「月彦さん、これは...」
「ええ。あの文字の通りでしょう」
「ええ。あの文字の通りでしょう」
『月彦』と麗奈が電車を待つ駅の電光掲示板。
そこに記された『線路上のトラブルにより運航見合わせとなっております』という文字に二人は眉を潜めた。
そこに記された『線路上のトラブルにより運航見合わせとなっております』という文字に二人は眉を潜めた。
「ただの事故...という訳ではありませんよね?」
「私も同じ見解です。何者かが敢えて電車の妨害をしたと考えるべきでしょう」
「私も同じ見解です。何者かが敢えて電車の妨害をしたと考えるべきでしょう」
殺伐とした世界観とは無縁の麗奈ですらこの事態を訝しむ。
殺し合いが始まってまだ半日と経っていないというのに、主催が用意した電車がこうも容易く事故が起きるとはとても思えなかった。
殺し合いが始まってまだ半日と経っていないというのに、主催が用意した電車がこうも容易く事故が起きるとはとても思えなかった。
麗奈の顔に憤怒と恐怖の混じった色が浮かぶ。
自分が向かおうとしていた進路を邪魔された怒りと、下手人が確実に他者を害する存在であることへの恐怖。
麗奈はいくら普段から強がって背伸びしている時が多くともまだ高校生だ。
こんな時、頼れる大人がいればふとそちらに目を向け意見を伺ってしまう。
自分が向かおうとしていた進路を邪魔された怒りと、下手人が確実に他者を害する存在であることへの恐怖。
麗奈はいくら普段から強がって背伸びしている時が多くともまだ高校生だ。
こんな時、頼れる大人がいればふとそちらに目を向け意見を伺ってしまう。
月彦は顎に手をやり、目を伏せつつ一考する。
電車が使用不可能になった自分たちの方針。
下手人の性格。
朝日の昇るまでの時間。
これらを総合的に捉え最適解を導くために。
電車が使用不可能になった自分たちの方針。
下手人の性格。
朝日の昇るまでの時間。
これらを総合的に捉え最適解を導くために。
やがて、月彦が口にした答えは。
「...今は北宇治高等学校を目指すのは止めておきましょう」
「―――ッ」
「―――ッ」
その答えに麗奈は息を呑む。
あそこにいけば仲間たちと会えるかもしれない。
そう思ってここで待機していたのだ。電車が使えなくなったのなら歩いてでも向かえばいい。
なのに彼は向かうこと自体を否定した。
決して怒りはしなかったが、しかし困惑しているのは事実。
どうして北宇治を目指すのを止めるのか。
その疑念の籠る眼差しへと答えるために月彦は丁寧に説明していく。
あそこにいけば仲間たちと会えるかもしれない。
そう思ってここで待機していたのだ。電車が使えなくなったのなら歩いてでも向かえばいい。
なのに彼は向かうこと自体を否定した。
決して怒りはしなかったが、しかし困惑しているのは事実。
どうして北宇治を目指すのを止めるのか。
その疑念の籠る眼差しへと答えるために月彦は丁寧に説明していく。
「理由は二つ。ひとつは下手人の狙いを考慮してのことです。下手人は恐らく高坂さん...あなたに狙いを定めている」
「え?」
「え?」
思わぬ名指しにキョトンとした表情を浮かべる麗奈。
「まだ殺し合いが始まって数時間。駅の近くにいる参加者はさほど多くはないはずです。にも関わらず、まるで私たちがここで待っているのを見計らったかのように引き起こされた事故。不自然だとは思いませんか?」
「言われてみれば確かに...」
「そして私と貴女、どちらが電車に用があったかは言うまでもありません。そしてそれを知っていた下手人は電車を止め、私たちの足を奪おうとした...そう考えれば自然です」
「なぜ犯人は私を?」
「言われてみれば確かに...」
「そして私と貴女、どちらが電車に用があったかは言うまでもありません。そしてそれを知っていた下手人は電車を止め、私たちの足を奪おうとした...そう考えれば自然です」
「なぜ犯人は私を?」
麗奈が北宇治高等学校を目指すであろうことを知っているのは他の部員四名とヴァイオレットたちだけ。
しかし、ヴァイオレットがこちらに危害を加えるつもりならば、手紙を書こうとしていたあの時点で既に麗奈は死んでいる。
だからこそわからない。なぜ、犯人はこちらの情報を知り得たのか。
しかし、ヴァイオレットがこちらに危害を加えるつもりならば、手紙を書こうとしていたあの時点で既に麗奈は死んでいる。
だからこそわからない。なぜ、犯人はこちらの情報を知り得たのか。
「ヴァイオレットさんたちから情報を聞いたのかもしれませんね。友好的な素振りで近づき、情報をかすみとり、あとは何食わぬ顔で別行動をしてその隙に電車を止めた...こんな具合でしょうか」
「だから北宇治へ向かうのは止めておけ、と?」
「ええ。私の推測が正しければ、下手人は危機感を煽り貴女の進路を絞るつもりでしょう。ならば向かう先は別の場所がいい」
「...もう一つの理由は?」
「半分は私個人の私用になりますが...先にお話しした使用人を探そうと思います」
「累くん...でしたっけ」
「はい。彼はそれなりに腕が立ちますし、陽を防ぐために山を目指していると思います。
なので北宇治から先に捜索して後で探そうかとも思いましたが電車を壊した者がいるとなれば話は別です」
