
「……?」
「だったら俺はどうすりゃいいって聞いてんだよ!?」

頭の中で何かが爆発したのか、衝動のままに怒鳴る浜面

「……お前だって知ってるだろ、滝壺のこと」
「……!」

滝壺といえば、あの時見せしめとして殺された少女。そして、目の前の彼があの時『浜面』と呼ばれた男であることを彼女は理解する

「俺はあいつを守るって約束したんだ………。なのに、あのざまだった。『仏の顔も三度まで』ってことわざがあるだろ。2度、俺はあいつを麦野沈利とかっていうやつからなんとか守ることが出来た。だが、3度目は流石に許してくなかったようだがな……」
「……」
「それで、だ。こんな所で宛もなくさまよって、何故だから知らんが曲が聞こえてきてだ。俺はそいつが煩わしくてな、駆け出した弾みで飛び出した名簿を見て驚いたさ……俺が知っている、死んだはずの人間が名簿にいやがったんだ。それであいつの言っている『死者の蘇生』が事実であるのを理解した俺は滝壺を蘇らせようとして………殺し合いに乗ろうとした、んだ」
「……乗ろう、とした、ね」
「だけどな、音の主にたどり着いたと思えば、そいつは……なんというか、諦めていたっつーか。だからよ、ふとそいつを叱責しちまったんだ。なんにもしてねぇ癖に諦めんじゃねぇって。それと一緒に優勝を狙う気なんて失せちまったよ。冷静に考えりゃあデタラメの可能性もあったからな」

浜面仕上の言葉は続く。高千穂麗は彼が一時とは言え殺し合いに乗ろうとする考えに至ったことを警戒していたが、それは無理もない話だ

「……それからは、まあ見りゃ分かるか。そいつは清明とかいうクソ野郎に殺されて、俺もご覧の有様と言わんばかりにやられちまってな」
「………」
「俺はあいつに出来ることがあったはずなんだ。早く移動するとか、名前を聞いておくとか。だが俺は自分のことでいっぱいだった。俺を冷静にしてくれたっていうのに、その名前も知らねぇ誰かにナニもしてやれなかった……何も、しなかったんだ……」

大切な人を守れず、自棄になり、殺し合いに乗ろうとしたが最初に出会った相手に勝手に苛ついて、結果その相手の御蔭で冷静になれたのに、その恩人に何もしなかった自分が、誰よりも何よりも
高千穂麗は、ただ彼の怒りとも悲しみとも吐露をただただ耳を傾け最後まで聞いていた。いや、聞かないといけなかったのだろう。
何故ならば、一歩間違えれば同じことになっていたのは自分も同じことかもしれないからだ。
間宮あかり。高千穂麗という一人の人間を変えた、初めての『友達』。高千穂家を、金の力を頼らずに初めて出来た『初めての友達』
もし、あのオープニングセレモニーで見せしめにされたのが滝壺でなく、間宮あかりであったのならば。高千穂麗は奇跡でも起きぬ限り、間宮あかりを蘇らせるために悪鬼へと堕ちる覚悟を以ってして、殺し合いに乗っていたであろう
高千穂麗がその時脳裏に過ぎったのは、どこかで惨殺された間宮あかりの死体の姿だ。そんな最悪の展開を想像してしまい、思わず右手を握りしめる




「俺は……もうどうすりゃいいのか、わかんねぇよ……」

大切な人を奪われ、自分を止めてくれた知らない誰かを殺され、縋った手段すら諦めざるえなくて、何もかもわからなくなった浜面仕上はただ座り尽くす他になかった
自分はどうすればいいか、何をすればいいか、それもわからなくなった


「……」

高千穂麗は考え込む。この青年はどっちにしろ放っておけない。それに彼の気持ちもわからなくもないからだ。そして、脳内でピーン!という音と共に、何かを閃き、浜面仕上に対し改めて声をかける

「――浜面仕上」
「……なんだよ、もう放っといて――」
「今から、私の仮下僕になりなさい」
「―――は?」

この女は一体何ふざけた事抜かしてるんだ? 浜面仕上の思考は高千穂麗の一言によってその一点のみに呑まれることになった

(仮下僕??? 仮下僕!???? どういうこと!?)
「――湯湯と夜夜が巻き込まれていなかったのは不幸中の幸いだけど、とはいえ逆を言えばそれはそれで不便なのよ。それにあなた、何をすればわからないって言うのでしたら、わたくしがその'やること'とやらを差し上げてあげるだけのこと」
「はぁ!? お前人のことなんだと思ってるんだ!?」

