夢現聖杯儀典:re@ ウィキ

だから、戦うんだ

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「――お前らの話を統括すると、その嬢ちゃんはもう黒に近い灰色だな」

とあるホテルの一室。サーシェスが泊まっているこのホテルは簡素な作りではあるが、居心地がいいと評判らしい。
もっとも、彼にとってそんな評判などどうでもよく、単に都心にあるから便利だという理由で此処を拠点としているだけだ。

「探るような動き、それも入念に。間違いねぇな?」

急ぐこと無く、じっくりと見定める。
偵察から戻った彼らに対して、サーシェスは深くため息を吐く。
彼らの報告を聞き、サーシェスは即座に判断を下す。

「ただの一般人がそんな動きをするとは思えねぇ。仮にマスターでないとしたら、キャスターに操られている……って所か?」
「そうだねぇ。まあ、一人殺した所でこの街は動かない。彼女が死んでも――戦争は続くしね」

マスターであろうとなかろうと。どうせ、此処は偽りの街。
一人の少女が行方不明になった所で何も問題はない。
そもそも、サーシェス達には倫理観など存在しなかった。
好きなように奪い、騙し、殺し、悦楽を得る。
これまでもそうしてきたし、これからもそうするだけだ。

「決まりだね。それで、提案なんだけど、此処はまずボク一人だけを先に行かせてくれないかなあ?」
「ほう、何か考えでもあんのか? テメエのことだ、ちょっかいだけで済ますなんてことはねぇよな」

面白くならないなら、切り捨てる。
言外に彼がそう言っていることをキルバーンは肌で感じ取った。
サーシェスは快楽で動く人間だが馬鹿ではない。
確固とした理性で自分が最大限に楽しめるように場を整えることができる人間だ。
意にそぐわなかったら信頼もなくなっちゃうなあ、なんて口が裂けても言えない。
サーヴァントとマスター。その間に隔絶した力量の差があろうとも、令呪を使われたらそれでお終いなのだから。


「ま、適当に掻き回してくるよ。その間はピロロをつけとくから安心安全だね」

そうして、霊体化したキルバーンに対して、何を言うでもなくサーシェスはグラスを取り出して、買ってきたワインをたっぷりと注ぐ。

「あれれ~、何か激励の言葉はあげないの?」
「まさか。あの野郎がそんなもんを求めてる訳ねぇだろうが。何を言おうと、自分のやりたいようにやるだけだろ?」

元より、お互いに利用価値がなくなったら即座に切り捨てる関係だ。
激励など気色が悪い。
腹に後ろめたいことを幾つも抱え込んでいる暗殺者とそんな優良な間柄になった覚えはない。

(さてと、勝手に動く暗殺者サマはいいとして、俺はどうすっかねぇ)

本来なら、サーシェスも一緒に行動を共にするつもりだったが、キルバーン一人に殺られる雑魚であれば、相手にする価値はない。
もしも、カチューシャの少女がマスターであり、連れているサーヴァントが強力であれば、その時こそサーシェスの出番だ。

(必死こいて敵を探し始めた所をズドン、ってね。くははっ、今は精々情報集めに勤しみますかねぇ)

今はのんびりと機を伺うのが最良と判断し、ワインを体内へと流し込む。
アルコールの酔いに心も体も委ねてしまえ。
こうしてゆったりとしていられるのも今だけだ。
日が経つにつれてタイムリミットのことを考え、焦り出す主従も出始める。
その時こそ、彼が求めていた一心不乱の闘争が幕を開けるはずだ。
飽くなき愉悦が味わえる闘争がどうか――永遠に続きますように。
この偽りの街でも変わらぬ傭兵は、口元を歪めてからからと笑った。






(ひとまず、泊まるホテルを探り当てただけでも収穫か)

サーシェスを追跡していた剣心はホテルのロビーで手続きを済まし、一息ついていた。
一応ではあるが、同じホテルに一室を取ったのでいつでも張れるようにはしてある。
確かに、この世界で生きるには召喚時の服装では大層目立つだろう。
周りに和装をしている人はほぼいない。全員が洋風の衣服を身に纏い、外国のようだ。
現在着ている服装はどうやら、この時代の大人がよく着る衣服らしいので、剣心も街並みに上手く溶け込めている。


(隠密の勘は鈍ってはいない。此処にいるのは【拙者】ではなく、【俺】なのだから当然ではあるが)

霊体化を解いて色々と活動するのにアサシンは便利なクラスだ。
気配遮断のおかげで、魔力を振りまくこともなく、隠密に徹することができる。
気配を消し、一般人に紛れて暗殺の機を伺う。
殺れるか、殺れないか。
人斬り抜刀斎として名を馳せた緋村剣心の見せ所だ。

(ますたあが俺という武器をどこまで使いこなせるのか。最後までその願いは曲がらずに進めるのか)

それにしても、こんな形で昔の自分に立ち戻るとは剣心は露ほども思っていなかった。
願いは昔も今も変わらず泰平の世の中だというのに。
ままならないものだと自嘲するが、呼ばれたからには仕方がない。
勝ちに行く。泰平の為に、無辜の民であろうとも斬り捨てる。
加えて、願いを叶えるだけではなく、此度のマスターの行く末を見てみたいという思惑もある。