「それは...心配ですね。電車から山までも遠いとは言えませんし」
「理解が早くて助かります。それに彼と私が護衛に着けば貴女の不安も幾分かは紛れるでしょう」
「だから北宇治へ向かうのは止めておけ、と?」
「ええ。私の推測が正しければ、下手人は危機感を煽り貴女の進路を絞るつもりでしょう。ならば向かう先は別の場所がいい」
「...もう一つの理由は?」
「半分は私個人の私用になりますが...先にお話しした使用人を探そうと思います」
「累くん...でしたっけ」
「はい。彼はそれなりに腕が立ちますし、陽を防ぐために山を目指していると思います。
なので北宇治から先に捜索して後で探そうかとも思いましたが電車を壊した者がいるとなれば話は別です」
「それは...心配ですね。電車から山までも遠いとは言えませんし」
「理解が早くて助かります。それに彼と私が護衛に着けば貴女の不安も幾分かは紛れるでしょう」
月彦はそこで言葉を切り、二人の間に沈黙の瞬間が訪れる。
そこからほんの僅かの間をおいて、月彦は麗奈の顔を見つめて問いかけた。
そこからほんの僅かの間をおいて、月彦は麗奈の顔を見つめて問いかけた。
「...しかしこれはあくまでも提案です。もしもそれでも貴女が北宇治へ向かいたいと仰るなら止めはしません。
何事もなく辿り着ける可能性があるのも間違いではありませんからね。これからの行動の方針は貴女次第です」
「......」
何事もなく辿り着ける可能性があるのも間違いではありませんからね。これからの行動の方針は貴女次第です」
「......」
麗奈は無惨から微かに視線を逸らし考える。
距離的にいえば山と北宇治はさほど変わらない。
自分の知る面々が目指す可能性を考えればやはり山よりも北宇治だろう。
だが、仮に合流できたとしてその後はどうする?
害を加えてこようとする人間は確実にいる。しかも私を狙っている可能性がとても高い。
自分たち五人が揃ったところでその犯人にどれだけ抵抗できるかはわかったものじゃない。
つまりは、月彦さん一人で私たち五人を守ることになってしまう。
それは酷い重荷だ。彼がどれだけ強いかはわかったものじゃないが図々しいにも程がある。
自分の知る面々が目指す可能性を考えればやはり山よりも北宇治だろう。
だが、仮に合流できたとしてその後はどうする?
害を加えてこようとする人間は確実にいる。しかも私を狙っている可能性がとても高い。
自分たち五人が揃ったところでその犯人にどれだけ抵抗できるかはわかったものじゃない。
つまりは、月彦さん一人で私たち五人を守ることになってしまう。
それは酷い重荷だ。彼がどれだけ強いかはわかったものじゃないが図々しいにも程がある。
では山ならばどうだ。
北宇治とは違い、漠然とした地形からして、参加者を直接追跡できるなにかでもなければ正確に後を追われることはないだろう。
それに加えて、累という使用人の少年のこともある。
月彦からの評価ではあるが、それなりに腕が立つということは、恐らく肉体的な荒事など経験のない自分たちよりは実力があるのだろう。
彼と合流できれば月彦も安心できる上に、みんなの安全性も高まるはずだ。
北宇治とは違い、漠然とした地形からして、参加者を直接追跡できるなにかでもなければ正確に後を追われることはないだろう。
それに加えて、累という使用人の少年のこともある。
月彦からの評価ではあるが、それなりに腕が立つということは、恐らく肉体的な荒事など経験のない自分たちよりは実力があるのだろう。
彼と合流できれば月彦も安心できる上に、みんなの安全性も高まるはずだ。
合理的に考えればどちらが正しいか、言うまでもない。
「山に向かいましょう」
☆
想定通りだ。
受け取った朱色の大きな番傘を差しながら隣を歩く麗奈へと目をやる。
無惨ははじめ、電車が来ないという事実に苛立っていたものの、しかしすぐに思考を切り替えこれを好機と捉えることにした。
無惨にとって麗奈が知り合いと出会えようが出会いまいがどうでもいいこと。目下必要なのは累という忠実な部下でありサンプルでもある鬼との早期合流だ。
北宇治などというどうでもいい場所から山への捜索を自然な流れで変更できたのは僥倖といえよう。
無惨にとって麗奈が知り合いと出会えようが出会いまいがどうでもいいこと。目下必要なのは累という忠実な部下でありサンプルでもある鬼との早期合流だ。
北宇治などというどうでもいい場所から山への捜索を自然な流れで変更できたのは僥倖といえよう。
(しかし、電車を破壊した者、か)
下手人が麗奈を狙っているというのは完全に口から出まかせであり、実際は自分たちが待機しているタイミングと重なっただけだろう。
無惨の着目したのはそこではない。
下手人は確実に殺し合いに"乗っている"側だ。ならば、上手く利用してやればその者に参加者を減らさせることが出来るのではないだろうか。
縁壱の名が無い以上、自分より勝る者がこの会場にいるとは思えない。しかし、夜しか動けない制約は確実に後々にまで響いてくる。
故に、自身は当面は累の首輪を使用した解除を試みるものの、その一方で電車を破壊した者に役に立たない参加者を減らさせるのも一つの手かもしれない。
