バトルロワイアル - Invented Hell - @ ウィキ

「あなたが、その気持ちを伝えられますように」

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kyogokurowa

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とうおるるるるるるるるる……
とうおるるるるるるるるるん……

ここはスパリゾート高千穂内の男子トイレ。
施設の目玉とも言える波寄せる浴場からは、通路を経由した突き当たりに位置するーーこの閑散とした空間の中に、甲高い奇声を発する少年が一人。

「はいィィ〜〜もしもし、ドッピオです! あっボス! 丁度よかった、早速ご報告したい事が……」

赤毛の少年ドッピオは、トイレットペーパーのロールを耳に当てて、ボソリと呟いた。
傍から見ると滑稽極まりない光景ではあるが、ドッピオの表情は真剣そのものである。

『みなまで言うな、ドッピオよ。状況は理解している……』

先程とは全く異なる質の低い声が、同じ青年の口から発せられた。
その声の主こそ彼の通話相手であり、この少年の心に潜むもう一つの人格『ボス』である。

「そうでしたか、流石です、ボス! しかし参りましたよ……奴ら、全く緊張感の欠片もないですよ!」


ドッピオはここに至るまでの経緯を振り返る。
事の始まりは、ゲーム開始後に最初に出会った青年『月彦』とともに、トランペットの旋律を耳にしたところまで遡る。
その演奏者の正体を探るべく、二人は音源と思わしき施設の屋上目指して駆け上がり--途中の階層の一室より参加者と思わしき会話が漏れているのを認識する。
恐らく先の演奏者はそこにいるのだろうとーー『月彦』と互いに頷き合い、その部屋を訪ねてみたところ、出迎えてきたのは二人の少女――ヴァイオレット・エヴァーガーデンと高坂麗奈であった。

四人の男女は、まずは互いに軽く自己紹介を行う。
この時ドッピオは『月彦』の時と同様に、自らを『ブローノ・ブチャラティ』と名乗っている。
聞くところによると、先の演奏は高坂麗奈によるもので、積もりに積もった鬱憤を晴らすために行ったものとのことである。
振り返ると、自分自身でも安直な行動だったと自覚したのかーー高坂麗奈は、少し気恥しそうに告白していた。
そしてヴァイオレットは『月彦』やドッピオと同様に、こうしてトランペットの音色に釣られる形で彼女の元へと駆け付けたとのことである。

お互いの出自や経緯も判明したところで、さてこれからどうしましょうかと……今後の方針についてドッピオが話を切り出した。
だが、その話の腰は『月彦』によって折られたのである。


「信じられますか、ボス? あの男、こんな状況にもかかわらず、『お嬢さん方はこれから書簡を記されたいのでしょう……それでは私共は書き終わるまで外でお待ちしますよ』って……こんな状況でそんな悠長なことやってられるわけねえだろうがアアア!! あのヴァイオレットとかいう女も高坂とかいう女もあっさり乗っかりやがってー!!
ボス、ハッキリ言ってあいつらに利用価値があるとは思えませんッ! 今すぐにでも皆殺しにーー」
『落ち着け、落ち着くのだ。 私の可愛いドッピオよ……』

地団駄を踏み、声を荒げるドッピオ。
それを宥めるかのように、『通話相手』はゆっくりと言葉を紡いでいく。

『今ここで奴らを殺すのは早計だ。 コウサカという女が足手纏いにしかならないという点には同意するが、聞けばあのヴァイオレットという女は元軍人だそうじゃないか……。殺し合い乗っていない手練れということであれば、隠れ蓑には丁度良い。何より軍人という肩書は、それだけでも利用価値はある』
「……。」

『通話相手』に諭されたのか、先程まで小刻みに踏み鳴らしていたドッピオの足は、いつの間にかその動きを止める。

『それと…気掛かりなのは、あの月彦という男だ。 【月彦】という名前は、主催者から支給された名簿には載っていない。 お前のように主催者の手違いで載っていない可能性や、本名は別にあり、単純に通称が【月彦】だけだという可能性も否定は出来ないが……あえて見え透いた偽名を騙ることで、お前たちの反応を窺っていたかもしれないな……』
「奴が…僕たちを試していた、と……?」

