「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 穀雨彼方-08

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 クリスマス
 今年も、どうやらホワイトクリスマスらしい
 しんしんと、雪が降ってくる

「…ん、冷えるな」
「大丈夫?檸檬さん。もうちょっと、厚着した方が良かったんじゃ…」
「外の気温は予測できていたんだが…体感気温が、思ったより寒かった」

 ぶる、と小さく震える檸檬
 彼方は苦笑して、自分が身につけていたマフラーを、檸檬の首に巻いてやる
 その暖かさに、檸檬は軽く笑みを浮かべる

「……暖かい。だが、彼方、寒くないか?」
「僕は大丈夫。それに、檸檬さんが風邪を引いたら大変だから」
「…私は、そこまで体は弱くないぞ」

 そう言いながらも、彼方の気遣いが嬉しい

 …この雪降る寒い中、何故、二人が外を出歩いているか?
 別に、デートと言う訳ではない
 笛吹探偵事務所で、クリスマスパーティをやっていたのだが…途中で、食料がつきそうな気配がしてきたのだ
 原因は、彼方の妹である吉静の、大食いファイター並の食欲
 それなりに料理は用意していたのに、食べ尽くされそうで
 急遽、買出しに出る必要性が出たのだ
 料理を作るにも、食材がなければ作るに作れない

「雪、積もりそうだね」

 雪降る空を見上げながら、呟いた彼方
 そうだな、と檸檬は頷く

「明日には、5㎝は積もっているはずだ」

 事務所の前を雪かきしないとな、とそう口にする
 檸檬は、「ラプラスの悪魔」の契約者だ
 これくらいの予測、特に意識しなくともできる
 ……と、言うより、できてしまう
 些細な未来が容易にわかってしまうと言うのは、日常の新鮮な驚きを失ってしまう
 檸檬が契約した……否、契約させられ、それが続いている「ラプラスの悪魔」とは、そんな存在なのだ

「前の学校町の冬ほどには、まぁ、ならないと思うがな」
「あぁ、前の冬は、凄かったからね」
「冬将軍が長いこと居座ったからな…」

 あの冬は酷かった
 ちみっこ達は大喜びの冬だったかもしれないが
 …檸檬のラプラスの悪魔は、今冬も冬将軍が学校町にきやがると予測していたりするのだが
 さっさと帰ってくれることを祈るばかりだ
 ちょっと意識すれば、どれだけで帰ってくれるかもわかるのだが、あんまり考えない事にする
 絶望したくないし

 さくさく、さくさく
 積もりだした雪を踏みしめながら、歩いていく
 24時間営業のスーパーで食材と、吉静がすぐ食べられるようにクリスマス用の惣菜とケーキを買い足す
 檸檬も荷物を持つつもりだったが、大半の荷物を彼方が持ってくれた
 檸檬が持ったのは、ケーキの箱だけだ
 ……ここまで、気を使ってくれなくとも良いのに
 彼方の優しさがありがたいけれど、時折、申し訳なさも感じてしまう
 自分相手に、ここまでしてくれなくとも良いのに

 スーパーを出て、再びさくさく、雪を踏みしめて歩く
 ほぅ、と吐きだす息が白い
 彼方からマフラーは借りたけれど……まだ、ちょっと、寒い
 手袋もつけてくるべきだったか…

「…えっと…檸檬、さん」
「何だ?」
「……手…つないでもいい、ですか?」

 小さく、そう、尋ねてきた彼方
 頬が、赤い
 寒さのせいだけではないだろう

「……つないで、くれるのなら」

 ぽそり、答える檸檬
 ほんのり、頬が熱いような気がする

「…それじゃあ」

 つけていた手袋を、わざわざ外して
 そっと、檸檬の手を握ってきてくれた彼方
 ………暖かい

「手、冷たいだろう。手袋をつけたままでよかったんだぞ?」
「僕が、檸檬さんと……直接、手をつなぎたかったから」

 駄目かな?と小さく首を傾げてくる彼方

「…駄目、な訳ないだろう」

 俯き、そう答える
 ……あぁ、もう
 何故、こんなにも頬が熱いのだ
 なんだか、彼方をまともに見ることができないじゃないか
 どうしてくれる

 わかっていたはずなのだ
 彼方の行動は、全て「ラプラスの悪魔」で予知できていた
 …だと、言うのに
 心構えは出来ていたはずなのに
 何故、こんなにも、こんなにも…照れくさくて、幸せで、恥ずかしくて
 冷静さを保てないのか

 さくさく、さくさく
 事務所への、帰り道
 二人は、ずっと手をつないだまま
 そして
 檸檬は、頬を…いや、耳まで真っ赤に染め上げて、俯いたままで
 …この赤くなった頬を、事務所につくまでに何とかするにはどうするべきか
 檸檬は、苦戦してしまうのだった





fin


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