アリー・アル・サーシェスは西暦の二十四世紀を生きた人間である。
彼が招かれた今回の聖杯戦争の舞台は、二十一世紀初頭の日本の地方都市。此度、サーシェスは実に約三百年もの時間を遡ることになったと言える。
さて、この時代の世界はと言えば、十分に平和である。
勿論世界各地では政権やら宗教やらを理由とした紛争が絶えないし、兵器開発を巡る大国同士の腹の探り合いも日夜繰り広げられているようだ。
それでも、肝心要の世界規模の大戦争は起きていないし、大規模な暴徒鎮圧の必要性も生じていない。最後に世界大戦を繰り広げたのはかれこれ七十年ほど前の話になるそうだ。生き証人達もそろそろ寿命で息絶える頃合いか。
そして日本の小市民レベルの視点から周囲を見渡せば、平和極まる光景しか広がっていない。撃って撃たれて殺って殺られて、なんて血生臭いエピソードは全て海の向こうの物語。三百年後の一般市民も似たようなものではあるだろうが、危機感の薄さではこちらに軍配を上げたい。
感染者数が億単位に至った、平和呆けという名の病。ここまで規模が広がれば、アイラブ戦争のサーシェスがむしろ異常者だ。と言ってみたものの、自分が正常な人間であると主張する気など最初からさらさら無いのだが。
革命と戦争を経て辿り着いた平和の時代。数多の戦場を駆けた兵士達が、更に遡れば日の本の変革期を生きた武士達が願ったであろう、笑顔の時代。
彼が招かれた今回の聖杯戦争の舞台は、二十一世紀初頭の日本の地方都市。此度、サーシェスは実に約三百年もの時間を遡ることになったと言える。
さて、この時代の世界はと言えば、十分に平和である。
勿論世界各地では政権やら宗教やらを理由とした紛争が絶えないし、兵器開発を巡る大国同士の腹の探り合いも日夜繰り広げられているようだ。
それでも、肝心要の世界規模の大戦争は起きていないし、大規模な暴徒鎮圧の必要性も生じていない。最後に世界大戦を繰り広げたのはかれこれ七十年ほど前の話になるそうだ。生き証人達もそろそろ寿命で息絶える頃合いか。
そして日本の小市民レベルの視点から周囲を見渡せば、平和極まる光景しか広がっていない。撃って撃たれて殺って殺られて、なんて血生臭いエピソードは全て海の向こうの物語。三百年後の一般市民も似たようなものではあるだろうが、危機感の薄さではこちらに軍配を上げたい。
感染者数が億単位に至った、平和呆けという名の病。ここまで規模が広がれば、アイラブ戦争のサーシェスがむしろ異常者だ。と言ってみたものの、自分が正常な人間であると主張する気など最初からさらさら無いのだが。
革命と戦争を経て辿り着いた平和の時代。数多の戦場を駆けた兵士達が、更に遡れば日の本の変革期を生きた武士達が願ったであろう、笑顔の時代。
(はいはい。無駄な努力、御苦労様)
心にもない労いの言葉を、心中から投げ掛けた。
両の瞳を希望に輝かせていただろう彼等は、果たして理解していたのだろうか。歴史とは戦争、平和、革命の三拍子がいつまでも続く、終わらない円舞曲のようなもの。一度築いた平和など、どうせすぐにぶち壊される程度の価値しか無いと。
例えば二十一世紀に平和そのものであった世界が、二十四世紀にはエネルギー革命を経て再び大戦争時代を迎えるように。
そして戦争とは、後の時代のものであるほど質が向上する。幕末には刀と鉄砲、二十世紀には戦車と戦闘機に精々核爆弾が関の山だった戦争も、数百年後も経てば巨大ロボットと衛星兵器が火を噴く一大パレードだ。
先の時代を生きた兵達の忌み嫌う戦争は、座して待つだけでも再びやって来る運命である。
両の瞳を希望に輝かせていただろう彼等は、果たして理解していたのだろうか。歴史とは戦争、平和、革命の三拍子がいつまでも続く、終わらない円舞曲のようなもの。一度築いた平和など、どうせすぐにぶち壊される程度の価値しか無いと。
例えば二十一世紀に平和そのものであった世界が、二十四世紀にはエネルギー革命を経て再び大戦争時代を迎えるように。
そして戦争とは、後の時代のものであるほど質が向上する。幕末には刀と鉄砲、二十世紀には戦車と戦闘機に精々核爆弾が関の山だった戦争も、数百年後も経てば巨大ロボットと衛星兵器が火を噴く一大パレードだ。
