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「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 魔法少女銀河-10a

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匿名ユーザー

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【不思議少女シルバームーン 第六話 第四章「少女と地獄」】

 目を覚ます。
 見慣れた天井。
 寄り添う人影は私にもたれかかったままスウスウと寝息を立てていた。
 撃たれたはずの体には何処も異常がなく、まるで一週間位寝たんではないだろうかってくらい気分が良かった。
 腕の良い医者の知り合いがいるというのはありがたいことだ。
 本当に私はなんで不幸の一歩手前で立ち止まり続けてしまうのだろう。
 いっそ死んでしまえば楽なのに。
 居なくなってしまえれば楽なのに。
 こうやって生きて生きて生きて真綿の糸で首を絞め続けるように人の幸福を壊していく。
 いつか取り返しが付かないことになって、全てを壊してしまっても、
 私一人だけは何とかなっていて、中途半端に人を不幸にし続ける気がする。
 枕元には美味しそうな林檎と丁寧に研いである果物ナイフがあった。

「死のうかな。」

 口に出してつぶやいてみるけれども大して実感はわかない。
 私のベッドの真横で私のベッドに顔を埋めて寝ている人は穏やかな寝息を立てて寝ている。
 私の父を殺した人、私の母を殺した人、殺したわけではないけれど、
 彼らは今も病院のベッドで覚めることのない夢を観ている。
 誰かが言っていたそうだ。
 植物状態の人間にも意識があるらしいと。
 ならばその長い退屈の中で、生かされているだけの日々の中で彼らは何を思っているのだろう。
 偶に彼らの病室に行って、二三言学校であったことを話している。
 楽しいことだけを話している。
 辛いことは今私の隣にいる人だけに話している。
 この人は驚くほど虚ろだ。
 大きな大きな空っぽの器だ。
 それはなにも都市伝説との契約という肉体的精神的な限界についてではない。
 そのあり方がまるで虚ろなガラスの大杯なのだ。
 大きく大きく人の心やそれ以外の思いを受け止めておいて自分からは何も生み出さない。
 注がれた物を排出していくだけの虚ろで大きな硝子の器。
 だからこそ側にいて苦しくなくて、何があってもいくらでもなんとかしてくれそうな気がするのだ。
 でも逆に言えばそれは

 この人が居る限り私は何をしても受け止められてしまう

 ということだ。
 私が今ひとつ死に切れないのはこの人が全て受け止めてしまうからじゃないだろうか。
 私が血まで搾り出しても空の器は彼の器は満たせない。
 手元に持っている果物ナイフをじっと見る。
 この人が研いだナイフだ。
 刃物を只管鋭利にするのが好きな人なのだ。
 きっと無心にそんなことをしている瞬間が彼の一番彼らしい時間なのだろう。
 でもそう思われるには彼はもうすでにあまりに多くの汚れを自らで受け止めすぎた。
 たとえ彼がその罪深さを平然と受け入れようとそれを周りで観ている人は彼を透明な器とは思えない。
 何も零さない器であるがゆえに彼の中の黒い澱は何時まででも消えてなくならないのだ。
 そして心に黒い物を抱く人間を人は恐れるのだ。
 彼に埋没していけばしていくほど私も私が受け入れられないほどに黒く染まっていく。
 最初は両親の治療費の為に無理やり働かされているのだと思い込もうとしていた。
 でもそうじゃないと気づいてしまった時、私は私一人で抱えきれない程の澱を内側に貯めていて。
 彼の中に捨てないと耐えられなくなってしまった。
 狂ったようにあの人を求めるのはそれが己の罪深さから目を背けるため。
 幸福になるでなく、不幸たることを忘れる為。
 歪んでいる。
 狂っている。
 ならば私が身をゆだねるこの器を壊してしまえばどうなるのだろう。
 行き場を失い流れだした私は死ぬに違いない。
 誰が手を下すまでもなく死んでしまうに違いない。
 そうすればもう誰も不幸にはならない。
 果物ナイフを持つ右手に力が篭る。
 泣いたような笑ったような顔を私はしている。
 私に突き立ててもきっと誰かが治してしまう。
 私に突き立てるくらいすごい簡単な、それこそ小学生になってすぐにできたことだ。
 でもそれじゃあダメなんだ。
 このナイフで私は殺せない。
 だから殺す。
 目の前のこの人を殺せばイイ。
 その後ゆっくり私は死ねる。
 もう誰も不幸にしたくないから。
 それでいい。
 それでもう私は誰も傷つけない。
 指先をわずかに切って刃先を血で濡らす。
 赤い、痛い、痛くなければよかったのに。
 この刃が私の大好きな人に突き刺さる。
 怪我でろくに動けなかったはずなのに私の看病をしていたらしいこの人に突き刺さる。
 振りかぶって……!
 激痛。
 腕を掴まれた。
 腕を後ろにひねり上げられて関節を外されそうになる。
 でも痛いかというとどちらかと言えば痛くなくて、止められたことがむしろ嬉しくて。
 好きな人を傷つけなくて済んだから幸運だったと思う。
 結局、私を止めた人は私が殺そうとしていた人だった。
 殺気で目を覚ましてしまったんだと思う。 
 殆んど無意識に体が動いてしまったのだと思う。
 そうでないと死ぬような生活を彼はしていたそうだから。
 殺気の正体が私であると気づいたところで彼は安心したような顔で微笑んで、私を優しく抱きしめた。
 いつの間にか私は子供みたいに泣いていた。
 泣いている私の頭を彼はずっと撫でていてくれたのだ。
 そんなことをされたら、そんなことをされたらまた私はどうしようもなくなってしまう。
 なんでそんな聖者のように居られるのだ。
 私は貴方を一体どうすれば良いんだ。
 どうもできないのか。
 私一人など貴方にとっては小さな小さな存在に過ぎないんだ。
 そう思うと涙がまた出てきた。
 せめて私を滅茶苦茶にしてくれたらと思う。
 せめて私をどん底までたたき落としてくれたらと思う。
 でもこの人は先の見えない暗闇のように私を包んで愛して癒し続けるのだろう。
 いくら汚してくれと堕としてくれと壊してくれと懇願して泣き叫んでみても、
 その人は首を横に振り、私を優しく抱きしめるばかりで応えてはくれなかった。
 この人に傷めつけられたかった。
 この人を憎んでみたかった。
 きっとこの人にひどいことをされれば私はこんな辛い思いをしなくて済むんだ。
 なんで貴方は私に優しいの?
 なんで私にだけこんなにも優しいの?
 涙が卸したてのスーツにつくのも構わずに優しくて虚ろな人形の瞳で私を受け止める。
 私の愛する人はそういう人です。
 私の地獄は優しい場所です。


 胸が痛くて仕方ないよ。

【不思議少女シルバームーン 第六話 第四章「少女と地獄」】

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