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連載 - 我が願いに踊れ贄共・とある格闘家の邂逅-08

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だれでも歓迎! 編集
 後悔するかもしれない
 後戻りできないとわかっている

 ……それでも
 知りたいと願う想いは変わらない
 消えない

 たとえ、後悔するとしても
 たとえ、命を落とす事になろうとも



             Red Cape






「樹さん、悩み事?」
「うん?」

 カインと再会してから、数日後
 上田の稽古をつけてやっていた樹
 久々の弟子だからって、ハッスルしてやりすぎないよう、注意である
 まぁ、うっかりと奥義とか奥義とか奥義とか使って、上田をパンツ一丁にした過去はさておき
 稽古の合間の一休みの最中
 樹はそう、上田に声をかけられていた

「悩み事なんて、あるように見えるか?俺」

 わざとらしく、お気楽に笑ってみせる樹
 だが、上田はその仮面の下を、あっさりと見抜いてくる

「あぁ。自分一人じゃどうしようもない事態にぶち当たっている、そんな感じがするな」
「…本当、名探偵だなぁ、丁は」

 小さく、苦笑する
 …そんなに、わかりやすい人間である覚えなどないのだが

「話してくれよ、樹さん。もしかして、俺が見つけられなかったもう一人の弟子…カイン絡みの事じゃあないのか?」
「どこまで勘がいいんだよ、お前さんは………話せないな、悪ぃけど」

 上田は勘が良い
 だからこそ…話したら、巻き込んでしまうだろう
 樹は、そう考える

 酷く、嫌な予感がする
 己の知りたい事は……知ろうとすればするほど、危険へと足を踏み込まなければならない可能性が高い
 それに
 弟子を巻き込めとでも、言うのか?

 そんな師匠の心、弟子知らず

「なぁに、樹さんが話さなくとも、俺は勝手に踏み込むけど?調べる気になれば、樹さんの悩み事だって、すぐに調べられるさ」
「……いやはや。優秀すぎるってのも考え物だな。ヤバイ事に首突っ込みすぎて命落とすなよ?美人な嫁さんがいるんだろ?」
「あぁ。おなかの中に俺の子供が居るんだ。俺、色々と落ち着いたら、身内だけでささやかな結婚式をあげるんだ…」
「丁、それ死亡フラグ」
「大丈夫大丈夫。死亡フラグは立った端から叩き折っていけば問題ないってエロい人が言ってた」
「……そう簡単に、折れりゃあいいんだがね」

 嫌な予感がする
 ちりちり、ちりちりと
 本能が、警告を促す

 関わるな
 関わらせるな
 知ろうとするな
 知ろうとさせるな、と

「折るさ。俺に折れない死亡フラグはない」
「……たいした自信だな」

 あぁ
 どこまで、困った弟子だろうか

 ここで、ヘタに話さなかったら
 こいつは、さらに危険な領域に、首を突っ込みそうではないか

「わかった、話すよ……ただし、余計なことには首突っ込むんじゃねぇぞ?」
「いえっさー、ってか」

 腰をおろし、さて、どこから話すか、と考える樹
 まずは…だ

「…カインとはな、つい最近、会えたんだよ」
「お?見つかったのか」
「ほぼ偶然だったけどな」

 そう、偶然
 偶然でしかなかった
 必然、なのだとしたら
 何ゆえに、自分達は再会できたのか
 …わからないからこそ、偶然だ、と樹は考える

「…そのカインとやらに、問題でも?同性愛に走ったとか、男とばっかりフラグ建ててるとか」
「あ、いや、あいつは同性にゃあ走らないだろ。真面目なクリスチャンだしな。同性に走ったのは、誠の方だし。あの馬鹿弟子が」

 あー、うん、とちょっと視線をそらす上田
 …誠について調査している過程でわかったんだろう、わかりたくない部分まで全部
 優秀すぎるというのも、時にはいらん事まで知って厄介である
 真面目な意味でも、そうじゃない意味でも

「…カイン絡み、ってのは正解さ………あいつの姉さんが、ちょっと、な」
「へぇ、姉がいたのか」
「あぁ。マリア・ディーフェンベーカー。あいつと同じ翡翠色の目をした、可愛くて優しい子だったよ」
「翡翠色の、ね……樹さんと同じ目の色か」
「そうそう。だが、俺のにごりきった目の色と、あの姉弟の綺麗な目の色じゃあ、翡翠色つっても雲泥の差だよ」

 世界の裏側を見知って、ひねくれた自分と
 あの姉弟とじゃあ…目の純粋さが、違いすぎる

「……その、マリア、だが……10年前に死んだらしいんだよ」
「…死んだ?らしい、ってのは?」
「マリアとカインは、一緒の孤児院にいた。10年前にマリアだけが先に引き取られて……引き取られた先で、死んだらしい。カインが知った時には、彼女は既に棺に埋葬されて、墓の中さ」

 どれだけ、カインは苦しんだろうか
 カインは、たった一人の家族である姉を護りたいと、そう願っていたのだから

「カインって奴は、マリアって子の死亡状況とか、聞いてなかったのか?」
「…なかったんだと思うぜ?引き取られた先すら、わからないようだったからな」

 全ては、蚊帳の外
 自分も、カインも

 マリア・ディーフェンベーカーを引き取った先
 正体不明の猫箱の中で何がおきたのか?
 そのヒントすらわからない
 ゆえに、猫箱としか呼び用がない
 蓋を開けて、箱の中で猫が死んでいたとしても
 その猫箱の中で何がおきたのかは、蓋を閉じていたからわからないのだ

「…普通の死に方じゃなかったんじゃないか、とは思う。棺に埋葬するまでが、やけに早すぎる」
「死体が……とても、人には見せられない状態になっていた可能性が、高い?」
「そう言う事。それ以外にも、な」
「……その死の真相を知られない為に。調べられない為に、埋葬を急いだ可能性、か」

 やれやれ、と首を振る上田
 樹も同じ気持ちだ

 彼女は、マリア・ディーフェンベーカーは何に巻き込まれたのか
 …そして
 その、延長線上に
 カインは、巻き込まれているのではないか?
 …そんな、予感

 ただただ、ただただ
 強い、不吉の予感を感じるのだ

「…依頼内容は、マリア・ディーフェンベーカーの死因を調べる。それだな?」
「あぁ。それ以外には、首を突っ込むな。どうにも、ヤバイ予感しかしないからな」

 頷く上田
 …本心から頷いていれば良いのだが

「あぁ、調査料は、他にも技教えてもらうって事で、代金サービス」
「…こぉのしっかり者さんめ……OK,いつでも強気なお前さんにピッタリな技を教えてやるよ」


 どうか
 どうか

 己の弟子達の未来に、光があらんことを
 先の未来に、闇しか待ち受けていないのならば

 老い先短いこの命を使ってでも
 その闇を打ち破って、光へと導いてやりたいのだ






to be … ?




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