ドッピオは声を押し殺しつつ、眉を顰めた。


『あくまでも仮定の話だ。 名簿と照らし合わせてしまえば、この不審な点は誰でも気付くーー普通に考えれば奴にはメリットなどないはずなのだが…或いは、それほどのリスクを負ってまで、名を隠す理由があるのかもしれない。例えば奴の本名を知る敵対者が、このゲームに参加させられていて、その者たちからの悪評に備えての偽名か……。
いずれにしろ、奴がやけに落ち着いているのも気にかかる…強さ故の自信なのか……。お前が遅れを取るとは思えんが、念のため警戒は怠るなよ、ドッピオよ」
「…分かりました、ボス。 月彦については、注意しておきます。 それで…これからのことですが――」


電波の通じない通話は尚も続く。
殺し合いに生き残るために、二人の『男』は更なる策謀を巡らしていく。






「実に……実に、愚かな者たちだ」


波寄せる海岸を彷彿させるプールサイドに呟く声が一つ。
施設天井にマッピングされた人工の星空の下、『月彦』こと鬼舞辻無惨は、一人佇んでいた。

無惨が「愚か者」と評したのは他ならぬ、先程邂逅した二人の少女――ヴァイオレット・エヴァ―ガーデンと高坂麗奈のことである。

聞くところによるとあの小娘どもは、この異常事態にも関わらず自分と『ブチャラティ』が接触する直前に、大切な者への「想い」を伝えるために手紙を綴ろうとしていたところだったそうだ。

それを耳にした時に湧き上がった感情は、呆れと蔑みそしてーー

『永遠というのは人の想いだ。人の想いこそが永遠であり、不滅なんだよ』

苛立ちであった。
瞬間、忌まわしき鬼殺隊の長、産屋敷が死に際に放った戯言が脳裏を過った。

――下らん、何が『想い』だ……。反吐が出る……。

愚かしい……愚かしいにも程がある。




だが。

考えようによっては、その純粋なまでの愚かしさを備えているからこそーー
この娘たちは利用しがいがある、と踏んだ。
特にあの書生、高坂麗奈だ。

今まさに、自分が求めているものは、忌まわしい太陽が顔を出す昼間でも自分の手足となって動く人間だ。それも弱く御しやすい方が都合が良い。

だからこそ、情報交換の場においても、ソワソワと動きに落ち着きのなかったあの娘に提案をしてやった。


「お嬢さん方はこれから書簡を記されたいのでしょう……それでは私共は書き終わるまで外でお待ちしますよ」、と。


自身の半生を通じて、擬態して人間社会に溶け込むためには、まず利用するであろう人間に好印象を与えることが重要であると理解している。
しかし、この提案は単に娘たちの信用を得るためだけではなくーーたかが紙切れ一つを記せなかったことが尾を引いて、これからの自分への使役に影響があっても難儀するので、それを解消する意味も込めていた。

案の定、小娘どもは「ありがとうございます!」などと頭を下げて、私の提案に乗ってきた。

仮に奴らから「これから手紙を書きたいと思いますので、少々お時間を頂けないでしょうか?」などと図々しく吐かすものなら、あの場で皆殺しにしていたことだろう。
限りなく完璧な存在である自分に対して、下等な人間風情が下らぬ児戯の為に時間を割け、などと懇願するなど、身の程知らずにも程があるからだ。

それを言い出さなかっただけでも、手駒としては及第点といったところか。
せいぜい血の一滴まで利用しつくしてやろう。

唯一未だに推し測れないのは、最初に出会ったあの『ブチャラティ』なる男だ。
だが、結局のところ、あの男がどのような本質を持ち合わせていたとしても、それも些細な問題だ。
あのような優男が、目下脅威になるとは到底思えない。

利用できるようであれば、徹底的に利用した上で使い捨てれば良し。
利用できる価値がなかったり、万一にも牙を剥くことがあれば、首を刎ねればよいことだ。


「さて、どうしたものか……」

波寄せるプールを視界に収め、無惨は今後の行動について思案を重ねていくのであった。







カタカタカタカタカタカタ

月彦さんとブチャラティさんが去った部屋の中で、ヴァイオレットさんのタイプを打つ音が響き渡る。
基本的には私が語った言葉をヴァイオレットさんが拾って、代筆をするという形で執り行われている。

私は滝先生の『特別』になりたい。
教師と生徒というありふれた関係ではなく、一人の男性と一人の女性という括りの中で私を見てほしい。

長年胸に秘めていたこの『想い』を滝先生に伝えたい。
そんな一心で、私はヴァイオレットさんに手紙の代筆をお願いした。

でもいざ、滝先生への好意を言葉にして発していくと、それを口にする度に心臓の鼓動が速くなっていくことを感じた。
頭から湯気が出るほど恥ずかしくなるが、それでも私とヴァイオレットさんは、手紙の作成を続けた。