先の時代を生きた兵達の忌み嫌う戦争は、座して待つだけでも再びやって来る運命である。
(くっだらねえ。こちとら戦争だけで満足だっての)
しかし、その暇すらサーシェスは惜しい。
生温いだけの平和など全く不要。人類の発展を促す革命も悪くないが、それは戦争が齎す特需でも十分に代替可能。やはり不要。
戦争、戦争、戦争。
サーシェスは心の底から望むのは、糞ったれた生温いループの変革。拍子も何も無しに、戦争だけが永遠に繰り返される世界。
武力による紛争の根絶? タコが。武力とは紛争を盛り上げるために使うものだ。
純粋種による人類の支配? 図に乗るなよ。飼い慣らされた狗として一生を終える気なんか微塵も無い。
そんな妄想に囚われた連中を、纏めて焼き尽くせるだけの大火を。母なる星を焼き潰して尚有り余るほどの、一心不乱の大戦争を。
その時を迎えるまでは、暫しの我慢。聖杯を得るための過程、聖杯戦争という名の娯楽に打ち込むだけだ。
そして、その中に芽吹く戦争の可能性を楽しむのも忘れまい。
生温いだけの平和など全く不要。人類の発展を促す革命も悪くないが、それは戦争が齎す特需でも十分に代替可能。やはり不要。
戦争、戦争、戦争。
サーシェスは心の底から望むのは、糞ったれた生温いループの変革。拍子も何も無しに、戦争だけが永遠に繰り返される世界。
武力による紛争の根絶? タコが。武力とは紛争を盛り上げるために使うものだ。
純粋種による人類の支配? 図に乗るなよ。飼い慣らされた狗として一生を終える気なんか微塵も無い。
そんな妄想に囚われた連中を、纏めて焼き尽くせるだけの大火を。母なる星を焼き潰して尚有り余るほどの、一心不乱の大戦争を。
その時を迎えるまでは、暫しの我慢。聖杯を得るための過程、聖杯戦争という名の娯楽に打ち込むだけだ。
そして、その中に芽吹く戦争の可能性を楽しむのも忘れまい。
(呑気な日本で物騒な兵器開発。あの女社長さんも好き者だねえ)
『こういう所は人間も抜け目ないよね』
『こういう所は人間も抜け目ないよね』
分かり切っていることだが、戦争に関わる欲望というものは決して無くならない。
例えば、サーシェスの肩書きである傭兵稼業。一時的な雇い主サマである神条紫杏。そして彼女の率いる『TSUNAMIグループ』が着手していると噂のとある事業だ。
ピロロと共に、一棟のビルディングを見上げる。
医療分野での活用を想定したロボット工学の研究を主な事業としている、とある企業が冬木に設けた研究所併設の支社である。この企業に資金提供をしているのが『TSUNAMIグループ』であると知る者は、決して少なくない。
そして、知る者が極めて少ない事実も一つ。この企業の真の実態は軍需産業であり、近頃は戦闘行為を目的とした新型の強化スーツの開発を行っている、らしい。
そんな情報をサーシェスが握っているのは、偏にサーシェスの与えられた役割によるものだ。
命を預ける相手先である以上、来日前に『TSUNAMIグループ』に関してある程度は調査済みである……という設定が付与された。そのおかげで、特にアクションを起こした覚えも無いのに既に情報収集の成果が脳味噌に詰め込まれている。
サーシェスがわざわざこんな所まで足を運んだのも、フリータイムを活用した情報収集の一環である。酔い覚めを兼ねた運動としても好都合だ。
尤も、公安機関の機能強化、日本国の軍国化への布石、諸外国との取引材料、いずれの目的での開発であるか定かではない。それ以前に、そもそも強化スーツの開発自体が真偽不明である。情報の秘匿を全く抜かっているというわけでもないようだ。
されど、真実味がある話だと感じている。
例えば、サーシェスの肩書きである傭兵稼業。一時的な雇い主サマである神条紫杏。そして彼女の率いる『TSUNAMIグループ』が着手していると噂のとある事業だ。
ピロロと共に、一棟のビルディングを見上げる。
医療分野での活用を想定したロボット工学の研究を主な事業としている、とある企業が冬木に設けた研究所併設の支社である。この企業に資金提供をしているのが『TSUNAMIグループ』であると知る者は、決して少なくない。