世界の為に他の全てを捨てた――魔王。
自分と同じ、『過去』も『今』も『未来』も許せなかった同類。
まるで彼女も自分と同じく、過去や在り方をねじ曲げられたかのように。

(もっとも、俺が気にする領分ではないか。あの女は……もう諦めている。何を言おうとも、届くはずがない)

だからこそ、自分のようなサーヴァントを召喚できたのか。
真実、誰かのことを想い続けた【緋村剣心】ではなく、歪で、歴史に曲げられた【人斬り抜刀斎】が呼ばれた理由である。
悪を為して世界を救う。
確かな結果を求め、紫杏はこの街にいるマスター全てを躊躇なく殺すだろう。
そして、自分がその刃である。
どれほど崇高な願いを持っていようが、どれほどいじらしい願いであろうが、構わず刀を抜き放つ。
できるはずだと言い聞かせ、剣心は脳裏に浮かんだ幸せだった頃の情景を投げ捨てる。

「きゃっ!」
「……っ! 済まない、怪我はないか?」

そうして考え事に耽っていると、ぽすんとした音が視界の下から聞こえてきた。
敵のことに気を取られ、注意力が散漫だったらしい。
いくら殺気を感じられなかったとはいえ、自省すべきだ。

「……大丈夫よ。こっちこそ、悪かったわね」

むっすりとした表情とは裏腹に、しっかりと謝った小さな少女に対して、剣心は薄く笑う。
見た所、聖杯戦争とは関わりない子供だが、何があるかわからない以上、迂闊な態度は取れない。
何かで操られている、斥候である可能性は完全に否定はできないのだから。


「気にしなくていい。お互い、考え事をしていて気が散っていた。むしろ、謝るのは俺の方だ」

表面上は穏やかに。【拙者】としての緋村剣心の顔をなるべく創り出す。
きっと、その顔は歪で子供にとってはあまりウケが良くないものだろう。
現に、少女は顔に怯えを見せている。子供故か、本能が自分の異質さを察してしまったのか。

「そ、そうっ。考え事をする時は気をつけた方がいいわ」
「あぁ……そうだな」

そう言って、小走りで立ち去っていた少女を誰が咎められようか。
血生臭さを知らぬ無垢なその在り方は剣心からすると眩しくて仕方がない。

(けれど、人々があの娘のように自由に生きれる、笑える。それが俺の求めた新時代だった)

少女とは違い、剣心は幼い頃から安寧とは程遠い環境で生きてきた。
青臭い理念を掲げて、沢山の人を斬ってきた。
たった一人の女性を愛し、喪った。
結局、緋村剣心の辿った道は苦渋に溢れたものだ。

(今の時代は、俺が尽力した政府ではないけれど。戦も多くあったけれど)

新時代、そして現在。
人々は闘争をやめず、尊い生命は数え切れない程に喪われた。
人斬り抜刀斎が斬った生命に意味があったのか。
その理想の果てで、【拙者】が報われたのか。
緋村剣心が願った明日は、願っていいものだったのか。

(…………あの娘のように、幼子が笑える世界はあったんだ)

けれど。けれど。
確かな答えとして、平和な新時代は在ったのだ。
幼子が夢を追いかけられる未来は、決して世迷い言じゃなかった。
自分達が必死に駆けずり回って見たかった明日が、此処にはある。
彼らの願った夢の果てが偽りの街とはいえあることに、たまらなく嬉しくなった。

「――――あぁ、安心した」

正しいとか、正しくないではなく。
人々の笑顔が見たくて戦った緋村剣心は、それだけで満足だった。



【C-9/ホテル/1日目・午前】

アリー・アル・サーシェス@機動戦士ガンダムOO】
[状態]健康
[令呪]残り三画
[装備]正装姿
[道具]カバン
[金銭状況]当面は困らない程の現金・クレジットカード
[思考・状況]
基本行動方針:戦争を楽しむ。
1.獲物を探す。
2.カチューシャのガキ(ゆり)を品定め。楽しめそうなら、遊ぶ。
[備考]
カチューシャの少女(ゆり)の名前は知りません。
現在アサシン(キルバーン&ピロロ)とは別行動中。
銃器など凶器の所持に関しては後続の書き手にお任せします。

【アサシン(キルバーン)@DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 】
[状態]健康
[装備]いつも通り
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに付き合い、聖杯戦争を楽しむ。
1. カチューシャの少女(ゆり)で遊ぶ。
[備考]
サーシェスとは別行動中。


【アサシン(ピロロ)@DRAGON QUEST -ダイの大冒険- 】
[状態]健康、宝具の復活一回分の魔力をストック
[装備]いつも通り
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針:マスターに付き合い、聖杯戦争を楽しむ。
1.マスターの警護。
[備考]

【アサシン(緋村剣心)@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚-】
[状態]健康
[装備]スーツ姿
[道具]なし
[思考・状況]
基本行動方針: 平和な時代を築く為にも聖杯を取る。
1. 次はどうするか。
[備考]
サーシェスが根城にしているホテルを把握しました。





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アサシン(ピロロ) 032:Endless Waltz
011:漆黒のジャジメント-what a noble dream- アサシン(緋村剣心) 050:それは終わりの円舞曲

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