――
―――
――――
―――――
――――――
―――――――
――――――――
―――――――――




手紙の完成が近づいてきた。
後は手紙の締めとして、ストレートに「好きです」と伝えるだけ。
だけど、ここにきて、この手紙を滝先生が目を通してしまったら、と実際の場面を想像してしまうとーー。




「……っ。」
「……? お嬢様?」


言葉に詰まる。
私の口から発せられる滝先生への『想い』は途切れていた。
それまで、黙々とタイプ打ちに集中していたヴァイオレットさんは、コバルトブルーのような瞳をこちらへ向けて、様子を窺ってくる。


「ヴァイオレットさん、ごめんなさい…。 急に、滝先生がこの手紙を読んでしまった時のことを想像してしまって……。その…引かれたりしないかなって……」
「自分への好意を綴られた手紙を読んで、嫌な気分になる方はいませんよ。 他人から好かれるということは嬉しいものです」
「そ、そういうものなんですか…!?」
「はい、そういうものです」


ヴァイオレットさんは自分のことを「自動手記人形」と名乗っていたが、特に表情を変えることなく淡々と私に接している姿は、本当に人形のようだった。
だけど、その淡白とした回答には、悩める私の背中を押してくれている温かみが確かに備わっていた。


よし、言おう!
言ってしまおう!

折角ヴァイオレットさんも後押ししてくれているんだ!

今こそ滝先生にハッキリと「好きです」と言ってしまおうーー。


「~~~~~~~~~ッ! 駄目だァ、やっぱり怖いッ!」
「――それでは、お手紙の作成はここで一旦中断しておきましょう……。 まずは外でお待たせしている月彦様達のところへ向かいましょう。 お嬢様の踏ん切りがつきましたら、またお声掛けください」
「すいません……ありがとうございます」


ガックリと項垂れる私に、ヴァイオレットさんはタイプライターと書きかけの手紙を袋に戻しながら、告げた。


――やっぱり怖い。

結局のところ、私が振り絞った小さな勇気は、滝先生に嫌われてしまうのではないか、という恐怖に打ち勝つことは出来なかった。
仮にこの手紙を見て、滝先生が私のことを邪険にするようなことがあれば、死んでも、死にきれない。


「お嬢様、今一度申し上げますが、『好きだ』と告白されて、嫌な気持ちになる人はいません。だから、お嬢様の気持ちを伝えることをどうか恐れないでください」

手袋を嵌めながら、ヴァイオレットさんはそう言った。
私はただ頷くことしかできなかった。
我ながら、一歩踏み出せない自分が情けない。


「本当に悲しいのは、『想い』を伝えきれず、離れ離れになってしまうことなのですから……。」
「――はい。……えっ?」


今のは目の錯覚だったのか。
部屋の扉へと向かうため、目の前を横切ったヴァイオレットさんは、それまで見せたことのないような沈痛な表情を浮かべていたように見えた。


「どうかなされましたか、お嬢様……? 皆様のところへ向かいましょう」
「は、はい」


次にこちらを向いた時のヴァイオレットさんは、また人形のようなポーカーフェイスを浮かべていた。
先程の表情は何だったのだろう、と私は頭の中で「?」マークを浮かべながら、ヴァイオレットさんの後を追った。





プールサイドに佇む『月彦』は、此方に近付く二つの気配に感づき、後方へと振り返る。

「おや……? もう書簡の作製は済みましたかな?」
「ええ、おかげさまで……お待たせしてしまってごめんなさい」

ヴァイオレットの傍らに並び立つ麗奈は、ペコリとお辞儀をする。
本当はまだ締めの言葉が綴られておらず完成した状態とは言えないが、これ以上気遣いはさせたくないと思い、麗奈は敢えてそれは口にしなかった。
後はほんの数行付け足すだけなので、覚悟が決まれば後でこっそりヴァイオレットに続きを打って貰おうと考えていた。

