「黄色い雨ガッパって知ってる?」
それは、よくある噂話
くだらない、怖い話
そんなもの、信じているクラスメイトたちの気が知れない
くだらない、怖い話
そんなもの、信じているクラスメイトたちの気が知れない
黄色い雨ガッパ
可愛い黄色い雨ガッパを着た女の子
土砂降りの雨の中、ご機嫌に歌いながら歩く
歌っていたから気付かなかった
踏み切りを渡っていた、その時に
近づいてきていた、電車の音に
電車に跳ねられた女の子
ぐちゃぐちゃになって死んじゃった
丁寧に拾われた女の子残骸
けれど、その量は、全て拾ったはずなのに少なかった、足りなかった
可愛い黄色い雨ガッパを着た女の子
土砂降りの雨の中、ご機嫌に歌いながら歩く
歌っていたから気付かなかった
踏み切りを渡っていた、その時に
近づいてきていた、電車の音に
電車に跳ねられた女の子
ぐちゃぐちゃになって死んじゃった
丁寧に拾われた女の子残骸
けれど、その量は、全て拾ったはずなのに少なかった、足りなかった
すぐ近くの、女の子が通っていた学校
その日の夜から、お歌が聞こえるようになった
女の子が歌っていた歌
黄色い雨ガッパを着ていた女の子が歌っていた歌
学校の屋上に、ぽう、と黄色い影見えた
その日の夜から、お歌が聞こえるようになった
女の子が歌っていた歌
黄色い雨ガッパを着ていた女の子が歌っていた歌
学校の屋上に、ぽう、と黄色い影見えた
誰か見つけて
彼女を見つけて
黄色い雨ガッパを着ていた女の子
学校の屋上に、頭がぽん、と飛んじゃって
黄色い雨ガッパを着たままの女の子
学校の屋上で、自分の頭を見つけて欲しくて歌ってる
彼女を見つけて
黄色い雨ガッパを着ていた女の子
学校の屋上に、頭がぽん、と飛んじゃって
黄色い雨ガッパを着たままの女の子
学校の屋上で、自分の頭を見つけて欲しくて歌ってる
ただの噂話だ
出来の悪い、作り話
事実であるはずがない
趣味の悪い話だと思った
気にするだけ、馬鹿らしい
出来の悪い、作り話
事実であるはずがない
趣味の悪い話だと思った
気にするだけ、馬鹿らしい
「何だ?怖いのかよ?」
クラスの男子がげらげら笑う
怖いはずが無い
事実であるはずが無いのだ、そんな話
第一、飛んだ首が、どうして歌い続けられるのか
そんな馬鹿げた話が事実であるはずがない
幽霊?心霊現象?
それこそ、馬鹿らしい
事実なはずがない
怖いはずが無い
事実であるはずが無いのだ、そんな話
第一、飛んだ首が、どうして歌い続けられるのか
そんな馬鹿げた話が事実であるはずがない
幽霊?心霊現象?
それこそ、馬鹿らしい
事実なはずがない
「やめとけ、そう言う話するの」
げらげら笑っていた男子に、他の男子がそう声をかけた
クラスでも、あまり目立たない彼
いつも、どこかヤル気無さそうで、授業中もしょっちゅう寝ている問題児
さっきまでも、昼食を食べたら、さっさと昼寝をはじめていたはずなのに、何時の間にか、起きていて
クラスでも、あまり目立たない彼
いつも、どこかヤル気無さそうで、授業中もしょっちゅう寝ている問題児
さっきまでも、昼食を食べたら、さっさと昼寝をはじめていたはずなのに、何時の間にか、起きていて
…怖いほど、真剣な表情をしていた
「そう言うの、関わらない方がいいぞ」
ぽつり、彼はそう言って
再び、昼寝の体勢に入ってしまった
一体、どうしたと言うのか
何故、突然、あんな真剣な表情を?
あんな馬鹿らしい話、無視していればいいのに
何故、わざわざ、会話に入り込んできて、あんな事を言ったのか
私はわからず、ただ、不思議に思いながら、寝ている彼を見つめた
再び、昼寝の体勢に入ってしまった
一体、どうしたと言うのか
何故、突然、あんな真剣な表情を?
