大判写真をはじめてみよう

大判写真に興味を持った、あるいは始めてみようと思った理由は何でしょうか?アオリを活用して真っ直ぐに垂直線の伸びた建物を撮りたいから?とにかく大きく写真を引き伸ばしたいから?或いは135,120とステップアップしてきた次の段として?

大判写真には大きな魅力があります。最も小さな大判である4x5インチ判(シノゴ)サイズですら、使用するフィルムはL判のプリントとほぼ同じ。その一つ上のサイズの5x7インチ判(ゴシチ/ゴナナ)で2L判相当に達し、一般的に入手出来る最大サイズの8x10インチ判(バイテン)に至っては六切プリントと同サイズ。リバーサルフィルムで撮影すれば、プリントをせずとも写真として鑑賞する事が出来る大きさです。大きなフィルム上に記録された写真の精緻な描写は、大判カメラの醍醐味と言えるでしょう。

高い撮影の自由度に魅力を感じる人もいるでしょう。写真用レンズという概念が生れた時代に設計された古典レンズから、コンピューターを縦横無尽に活用して設計された現代までの膨大な種類のレンズを使い、更にアオリ(小型カメラでは固定されている事の多いレンズとフィルム面の平行を崩して撮影する技法)を使って歪みのない、又はパンフォーカスの写真を撮る事が出来るのは大判を使う大きな楽しみの一つです。

大判フィルムは135フィルムを使う一般のフィルムカメラの用に、連続して撮影をする事はほぼ出来ません。一枚を撮影するのにアレコレと準備が必要になるからです。ですが、それを乗り越えて狙う一枚は、準備の手間や機材の大きさを全て受け入れるだけの満足を与えてくれる筈です。

大判に出来る事出来ないこと

大判カメラは自由度が高いカメラですが、万能ではありません。自由ではあるが万能ではない、という事を常に頭の片隅に置いておいてください。常に適材適所を考えましょう。135フィルムや120フィルムを使うカメラの方が適している場面は無数にあります。

出来ないこと

大判カメラには
  • 連射ができません。一枚撮る事にフィルムを取り出す作業が必要です。特殊なフィルムホルダを使ってもせいぜい速射、秒間1枚撮れれば達人でしょう。
  • ズボンやシャツのポケットに仕舞う事ができません。小さな大判カメラはあります。ですがサっとポケットに仕舞うような真似は出来ません。
  • 10枚だってフィルム交換無しに撮る事は出来ません。普通フィルムはフィルムホルダという板に仕舞われています。このフィルムホルダは1つで両面1枚ずつ、合計2枚のフィルムしか入りません。前述の特殊なフィルムホルダでも6枚が限度です。
  • 迅速なレンズ交換は出来ません。一般的な大判カメラはレンズボードというレンズの取り付けられた板ごとレンズを交換します。バヨネット式のように迅速なレンズ交換は出来ません。
  • 自動露出はできません。基本的には全てマニュアル露出のカメラです。

出来ること

大判カメラは
  • 色々なレンズが使用できます。 勿論現実には沢山の制約がつきますが、理論上はレンズボードにさえ取り付き光を一点に収束できるならばどんなレンズでも写真を撮る事が出来ます。例えばクリミア戦争頃のレンズを使って、または最新設計のレンズを使って。この自由度は大判の大きな魅力です。
  • カメラの仕組みを理解する事が出来ます。極論すれば殆どの大判カメラは前後の枠を蛇腹で繋ぎ、一方の端にレンズを置き、反対の端にフィルムを置くだけの枠です。シンプルな構造の大判カメラを触っているうちに、ピントとは、被写界深度とは、露出とは、といったカメラの仕組みを深く理解するようになるでしょう。
  • 解像度の高い写真が取れます。大判フィルムは物理的な面積が大きい為、とにかく解像度の高い写真が取れます。クロップ耐性も当然高い為大きなプリントを考えているなら最適でしょう。

大判カメラをはじめてみませんか

ただ撮影するだけで手間がかかります。連射は出来ません。機材は巨大で重いです。自動露出や自動巻上のような便利な機能は一つもありません。動き物を撮るのにも向きません。

ですが、写真とは何か、そもそもピントとは、フォーカスとは。被写界深度とは。そういった一枚の写真が出来あがる迄に必要な全ての情報を自分でコントロールする事が出来ます。最も小さなサイズですら所謂135フィルムフルサイズが豆粒に見えるような大きなのフィルムで写真を撮る事が出来ます。垂直線の真っ直ぐに立った建築写真や、ジオラマ写真のような不思議なピントの写真を撮る事が出来ます。

一枚に手間がかかる分だけ、コレ、という物が撮れた時の感激はひとしおです。意外と難しい物でもありません。

さぁ、大判カメラをはじめてみませんか?

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最終更新:2019年05月17日 08:14