そして、知る者が極めて少ない事実も一つ。この企業の真の実態は軍需産業であり、近頃は戦闘行為を目的とした新型の強化スーツの開発を行っている、らしい。
そんな情報をサーシェスが握っているのは、偏にサーシェスの与えられた役割によるものだ。
命を預ける相手先である以上、来日前に『TSUNAMIグループ』に関してある程度は調査済みである……という設定が付与された。そのおかげで、特にアクションを起こした覚えも無いのに既に情報収集の成果が脳味噌に詰め込まれている。
サーシェスがわざわざこんな所まで足を運んだのも、フリータイムを活用した情報収集の一環である。酔い覚めを兼ねた運動としても好都合だ。
尤も、公安機関の機能強化、日本国の軍国化への布石、諸外国との取引材料、いずれの目的での開発であるか定かではない。それ以前に、そもそも強化スーツの開発自体が真偽不明である。情報の秘匿を全く抜かっているというわけでもないようだ。
されど、真実味がある話だと感じている。
(やりかねないな、あの鉄みたいな女なら)
理由は単純。神条紫杏が、そういう女だとしてもおかしくないからだ。
人殺しのプロフェッショナルであるサーシェスを招き入れ、そして只人でありながら全く臆せず言葉を交わす肝の座りよう。
あの食えない女ならば、兵器開発に執心していても不自然には思わない。そんな物騒極まる役割をそつなく熟すようなマスターだとしても、お似合いだという感想をサーシェスは抱くだろう。
故に、新型スーツ云々が真実である可能性をサーシェスは少なからず有力視していた。そして、その逸品を是非とも手に入れたいとも。
とは言え、現時点ではこれ以上の探りを入れるわけにもいかない。確証も無いお宝目当てに、内部構造も理解していない建物に乗り込む無茶をするわけにはいかない。今此処に居るのは、単なる下見だ。
もしも本気で獲得を狙うとしたら、そう。
人殺しのプロフェッショナルであるサーシェスを招き入れ、そして只人でありながら全く臆せず言葉を交わす肝の座りよう。
あの食えない女ならば、兵器開発に執心していても不自然には思わない。そんな物騒極まる役割をそつなく熟すようなマスターだとしても、お似合いだという感想をサーシェスは抱くだろう。
故に、新型スーツ云々が真実である可能性をサーシェスは少なからず有力視していた。そして、その逸品を是非とも手に入れたいとも。
とは言え、現時点ではこれ以上の探りを入れるわけにもいかない。確証も無いお宝目当てに、内部構造も理解していない建物に乗り込む無茶をするわけにはいかない。今此処に居るのは、単なる下見だ。
もしも本気で獲得を狙うとしたら、そう。
(俺が行かなくても、他の奴がやってくれるのを待つだけってな)
『その時はボク達の出番ってわけ?』
(分かってるな。相方さんのエスコートもパーティーの嗜みの一つってね)
『相手がお姫様ならボクも喜んでやるけどね』
(ははっ、違えねえ)
『その時はボク達の出番ってわけ?』
(分かってるな。相方さんのエスコートもパーティーの嗜みの一つってね)
『相手がお姫様ならボクも喜んでやるけどね』
(ははっ、違えねえ)
兵器が実用化され、表に出た時。その時こそ、捕捉と急襲と強奪のチャンス。今はまだ、その瞬間を待つのみ。
但し、仮に実現させれば最悪の場合は紫杏との関係も破綻する可能性もある。まあ、その時はその時だ。
但し、仮に実現させれば最悪の場合は紫杏との関係も破綻する可能性もある。まあ、その時はその時だ。
(あぁあ、うずうずしてしょうがねえよ)
思い起こすのは、先程スマートフォンを使って閲覧したネットニュースの記事の一つ。
何でも、朝方に冬木市の深山町方面で大規模な火災が発生したらしい。怪我人多数、原因も不明ときた。
大方、聖杯戦争絡みの事案だろう。サーシェスも先日少しばかり新聞の紙面を彩るような真似をしたが、それがいっそ可愛らしく思えるような大事故だ。
ストレスの赴くままにモビルスーツのライフルでもぶっ放したのかよ、などという冗談はさておき。早く戦争になれと望むまでも無く、皆さんも戦争を満喫中のようだ。
