バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

ワイルド・スピード

最終更新:

kyogokurowa

- view
メンバー限定 登録/ログイン
駅の構内で一人の少年が立ち尽くしていた。

彼の名は錆兎。鬼舞辻無惨率いる『鬼』を倒す為に戦う鬼殺隊への入隊を目指していた少年である。
彼は困惑していた。
自分は確かに死んだ筈だ。
あの腕がたくさん生えた巨大な鬼の頸を斬り損ね、代わりに頭を潰されて。
ああ、間違う筈もない。あの絶望の痛みは決して幻ではない。

『殺し合いを勝ち残った最後の一人には、ご褒美として、どんな願いも叶えてあげます。巨万の富に、死者の蘇生――。何でも良いわ…。何でも叶えてあげる!』

テミスという女の言葉がふと過る。遅れて、ああそうか、そういうことかと理解する。
自分はあの女達に蘇らせられたのだと。
不思議な気分だ。
命が握られている危機感よりも、いまここに己の身体があり、血肉が通っている喜びの方が勝っている。

だが、それでも彼女たちの言いなりに他者を殺して生き残ろうとは思えなかった。
錆兎は鬼に家族を食われ天涯孤独に陥った身だ。あの悲しみを誰かに押し付けて生き延びようとはとても思えない。
だから、錆兎は己の魂に誓う。殺し合いを止め、奴らを打ち倒すと。そして、その時までこの命があれば、共に連れて来られている義勇と共に鱗滝師匠のもとへと帰ろうと。

決意と共に歩き始めて幾ばくか。

錆兎は線路走る渋谷駅の手前で初めての参加者に出会う。

遭遇したのは男だった。錆兎の時代にはとうに下火になった陰陽師の衣服を着た男だった。

錆兎が声をかける前に、陰陽師は手を振るい火の着いた札を投げつける。
いきなりのご挨拶だが、錆兎は微かに息を呑みつつも、すぐに立て直し、向かい来る炎の札を剣で払い落した。

先制攻撃をいなされた陰陽師は、しかしてその口角は愉快気に吊り上がっていた。


ブウゥゥンとエンジン音をなびかせ、浜面と高千穂の二人を乗せた黒バイクは道を往く。

「ねえ、浜面」

唐突な呼びかけに浜面は顔は正面に向けたまま「ん?」と反応を返す。

「あなたの探してる絹旗という女子はどのくらい大きいのかしら」
「なんだ藪から棒に...あんたよりはデカくねえぜ。むしろ小せえ。あいつは『実は高校生の滝壺より中学生の自分の方がスタイルがいい』なんて言ってたが、ありゃどう考えても見栄張ってるだけで」

パァン、と浜面の腹部から小気味良い音が鳴り響き、唐突な鋭い衝撃に浜面の喉元まで空気が込みあがる。

「ぅぷ...なにすんだよ!?危ないじゃねえか!」
「誰が胸の話しとっと!?私が聞きたいのは身体の大きさよ!背丈とかそういうの!」
「だったら最初からそう言えよ!」
「うるさいわね、あなた下僕でしょう!?主の言いたいことくらい察してみせなさいな!」
「クソッ、なんて我が儘なお嬢様だ。迂闊に主従関係結ぶんじゃなかったぜ...んで、絹旗の背丈がどうしたのでございましょうか」

半ば投げやりな態度をとる浜面にふぅ、とため息をつきながらも高千穂は彼の問いに答える。

「このバイク、精々二人乗りでしょう?絹旗さんと合流できたとして、そこから先はどうするつもり?」
「あー、そういうことか...」

ここまで言われれば、高千穂の懸念はなんとなく理解できた。
現状、絹旗は麦野に追跡されている可能性が高い。
彼女と合流するということは、必然的に麦野とも遭遇する確率は高くなってしまう。
絹旗を含めた三人で返り討ちにしてしまえればいいのだが、なんせ相手はあのレベル5の麦野沈利。
勝算が薄いうえに、よしんぼ勝てたとしても、最低でもこの三人の内誰かは死ぬことになるだろう。

ならば逃げに徹してしまえばいい、という段階にきて、絹旗の身体のサイズが関わってくる。
彼女が幼い子供ならば問題ないのだが、生憎と彼女は小柄ではあるがそれでも並の学生ほどはある。
人間三人、このバイクに乗って麦野から逃走するのはとてもじゃないが難しい。
かといって、バイクを仕舞い三人そろって徒歩であれば追いつかれる可能性は非常に高くなる。

「とはいえ、現状、俺たちの支給品じゃどうしようもねえ。だったら早くあいつと合流するしかないだろ」
「それは、まあそうだけども...」

浜面の支給品も高千穂の支給品も、サイドカーのようなバイクの補助道具は入っていなかった。
となれば、やはり誰かしらから支給品を貰わなければ打つ手がないのだ。

(頼むぞ絹旗...お前もせめて自転車くらいの支給品があってくれよ...)

