金があるならGitzo、金が無くてもGitzoだぞ
とりあえずGitzoかハスキーを買えれば安心なのです。それはわかっているのです。でも財布がそれを許してくれないのです。だから我々は悩むのです。
あなたがある種の求道者か、或いは閃光電球や大光量ストロボを頼りに一枚を狙うジャーナリストスタイルの大判ユーザーでない限り、大判カメラの撮影は常に三脚と共にあると言い切ってしまって良いでしょう。撮影前にアレやコレやと操作の多い大判カメラではその操作を安定して行えて且つ操作中にブレないような雲台と、大判カメラ一式という大重量を支え切れる三脚は必須です。本稿では三脚選びについて記述します。
身も蓋もない事を言ってしまえば、三脚にはある程度「正解」に近しい物があります。仏(現在は伊の企業の傘下)Gitzoの三脚ラインナップから、特に3型と呼ばれるタイプより大型の三脚であれば4x5程度ならビクともしないでしょう。最大クラスの5型ともなれば8x10ですら何とも無い筈です。または米Really Right Stuffの三脚でも同じだけの強度を得られるでしょう。米Husky(現在は日本製)の三脚と雲台も、長年蛮用に耐えうる道具として信頼されて決ました。では問題は何か?
冒頭にもある通り、即ち値段なのです。良い雲台、良い三脚は良い値段がする。この絶対の真実を前に我々大判ユーザーは頭を悩ませるのです。更に言うなれば重量との兼ね合い、これが大きな障壁として立ち塞がって決ます。即ち、
大判カメラの大重量に耐えるには頑丈な雲台と三脚が必要→大型化して重量増→大型且つ軽量を獲得する為に各種の工夫が凝らされる→値段増
このようなスパイラルが発生してしまうのです。
加えて「重い三脚は安定する」という絶対の真実が加わってきます。特にこの自重による安定性は機材が大型化しがちなシノゴでは効いてくるものです。
予算別
10万アッパー (富豪): Gitzoの3型~ /RRS
6~10万 (リッチ): ハスキー/マンフロ055カーボン/ベルレバッハ?
3~6万 (背伸び): マンフロ055アルミ/Sirui N3204
1~3万 (コスト最優先): SIRUI / BENRO?
→とりあえずマンフロットの055買っておけばツブシは効くと思うよ(編輯中コメント)
三脚紹介
マンフロット055
マンフロ055、デジタルカメラユーザでも比較的大きなレンズを扱っている人は持っている、もしくは選択肢に入れたことがあるんじゃないでしょうか。2~3万円台で買える三脚としては頑丈で扱いやすいのがポイントです。実際4x5でもフィールドカメラだと大げさに感じるくらいの代物です(大型ビューカメラだとさすがにちょっと物足りない)。アルミでがっちりして脚の伸縮はレバー式。少々重いのが難点ですがどうせ三脚は重い方が安定するんですから気にしない。
ベルレバッハ
ドイツ生まれの木製三脚です。重い、かさばる、安定しない、水気に弱い、安くない。三脚としては割と最悪な要素をどっさり併せ持っていますが、その特徴は三脚界でも最高クラスの見た目性能。木製のシックな外見は同じく木製の大型フィールドカメラと合わせた時、大変な魅力を放ちます。
Gitzo GT2531LVL (ディスコン)
Gitzoが過去にラインナップしていた「レベリング三脚」というシリーズの一つで、2型3段でカーボン脚のモデル。耐荷重は10kgと通常のGT2531の12kgや現行のマウンテニア2型3段GT2532の18kgと比して劣りますが、センターポール自体がチルトする為雲台に頼らず水平を出す事が可能です。地味な点ですが雲台にパン機能があれば斜面でも完全に水平なパンニングが出来るという意味で構図の自由度が高い点は他の三脚と比して大きなメリットです。そういったギミックがありながら、ガッチリした雲台さえ載せれば5x7構成のSinar Normaを載せてもビクともしない強度こそは、Gitzoの面目躍如と言えるでしょう。
雲台紹介
SIRUI 自由雲台 K-40X
SIRUIの自由雲台における最大サイズのモデルです。公称耐荷重35kgでアルカスイス互換クランプ付きというバケモノ染みたスペックながら、新品で流通1.5万円程度という値段でお財布にも優しいモデルです。全体的な作りは悪くありませんしビューカメラでもキッチリ止まりますが、個体差が大きいという噂も。特に斜めにした時の固定力にバラ付きが大きいようです。フィールカメラに対してはやや過剰性能に過ぎるクラスの雲台かもしれません。唯一明確な欠点としては、SIRUI製品はアルカスイス互換クランプでありながら脱落防止ピンの仕様が異なる(プレート側でなくクランプ側に脱落防止ピンがある)為、他社の底面にピンがあるタイプのクランプと干渉する事です。
Leitz/Leica自由雲台
135フィルムを使用するカメラの中でも最も有名なブランドであるライカ。そのライカを作っていたLeitz社、そして後継のLeica社は、カメラに必要な物を引き伸ばし機からプロジェクターまでラインナップする一大企業でした。そのLeitz/Leica社が長らくラインナップしている自由雲台シリーズは小型ながら強力な固定力を持ち、フィールドカメラ程度なら止めてみせます。軽量かつ仕上げも良い雲台なのですが、欠点はボールが小さい事から固定←→フリー間が異常にハッキリしている事。突然ガクンと解放されるのでテンションをかけながら少しずつ平行を出すようなやり方には向きません。中古だと1万円前後から転がっている事が多いので、軽量なフィールドカメラを使う際の選択肢の一つとしては充分にアリです。
梅本製作所 自由雲台 SL-60系
国産高性能自由雲台メーカーとして知る人ぞ知る梅本製作所のラインナップ中最大の物がこのSL-60系です。梅本製作所の雲台にはSL-xxAZ, AZD, ZSCという三種類が存在し、それぞれ円形台でカメラの三脚穴に接続(AZ)、梅本やアルカスイス互換のクランプに接続(AZD)、角型台でカメラの三脚穴に接続(ZSC)という区別になっています。滑らかな操作と強力な固定力を発揮する自由雲台ですが、カタログスペックは最大積載量6kg、快適な撮影の為には5kgと控え目。これは梅本製作所が「1/4インチネジに多大な負荷をかける事はそもそもオススメできないし、最大積載量上限の機材を載せても快適な運用は出来ない」という哲学を持っている為です。フィールドカメラで使用する上で問題になる事は無いでしょう。
SLIK フリーターン雲台 マスターデラックス
日本の三脚メーカーの二台巨頭のうちの一つであるSLIKが50年以上に渡って販売している特殊な雲台がフリーターン雲台です。自由雲台程自由でなく、かといって3Way雲台程ガチガチでもないという雲台ですが、「慣れれば」例え三脚が傾いていたとしても水平を一瞬で出した上で水平パンができるというメリットがあり、今も野球や相撲といった場のカメラマン達が愛用しています。実売7000円程度ながら公称耐荷7kgと優秀で、フィールドカメラ程度ならばビクともしない強度を持ちます。特にICの大きいレンズを用いてライズ/フォールで片付ける場合、一瞬で水平を出せるこの雲台の便利さに気付くでしょう。大きな欠点として、余りに他の雲台と異なる操作体系が上げられます。上でも「慣れれば」と表記したのはその為で、自由雲台とも3WAY雲台とも異なる独特な操作をマスターしない限り何とも面倒な物にしか思えない事でしょう。
最終更新:2019年12月25日 11:20