装備の確保、情報の収集、いずれも戦争の敗者にならないためには必要なことだ。だからこそ、湧き上がる衝動を抑えるのも一苦労というものだ。
一参加者として名乗りを上げるためにも、とっとと収穫といきたいところである。
何でも、朝方に冬木市の深山町方面で大規模な火災が発生したらしい。怪我人多数、原因も不明ときた。
大方、聖杯戦争絡みの事案だろう。サーシェスも先日少しばかり新聞の紙面を彩るような真似をしたが、それがいっそ可愛らしく思えるような大事故だ。
ストレスの赴くままにモビルスーツのライフルでもぶっ放したのかよ、などという冗談はさておき。早く戦争になれと望むまでも無く、皆さんも戦争を満喫中のようだ。
装備の確保、情報の収集、いずれも戦争の敗者にならないためには必要なことだ。だからこそ、湧き上がる衝動を抑えるのも一苦労というものだ。
一参加者として名乗りを上げるためにも、とっとと収穫といきたいところである。
(じゃ、場所を移しますか)
『ん、キルバーンを待たないのかい?』
(そりゃあな。大口叩いたからにはもう少し様子見ってことで)
『ん、キルバーンを待たないのかい?』
(そりゃあな。大口叩いたからにはもう少し様子見ってことで)
そろそろキルバーンが何か有益な情報の一つでも得る頃合いだろうか。むしろそうでないと困るのだが。
下見も終えたことだ、こちらも次の仕事をさせてもらうのが今のところは無難だろうと結論付け、サーシェスは踵を返した。
パートナーのキルバーンと、そしていつか「武器」を提供してくれるだろう誰かへの期待感なんてものを抱きながら。
下見も終えたことだ、こちらも次の仕事をさせてもらうのが今のところは無難だろうと結論付け、サーシェスは踵を返した。
パートナーのキルバーンと、そしていつか「武器」を提供してくれるだろう誰かへの期待感なんてものを抱きながら。
【B-8/とある研究施設の前/1日目・午後】
【アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]正装姿
[道具]カバン
[金銭状況]当面は困らない程の現金・クレジットカード
[思考・状況]
基本行動方針:戦争を楽しむ。
1.獲物を探す。
2.カチューシャのガキ(ゆり)を品定め。楽しめそうなら、遊ぶ。
3.B-8の研究施設に興味。“誰か”が“何か”を持ち出すのを待ってみる。
[備考]
カチューシャの少女(ゆり)の名前は知りません。
現在アサシン(キルバーン)とは別行動中。
銃器など凶器の所持に関しては後続の書き手にお任せします。
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]正装姿
[道具]カバン
[金銭状況]当面は困らない程の現金・クレジットカード
[思考・状況]
基本行動方針:戦争を楽しむ。
1.獲物を探す。
2.カチューシャのガキ(ゆり)を品定め。楽しめそうなら、遊ぶ。
3.B-8の研究施設に興味。“誰か”が“何か”を持ち出すのを待ってみる。
[備考]
カチューシャの少女(ゆり)の名前は知りません。
現在アサシン(キルバーン)とは別行動中。
銃器など凶器の所持に関しては後続の書き手にお任せします。
【アサシン(ピロロ)@DRAGON QUEST -ダイの大冒険-】
[状態]健康、宝具の復活一回分の魔力をストック
[装備]いつも通り
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに付き合い、聖杯戦争を楽しむ。
1.マスターの警護。
[備考]
[状態]健康、宝具の復活一回分の魔力をストック
[装備]いつも通り
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに付き合い、聖杯戦争を楽しむ。
1.マスターの警護。
[備考]
◆
死体の山を生み出した黒い死神は、一頭の獣に消し飛ばされた。奴の次の獲物は、剣士と騎士と少女が一人ずつ。
接触の相手だけではなくタイミングも間違えてはならない戦況を、ケイジは一人見据え続ける。
次に迎える死は、正真正銘一度きりの死。ミスは許されない。