無惨の着目したのはそこではない。
下手人は確実に殺し合いに"乗っている"側だ。ならば、上手く利用してやればその者に参加者を減らさせることが出来るのではないだろうか。
縁壱の名が無い以上、自分より勝る者がこの会場にいるとは思えない。しかし、夜しか動けない制約は確実に後々にまで響いてくる。
故に、自身は当面は累の首輪を使用した解除を試みるものの、その一方で電車を破壊した者に役に立たない参加者を減らさせるのも一つの手かもしれない。
(他者への信頼など抱くはずもないが―――状況によっては取らざるを得ないか)
無惨にとって己の生存は最優先すべきものであり、そこにプライドだの誇りだのは度外視することができる。
しかしそれでも、他者に選択肢を握られる不快感だけは消すことはできなかった。
しかしそれでも、他者に選択肢を握られる不快感だけは消すことはできなかった。
【D-7/一日目/早朝】
【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム】
[状態]:健康
[服装]:制服
[装備]:
[道具]:高坂麗奈のトランペット@響け!ユーフォニアム、不明支給品0~1
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
0:ひとまず山に向かい累を捜索後に北宇治高等学校へと向かう
1:ヴァイオレットと再合流後、滝先生への手紙の続きを書いてもらう
2:部の皆との合流。
[備考]
※参戦時期は全国出場決定後です。
【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム】
[状態]:健康
[服装]:制服
[装備]:
[道具]:高坂麗奈のトランペット@響け!ユーフォニアム、不明支給品0~1
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
0:ひとまず山に向かい累を捜索後に北宇治高等学校へと向かう
1:ヴァイオレットと再合流後、滝先生への手紙の続きを書いてもらう
2:部の皆との合流。
[備考]
※参戦時期は全国出場決定後です。
【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康、月彦の姿
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:シスの番傘@うたわれるもの 二人の白皇(麗奈の支給品)
[道具]:不明支給品1~3
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:ひとまず山に向かい累を捜索する。麗奈の扱いはその後に考える
1:当面の間、麗奈を利用する
2:累と合流し、首輪を調達若しくは爆発の実験体にする。
3:麗奈の他にも、昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
4:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
5:もっと日の光が当たらない場所を探したい。
6:鬼の配下も試しに作りたいが、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
7:『ブチャラティ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。
[状態]:健康、月彦の姿
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:シスの番傘@うたわれるもの 二人の白皇(麗奈の支給品)
[道具]:不明支給品1~3
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:ひとまず山に向かい累を捜索する。麗奈の扱いはその後に考える
1:当面の間、麗奈を利用する
2:累と合流し、首輪を調達若しくは爆発の実験体にする。
3:麗奈の他にも、昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
4:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
5:もっと日の光が当たらない場所を探したい。
6:鬼の配下も試しに作りたいが、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
7:『ブチャラティ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。
前話 | 次話 | |
裏切りの朝焼け | 投下順 | 第一回放送 |
前話 | キャラクター | 次話 |
「あなたが、その気持ちを伝えられますように」 | 鬼舞辻無惨 | わたしのとくべつ(前編) |
「あなたが、その気持ちを伝えられますように」 | 高坂麗奈 | わたしのとくべつ(前編) |