「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 花子さんと契約した男の話-47

最終更新:

guest01

- view
だれでも歓迎! 編集
 それは、春休みに入ってからのこと
 家の仕事の手伝いの一環でだった

「……ここか」

 笛吹探偵事務所
 そこに、俺は足を踏み入れた

「すみませ…………あ」
「あ」

 …そこの、多分、所長が座るのだろう、椅子
 そこに座っているのは、思いっきり、俺の顔見知りだった

「…獄門寺?」
「……明日か」

 クラスメイトの、明日 真だ
 いや、二年になったらクラス替えがある訳だから、またクラスメイトになるかどうかは、知らないが

「…ここ、笛吹探偵事務所、だよな?」

 念のため、尋ねると

「あぁ、そうだ」

 と、すぐに答えが返ってきて
 ………
 どういうことだ?

「えぇと、とりあえず…何か、探偵に依頼が?」
「そうなんだが…」
「それなら、俺が依頼を受けるから、話を聞かせてもらえないか?」



 ひとまず、明日がこの探偵事務所にいた事情やら何やら、簡単に説明されて…とりあえず、納得する事にした
 少し驚いたが、相手が知り合いだろうが何だろうが、俺はここで人探しを頼まなければならないのだから

「人探し?」
「あぁ…俺は、ある人の代理で依頼を持ってきてるんで、その人の事は詳しく知らないんだが……名前は、朝比奈 まどか。つっても、離婚したんで姓は変わってて、どんな姓を名乗ってるかわからないんだが」
「離婚して姓が変わってるのなら、旧姓になってるんだろう?」
「…その人は、実家から勘当されていて、その家の姓を名乗る事を禁じられている」

 ややこしい事情だと思う
 これだから、旧家と言うやつは

「だから、今、その人がどんな姓を名乗っているのか、全くわからない。そのせいで、その家の人間がその人を探してもずっと見つからない。だが、その人を勘当した両親も、そろそろ歳だし…いい加減、許してやろうって事で、顔を合わせたいんだそうだ」
「その両親が、本来の依頼人と言う事か」
「そうなるな」

 全く、日景さん達も
 六年前だかに、その娘さんが、お孫さんのことで家に乗り込んできた時に、許してやれば良かっただろうに
 まぁ、その時に許せなかったからこそ、ここまでややこしくなってしまっているのだが…

「その…マドカさん、の写真とか、あるだろうか?」
「あぁ、預かってきてるけど…その人、今年で40歳になるらしいけど、写真は女子高生時代の物なんだが」
「これは酷い」

 一応、写真を渡しておく
 そこには…どう見ても当時の不良です、ありがとうございました、と言う印象の女性が映し出されていた
 女性は化粧や髪形や服でいくらでも化けるから、この写真が手がかりになるかどうか

「…本来の依頼人は、日景家 現当主代行 日景 薫。現当主 日景 宗光と、その妻日景 千鶴の娘……マドカを、見つけて欲しい。居場所を伝えてくれれば、一千万払うそうだ」
「一千万!?」
「足りないようだったら、もう一千万追加する、と言っていた」

 言われた事を、俺は伝えているだけだ
 流石金持ちは違う、とかこっそりと思っている
 あの家なら、一千万の二千万も大して違わないだろうし

「受けてくれるだろうか?」

 じっと、俺は明日を見詰めた
 …正直、断れると結構困る
 ここの探偵事務所は評判がいからと、任せられてきたのだ
 薫さんとしては、現当主である宗光さんが、表向きまだ娘さんを許していないから…当主代行として、あの人自身が依頼を持ってくるわけにはいかない
 当主の、表の顔を立てなければいけないから

 だから、日景家の人間ではない俺が、頼まれる事になったのだ
 親父やお袋とか、組の人達が動いたら、気づかれる可能性もあるから

 お使いといえば、お使い
 …だが、非常にプレッシャーがかかると言うか期待を背負っているというか
 正直、面倒くさい
 ある意味で、他人の親子喧嘩の尻拭いに近い事を、これまた他人に頼むことなのだから

 明日は、写真をじっと見つめて…考え込んでいる様子で

「…その、宗光さん、だったか?…マドカさんを、許そうとしてるん、だよな?」
「あぁ。大きい病気とか手術とかして、気が弱ってるから…死ぬ前に、娘の顔が見たいって気持ちがあるのかもしれない」

 そうか、と頷いて、明日は顔をあげてきた

「それなら、依頼を断るわけにはいかない…その依頼、受けさせてもらう」
「!……そうか、良かった」

 俺は、ほっと息を吐いた
 ごそごそと、鞄から預かって来た封筒を手渡す

「これ、当面の調査費用として使ってくれ、って預かってきてたんだ。マドカさんが見付かった場合の報酬とは別だってよ」
「わかった……って、この封筒、かなり分厚いんだが…」
「俺は中身を見てないんで、いくら入ってるかは知らない」

 …ただ、この厚さ
 中身が全部一万円札だったら、軽く二百万くらいだと思うんだが…
 ……高校生にこんな大金預けるなよな、日景さんも

「調査結果は、どこに連絡すれば?」
「俺の携帯に頼む。日景さんたちには俺から伝えるから……携帯の番号は、初詣の時に知らせたよな」

 あぁ、と頷いてきた明日

 ……よし
 これで、俺の役目は終わった

「それじゃあ、よろしく頼んだ。期限は特にもうけないそうだから、他に優先すべき依頼があった時はそっちを優先しておいてくれ」
「わかった。本来の依頼人さんによろしくな」

 それじゃあ、また新学期にでも…と、別れの挨拶をして、俺は探偵事務所を出た
 すぐに、携帯を取り出す

「…日景さん?……はい、依頼、受けてもらえました……当主様の様子は?………はぁ。まぁ、あの人だったらまだまだ何十年も元気に生きそうですけど……」

 それでも、病は気から
 マドカさんと会えば、宗光さんも元気になるだろう

 ……喧嘩腰的な意味で元気にならない事を祈るしかない訳だが

 本当なら、お孫さんである、翼とか言う人もその場に立ち会った方がいいのかも、しれないが…
 …まぁ、他人の家の事情に、深く首を突っ込むまい


 ひとまずは、仕事から解放されて
 俺は大きく伸びをしながら、帰路についた
 途中、花子さんと合流して何か甘い物でも食べさせてやろうかな、とか、そんな事を考えながら



fin



タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
記事メニュー
ウィキ募集バナー