接触の相手だけではなくタイミングも間違えてはならない戦況を、ケイジは一人見据え続ける。
次に迎える死は、正真正銘一度きりの死。ミスは許されない。
(わかってはいたけど、能力はギタイよりも上か)
高所から街を概観出来ないかと考えて、目についたデパートに入ったのが切欠だった。
昼食のステーキ串を齧りながら過ごす、平穏すぎて調子が狂いそうだとすら思える時間。それは、突然のサーヴァント同士の接触によって終了した。
咄嗟の判断で露店の陰に即座に身を潜めたことで振り払われる鎌の回避に成功。そのまま戦況の観察を開始。
仇敵であるあの畜生共の動きを少しずつ「鈍い」と思えるようになり始めたケイジにとって、歴戦の勇士と名高い彼等が繰り広げる殺人的な勢いでの衝突は、確かに目を見張るものがあったのは事実だ。
二十一世紀よりも進んだ近未来の時代で確立された科学技術、幾重にも折り重なった時間の中で培った自らの戦闘技術、これらを以てしても果たして彼等に付いていけるだろうか。
ましてや、今のケイジは丸腰同然。加えて、今はどういうわけか身体が奇妙に重く感じる。この状態で敵意を向けられたら最後、この命を容易に摘み取られるのが落ちだ。
まるで、無限に思える生死の周回を始める前、「一周目」に逆戻りしたかのような錯覚を覚える。
あの黒のサーヴァントに限らない全ての外敵が、その姿を見ただけで生命の終わりを連想させる死神に等しい。
紛れも無く、ケイジはこの場における弱者に成り下がっている。
昼食のステーキ串を齧りながら過ごす、平穏すぎて調子が狂いそうだとすら思える時間。それは、突然のサーヴァント同士の接触によって終了した。
咄嗟の判断で露店の陰に即座に身を潜めたことで振り払われる鎌の回避に成功。そのまま戦況の観察を開始。
仇敵であるあの畜生共の動きを少しずつ「鈍い」と思えるようになり始めたケイジにとって、歴戦の勇士と名高い彼等が繰り広げる殺人的な勢いでの衝突は、確かに目を見張るものがあったのは事実だ。
二十一世紀よりも進んだ近未来の時代で確立された科学技術、幾重にも折り重なった時間の中で培った自らの戦闘技術、これらを以てしても果たして彼等に付いていけるだろうか。
ましてや、今のケイジは丸腰同然。加えて、今はどういうわけか身体が奇妙に重く感じる。この状態で敵意を向けられたら最後、この命を容易に摘み取られるのが落ちだ。
まるで、無限に思える生死の周回を始める前、「一周目」に逆戻りしたかのような錯覚を覚える。
あの黒のサーヴァントに限らない全ての外敵が、その姿を見ただけで生命の終わりを連想させる死神に等しい。
紛れも無く、ケイジはこの場における弱者に成り下がっている。
(……ただの弱者で、終わってたまるか)
身体の運動性能は彼等に及ばないだろう。技量においても、一歩も二歩も劣るだろう。ああそうだ、彼等に勝てそうだなどと安易に自惚れはするまい。
しかし、己へと課した使命への執念の深さは、たとえ英霊にも負けやしない。
あと何度死ねば良いのか。あと何度殺せば良いのか。途方も無く反芻し続けた自問の中でも、決して褪せない願望。
地球全土を食い潰す勢いで人類を殲滅しようとする人外の連中を、一匹残らず叩き潰す。戦争、戦争、戦争の糞ったれた無限ループに必ずや終止符を打つ。
そのために、恋と平穏を謳歌するためのまともな思春期も捨て去った。殺された自分の血と殺した相手の返り血で染めた人生の成果を、最早ゼロで終わらせることは許されない。
しかし、己へと課した使命への執念の深さは、たとえ英霊にも負けやしない。
あと何度死ねば良いのか。あと何度殺せば良いのか。途方も無く反芻し続けた自問の中でも、決して褪せない願望。
地球全土を食い潰す勢いで人類を殲滅しようとする人外の連中を、一匹残らず叩き潰す。戦争、戦争、戦争の糞ったれた無限ループに必ずや終止符を打つ。
そのために、恋と平穏を謳歌するためのまともな思春期も捨て去った。殺された自分の血と殺した相手の返り血で染めた人生の成果を、最早ゼロで終わらせることは許されない。
(僕が弱者だとしても、それだって生きるための手段だ)