案の定浜面の文句と言うなの怒号が飛び交うも、高千穂はそれを気にせずデイバッグから双眼鏡を取り出し、外を一望出来る場所に移動。取り出した双眼鏡を通じて外を見渡す。

東にはホテルと神殿、南東にはピラミッド、南は船……おそらくはバンエルディア号と記載されているもの
北西・西・南西は海が広がっており、そして北には渋谷駅と、おそらく宮比温泉物語なる建造物

(……双眼鏡で確認できる視界限度はここまでのようですね。後は黒平安京の周囲を確認後に、彼をどうにかして……えっ!?)

そう考えていた最中に、北に位置する宮比温泉物語の外壁の一部からビームのような物が放出される
そのビームは一定間隔で建物内から放出され、壁に穴を開け続ける

「おい、人の事無視してんじゃ――」
「……どういうこと!? あのビームは一体何なの!?」
「……ビーム!?」

呆気に取られていた麗の背後から、さっきまで彼女に対し文句を垂れ流していた浜面が先の麗が漏らした「ビーム」という言葉に反応し近づく。

(……おいまて、もしかして……!)
「ちょっとあなた、それわたくしの!」

双眼鏡を取り上げ、麗が見ていた方向を覗く。そこには射出されるビーム。そしてそれとは別に、窓らしき場所から人影のようなものが飛び降りる姿が見えた。流石に遠すぎて誰かまではわからなかったが、ニットのワンピースらしき服装をなんとか確認できたぐらいだ

「……麦野の『原子崩し』と、……絹旗……?」

遠くて見づらかったが、浜面仕上には確信できる『何か』があった。あのビームは麦野沈利の『原子崩し』によるもの。そして建物から脱出したのはおそらく絹旗最愛
おそらく二人が戦っていたのか、それともまた別の理由なのかは知らない。だが、もしそうだとしたら、いくら絹旗でも麦野の相手は厳しすぎる。自分の時は、麦野は冷静さを失い、自分へ執着していた。だが俺が関係ない場合での冷静だった麦野だったのなら話は別だ。レベル4とレベル5には例外が無い限り天と地の差がある。あれを見れば逃げていたようだがあの麦野が相手をそうそう逃がすわけもない。最悪、絹旗最愛は死ぬ。
浜面仕上からすれば、絹旗最愛との付き合いもそれなり長い。態度は色々と最悪だが、何だかんだで俺と一緒に滝壺の退院祝いを考えようとしてたり、俺のことを逃がそうとしてくれたり、案外知り合いに依存するタイプだ

スキルアウト時代にヘマをやらかし暗部組織のいち下っ端まで落ちた。だけどその御蔭で滝壺に出会えた。絹旗とフレンダはそこまで悪いやつには見えなかった。麦野?あいつは今は別だ
絹旗を助けにあそこに向かう? だが今の俺でなんとかなるのか? 斧一本で? そもそも間に合うのか? 俺が動いたところでまずどうにかなるのか? そもそもあの距離を徒歩で間に合うものなのか? そもそも――






―――滝壺が死んじまって心は折れた、優勝すら諦めた今、何をすればいい?

怖かったんだ、ただ怖かっただけだ、無力な自分が下手に関わって誰かが不幸になるのが あの名も知らぬ誰かのように

じゃあそのままうじうじしたままでいいのか? 永遠に弱いままでいいのか?




