「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 穀雨彼方-07

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 …それは、まだ上田が絶対安静状態の時の話
 すなわち、ハンニバル達が本格的に動き出す数日前の事



「…さて」

 状況を推理してみようじゃないか
 青年、上田 明也は、この現状について考える事にした
 ……自分は、絶対安静の状態である
 まだ、まともに体を動かす事すら満足にできない状態
 だと、言うのに

 何故、自分は電車の中になどいるのだ?

「俺は確かにサンジェルマンの城にいたはず…誰かが俺を移動させた訳ではないとなると、確実に都市伝説の攻撃、か」

 ……サンジェルマンの城に匿われている自分を攻撃してくるとは
 何らかの手段で、超遠距離からでも攻撃できる能力者か?
 いや、そうではない
 恐らく、この能力…

「電車、なぁ……一個、思い切り心当たりがあるぞ」

 とりあえず、体を動かそうとしてみる
 …走る激痛
 夢の中でも、自分は絶対安静状態のようだ
 ならば、どうする?
 現状を打破しようと考え込む上田
 その時


「次は~~~~活け作り~~活け作り~~~~」


 そうだろうと思ったよ、ど畜生め
 わらわらわらわらわらわらわらわら
 現れるは小人達
 その手に持つは、鋭い凶器

 都市伝説「猿夢」
 夢に現る襲撃者
 夢の中で人間を嬲り殺す、残酷な存在
 それが、動けない上田めがけて群がろうとしてくる

「この……っ!」

 せめて、能力は使えるか?
 自分の「異常(アブノーマル)」は、相手に通用するか!?
 迫りくるそれらを睨みつけながら、上田は思案し

 っひゅん、と
 振るわれる、一閃
 小人達が切り裂かれ、小さな体が真っ二つになり、真っ赤な血を撒き散らして飛び散る

「明也さん、無事ですかっ!?」
「…彼方?」

 剣を構えた彼方が、上田を庇うように前に立つ
 突然現れた彼方の姿に、小人達は動揺しているようだ

「すみません、勝手に夢の中に入らせていただきました」
「…いや、いい。ナイスタイミングだ」

 まともに動けない状態の上田
 味方が助けにきれてくれたのならば…そちらの力を借りるのが、一番だろう

 他人など、利用するものだと考えていた
 しかし、彼はハンニバルとの戦いで、学んだのだ
 ……誰かに頼るという方法も、あるのだと
 彼方は、頼るに値するか?
 …考えるまでもない
 元「組織」、そして、実力的にも、まだ頼りない面はあるかもしれない
 だが、ここは夢の中の世界
 彼方の契約都市伝説からして……ここは、彼方が実力を発揮できる場所だ

「彼方、いけるか?」
「はい……支配権を奪うのにはちょっと、時間がかかりますけど…」


「…次は~、抉り出し~~~~抉り出し~~~~~」


 わらわらわらわら
 スプーンを持った小人達が、アナウンスと共に現れる
 だが、恐れる必要などない

「問題ありません。お守りします!!」

 飛び掛る小人達を、彼方が次々と剣で切り伏せる
 相手は小さいだけで、スピードも大した事はない
 彼方に簡単に動きを見切られ、切り伏せられていっている

(…これが、彼方の本来の戦闘能力、か)

 仕込まれた剣術、鍛えられた体
 彼方が契約している都市伝説自体は、本人の身体能力を強化していない
 しかし、彼方はその弱点を補うように、過剰に鍛えられている
 故に、彼方は強い
 多分、彼に足りないのは、実戦経験の数
 上田相手の戦闘の時といい、ハンニバルとの戦闘の時といい、経験の少なさが表に現れている
 経験をつんだならば、この少年はどれだけ強くなるのか?


「……次は~~~~挽肉~~~~~挽肉~~~~~」


 上田の思考は、アナウンスで中断された
 現れたのは、何やら凶悪な器具がたっぷりついた、ロボットのような機械
 それに小人が乗り込み、ケラケラ笑っている

「おいおい、厄介なのが出てきたぞ?」
「大丈夫です」

 ぱちん、と
 彼方が、剣を鞘に収めた
 …その仕種が、どこかハンニバルに似ていて見えて…上田は、こっそりと苦笑する
 彼方の言っていた「先生」の正体は、ハンニバル
 恐らくは、剣術もハンニバルから習ったものだったのだろう
 こんな細かい仕種にも、影響がでるものなのか
 凶悪な音をたて、上田と彼方に迫る機械


 しかし
 その動きが、唐突に、止まった


 小人が、慌てたようにガチャガチャと機械を動かす
 機械は、小人の操作に答える事はなく

 -----ぐちゃり
 乗っていた小人を、挽肉へと変えた

「夢の支配権を奪いました………今からここは、僕のテリトリーです」

 ぐちゃり
 ぐちゃ、べちゃ
 暴走する機械が、小人達を挽肉へと変えていく
 ここは、もう猿夢の悪夢の世界ではない
 彼方が作り出す、夢の世界へと変化した

「もう、電車の中の必要もないですよね。明也さん、どんな場所がいいですか?」
「うん?そうだな………せっかくだ、処刑場にでもしてくれるか?」
「はい!」

 っふ、と
 周囲の景色が、変化する
 それは、まるで中世ヨーロッパの処刑場
 そこに、上田と彼方………そして、もう一人、黒服の男が立っていた
 片目を包帯で隠している男
 …いや、隠している訳ではないようだ
 恐らくあの包帯の下……何も、ない
 片目を失っているらしい