視線の先の、一触即発の緊張感を撒き散らす二勢力。その片方である獣のサーヴァントは、少なくとも交渉相手として論外なのは一目瞭然。剣士と騎士の方がまだ話は通じそうだ。
ならば、今は彼等に取り入るのが最善の道。
今のケイジが戦況に介入したところで、あの獣のサーヴァントを打倒する決定打とはなり得ないことは承知している。しかし、状況を多少なりとも好転させるくらいのことはしてみせる。
獣のサーヴァントと対峙する者達が撤退する際の援護、或いは獣のサーヴァントのマスターだろう金髪の少年へと行う牽制。どの選択肢であれ、この身体でも彼等への支援くらいはしてやれる。いや、やる。
そして、彼等の味方として合流する。
目下の目標は、自らの安全の確保。後の目標は、然るべき時と場所でのアサシンの抹殺。最終目標は、生還。そのために必要となるのは味方……なんて聞き心地の良いフレーズを、あらゆる感情を独りで抱え込み続けた今になって使う気は無い。
必要なのは協力者、即ち人員という武器。仮にその関係が後に砕けて散ってしまうのだとしても、その時までの付き合いが出来る相手をケイジは求めている。
人智を越えた化物共が爪と刃で切り結ぶ最前線、目線を変えれば暗殺者共が息衝く殺意の渦中。その中で、ケイジはその神経を一心に研ぎ澄まし続ける。
全ては、たった一度のこの瞬間を生き抜くため。
ならば、今は彼等に取り入るのが最善の道。
今のケイジが戦況に介入したところで、あの獣のサーヴァントを打倒する決定打とはなり得ないことは承知している。しかし、状況を多少なりとも好転させるくらいのことはしてみせる。
獣のサーヴァントと対峙する者達が撤退する際の援護、或いは獣のサーヴァントのマスターだろう金髪の少年へと行う牽制。どの選択肢であれ、この身体でも彼等への支援くらいはしてやれる。いや、やる。
そして、彼等の味方として合流する。
目下の目標は、自らの安全の確保。後の目標は、然るべき時と場所でのアサシンの抹殺。最終目標は、生還。そのために必要となるのは味方……なんて聞き心地の良いフレーズを、あらゆる感情を独りで抱え込み続けた今になって使う気は無い。
必要なのは協力者、即ち人員という武器。仮にその関係が後に砕けて散ってしまうのだとしても、その時までの付き合いが出来る相手をケイジは求めている。
人智を越えた化物共が爪と刃で切り結ぶ最前線、目線を変えれば暗殺者共が息衝く殺意の渦中。その中で、ケイジはその神経を一心に研ぎ澄まし続ける。
全ては、たった一度のこの瞬間を生き抜くため。
(人間を、舐めるなよ)
人に仇なす怪物共に向けて、その一言を叫ぶために。
【C-8/デパート屋上/1日目・午後】
【キリヤ・ケイジ@All you need is kill】
[状態]少々の徹夜疲れ、若干腕に痛み、五感に異常(軽度)、身を潜めている
[令呪]残り二画
[装備]なし
[道具]
[金銭状況]同年代よりは多めに持っている。
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に生き残る。
1.戦況の観察。剣士(斎藤一)と騎士(ガン・フォール)への支援と合流のタイミングを図る。
2.アサシン(T-1000)と他のマスターを探す。
3.サーヴァントの鞍替えを検討中。ただし、無茶はしない。というより出来ない。
4.非常時には戦闘ジャケットを拝借する。
[備考]
1.ケイジのループは157回目を終了した時点なので、元の世界でのリタ・ヴラタスキがループ体験者である事を知りません。
2.研究施設を調べ尽したため、セキュリティーを無効化&潜り抜けて戦闘ジャケットを持ち去る事ができる算段は立っています。
3.ケイジの戦闘ジャケットは一日目の夕方位まで使用できない見込みです。早まる場合もあれば遅くなる場合もあります。
[状態]少々の徹夜疲れ、若干腕に痛み、五感に異常(軽度)、身を潜めている
[令呪]残り二画
[装備]なし
[道具]
[金銭状況]同年代よりは多めに持っている。
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に生き残る。
