「あ、兄さん。今帰るところ?」
「…お前もか」
「うん。バイト終わったから、帰る所」
「…お前もか」
「うん。バイト終わったから、帰る所」
僕は、兄さんの姿を見かけて、すぐに駆け寄っていった
僕らは、二人とも都市伝説と契約しているから
僕らは、二人とも都市伝説と契約しているから
--都市伝説は、都市伝説を呼ぶ
都市伝説と契約している人間は、他の都市伝説とも遭遇しやすい
稀に、「襲われ体質」とか呼ばれるような、元々都市伝説に遭遇しやすい人もいるみたいだけど
…とにかく
兄さんも、都市伝説と契約しているから…でも、兄さんの都市伝説は、あまり学校から離れられない
能力として身についている自分とは、違うから
だから…学校から離れた場所で兄さんが都市伝説に襲われた時には、僕が兄さんを護らなきゃ
たった一人、唯一の家族
その兄さんを、絶対に護ってみせる
稀に、「襲われ体質」とか呼ばれるような、元々都市伝説に遭遇しやすい人もいるみたいだけど
…とにかく
兄さんも、都市伝説と契約しているから…でも、兄さんの都市伝説は、あまり学校から離れられない
能力として身についている自分とは、違うから
だから…学校から離れた場所で兄さんが都市伝説に襲われた時には、僕が兄さんを護らなきゃ
たった一人、唯一の家族
その兄さんを、絶対に護ってみせる
(このところは、何故か組織からあんまりお仕事来ないしね)
…喫茶ルーモアのマスターを殺した奴を、追い詰めた件以来
あまり、仕事がやってこない
あの黒服は、「しばらく休んで、頭を冷やしていなさい」と言っていた
あまり、仕事がやってこない
あの黒服は、「しばらく休んで、頭を冷やしていなさい」と言っていた
…どう言う意味だろう?
僕はいつだって、凄く冷静なのに
僕はいつだって、凄く冷静なのに
彼は気付かない 覚えていない
あの男を追い詰めていった時、自分がどうなっていたか
あの男を追い詰めていった時、自分がどうなっていたか
彼は気付かない わからない
自分の中に、どんな鬼が潜んでいるのか
自分の中に、どんな鬼が潜んでいるのか
(…一応、危険な都市伝説に付いては連絡が来るから、いいんだけどね)
スパニッシュフライやら、マッドガッサーやら
最近では、「ハーメルンの笛吹き」とか言う都市伝説も、この町に入り込んできたらしいし
本当に、この町は都市伝説をひきつけやすいようだね
いい意味でも、悪い意味でも
最近では、「ハーメルンの笛吹き」とか言う都市伝説も、この町に入り込んできたらしいし
本当に、この町は都市伝説をひきつけやすいようだね
いい意味でも、悪い意味でも
(そう言えば、最近あいつ、メールでばっかり連絡してくるな。なんでだろ?)
スパニッシュフライのことを伝えてきた時は、電話だったのに
…何故か、それ以降、ずっとメールでの連絡ばかり
こちらが、メールの確認を滞るのを警戒してか、いつも電話だったくせに
…何か、あったのかな?
まぁ、あの黒服の身に何かあったとしても、僕はどうでもいいけど
ただ、あの組織を利用する上では、あいつがいないと面倒だな
…何故か、それ以降、ずっとメールでの連絡ばかり
こちらが、メールの確認を滞るのを警戒してか、いつも電話だったくせに
…何か、あったのかな?