『月彦』はそんな麗奈の思考など知る由もなく、「そうですか、それは何よりです」と柔和な笑みを浮かべる。


「ところでブチャラティ様は? お姿が見えないようですが……」
「彼なら厠に行きましたよ。 ああ…噂をすれば、戻ってこられたようですね」


『月彦』に釣られる様な形でヴァイオレットと麗奈が視線を向けると、そこには『ブチャラティ』がやぁやぁ皆さんお揃いで、と手を挙げながら三人の元へと歩いていた。


「随分と長く廁に居らしたようですね……ブチャラティさん」
「いやぁ…お待たせしてしまってすみません、月彦さん。 どうやら、緊張のせいで、お腹を痛めてしまったようで……」
「えっ……だ、大丈夫なんですか!?」
「あー大丈夫大丈夫、今はもう落ち着いているから。心配してくれてありがとう、麗奈ちゃん」


あははは、とあどけない笑顔を張り付けるドッピオ。
その姿だけ見ると、人畜無害な好青年にしか見えない。

しかし、次の瞬間――。
ドッピオの表情は険しいものとなり、『月彦』に鋭い視線を投げかけた。

「――ところで月彦さん…これからどうするかを話す前に、はっきりさせたいことがあるのですが……」
「ほう…何ですかな?」
「貴方の名前についてですよ、月彦さん。 僕達三人の名前は名簿にちゃんと記載されているのに、『月彦』という名前だけは名簿にはありません……。これはどういうことですか……?」
「……。」


一瞬の沈黙が場を支配した。
次に月彦が何か言いかけようとしたときに、それを遮るかのように『ブチャラティ』の追及は続いた。


「僕は、何かと疑り深い性分でして……。 月彦さんには本名を知られてはいけない理由があってーー僕達に本名を知られるのを恐れて(・・・)名前を伏せたという可能性も考えてしまいます……」


『ブチャラティ』の言葉に、月彦の顔がピクリと動いた。
麗奈は、それを皮切りに場の空気が重苦しいものになったことを察知し、身震いする。

麗奈だけではない。
ヴァイオレットも緊迫した空気を察して、顔を顰めていた。

例えるなら、一触即発。
ゴゴゴゴゴゴ、という擬音が聴こえてくるような張り詰めた空気の中で。
麗奈、ヴァイオレット、『ブチャラティ』の三人は、口を噤む『月彦』の出方を見守った。










やがて。

僅かな間をおいてから、『月彦』はゆっくりと口を開いた。


「――何てことはありません、『月彦』というのはただの通称ですよ……。私の本名は『富岡義勇』と申しまして、劇団を営んでおります。 一応役者も兼ねておりまして、その芸名が『月彦』……。 他の団員には『月彦』と呼ばせております」
「月彦様は役者様でしたか……」

月彦は、ヴァイオレットの言葉に相槌を打つ。
麗奈もなるほどな、と思った。
整った顔立ちに、着ている上品な服の身のこなしーー。
舞台俳優と言われても、合点がいくものがある。

「私としたことが……慣れ親しんだ此方の呼称で皆様に名乗ってしまいました、不審に思われてしまったら申し訳ない。 ですが……ブチャラティさんが仰られたように、意図的に本名を名乗らなかったという訳ではございませんよ」

『月彦』はこれまでと同じように柔和な笑みを浮かべつつ、両手を拡げ釈明する。
その態度には依然として、余裕が表れていた。
問題は『ブチャラティ』がこの説明に納得するかどうかであったがーー。


「あ~なるほどぉ。 月彦さんは役者さんでしたか。 そういう理由であれば、名簿と違う名前を名乗っても筋は通る……。いやぁ、変な疑いを持ってしまって、すみません。」
「いえいえ…このような状況です。疑心暗鬼になるのも無理はありませんよ」


場に漂っていたギスギスとした雰囲気は晴れた。
『月彦』も『ブチャラティ』が出会った頃と変わらない調子で、和やかに言葉を交わすのを見て、麗奈は胸を撫で下ろした。




そしてここからが本題――。
今後、この即席の四人組がどのように行動するかについての話へと移り変わる。


「僕は、麗奈ちゃんが言う北宇治高等学校へ向かうことを提案します」
「えっ? 良いんですか、ブチャラティさん?」
「勿論だよ、麗奈ちゃん。 この場で参加者に知り合いがいるのは、麗奈ちゃんだけだ。 だったら、麗奈ちゃんの知り合いが集まるであろう学校を拠点として、久美子ちゃん達を待った方が良いと思う。ヴァイオレットさんと月彦さんは異論ありませんか?」


『ブチャラティ』からの問いかけに、ヴァイオレットと『月彦』はコクリと頷いた。
満場一致で一同は、当面の目標を会場の南に位置する北宇治高等学校とした。
四人は支給品袋から地図を拡げて、目的地への経路を見聞する。