あんな馬鹿らしい話、無視していればいいのに
何故、わざわざ、会話に入り込んできて、あんな事を言ったのか
私はわからず、ただ、不思議に思いながら、寝ている彼を見つめた
ざぁざぁ、ざぁざぁ
雨音が、強い
天気予報では晴れだと言っていたのだが、見事な土砂降り
鞄の中に、傘を入れていて良かった
傘をさし、雨の中、歩き出す
ざあざあ、ざあざあ
雨の音が、他の色んな音を掻き消していく
ただ、雨の音だけが、耳に入ってくる
ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ
…そんな、雨の音の中
雨音が、強い
天気予報では晴れだと言っていたのだが、見事な土砂降り
鞄の中に、傘を入れていて良かった
傘をさし、雨の中、歩き出す
ざあざあ、ざあざあ
雨の音が、他の色んな音を掻き消していく
ただ、雨の音だけが、耳に入ってくる
ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ、ざあざあ
…そんな、雨の音の中
…歌声が、聞こえてきた
小さな女の子の歌声
気がつくと、私の前を、小さな女の子が歩いていた
黄色い雨がっぱを着た女の子
カッパと同じ色の、黄色い長靴を履いて
ちゃぷちゃぷ、ちゃぷちゃぷ
水溜りを踏み越え、歌を歌いながらご機嫌に歩いている
雨の中でも元気な、その小さな子供の様子に私は和んで
気がつくと、私の前を、小さな女の子が歩いていた
黄色い雨がっぱを着た女の子
カッパと同じ色の、黄色い長靴を履いて
ちゃぷちゃぷ、ちゃぷちゃぷ
水溜りを踏み越え、歌を歌いながらご機嫌に歩いている
雨の中でも元気な、その小さな子供の様子に私は和んで
…直後
昼休み、男子たちが話していた、あの話を思い出した
昼休み、男子たちが話していた、あの話を思い出した
何を考えているのか
あんなの、作り話に決まっている
目の前を歩く女の子が、その黄色い雨ガッパのわけが無い
ご機嫌な歌
楽しそうな、楽しそうな、歌声
雨の中でも、よく、聞こえてきて
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあああああああ
こんなにも、土砂降りの雨の中
車の音すら掻き消される、この雨の中
あんなの、作り話に決まっている
目の前を歩く女の子が、その黄色い雨ガッパのわけが無い
ご機嫌な歌
楽しそうな、楽しそうな、歌声
雨の中でも、よく、聞こえてきて
ざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあざあああああああ
こんなにも、土砂降りの雨の中
車の音すら掻き消される、この雨の中
何故、この女の子の声は、はっきり聞こえるの?
疑問に思った、その瞬間
…くるり
前を歩いていた女の子が……振り返った
…くるり
前を歩いていた女の子が……振り返った
思考が固まる
恐怖に支配され、体が動かなくなる
目の前にいた、雨ガッパの女の子
振り返った、その姿は
恐怖に支配され、体が動かなくなる
目の前にいた、雨ガッパの女の子
振り返った、その姿は
…首だけ、だった
ふわふわ、ふわふわ
首が、宙に浮かんでいる
ふわふわ、ふわふわ
首が、宙に浮かんでいる
胴体があるはずのそこには、何も無い
ただ、本来足があるべき場所には、ちょこん、と黄色い長靴があって
中身があるのかないのか、わからないそれが、ちょこちょこと動いている
ただ、本来足があるべき場所には、ちょこん、と黄色い長靴があって
中身があるのかないのか、わからないそれが、ちょこちょこと動いている
黄色い雨ガッパ
電車に轢かれて死んだ女の子
その頭は飛んでいって、なかなか発見されなかった
…その、頭が
今、私の目の前にいる
電車に轢かれて死んだ女の子
その頭は飛んでいって、なかなか発見されなかった
…その、頭が
今、私の目の前にいる
カンカンカンカンカンカンカン
