「都市伝説と戦う為に、都市伝説と契約した能力者達……」 まとめwiki

連載 - 次世代の子供達-61

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匿名ユーザー

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 塾の門前。そろそろ授業が終わる時間帯なのか、子供のお迎えの車が集まってきていた
 車のない保護者もお迎えで集まり、保護者同士でお喋りに花を咲かせてもいる
 最も、中には仕事の電話をしながら子供を待っている保護者もいて

 ……そんな中、ひときわ目立つはずのその男も、携帯で何やら話しながらお迎えすべき相手を待っているようだった
 目立つ「はず」としたのは、その男の容姿からして明らかに目立つはずだと言うのに、周囲が全く、彼へと視線を向けていないからだ
 二メートルをゆうに超える、がっしりとした大柄な体格の西洋人。携帯で何やら話しているその言葉も、どこの国の言葉やら周囲の者は恐らく理解できないだろう
 この学校町はわりと日本人以外も多いとはいえ、この巨体であれば、目立つ
 目立つはずなのだが……誰も、彼へと好奇の視線すら向けていない
 まるで、男がこの場に立っている事実に気づいていないかのように

『……そうか。やっぱ普段守りが堅い分、壊されると修復にも時間がかかるのか…………「薔薇十字団」「レジスタンス」に加えて、「教会」からも一部人員来てるんだろ?その分マシではあるだろ』

 かなり古い、現代の人間では聞き取れぬだろう言語で男は携帯越しにそう話していた
 会話している相手がいるのは国外、それもヨーロッパの方だ
 携帯越しに、少し苛立っているような声が聞こえてきて、苦笑する

『仕方ないだろ。お前の能力は悪人見極めるのに適してんだから………さっきも言ったが、あちらこちらの組織が手を貸してんだから、時間かかるっつっても少しは早く修復完了するんじゃないのか?………「組織」からも、少し遅れるが誰かしら向かうはずだし………』

 と、携帯の向こう側から大きな声でもしたのか、携帯を耳から話す
 話してもきちんと声は聞こえているのだから、どれだけ大きな声を出しているのか
 そして、周囲にもその声が漏れているだろうに……誰も、気づかない

『んな声出さなくてもいいだろ。耳の鼓膜破ける………わかった、落ち着け。行くとしたらダレンやヘンリエッタが信頼している相手が行く。ついでに言えばザンもセットだ。これなら問題ないだろ?』

 己の上司とその同僚の名前を口に出してみたが、携帯の向こう側の相手はまだ警戒しているままだ

(……まぁ、仕方ねぇか。あいつも一時期、「組織」に追われていた身だしな)

 「組織」が危険視した気持ちも、わからないではないが
 なにせあちらは、本気を出せば国を滅ぼしかねない程度の事は出来るのだ
 かつて、朝比奈 秀雄に憑いていたタイプとは違うとは言え、厄介さで言えばむしろ上だ
 派手にやらかす気はないのだと「組織」に納得させるまでだいぶ手間取った覚えがある
 それを手伝った自分も、お人好しに分類されてしまうのかもしれないが

『とにかく、今回の件でしっかりやれば、またあちらこちらからの警戒もゆるくなるだろ。ちゃんとやっとけよ?……間違っても誰かに囁きかけるなよ。またややこしくなるぞ』
『………やりませんよ。囁きかけてもつまらない連中しかいませんから』

 違う、そういう問題じゃない
 ツッコミをいれたいところだが、入れても無駄だろうと判断して、黙った
 と言うか、ツッコミ入れると話が長くなりそうだ

『……んじゃあ、そろそろ切るぞ?契約者の子供逹連れて帰らないといけないんだからな、こっちは』
『貴方、まだ契約を続けていたのですか。もうそろそろ、契約を切ってもいいでしょうに』
『一応な。看取って……子供達の方は都市伝説と関わることになるかどうかわからんが、そっちもある程度は見守るさ』
『………………お人好し』

 呆れたような声がして、ぶつり、通話が切られる
 少しは機嫌が悪いのが緩和されたならいいのだが

(…まだ機嫌悪いままだったら。がんばれ、「アヴァロン」の入口付近の結界修復に関わる連中)

 仕事はきっちりとやるだろうが、八つ当たりも酷い事になるだろうが、頑張れ
 自分がその場にいない事をいいことに他人事のように考えていると……あぁ、来た
 本日の分の塾の授業が終わって、生徒逹がぞろぞろと出てくる
 契約者の子供逹、あの双子は、いつものようにきゃいきゃいと何やらお喋りしながら歩いてきた

「雅、渚」

 日本語で声をかけてやると、2人はすぐに気づいて視線を向けてきた
 ぱっ、と表情を輝かせ、駆け寄ってくる

「ジブリルだー!」
「今日はお迎え、貴方なのね!」
「あぁ。ここんとこ物騒だから俺に行け、と」

 全くもって都市伝説使いが荒い契約者だ
 自分としては、契約者の娘と息子たるロリとショタを守れるのならば守ってやりたいので、これくらいならば請け負うが

「まぁ、そう言えばそうね。怖い事件が多いと聞くわ」
「怖いね。怖いよ。でもジブリルが一緒なら、そんな事件に巻き込まれる事なく帰れるね」
「えぇ、そうね!とっても素敵な事だわ。でも、寄り道出来ないのが残念」
「あぁ、そうだね。そこはちょっと残念だ」
「……運転手が毎度、お前ら連れてどっか寄り道してるってのは本当だったか」

 そこは後で伝えておこう、とそう思いながら、二人と手をつなぐ
 二人はきゃいきゃいとジブリルに手を引かれていく
 三人の姿は、周囲の者逹にはまるで見えていないかのように人混みの中へと消えていき
 ……その人混みの中からも静かに、消えた




おしまい




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