「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

春の雨は少し冷たくて、濡れた段ボール箱の中には

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だれでも歓迎! 編集
 子猫が鳴いていた。
 生まれて間もない、ようやく目が開いたばかりの子猫。
 身寄りも親しい友人もなく、ペット禁止のアパートに住んでいる私は、この子と一緒に暮らすことは出来ない。
 もし私がこの場を去ったとして、親切な人が拾ってくれるかどうかもわからない。
 鳴くのにも命がけだろうこの子。
「お前の目に・・・私や、自分を守ってくれない世界はどう映っているんだろうね」
 ゆっくりした口調で話しかけ、触れるか触れないかくらいの力加減で撫でる。
 ここに座り込んで30分。子猫の鳴き声が、心なしか弱くなったような気がする。
 このまま雨が止まず気温が上がらなかったら夜までこの子は生きていられるのか。
「お前が大人だったら・・・寒くないところも食べるものも自分で探せるのにね」
「みゃぁ」
 はじめて返事が返ってきた。
 ちょっとだけ嬉しくなって、更に色々話しかけながら撫でてやる。
 ・・・それから1時間後。
「じゃあね。ひとりでも頑張って生きるんだよ」
「にゃー」
 私は子猫に・・・子猫だった猫に別れを告げてその場を去った。
 私は「植物は話しかけるとよく成長する」と契約している。
 私が話しかけた生き物は、植物はもちろん動物も、私が自在に成長させることが出来る。
 自然の在り方を、生き物の時間を人が操るという事には自分の力ながら疑問を抱くけれど
 少なくともこれであの子は生きていけるだろう。
「ばいばい」
 私はちいさく呟くと、待つ人のないアパートへの家路についた。



END

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