聞こえてきた、踏切の音
この時…私は、ようやく気付いた
今、私が居る場所がどこなのか
聞こえてきた、踏切の音
この時…私は、ようやく気付いた
今、私が居る場所がどこなのか
ここは踏み切りの中
線路の上
踏み切りは、降りてしまっている
何かが、横から迫ってきているであろう事を、ゆっくりと理解して
しかし、私の体は動かない
線路の上
踏み切りは、降りてしまっている
何かが、横から迫ってきているであろう事を、ゆっくりと理解して
しかし、私の体は動かない
……にこり
無邪気に、無邪気に
黄色い雨ガッパが……笑った
無邪気に、無邪気に
黄色い雨ガッパが……笑った
…ぐい、と
突然、後方に引っ張られた
踏み切りを超えて、私は線路の上から連れ出される
その直後、さっきまで私が立っていた場所を、電車が通過していった
突然、後方に引っ張られた
踏み切りを超えて、私は線路の上から連れ出される
その直後、さっきまで私が立っていた場所を、電車が通過していった
一歩、遅かったら
私は、あれに轢かれて死んでいた
私は、あれに轢かれて死んでいた
「…何やってんだ、委員長」
駆けられた声に、振り返る
…彼だ
いつも、授業中寝てばかりの彼が、そこにいた
昼休みの時、「そう言うの、関わらない方がいいぞ」 と言ってきた、彼が
雨の中、傘もささず…全身、ずぶ濡れの状態で、こちらを見ている
…彼だ
いつも、授業中寝てばかりの彼が、そこにいた
昼休みの時、「そう言うの、関わらない方がいいぞ」 と言ってきた、彼が
雨の中、傘もささず…全身、ずぶ濡れの状態で、こちらを見ている
「わた…し?」
「線路の上でぼ~っとしてるなんて。委員長、自殺願望でもあったのか?」
「線路の上でぼ~っとしてるなんて。委員長、自殺願望でもあったのか?」
電車に轢かれて死ぬのは悲惨だし、わりと迷惑かかりやすいぞ、と言って来る
ごぉおおおおお…と
線路の上を、電車が走り続けている
ごぉおおおおお…と
線路の上を、電車が走り続けている
「…っい、今!黄色い雨ガッパが…!」
「うん?」
「うん?」
カンカンカンカンカンカンカンカンカンカン
踏み切りの音が、雨の音に混じって響き渡る
…電車が、通り過ぎ
黄色い雨ガッパがいたはずの、向こう側
踏み切りの音が、雨の音に混じって響き渡る
…電車が、通り過ぎ
黄色い雨ガッパがいたはずの、向こう側
そこには、何も無かった
大きな水溜りができた道路だけが、広がっている
大きな水溜りができた道路だけが、広がっている
「…何もないぞ」
「でも…」
「でも…」
でも
私は、確かに見た
宙を浮いていた、女の子の生首
黄色い雨ガッパを着た、生首を
私は、確かに見たのだ
私は、確かに見た
宙を浮いていた、女の子の生首
黄色い雨ガッパを着た、生首を
私は、確かに見たのだ
「委員長は、オカルト否定派じゃなかったか?」
そうだ
あんな物、ある訳がない
…でも
確かに、私は見てしまったのだ
黄色い雨ガッパの、あの女の子の生首の
無邪気な、無邪気な
しかし、とびきり残酷な、あの笑顔を
あんな物、ある訳がない
…でも
確かに、私は見てしまったのだ
黄色い雨ガッパの、あの女の子の生首の
無邪気な、無邪気な
しかし、とびきり残酷な、あの笑顔を
彼が、ゆっくりと線路を渡る
私は、慌てて後を追いかけた
線路を越えて…やはり、誰も居ない
何もない
黄色い雨ガッパなんて、どこにもいない
私は、慌てて後を追いかけた
線路を越えて…やはり、誰も居ない
何もない
黄色い雨ガッパなんて、どこにもいない
「勉強のし過ぎで、疲れてたんじゃないのか?」
幻覚でも見たんだろ、と彼は言って来る
幻覚?
あれが?
あんなにも、はっきりと見たのに?
あんなにも、はっきりと
私はあの女の子の歌声を聴いたのに?
幻覚?
あれが?
あんなにも、はっきりと見たのに?
あんなにも、はっきりと
私はあの女の子の歌声を聴いたのに?