最初から決まってんだろ浜面仕上




『そんなつまんねぇ幻想なんて自分でどうにかしやがれ!このクソ野郎が!』




―――言いわけねぇだろこん畜生が











「――おいあんた、そういや俺を下僕にしたいって言ったよな」

浜面のその言葉を聞き、麗は思わず笑みを浮かべる。浜面の顔はさっきの時よりも打って変わって覚悟を決めた『男』の顔をしていた

「……いいぜ。望み通りあんたの下僕にでもなんでもなってやるよ。だが、俺から条件がある。俺はこの殺し合いをぶっ壊して、安全な場所から俺たちを嘲笑ってやがるクソビッチどもをぶっ潰す。俺たちを奴隷扱いして弄んでいい気になってる奴らのその幻想をぶっ壊すつもりだ。それにお前も協力しろ」
「――その答えを私は待っていましたよ」
「……なんだよおい、最初っから俺に発破かけるつもりでこうしたのかお前」
「そのつもりはなかったんですけど、どうにも貴方の態度が気に入らないので無理やり連れ出そうと思っただけの事よ」
「そうかよ、どこまでもわかんねぇお嬢様だ。でだ、まず俺は何かしらに巻き込まれてるかもしれない知り合いを助けたい」
「下僕の分際で私に意見……なんて気を削ぐような事は言わないわ。……あの建物、宮比温泉物語よね。距離もだいぶ離れていますし、既に手遅れの可能性もありますけどいいの?」
「……すまねぇ。でも何もしないままウジウジしてるよりはマシだろ?」
「そうですわね。――ところで貴方、運転の心得は」
「……まあ、おおよそ何でも運転できるな。バイクから装甲車まで」

◯ ◯ ◯

麗に連れられ地上に降りた浜面仕上が見たのは黒いバイク……しかもライトもナンバープレートもバックミラーもスピードメーターも付いていないが、ハンドルはあるしこの形状はどう考えてもバイクだ

「……なぁ、これは」
「私にもわからないのよ。こんな大きいものが私のデイバッグの中にあったのも驚きだけど、ここまで素っ頓狂な代物は始めて。それにわたくし、免許はもっていないから宝の持ち腐れよ。でも、これを使えばなんとか、間に合うのかもしれないわ」
「……助かる!」
「お礼なんていいわ、では早く行きましょう」

それもそうだな、と浜面が言い返しながらバイクに乗る。高千穂は浜面の後ろに掴まる形だ。せめてこの夜中なんだからライトぐらい欲しかったが贅沢も言っていられない
それに、本当に急がなければ辿り着く以前に清明に見つかり開幕で躓きゲームオーバーとか笑えない事にもなる

「――高千穂麗」
「あ?」
「わたくしの名前よ。まだ自己紹介、出来てなかったでしょ?」
「……そうだったな、浜面仕上。まあなんとなく察してると思うが、女ひとり守りきれなかったくそったれ野郎だ。そんな俺でもいいなら、よろしくな」
「……構いませんわ。仮とは言え、一度でも私の下僕になることを宣言したのですから、貴方を死なせるつもりはないから」
「そりゃどうも。じゃあ下僕らしく働かせてもらうさ。どっちにしろ下っ端生活は慣れてるからな」


エンジンが鳴り響き、黒いバイクは二人を載せて走り出す。事実、間に合うのかどうかなんてわからないし、既に手遅れかもしれない。だが、やらないよりもやる方がマシだ

それが彼にとっていい方に働くのか悪い方に働くのかはわからない。未来はまだ不確定であり、まだ始まったばかりだからだ




【F-2/黒平安京/深夜/一日目】
【高千穂麗@緋弾のアリアAA】
[状態]:健康
[服装]:武偵高の制服
[装備]:
[道具]:基本支給品一色、不明支給品1つ、双眼鏡@現実
[思考]
基本:この殺し合いを止める
1:宮比温泉物語に向かう。
2:あかりと早く合流したい(出来れば佐々木志乃(あの女)よりも)。
3:夾竹桃には最大限の警戒
4:仮下僕にした以上、高千穂の名に誓って浜面は死なせない
[備考]
※アニメ版最終回後からの参戦です
※浜面仕上を仮下僕にしました

【浜面仕上@とある魔術の禁書目録】
[状態]:全身にダメージ(ある程度自然治癒)
[服装]:いつもの服(一部焼け焦げている)
[装備]:バトルアックス@ドラゴンクエストビルダーズ2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考]
基本方針:主催共の幻想をぶっ壊す
1:宮比温泉物語に向かう。絹旗に出会えたならいいが、もし麦野が居たなら
2:垣根と麦野、晴明には要警戒する。
[備考]
※参戦時期はロシア到着直後です。
※高千穂麗の仮下僕になりました

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愛にできることはまだあるかい 投下順 暗雲低迷

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ほんとのきもちはひみつだよ 浜面仕上 ワイルド・スピード
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