浜面が絹旗にそう願った時だ。

ドン、と激しい爆発音が響き、前方から煙が立ち上った。

「ッ、あれはあなたの言う麦野沈利かしら?」
「いや、光線が発射されちゃいなかった。あいつなら冷静な時でも派手にぶっ放しかねないからな。てことは...!」


爆風は駅の壁を破壊し、錆兎の身体もまた宙に投げ出される。
そのまま落下すればダメージは甚大。彼は壁に剣を突き立て、壁を削りながら堕ちることで速度を殺し無事に着地した。

「逃げ足は大したものだが、貴様の反撃は見せてはくれぬのか?」

晴明は、爆発で開いた穴より飛び、ふわりと着地する。

「お前が殺し合いに乗った理由はなんだ」

錆兎は剣を構え、警戒心を露わにする。
晴明はただの人間ではない。それは先の陰陽術がなによりも表している。
だが鬼でもない。鬼殺隊は鬼を斬る隊であり、それ以外の殺生を避けるのが基本だ。
だからこその確認だ。
相手の意思を確認し、ただ恐怖や困惑から闘争に手を出してしまったならどうにか殺さず済ませたい。
だが、己の快楽や私欲の為に殺し合いを肯定するものならば話は別。そういう悪党ならば斬って決着をつけるしかないのかもしれない。

「至極単純なことよ。少々、退屈しておったのでな。この殺し合いも貴様らも我の退屈凌ぎにしかすぎぬわ」
「そうか、それなら此方も遠慮はいらないな。ちょうどあんたの声が苛立ってしょうがないところだった」

笑いながら答える晴明に、錆兎は決意する。
この男は鬼ではないが、しかし、奴らと同じく人々に仇なす悪鬼だ。ならばこの場で斬る、と。

錆兎は地を蹴り晴明へと飛び掛かる。
その姿はまさに清流。無駄なく、美しさすら感じられる曲線。

晴明はニィ、と口角を吊り上げ掌を翳す。
ガキン、となにかを叩くかのような音と共に錆兎の剣は晴明の眼前で停止した。

「...!」

これ以上は振り抜けないと悟った錆兎は弾かれる反動を利用し大きく後方に跳躍。
そのまま跳躍で晴明の周囲をぐるぐると跳びまわる。

「ほう。勘がいい。動きを止めれば我の札が貴様を襲うのを予見したか」

錆兎の読み通り、晴明の戦法の一つは、結界で己への攻撃を防ぎ、その隙に呪符で攻撃するというもの。
ならば下手に攻撃に出ず、隙を伺うのは正しい戦法だ。幸運にも晴明が制限により鬼を召喚できないため、これ以上なく効果的な戦術だった。

「動きも悪くない...だが」

錆兎は晴明の背後より斬りかかる。
狙うは頭部。

―――水の呼吸、壱の型 水面斬り

頸を斬る為に、剣を水平に振りぬく技。優れた剣士が扱えば、鬼を葬るのに十分な威力を発揮する。
が、しかし。

「ムンッ!」

晴明の頸に刃が届く前に、懐から取り出した鉄扇が間に入り刃を防ぐ。
錆兎は僅かに驚くも即座に切り返し、晴明へと幾重もの刃を振るっていく。が、晴明の防御は崩れない。
どころか、余裕磔磔のその笑みは遊んでいるかのようにすら思える。

―――水の呼吸、弐の型 水車

剣を打ち付けた反動で浮かび上がり、宙返りからの回転斬り。それも防がれる。
それで構わなかった。本命はこの技だったからだ。

―――水の呼吸、漆ノ型 雫波紋突き!

振り下ろしに慣れさせた後での、不意に放たれる高速の突き技に、晴明の防御は遅れ、錆兎の剣が晴明の形に突き刺さる。
ようやく通った、という安心感に浸る間もなく、腕を斬り落とそうと剣に力が籠められる。

そんな錆兎を嘲笑するかのように晴明は痛みに怯むこともなく、剣をその手で掴めば、錆兎の剣はそれだけで動かなくなってしまう。
見た目に反しての強力な力にさしもの錆兎も驚き動きが止まる。
瞬間、晴明の懐から放たれた燃える札が眼前にまで迫った時、錆兎の脳裏に手鬼に頭蓋を潰された瞬間の光景が過る。

(ああ、あの時もこうやって俺は―――)