「ここからですと、この施設に隣接する駅より鉄道が走っているようです。 そちらを利用するのが、お嬢様の学校への最短経路ですね……。」
「ええ……。ですが、ここでもう一つ、相談があります。 僕達のいるこの施設の近場には、病院や研究所といった施設もあるようです。
僕としてはこういった施設に、何か使える物資がないか調べておきたいとも思っています。
病院であればもしもの時に使える医療品、研究所であれば首輪の解析に使えそうに機材とかね。でも、それと同時に、我々としては拠点の確保も早めに行いたい……。なのでーー」
「さしあたり、二手に別れましょうか……。一組は鉄道を経由して、最速で学び舎へと向かう組。もう一組は近場の施設を探索した後、学校へと徒歩で向かう組、といったところですか。」
「理解が早くて助かります、月彦さん。 近場の探索には、言い出しっぺの僕が向かいますが……ヴァイオレットさん、ご同行お願いできませんか?」
「私ですか……?」


『ブチャラティ』の唐突な提案にヴァイオレットはキョトンとした表情を浮かべる。
ヴァイオレットは顎に手を乗せ、少し考える素振りを見せて、チラリと麗奈を見た。
如何にも麗奈から離れることを気にかけている様子ではあるがーー。


「それが良いでしょう。 近隣施設を探索するということであれば、他の参加者と鉢合わせする可能性もある。 万が一、殺し合いに乗った輩と出会ってしまう危険性を考慮すると、ブチャラティさんの側には、元軍人のヴァイオレットにさんがいたほうが安心です。 では、私が麗奈さんともに、先行して学び舎へ向かうとしましょうか。 これでも、護身の心得はあります。全身全霊をかけて麗奈さんをお護りしますよ」


『月彦』が『ブチャラティ』に助け船を出すような形で、自分が麗奈をエスコートすると言い出した。
その発言を受けてヴァイオレットは、改めて麗奈と顔を見合わせる。
麗奈は無言でうなずいた。


「承知いたしました。 ブチャラティ様に同行させていただきます。 月彦様、どうかお嬢様のことを宜しくお願いいたします」
「ええ…安心してお任せください」
「あのっ! 宜しくお願いします、月彦さん」
「こちらこそ宜しくお願いします、麗奈さん」



方針は決まった。
『月彦』と麗奈が電車に乗って、紅魔館を経由して北宇治高等学校へと向かい。
『ブチャラティ』とヴァイオレットが近隣施設を探索した後、北宇治高等学校へと向かい、先行する麗奈達と合流する手筈となった。








「成程……麗奈さんは『特別』になりたいから、楽器に勤しんでいる訳ですね」
「はい、私は他の奴らと同じになりたくない。 もっともっとトランペットを上手くなって、本当の『特別』になりたいんです」


高千穂リゾート隣接駅のホームで電車の到着を待つ二人の男女。
高坂麗奈は『月彦』は、ベンチに並んで座り、会話に興じていた。
主に『月彦』が麗奈に学生生活について尋ねて、麗奈がそれに応える形で、自分の部活への想いを語っている。


『月彦』は感慨深そうに麗奈の話に相槌を打ってはいるが、その心中は全く別のことを考えていた。


(狙い通りに、この小娘と二人きりになることはできたが……。それにしても、あのブチャラティという男、やはり腹立たしい……。完璧な存在である私が、お前たちのことを「恐れる」だと? 勘違いも甚だしい……私への無礼、死を以て償わせてやる)



偽名を追及されたあの場は、何とか自身を抑え込むことが出来たが、自分にぶつけられたあの言葉を思い返すと、腸が煮えくり返しそうになる。

更に、あの時あの場所では、結果的に、本名として忌まわしい鬼殺隊員の名前を名乗ることとなってしまった。
鬼殺隊員がこの会場に招かれているであろう現状を鑑みるに、安易に「鬼舞辻無惨」を名乗るわけにもいかなかった手前、やむを得ない対応ではあったが、そのことについても強い憤りを抱く。


(奴への粛清は必ず行う……。だが、今はその時ではない。 今は精々この愚かな小娘を利用させてもらうとしよう、徹底的にな……。)