まぁ、あの黒服の身に何かあったとしても、僕はどうでもいいけど
ただ、あの組織を利用する上では、あいつがいないと面倒だな
「…どうした?」
「え?ううん、何でもないよ」
「え?ううん、何でもないよ」
兄さんに話し掛けられて、僕は軽く笑って見せた
大丈夫
兄さんが心配する事は何もない
兄さんは、僕が護るから
たとえ、何を敵に回しても
たとえ、その敵が、世界そのものだったとしても
僕が、兄さんを護ってあげるから
兄さんが心配する事は何もない
兄さんは、僕が護るから
たとえ、何を敵に回しても
たとえ、その敵が、世界そのものだったとしても
僕が、兄さんを護ってあげるから
自転車を押していく兄さんの隣を、並んで歩く
何となく、小学校の時一緒に帰った帰り道を思い出す
何となく、小学校の時一緒に帰った帰り道を思い出す
--夕方、真っ赤なマントを来た怪人が現れて、子供を攫っていくんだって
--マスクをつけた女の人が、「私、綺麗?」って聞いてくるんだって
--マスクをつけた女の人が、「私、綺麗?」って聞いてくるんだって
僕らが子供の頃から、都市伝説はたくさんあった
僕たちは、それが実在するかなんてどうでもよくて、ただ噂として話し合っていた
都市伝説が実在する事を知った今となっては、そう言う話はほとんどしない
僕たちが口にする事で、それが生まれるかもしれないから
変わりに、話すのは
僕たちは、それが実在するかなんてどうでもよくて、ただ噂として話し合っていた
都市伝説が実在する事を知った今となっては、そう言う話はほとんどしない
僕たちが口にする事で、それが生まれるかもしれないから
変わりに、話すのは
「ね、兄さん。マッドガッサーって知ってる?」
「…無差別ガステロリスト犯が、どうかしたか?」
「…無差別ガステロリスト犯が、どうかしたか?」
黒服から連絡を受けた、危険な、もしくは迷惑な都市伝説の話
兄さんにも話しておかなくちゃ
学校町に入り込んだことを知っているかいないかで、警戒の度合いも変わってくるから
兄さんにも話しておかなくちゃ
学校町に入り込んだことを知っているかいないかで、警戒の度合いも変わってくるから
「死ぬ訳じゃないんだけど、厄介なガスを使う固体が、学校町で目撃されたんだって。気をつけてね」
「…死ぬ訳ではないが、厄介な?」
「うん」
「…死ぬ訳ではないが、厄介な?」
「うん」
…詳しくは、報告されてない
まったく、役立たずな
どうせ教えてくれるなら、もっと詳しく情報を寄越せばいいのに
でも、メールでは、とにかく、絶対にガスを喰らうな、と書いてあった
死ぬ訳ではなくとも、よほど厄介な効果なのだと思う
それなら、確かに警戒しないと
兄さんの身に何かあったら、大変だ
まったく、役立たずな
どうせ教えてくれるなら、もっと詳しく情報を寄越せばいいのに
でも、メールでは、とにかく、絶対にガスを喰らうな、と書いてあった
死ぬ訳ではなくとも、よほど厄介な効果なのだと思う
それなら、確かに警戒しないと
兄さんの身に何かあったら、大変だ
「……それと」
「うん?」
「気付いたか?」
「うん?」
「気付いたか?」
…うん、気付いてるよ
僕らの後を、付けてくる気配
息を殺して、気配を忍ばせて、近づいてきているけれど
ちゃんと、気付いているよ
僕らの後を、付けてくる気配
息を殺して、気配を忍ばせて、近づいてきているけれど
ちゃんと、気付いているよ
こちらの話題を聞いて…一瞬、動揺したように感じた
ちらり、背後を窺う
ちらり、背後を窺う
……いた
ガスマスクをつけた、黒尽くめの、男
ガスマスクをつけた、黒尽くめの、男
僕に見られたのに気付いて、ガスを放とうとしてきて…
「-------?」
ゆっくりと
口だけを動かして、伝えてやる
多分、あいつはちゃんと見ているはずだから
あいつが唇を読めなかった…その時は、さっさと殺してやるだけだ
口だけを動かして、伝えてやる
多分、あいつはちゃんと見ているはずだから
あいつが唇を読めなかった…その時は、さっさと殺してやるだけだ
「………っ!?」
幸い、あいつは口を読めたみたいだ
マッドガッサーは、びくり、体を震わせて
くるり、慌てて逃げ出していった
うん、これでいいや
兄さんに危害さえ加えてこなければ、戦うのも面倒だしね
マッドガッサーは、びくり、体を震わせて
くるり、慌てて逃げ出していった
うん、これでいいや
兄さんに危害さえ加えてこなければ、戦うのも面倒だしね
「気のせいじゃない?」
マッドガッサーを追い払って、僕は兄さんにそう答えた
兄さんは、少し怪訝な顔をして
…でも、マッドガッサーの気配を、兄さんももう感じないだろう
少し、不思議そうに首をかしげた
兄さんは、少し怪訝な顔をして
…でも、マッドガッサーの気配を、兄さんももう感じないだろう
少し、不思議そうに首をかしげた
「…気のせいか?」
「うん、気のせいだよ、きっと」
「うん、気のせいだよ、きっと」
大丈夫
あんな奴、追っ払ったから
だから、心配しないで
兄さんは、何も心配しなくていいから
あんな奴、追っ払ったから
だから、心配しないで
兄さんは、何も心配しなくていいから
兄さんに危害を加えるような奴なんて
僕が、皆みんな、追い払ってやるから
逃げない奴は、殺してやるから
だから
僕が、皆みんな、追い払ってやるから
逃げない奴は、殺してやるから
だから
…兄さんは、何も心配しなくて、いいんだよ?
…気付かないふりをする
こいつは、何かを追い払った
こちらに見えていないとでも思ったか
お前が、唇の動きだけで
---殺してやろうか?と
誰かに、問い掛けたことを
こいつは、何かを追い払った
こちらに見えていないとでも思ったか
お前が、唇の動きだけで
---殺してやろうか?と
誰かに、問い掛けたことを
fin