己の最期を覚悟した錆兎。
しかし、それを打ち消すように眼前を通り過ぎる赤色の光が一つ。
光は札を何処ぞへと押しやり、次いで放たれた同色の光線が晴明へと放たれる。

晴明は咄嗟に剣を肩から抜き取り、錆兎ごと放り投げ、結界を光線へと向ける。

「晴明ィィィィィィ!!」

浜面が叫びと共にバイクで晴明へと突貫する。

「ふん、少しはマシになったようだが、貴様では話にならぬ!」

それに対し、晴明は炎の呪符を放ち対処。
浜面は呪符を寸でのところで躱し、前輪を上げウィリーさせることで晴明を頭から踏みつぶそうとする。
晴明は横に飛び退き躱し、浜面は前輪を下ろしその勢いのまま、錆兎のもとへと向かう。

「掴まれ!」

走りながら伸ばされた手を、錆兎は躊躇わず握り返す。
その背に追撃をかけようとする晴明だが、浜面の後ろに座る高千穂の銃撃がそれを阻む。
機関銃のように放たれるそれはまさに雨あられ。

「ぬうっ...!」

いくら豆鉄砲のような物とはいえ、これだけの数をまともに受ければ流石に無傷とはいかない。
結界を張り銃弾を防いでいる内に、浜面達の背中は遠ざかっていく。

「ふん。私を置いて行くほどの用でもあるのか?あるいは私を誘っているのか...どちらでもよいか」

浜面達に策があるのかどうか、晴明から見ればどちらでも良いことだ。
ただ、獲物を狩るのを邪魔された。それを看過できるほど彼は寛容な男ではない。

「いいだろう。貴様の誘い、受けてやろうではないか」

ふわり、と晴明の身体が宙に浮き、浜面達の後を追った。




「来るわよ、浜面」

晴明の影を認識した高千穂は先んじて銃撃する。
それは結界で容易く弾かれ、反撃の呪符が襲い来る。

浜面はすぐにバイクを発進させるも、呪符は地面に落ちる前に軌道を変えバイクの後を追う。


「クソッ、自動追跡なんてありかよ!?」
「だったら斬ればいい」

迫りくる呪符を、高千穂を肩車した錆兎が斬り捨てる。
次いで放たれる二枚の呪符を、高千穂の銃弾が、錆兎の剣が撃ち/斬り落とす。


「中々良い乗り心地よ、錆兎。私の仮下僕としては申し分ないわ」
「それはどうも。下僕は御免被りたいが」

肩車をしながらもしっかり防御を成功させる二人。
三人がバイクに乗る為の苦肉の策だったが、二人はそれを難なくこなしてしまった。
そんな二人の存在が、浜面にとっては非常に心強く思えた。

「...高千穂、錆兎。あんたたちは本当にこれでいいのか?」

だからこそ問う。その力を、自分なんかの為に使っていいのかと。
守るべき者は他にいるんじゃないか、と。

「俺のことなら心配するな。別に死ぬつもりはないが、俺に万が一のことがあっても、義勇はなんとかやっていけるだろう。どうせ一度は志半ばに死んだ身だ。なら、最後までその理想の為に戦い続けるさ」
「言ったでしょう、浜面仕上。高千穂麗は決して下僕を見捨てないと」

即答する二人に、ありがとよ、とお礼を返す。

「それで、策はなにかあるのかしら。私たち三人がこのまま戦うよりも冴えた策が」
「ああ」

実際問題、彼が思いついたのは策などという大層なものではない。
晴明と錆兎との戦い、高千穂の射撃を見て閃いただけだ。

「あんたらもわかってるだろうが、俺たちがこのまま戦ったところで無傷の勝利はあり得ない」
「ああ。百歩譲って勝てても、誰かは死ぬだろうな」

錆兎も高千穂も決して弱者ではないが、だからこそわかる。
晴明がこちらを追跡しながらもまだ遊び心を残していると。
そんな相手に挑めばどうなるかは彼ら自身がよくわかっている。

「けれど、このまま逃げ回っていたところで事態の好転は望めなくてよ?」
「だろうな。あいつが先に飽きれば俺たちはオジャンだ」
「じゃあどうするつもりだ」

錆兎の問いを待っていたかのように、浜面は小さく笑みを零した。

「あいつの結界、随分と厄介だよな。剣も効かねえ。銃も効かねえ。レーザーだって効きゃしねえ。あれを突破しようものなら、よほど派手なヤツが必要だよな」
「そうなるわね。けど、この銃じゃそこまでの威力は出ないわよ」
「なあお嬢様。俺たちがこんなに急いで絹旗を探してるのはなんでだ?」
「それは、彼女が追いかけられてたから...っ!」