『月彦』こと鬼舞辻無惨は、マグマのように噴火しかけた感情を抑制しつつ、麗奈の横顔に視線を送るのであった。





――そして、次の曲が始まるのであった。




【D-7/スパリゾート高千穂・隣接駅/一日目/黎明】

【高坂麗奈@響け!ユーフォニアム】
[状態]:健康
[服装]:制服
[装備]:
[道具]:高坂麗奈のトランペット@響け!ユーフォニアム、不明支給品0~2
[思考]
基本:殺し合いからの脱出
0:電車を待つ
1:ヴァイオレット達に先行して、『月彦』さんとともに電車で紅魔館を経由した後、北宇治高等学校へ向かう
2:ヴァイオレットと再合流後、滝先生への手紙の続きを書いてもらう
3:部の皆との合流。
[備考]
※参戦時期は全国出場決定後です。


【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:健康、月彦の姿
[服装]:ペイズリー柄の着物
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない
0:電車を待つ
1:当面の間、麗奈を利用する
2:今は北宇治高等学校を目的地としているが、累捜索のため、力づくもしくは適当な理由を付けて、目的地を山へと変える
3:累と合流し、首輪を調達若しくは爆発の実験体にする。
4:麗奈の他にも、昼も行動するため且つ鬼殺隊牽制の意味も込めて人間の駒も手に入れる(なるべく弱い者がいい)。
5:逆らう者は殺す。なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
6:もっと日の光が当たらない場所を探したい。
7:鬼の配下も試しに作りたいが、呪いがかけられないことを考えるとあまり多様したくない。
8:『ブチャラティ』の先程の態度が非常に不快。先程は踏みとどまったが、機を見て粛清する。
[備考]
※参戦時期は最終決戦にて肉の鎧を纏う前後です。撃ち込まれていた薬はほとんど抜かれています。
※『月彦』を名乗っています。
※本名は偽名として『富岡義勇』を名乗っています。








暗がりの市街地で、先行するブチャラティ様の後に私は続く。
お嬢様の同意があったとはいえ、月彦様とブチャラティ様のお話に乗せられる形で、私はこうしてお嬢様と離れ離れとなりました。
少し不本意な形になってしまいましたが、今は全力でブチャラティ様をお護りすることに専念しましょう。


ですが、まだお嬢様の手紙は完成していません。

私は切に願うのです。
伝えられる自分がいて、伝えられる相手がいるうちにーー


お嬢様(あなた)が、その気持ちを伝えられますように」と。




【D-7/市街地/一日目/黎明】

【ヴァイオレット・エヴァーガーデン@ヴァイオレット・エヴァーガーデン】
[状態]:健康
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品0~2、タイプライター@ヴァイオレット・エヴァーガーデン、高坂麗奈の手紙(完成間近)
[思考]
基本:いつか、きっとを失わせない
1:『ブチャラティ』さんとともに周辺施設を探索しつつ、北宇治高等学校へ向かう
2:麗奈と再合流後、代筆の続きを行う
3:手紙を望む者がいれば代筆する。
[備考]
※参戦時期は11話以降です。
※麗奈からの依頼で、滝先生への手紙を書きました。但しまだ書きかけです。あと数行で完成します。
※病院、早乙女研究所のどちらに向かっているかは後続の書き手様にお任せします。


【ドッピオ(ディアボロ)@ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風】
[状態]:健康、ドッピオの人格が表
[服装]:普段の服装
[装備]:
[道具]:不明支給品1~3
[思考]
基本:生き残る。手段は問わない。
1:ヴァイオレットとともに周辺施設を探索しつつ、北宇治高等学校へ向かう
2:無力な一般人を装い、暫くは元軍人だというヴァイオレットを利用する
3:『月彦』を警戒。再合流後も用心は怠らない。
4:ブチャラティ、ジョルノ、リゾットは確実に始末する。チョコラータも始末しておきたい。
5:なるべく目立たないように立ち回り、優勝しか手段が無くなっても構わないよう、殺せる者は密かに殺していく。
6:自分の正体を知ろうとする者は排除する。
[備考]
※参戦時期はアバッキオ殺害後です。
※偽名として『ブローノ・ブチャラティ』を名乗っています。


前話 次話
四月馬鹿達の宴 投下順 闇を暴け(上)

前話 キャラクター 次話
暗雲低迷 高坂麗奈 賽の目は投げられた
暗雲低迷 鬼舞辻無惨 賽の目は投げられた
暗雲低迷 ヴァイオレット・エヴァ―ガーデン 深淵の入り口
暗雲低迷 ディアボロ 深淵の入り口
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