1.戦況の観察。剣士(斎藤一)と騎士(ガン・フォール)への支援と合流のタイミングを図る。
2.アサシン(T-1000)と他のマスターを探す。
3.サーヴァントの鞍替えを検討中。ただし、無茶はしない。というより出来ない。
4.非常時には戦闘ジャケットを拝借する。
[備考]
1.ケイジのループは157回目を終了した時点なので、元の世界でのリタ・ヴラタスキがループ体験者である事を知りません。
2.研究施設を調べ尽したため、セキュリティーを無効化&潜り抜けて戦闘ジャケットを持ち去る事ができる算段は立っています。
3.ケイジの戦闘ジャケットは一日目の夕方位まで使用できない見込みです。早まる場合もあれば遅くなる場合もあります。
◆
ところで。
キリヤ・ケイジは三騎のサーヴァントの観察に徹することを第一としているが、その戦場の片隅の少女に注意を向けることも忘れていない。
顔面蒼白となって身動き一つ取れないその少女は、到底サーヴァントに並び立つに値する勇者には見えない。
どちらかと言えば、庇護されるべき存在であると言うべき人間だ。
顔面蒼白となって身動き一つ取れないその少女は、到底サーヴァントに並び立つに値する勇者には見えない。
どちらかと言えば、庇護されるべき存在であると言うべき人間だ。
そんな彼女は、このままでは獣のサーヴァントに命を奪われる可能性も決して低くない。
彼女がこの場に至るまでの背景がいかなるものであるかは知る由も無い者からすれば、無法者に殺されるか弱い少女との印象を抱くことになるだろう。
ケイジもまた、そんな印象を抱いた人物の一人であった。
風前の灯火となった、「ケイジ以外の誰か」に殺されるかもしれない少女の命。それを目の当たりにして、ケイジはまた思考する。
彼女がこの場に至るまでの背景がいかなるものであるかは知る由も無い者からすれば、無法者に殺されるか弱い少女との印象を抱くことになるだろう。
ケイジもまた、そんな印象を抱いた人物の一人であった。
風前の灯火となった、「ケイジ以外の誰か」に殺されるかもしれない少女の命。それを目の当たりにして、ケイジはまた思考する。
彼女は恐らく剣士のサーヴァントのマスターであるから、彼女の死に連れられる形でセイバーが消えると不都合だ、とか。
見たところ体力面での余裕もなさそうだが、逃走となった際にどうやって補助するのが良いだろうか、とか。
仮に合流したとして彼女のスタンスが不明瞭である以上、説得の仕方も考えておくべきだろうか、とか。
それだけ。
何かを頭で冷静に考えるということはしても、何かを胸の内で燃やすということはしない。そして、その自覚も今のケイジには無い。
一兵士としてのスイッチが入った思考の中では、少女は戦場に偏在するファクターの一つに格下げだ。既に、平穏の象徴などではない。
見たところ体力面での余裕もなさそうだが、逃走となった際にどうやって補助するのが良いだろうか、とか。
仮に合流したとして彼女のスタンスが不明瞭である以上、説得の仕方も考えておくべきだろうか、とか。
それだけ。
何かを頭で冷静に考えるということはしても、何かを胸の内で燃やすということはしない。そして、その自覚も今のケイジには無い。
一兵士としてのスイッチが入った思考の中では、少女は戦場に偏在するファクターの一つに格下げだ。既に、平穏の象徴などではない。
彼の瞳に、光は宿っていない。
ケイジの死と、ケイジ以外の誰かの死に慣れ過ぎて、尊い輝きも消えてしまった。
ケイジの死と、ケイジ以外の誰かの死に慣れ過ぎて、尊い輝きも消えてしまった。
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031:空の騎士 | 投下順 | 033:空へと至る夢 |
031:空の騎士 | 時系列順 | 033:空へと至る夢 |
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011:だから、戦うんだ | アリー・アル・サーシェス | 035:新たな予感 |
アサシン(ピロロ) | ||
016:鉄心と水銀 交わらない宿命 | キリヤ・ケイジ | 033:空へと至る夢 |