なにか思い当たったような表情を浮かべる高千穂に、浜面は頷いて返す。

「もしもなんの障害もなく絹旗と合流できればあいつを交えてまたなにか考える。けど、もしも障害が挟まるなら俺たちのやることは一つだ」

絹旗との合流。あの状況でそれを邪魔するものなど、ただ一人しか思い当たらない。
学園都市第四位、麦野沈利。彼女の原子崩しならば小細工無しに突破できるかもしれないし、突破できずとも、あれほどの強者であれば、晴明の興味も絹旗含めた浜面達四人から麦野に移るだろう。
つまり。

「―――化け物には化け物をぶつけんだよ!」





【D-2/渋谷駅/黎明/一日目】
※渋谷駅の一部が崩壊しました。線路に異常はありません。
※現在、錆兎が高千穂を肩車してバイクに乗っています。


【高千穂麗@緋弾のアリアAA】

[状態]:健康
[服装]:武偵高の制服
[装備]:Lucidの二丁拳銃@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-
[道具]:基本支給品一色、双眼鏡@現実
[思考]
基本:この殺し合いを止める
0:錆兎、浜面を従え危険人物たちに対処する。
1:宮比温泉物語に向かう。
2:あかりと早く合流したい(出来れば佐々木志乃あの女よりも)。
3:夾竹桃には最大限の警戒
4:仮下僕にした以上、高千穂の名に誓って浜面は死なせない
[備考]

※アニメ版最終回後からの参戦です
※浜面仕上を仮下僕にしました


【Lucidの二丁拳銃@Caligula Overdose -カリギュラ オーバードーズ-】
オスティナートの楽士の一人、Lucidのカタルシスエフェクトで発現する拳銃。普通の銃弾だけでなくマシンガンの如く連射をしたりレーザーを出せたりする。
ただし、今ロワではあくまでも模造品の為、見た目ほど殺傷能力は高くない。
残弾制限は無いものの、代わりに銃に込められたエネルギーを消費して弾を撃ちだす。
クアッドトリガー→銃(消費:小)
ラピッドファイア→マシンガン(消費:中)
インパルススピナー→レーザー(消費:大)
ソウルチャージ→リロード
の役割にあたるボタンがトリガーの代わりに着いている。



【浜面仕上@とある魔術の禁書目録】

[状態]:全身にダメージ(ある程度自然治癒)
[服装]:いつもの服(一部焼け焦げている)
[装備]:バトルアックス@ドラゴンクエストビルダーズ2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考]
基本方針:主催共の幻想をぶっ壊す
0:このまま晴明を引きつけつつ麦野にぶつける。麦野がおらず、絹旗と合流出来た場合は晴明を四人で袋叩きにする。
1:宮比温泉物語に向かう。絹旗に出会えたならいいが、もし麦野が居たなら...
2:垣根と麦野、晴明には要警戒する。
[備考]
※参戦時期はロシア到着直後です。
※高千穂麗の仮下僕になりました



【錆兎@鬼滅の刃】
[状態]:ダメージ(小~中)
[服装]:いつもの服
[装備]:てつのつるぎ@ドラゴンクエストビルダーズ2
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考]
基本方針:殺し合いを止め、主催を倒す。
0:浜面と高千穂に協力し悪党を倒す。
1:力なき人々を守る。
2:義勇と合流する。

※参戦時期は死亡後です。炭治郎との修行の記憶は朧気にはあるかもしれませんが、ハッキリとは覚えていません。



【安倍晴明@新ゲッターロボ】
[状態]:右肩に刺し傷(再生中)
[服装]:いつもの服装
[装備]:ハクの鉄扇@うたわれるもの 二人の白皇
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2、田中あすかの首輪。
[思考]
基本方針:闘争と混乱を愉しむ。
0:黒平安京、早乙女研究所、魔法学園を中心に行動する。いまは浜面の誘いに乗り追いかけてみる。
1:ゲッターチームを探し出し殺す。
2:陰陽術やゲッター線以外の異能に興味。

※参戦時期は黒平安京で竜馬たちに負けた後です。

前話 次話
覗【ほんしょう】 投下順 復讐スルハ我ニ在リ

前話 キャラクター 次話
Noblesse Oblige -BREAK IT- 浜面仕上 撫子乱舞 -女郎蜘蛛と白の魔王、そして悪魔襲撃
Noblesse Oblige -BREAK IT- 高千穂麗 撫子乱舞 -女郎蜘蛛と白の魔王、そして悪魔襲撃
GAME START 錆兎 撫子乱舞 -女郎蜘蛛と白の魔王、そして悪魔襲撃
ほんとのきもちはひみつだよ 安倍晴明 撫子乱舞 -女郎蜘蛛と白の魔王、そして悪魔襲撃
ウィキ募集バナー