「な…ば、馬鹿な…っ!?」
「どうやら、夢の支配力は彼方の方が上らしいな?」

 にやり、男を挑発するように笑う上田
 …男の、背後に
 処刑斧を持った男が現れる

「明也さん、首切りの刑でいいですか?ギロチンか首吊りの方がいいですか?」
「悩むな……あぁ、でもギロチンは却下な。あれって、相手を苦しめない慈悲深い殺し方なんだよ。こんな奴に慈悲をかける必要はない」
「わかりました」

 ふぅむ
 せっかく処刑場にしてもらって悪いのだが、「内側に棘がびっしりついた樽の中に入れて、馬車で引き摺り回しの刑」とかもいいかなぁ、と
 上田が、そんな事を考え始めると

「く、くそっ!!」

 っふ、と
 男の姿が、消えた

「!逃げたのか!?」
「そのようです……現実世界に、戻ります!」

 ぐにゃり
 彼方の声と共に、上田の視界が、ゆがんで……………





「-----っ!!」

 意識が、現実に戻る
 目を、覚ました
 胸元に感じる重み

「…何、この絵面」

 状況を理解し、思わず呟く上田
 上田の胸元に、彼方が座っている状態だったのだ

「す、すみません。こうしないと、明也さんの夢の中に入れなくて…」
「腐なお姉さん大喜びの制限だよな!?」
「…腐???」
「あ、知らなかったか。うん、聞かなかった事にしておいてくれ。できれば、永遠に意味を理解しないまま終わるんだ」

 上田の言葉に首を傾げつつ、彼方は上田の胸元から降りた
 …そうだ、知らなくてもいい
 知らないままの方が幸せな事は、世の中にたくさんあるのだ
 まじめな意味でも、ギャグな意味でも

「とりあえず、猿夢の契約者を倒してきます!」
「位置、わかるのか?」
「明也さんの夢に入る前に、レイモンさんが位置を把握してくれたんです。向こうも能力発動中は動けないはずですし、まだ遠くへ行っていないはず」
「……わかった。深追いするなよ?」

 はい、と頷き、駆け出す彼方
 …もう、大丈夫だろう
 今、自分にできることはない
 上田は寝台の上で天井を見上げ、ひとまずの危機を脱したことを実感するのだった



 サンジェルマンの城を出て、走る彼方
 …見つけた
 夢の中に現れた、黒服の男を

「く、くそ…っ」

 向こうも、彼方に気づいた
 慌てて逃げ出そうとしている
 …だが、逃がすものか
 剣の柄に触れながら、彼方は相手を追跡する
 急いで、階段を駆け上がろうとしている男
 それを、追跡しようとして

「……っな!?」
「…え?」

 その時
 男が駆け上がった階段の……13段目、から
 無数の腕が、生えてきた
 血まみれの手、腐り落ちている手、骨だけの手
 無数の手が、男をつかんで

「な、ば、馬鹿な……何故。「13階段」が……っ!?」

 ずるり
 男は……あっという間に、階段に引きずり込まれてしまった
 呆然と、彼方はその様子を見ている事しか、できない

 …階段の、上
 そこに、一人の青年が立っているのが、見えた

 中肉中背、肩まで伸びた髪、シルバーのピアス
 …特に、特徴らしい特徴も感じられない青年
 それが、じっと、彼方を見下ろしていた

「…っ誰だ!?」

 警戒するように、彼方は青年を睨み上げ
 その青年の顔を、はっきりと、見て

(……あ、れ?)

 その、顔に
 見覚えがあるような気がして…

「-----っ!?」

 ズキン、と頭が痛む
 思い出そうとした記憶
 しかし、それを拒むかのような、痛み
 思わず顔をしかめ、額を抑える彼方

 その、彼方を見下ろし続け
 …一瞬
 青年が、ほっとしたような表情を、浮かべたように見えた

 くるり、踵を返す青年
 呼び止めようとして、しかし、声がでない
 激しい頭の痛みに、体も動かない
 ただ、その後姿を見送ることしか、できなかった

「……誰、だ?あの人………どこか、で……?」

 自分は
 どこかで、あの青年に会っている?

 痛い
 痛い、痛い
 思い出そうとすると、激しく頭が痛む
 だが、確かに、自分はあの青年に…会った事が、ある

 痛みは続く
 しかし、その合間……かすか
 ほんのわずか、戻る記憶


「…あの人に……親切にして、もらった事が……ある…?」


 誰かに、親切にしてもらった記憶がある
 しかし、どうしてもその顔を思い出せなかった

 その、記憶と
 あの青年の、姿が
 彼方の中で………確かに、重なったのだった





to be … ?



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