「ほら、疲れてんなら、さっさと帰った方がいいぞ」
ざあざあざあ
雨は、ますます強くなる
傘を差していない彼
どんどん、ずぶ濡れになっていく
雨は、ますます強くなる
傘を差していない彼
どんどん、ずぶ濡れになっていく
「あなたこそ、早く帰った方がいいわよ。傘もささないで、風邪引くわ」
「わかってる。とっとと帰るよ」
「わかってる。とっとと帰るよ」
私は、彼に背を向ける
…そうだ、あれは私が見た幻覚だったのだ
そう、思うしかない
そう、思わないと
…そうだ、あれは私が見た幻覚だったのだ
そう、思うしかない
そう、思わないと
私の常識が壊れてしまう
私の日常が壊れてしまう
あんなものが存在すると、認めてしまったら
私の日常が壊れてしまう
あんなものが存在すると、認めてしまったら
私は、もう正気ではいられない
「…助けてくれて、ありがとう」
彼に、そう、お礼を言うと
どういたしまして、とそんな声が聞こえてきて
私は、逃げるようにその場を後にした
どういたしまして、とそんな声が聞こえてきて
私は、逃げるようにその場を後にした
ざあざあざあざあざあ
雨の音が、鬱陶しい
ぐっしょりと、髪が、制服が濡れていく
とっとと帰らないと、マジで風邪引きそうだ
雨の音が、鬱陶しい
ぐっしょりと、髪が、制服が濡れていく
とっとと帰らないと、マジで風邪引きそうだ
「…花子さん、終わったか?」
「うん」
「うん」
ひょこん
花子さんが、顔を出す
電車が通り過ぎるまでの間に、勝負はついたようだった
花子さんが、顔を出す
電車が通り過ぎるまでの間に、勝負はついたようだった
黄色い雨ガッパ
自分の頭を見つけて欲しかっただけのはずだった、都市伝説
それは、いつからか、人を電車が近づく線路の中に誘い込むようになった
まるで、他者を、自分を同じ目にあわせるように
自分の頭を見つけて欲しかっただけのはずだった、都市伝説
それは、いつからか、人を電車が近づく線路の中に誘い込むようになった
まるで、他者を、自分を同じ目にあわせるように
正直、危なかった
もうちょっとで、委員長は電車に轢かれて無残な死体と化していただろう
流石に、クラスメイトに死なれては目覚めが悪い
黄色い雨ガッパの出現条件である、土砂降りの雨
この雨に嫌な予感がして、踏み切り近くを張っておいて正解だった
もうちょっとで、委員長は電車に轢かれて無残な死体と化していただろう
流石に、クラスメイトに死なれては目覚めが悪い
黄色い雨ガッパの出現条件である、土砂降りの雨
この雨に嫌な予感がして、踏み切り近くを張っておいて正解だった
「あの子、まだ本格的に力をつける前だったみたい」
「そうか」
「そうか」
良かった
そうじゃなかったら、花子さんが危なかっただろう
ここは、女子トイレじゃない上に、屋外
完全に、花子さんのテリトリー外だ
本来の力で戦えない花子さんには、きつい場所だ
そうじゃなかったら、花子さんが危なかっただろう
ここは、女子トイレじゃない上に、屋外
完全に、花子さんのテリトリー外だ
本来の力で戦えない花子さんには、きつい場所だ
「あの子も、本来は学校の屋上がテリトリーのはずだから」
「しかも、近くに踏み切りがある、な」
「しかも、近くに踏み切りがある、な」
互いに、本来のテリトリー外
ならば、単純に力の強い方が勝つ
…今回は、たまたま、花子さんの方が強かったから、勝った
ただ、それだけだ
毎回、こううまく行くとは限らない
運が良かった、ただ、それだけだ
本当に…運が良かった
俺も、花子さんも、委員長も、死なずにすんだのだから
ならば、単純に力の強い方が勝つ
…今回は、たまたま、花子さんの方が強かったから、勝った
ただ、それだけだ
毎回、こううまく行くとは限らない
運が良かった、ただ、それだけだ
本当に…運が良かった
俺も、花子さんも、委員長も、死なずにすんだのだから
「けーやくしゃ?…風邪引いちゃうよ。早く帰ろう」
ぎゅう、と
花子さんが、俺の手を握ってきた
じっと、こちらを見上げてきている
そうだな、と頷いて、俺は歩き出した
ざあざあざあざあ
土砂降りの雨の音
その雨の音に混じって聞こえてきていた、黄色い雨ガッパの歌声は…もう聞こえない
もう二度と、聞こえる事は、ない
花子さんが、俺の手を握ってきた
じっと、こちらを見上げてきている
そうだな、と頷いて、俺は歩き出した
ざあざあざあざあ
土砂降りの雨の音
その雨の音に混じって聞こえてきていた、黄色い雨ガッパの歌声は…もう聞こえない
もう二度と、聞こえる事は、ない
fin